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3章 死神が誘う遊園地
痛みの共鳴 5
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身体が蹌踉めいて重心が揺れる。それでも立っている。
一歩、踏み出そうとすると震えた脚はバランスを崩す。転びそうになったあたしをつかさず、ハクが支えた。
見渡すと光弥と目が合う。睨まれた光弥は身を縮めた。こいつがあたしに何をしたのか考えなくてもわかる。
あたしは睨んだ目線を逸らし書斎へと意識を向ける。広い書斎にいたのはカンダタだった。
背中の皮を裂いて露出した蜘蛛の脚はすでに8本ある。
ハクはカンダタが気になるみたいで書斎ばかり見ては視線をあたしに戻す。目線の往復はハクの戸惑いを示していた。
あたしは何も言わず歩く。ハクという支えから離れ、膝はわずかに震えていた。
千鳥足で壁際に倒れている父に向かう。
頭が痛くて痛くてどうにかなってしまいそう。
その痛みが「捨てろ」と主張する。それは怒りと合わさり、内から焚かれ、炎になる。
あの男はあたしを殺そうとした。そして、あたしの死骸で恋愛ごっこの続きを望んだ。それが真実の愛だと評して。
父と母は6年前の事件よりも先に破局していた。それを認めないで、死んでから6年経っても、母を追いかけてはそっくりな娘に母を写す。
結局、この男は娘の存在すら認識しようとしなかった。名前すら覚えていなかったのが何よりの証だ。
こいつが愛したのは母だけだった。愛するが故に現実を捻じ曲げ、ついに狂ってしまった。
真実の愛に飢え、現実を拒絶した化け物。
父ではない捨ててしまえ。
踏み込む足が強いものになり、重い一歩がゆっくり繰り出される。
こいつはまたあたしを殺す。なら、先にあたしが殺す。
十手が変形する。まるであたしの意思に呼応したかのように必要とした形に変貌した。それは刃渡り15㎝のサバイバルナイフだった。
「エマ、なぜだ」
仁王立ちになって見下ろすあたしに父を絶望した声色で呟く。未だに母の残像をあたしに写していた。
返す言葉も見つからない。痛みと怒りで歯軋りが更に強く煩く響く。父の上に跨り、ナイフを掲げる。
捨ててしまえ。愛されなかったのだから。
同じ言葉が反芻して炎が激しく揺らめいた。燃える熱に腹からの雄叫びが上がった。
甲高い声と共に刃が振り下された。
叫んだ声によって吐き出された空気を取り戻そうと肺が大きく膨らむ。
ナイフは石の床を突き当てていた。すぐ横に落ちた刃を父が見つめている。そんな父の横顔に一滴のしずくが落ちた。
「殺したいわけじゃない」
あれほど燃えていた炎は鎮火して、怒りは涙となって流れていた。
いくら自分を奮い立たせてもその感情に気付いてしまっては父を殺せない。
「恨まれても拒絶されても愛されたかった」
捨てたつもりだった。愛されていないから、これからも愛されないから家族愛を捨てたかった。
「愛されていなくても愛されたかった」
こんな、ないものねだり、惨めなだけじゃない。
嗚咽と涙が寂しく静寂に谺する。
涙で震える肩にハクが寄り添って頰すり合わせた。これがハクにできる精一杯だった。
一歩、踏み出そうとすると震えた脚はバランスを崩す。転びそうになったあたしをつかさず、ハクが支えた。
見渡すと光弥と目が合う。睨まれた光弥は身を縮めた。こいつがあたしに何をしたのか考えなくてもわかる。
あたしは睨んだ目線を逸らし書斎へと意識を向ける。広い書斎にいたのはカンダタだった。
背中の皮を裂いて露出した蜘蛛の脚はすでに8本ある。
ハクはカンダタが気になるみたいで書斎ばかり見ては視線をあたしに戻す。目線の往復はハクの戸惑いを示していた。
あたしは何も言わず歩く。ハクという支えから離れ、膝はわずかに震えていた。
千鳥足で壁際に倒れている父に向かう。
頭が痛くて痛くてどうにかなってしまいそう。
その痛みが「捨てろ」と主張する。それは怒りと合わさり、内から焚かれ、炎になる。
あの男はあたしを殺そうとした。そして、あたしの死骸で恋愛ごっこの続きを望んだ。それが真実の愛だと評して。
父と母は6年前の事件よりも先に破局していた。それを認めないで、死んでから6年経っても、母を追いかけてはそっくりな娘に母を写す。
結局、この男は娘の存在すら認識しようとしなかった。名前すら覚えていなかったのが何よりの証だ。
こいつが愛したのは母だけだった。愛するが故に現実を捻じ曲げ、ついに狂ってしまった。
真実の愛に飢え、現実を拒絶した化け物。
父ではない捨ててしまえ。
踏み込む足が強いものになり、重い一歩がゆっくり繰り出される。
こいつはまたあたしを殺す。なら、先にあたしが殺す。
十手が変形する。まるであたしの意思に呼応したかのように必要とした形に変貌した。それは刃渡り15㎝のサバイバルナイフだった。
「エマ、なぜだ」
仁王立ちになって見下ろすあたしに父を絶望した声色で呟く。未だに母の残像をあたしに写していた。
返す言葉も見つからない。痛みと怒りで歯軋りが更に強く煩く響く。父の上に跨り、ナイフを掲げる。
捨ててしまえ。愛されなかったのだから。
同じ言葉が反芻して炎が激しく揺らめいた。燃える熱に腹からの雄叫びが上がった。
甲高い声と共に刃が振り下された。
叫んだ声によって吐き出された空気を取り戻そうと肺が大きく膨らむ。
ナイフは石の床を突き当てていた。すぐ横に落ちた刃を父が見つめている。そんな父の横顔に一滴のしずくが落ちた。
「殺したいわけじゃない」
あれほど燃えていた炎は鎮火して、怒りは涙となって流れていた。
いくら自分を奮い立たせてもその感情に気付いてしまっては父を殺せない。
「恨まれても拒絶されても愛されたかった」
捨てたつもりだった。愛されていないから、これからも愛されないから家族愛を捨てたかった。
「愛されていなくても愛されたかった」
こんな、ないものねだり、惨めなだけじゃない。
嗚咽と涙が寂しく静寂に谺する。
涙で震える肩にハクが寄り添って頰すり合わせた。これがハクにできる精一杯だった。
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