糸と蜘蛛

犬若丸

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4章 闇底で交わす小指

狂う計画 5

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 「あたしたちの訪問を待ち構えていたみたいね。どういうことなのかしら?どこかの誰かさんがご丁寧に日時を教えてあげたのかしら?」
 冷静を装っても計画が台無しになった怒りは収まりそうにない。
 そういった苛立ちが見え隠れしたまま、あたしは光弥を睨む。
 その目線に光弥は下を向く。
 「流したのは光弥じゃない」
 冷静を装うあたしと違って、カンダタは平然としていた。苛立ちを隠しているのではなく、その心中までも静かだった。
 「光弥も牢に入れられたんだ。そう考えるのが当然だろう」
 「あら、そう。だったらそこの馬鹿と一緒に犯人当ての推理ゲームを楽しんでればいいわ」
 平然とするカンダタに腹が立ってきて、隠そうと努めてきた苛立ちが表に出る。
 「脱出が先だ」
 平然としているのはカンダタだけじゃなかった。ケイがあたしの皮肉に正論で返す。
 「こんな状況で脱出?」
 あたしは鼻で笑って荒縄で縛られた両手を見せつける。ケイやカンダタたちも同じように拘束されて、牢の外では2人の塊人が瞬きもせずに見張っている。
 「少しは落ち着け」
 「何よ、カンダタも冴えた頭で打開策が浮かんだわけ?」
 「もうやめてよ」
 あたしたちの口論に耐えきれなくなって清音が口を挟む。ハクも宥めようと鼻先であたしの手を擦る。
 深呼吸をする。牢の中をぐるぐると歩き、この苛立ちを鎮めようとする。
 清音に八つ当たりしてもよかったけれど、そこは堪える。
 不毛な口論を続けても牢からは出れない。
 しばらくの間、張りつめていた沈黙が続いた。誰も声を発しようとせず、固く口を閉ざす。その沈黙の時間が苛立ちを鎮めさせた。
 あたしが落ち着いた頃に階段を下る足音が聞こえてきた。
 階段を下り、牢の前に立ったのは天鳥だった。
 あたしはもう一度、深呼吸して逡巡する。
 十如十廻之白御霊は奪われていない。あのペンはポケットに入っている。
 弥たちは夢園での一件を把握していない。だから、あたしがこれを持っているなんて想像もできないはず。交渉の余地はまだある。
 あたしは歩み寄って鉄格子の前に立ち、天鳥と対峙した。
 「あたしたちが訪れるのは誰から聞いたの?」
 交渉の前にリーク先を突き止めないといけない。天鳥が素直に話すとは思っていないけれど、探りを入れるくらいはしておく。
 「あなたの話は後で聞きます」
 何も話す気はないと天鳥は言った。
 「1人ずつ弥さんと面談をしてもらいます」
 告げられた言葉に虚を衝かれ、あたしは目を丸くする。
 「面談ですって?進路相談でもしてくれるの?」
 「何が目的だ」
 カンダタが口を出す。
 「貴方の質問は面談で受け付けます」
 ここで話し合いをするつもりはないらしい。天鳥の毅然とした態度はとりつく島がない。
 「岡本  清音さん、面談はあなたから始めます」
 「わ、私から?」
 1番目の指名が自分だとは思わず、清音は声を上げて驚く。
 「こちらへ」
 天鳥が牢の入り口へ来るよう清音を促す。
 戸惑いながらも歩き出そうとするとケイが立ちはだかる。
 頭に浮かんだのは「抹殺」の2文字。この面談はどう考えても罠ね。
 魂を解体するのか処分するのかわからないけれど、弥は一人ずつ呼ぶよう指示したらしい。遠回りなやり方をする。
 清音を1人で行かせるとどうなるか。ケイにとっては不安よりも危機感が先立った。
 「抵抗できる状況ではないでしょう」
 毅然とした天鳥が脅す。対してケイは髪を逆立てて脅しをもろともしない。
 ケイは荒縄の拘束は解ける。猫の姿になれば拘束が緩む。そして、人型に戻って、白い刀で応戦できる。
 清音を行かせたらケイが暴れかねない。
 それだとあたしたちが困る。
 ケイを連れてきたのはあくまで逃避する場合になった時の為。あとは交渉相手への威圧。
 今、ケイが暴れればハザマそのものが相手になる。流石にケイだけでは敵わないし、交渉もできない。
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