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4章 闇底で交わす小指
胚羊水 3
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あたしが拒否しても奪われる。
大人しくポケットに手を入れた。しかし、そこにあるはずのペンがない。
いつから失くしたのかと記憶を巡らす。
牢の中にいた時はあった。脱出して移動する間も。
黒い水面を見つめる。失くしたとしたら黒い濁流に呑まれた時。十手はあの水面の向こう。
あたしの挙動に弥も光弥も、その場にいる全ての人が悟った。
「拾ってこい!」
激昂したのは弥で、部下から刀を取り上げるとあたしに迫る。
斬り捨ててしまいそうな形相。あたしは一歩退がり、ケイが間に割って入る。
ケイは刀の峰で弥の柄叩き落とした。脅威だと認識した他の塊人がケイを囲む。
制止の声を光弥は上げるも、彼らには届かない。弥の指示により、背後から塊人が迫っていた。光弥の両腕は後ろに回され、壁に抑え付けられる。
ハクは牙を剥き出しにして、今にも襲いかかりそうだった。
あたしは緊迫しているハクの背中を撫でて、なんとか宥める。
「ケイ、一旦刀を下ろして」
あたしの指示にケイは構えていた刀を下ろす。一先ず、あたしに従ってくれるようで胸を撫で下ろした。
次に弥を見据えて、話す。
「争うつもりはないのよ。けれど、あなたがその気ならあたしにも考えがある」
意味ありげに言ってみても、打開策も切り札もない。
「見てみたいものだな」
あたしのブラフにも弥は強気だった。見透かされているのかもしれない。
後ろは黒い水面。前は弥を含めたの塊人が立ち塞がる。
あたしの頭は逃避しか浮かばなかった。
胚羊水に呑まれた清音も、拘束されている光弥もあたしでは助けられない。気がかりがあるとすれば、十手があのどす黒い水中にあること。
「戻ってこれるのか?」
カンダタの質問は胚羊水に入った後を想定したもの。あたしと違って逃避以外の選択肢が彼にあった。
「知らん」
無責任に答えたのは弥だった。
「胚羊水は胎児を収納する時だけしか使っていないからその中身がどうなっているのかは把握していない。未知の領域だ。入ったらどうなるか想像もつかない」
腕に抱いた赤子の感触が蘇る。あれは胚羊水の入り口に立っていただけに過ぎない。
「あたしは嫌よ」
胚羊水には入りたくない。ママと呼ばれたあの感覚を味わいたくない。
「十手はどうする?瑠璃が断っても弥はに入る方法を探すぞ」
「あたしは胚羊水に拒絶され吐き出された。カンダタみ同じでしょ」
胚羊水に潜ったとしても拒絶されれば、意味がない。
「瑠璃は受け入れられる。女だから。カンダタは白糸で繋がっているから、もしかしたらいけるかもしれない。多分」
「俺も受け入れられる」
自信のない光弥の自論に対してカンダタは確信を持っていた。
「あの中で、誰かが俺を呼んでいた」
「幻聴でしょ」
どうしても入りたくないあたしはそれを幻だと決めつける。
カンダタがあたしを睨みつける。
「確かに俺を呼んでいたんだ」
「カンダタにとって幻聴・幻覚は日常でしょ?」
どれだけ自信ありげに主張しても、カンダタが幻を見ているのはいつものこと。本人もそれを自覚しているから言い返せない。
「行ってくれ」
後押ししてきたのはケイ。敵の刃に囲まれながらもあたしに頼む。
胚羊水に呑まれた清音を救出したい一心ね。
ケイと光弥は人質になって、清音と十手は胚羊水の中。
この状況、どうやっても胚羊水に入るしかない。
あたしは深呼吸をして腹を括った。
大人しくポケットに手を入れた。しかし、そこにあるはずのペンがない。
いつから失くしたのかと記憶を巡らす。
牢の中にいた時はあった。脱出して移動する間も。
黒い水面を見つめる。失くしたとしたら黒い濁流に呑まれた時。十手はあの水面の向こう。
あたしの挙動に弥も光弥も、その場にいる全ての人が悟った。
「拾ってこい!」
激昂したのは弥で、部下から刀を取り上げるとあたしに迫る。
斬り捨ててしまいそうな形相。あたしは一歩退がり、ケイが間に割って入る。
ケイは刀の峰で弥の柄叩き落とした。脅威だと認識した他の塊人がケイを囲む。
制止の声を光弥は上げるも、彼らには届かない。弥の指示により、背後から塊人が迫っていた。光弥の両腕は後ろに回され、壁に抑え付けられる。
ハクは牙を剥き出しにして、今にも襲いかかりそうだった。
あたしは緊迫しているハクの背中を撫でて、なんとか宥める。
「ケイ、一旦刀を下ろして」
あたしの指示にケイは構えていた刀を下ろす。一先ず、あたしに従ってくれるようで胸を撫で下ろした。
次に弥を見据えて、話す。
「争うつもりはないのよ。けれど、あなたがその気ならあたしにも考えがある」
意味ありげに言ってみても、打開策も切り札もない。
「見てみたいものだな」
あたしのブラフにも弥は強気だった。見透かされているのかもしれない。
後ろは黒い水面。前は弥を含めたの塊人が立ち塞がる。
あたしの頭は逃避しか浮かばなかった。
胚羊水に呑まれた清音も、拘束されている光弥もあたしでは助けられない。気がかりがあるとすれば、十手があのどす黒い水中にあること。
「戻ってこれるのか?」
カンダタの質問は胚羊水に入った後を想定したもの。あたしと違って逃避以外の選択肢が彼にあった。
「知らん」
無責任に答えたのは弥だった。
「胚羊水は胎児を収納する時だけしか使っていないからその中身がどうなっているのかは把握していない。未知の領域だ。入ったらどうなるか想像もつかない」
腕に抱いた赤子の感触が蘇る。あれは胚羊水の入り口に立っていただけに過ぎない。
「あたしは嫌よ」
胚羊水には入りたくない。ママと呼ばれたあの感覚を味わいたくない。
「十手はどうする?瑠璃が断っても弥はに入る方法を探すぞ」
「あたしは胚羊水に拒絶され吐き出された。カンダタみ同じでしょ」
胚羊水に潜ったとしても拒絶されれば、意味がない。
「瑠璃は受け入れられる。女だから。カンダタは白糸で繋がっているから、もしかしたらいけるかもしれない。多分」
「俺も受け入れられる」
自信のない光弥の自論に対してカンダタは確信を持っていた。
「あの中で、誰かが俺を呼んでいた」
「幻聴でしょ」
どうしても入りたくないあたしはそれを幻だと決めつける。
カンダタがあたしを睨みつける。
「確かに俺を呼んでいたんだ」
「カンダタにとって幻聴・幻覚は日常でしょ?」
どれだけ自信ありげに主張しても、カンダタが幻を見ているのはいつものこと。本人もそれを自覚しているから言い返せない。
「行ってくれ」
後押ししてきたのはケイ。敵の刃に囲まれながらもあたしに頼む。
胚羊水に呑まれた清音を救出したい一心ね。
ケイと光弥は人質になって、清音と十手は胚羊水の中。
この状況、どうやっても胚羊水に入るしかない。
あたしは深呼吸をして腹を括った。
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