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4章 闇底で交わす小指
生命になれなかった子たち 5
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蠍の鬼は目踏みしながら獲物を探す。奴の目に適ったのは子供たちが積んだ石の塔だった。
鈍色の鋏が軽く振られた。それだけで周囲にあった石の塔が激しく砕け散って、乱散した石の破片が地蔵にぶつかる。
まるで弾幕のような小石をあたしとカンダタ、子供たちが身を守ろうと頭を低くさせる。
鬼の関節はギシギシと錆びた鉄の音を鳴らしながらまた軽い一振りで子供たちの塔を壊す。
弾幕が終わればすぐ様、別の弾幕がやってくる。
塔を壊し尽くすまで居座るつもりなの?
弾幕の嵐を耐え凌ぐ子供たちのすすり泣く声がギシギシとバチバチと激しい轟音の合間に聞こえてくる。
諦めて泣く嗚咽。河原の子供たちにとってこれは日常炒飯事。だから、大声で泣かないし、抗わない。諦めて嵐が止むのをひたすらに耐える。
どうせ壊されるのなら塔なんか建てなければいいのに。
全ての塔を壊した蠍の鬼はこれだけでは満足できないとまた周囲を探す。
地蔵の合間から子供たちが覗かせ、蠍の鬼と目が合う。
新しい玩具を発見したと悦びの音を上げた蠍の鬼はこちらを轢き殺すスピードで突進してきた。
地蔵の列は大きく揺れるも崩れずに毅然と立つ。
地蔵は崖下に空いた横穴の中に立っている。崖と地蔵の間に鋏を差し込もうとしても侵入は許されず、尾のチューブで吸引しようとしてもなぜか無風だった。
苛立った蠍の鬼は両手の鋏を上下左右に激しく振り回し、子供たちを捕らえようとする。
いつまで経っても鬼が飽きることなく、地蔵を攻め続けた。
身を寄せ合う子供たちは更に密集し、あたしやカンダタに抱きつく子までいた。あたしも無意識に子供を抱きしめていた。
蠍の鬼に感情はない。
笑い声のように聞こえてても、癇癪を起こしているように見えても、あたしたちがそういう風に捉えているだけ。
飽きるという感情も存在しない。プログラムされた行動をとっているだけに過ぎない。
子供たちを鋏で捕らえるまではいつまでも続く。
抱きついている子供から嗚咽に混じって誰かを呼んでいる。それが「お母さん、お父さん」だととわかるとより一層強く抱きしめた。
精神が削られていくのを実感する。
心が疲弊して鬱になりそう。
再び川が大きく波打つ。
まさか、もう1体蠍の鬼が襲来するの?
地蔵に守られているとは言え、増えたら堪らない。
川から這い出たのは蠍の鬼ではなく、大蛇だった。
蠍の鬼と負けず劣らずの大きさを誇る大蛇が2体。毒牙を剥き出して、鬼に対抗する。
怯えて震えていた子供たちから安堵の溜め息が聞こえる。あれは危険なものではないらしい。
「あれはなんだ?」
胸を撫で下ろしたあたしに代わってカンダタが問う。
「ヘビだよ」
見ればわかる。
「鬼から助けてくれるの?」
子供にもわかりやすく質問してみるとその子は首を横に振る。
「いっぱいいるの。たすけてくれるヘビもいるし、せきにんほうきするヘビもいるのよ。中にはわたしたちをいじめるヘビもいるの」
砂利を削る豪快な音がして、河原に視線を戻せば大蛇が蠍に組み敷かれていた。
すると、数十体の大小様々な大蛇が川から這い上がり、苦戦する大蛇に加勢する。
蠍の鬼も数には敵わないみたいで関節は縛られ足は引き千切られる。火花を散らした蠍の硬皮が残骸となって大きな山を作る。
それに満足した大蛇たちが川へと戻っていく。
鈍色の鋏が軽く振られた。それだけで周囲にあった石の塔が激しく砕け散って、乱散した石の破片が地蔵にぶつかる。
まるで弾幕のような小石をあたしとカンダタ、子供たちが身を守ろうと頭を低くさせる。
鬼の関節はギシギシと錆びた鉄の音を鳴らしながらまた軽い一振りで子供たちの塔を壊す。
弾幕が終わればすぐ様、別の弾幕がやってくる。
塔を壊し尽くすまで居座るつもりなの?
弾幕の嵐を耐え凌ぐ子供たちのすすり泣く声がギシギシとバチバチと激しい轟音の合間に聞こえてくる。
諦めて泣く嗚咽。河原の子供たちにとってこれは日常炒飯事。だから、大声で泣かないし、抗わない。諦めて嵐が止むのをひたすらに耐える。
どうせ壊されるのなら塔なんか建てなければいいのに。
全ての塔を壊した蠍の鬼はこれだけでは満足できないとまた周囲を探す。
地蔵の合間から子供たちが覗かせ、蠍の鬼と目が合う。
新しい玩具を発見したと悦びの音を上げた蠍の鬼はこちらを轢き殺すスピードで突進してきた。
地蔵の列は大きく揺れるも崩れずに毅然と立つ。
地蔵は崖下に空いた横穴の中に立っている。崖と地蔵の間に鋏を差し込もうとしても侵入は許されず、尾のチューブで吸引しようとしてもなぜか無風だった。
苛立った蠍の鬼は両手の鋏を上下左右に激しく振り回し、子供たちを捕らえようとする。
いつまで経っても鬼が飽きることなく、地蔵を攻め続けた。
身を寄せ合う子供たちは更に密集し、あたしやカンダタに抱きつく子までいた。あたしも無意識に子供を抱きしめていた。
蠍の鬼に感情はない。
笑い声のように聞こえてても、癇癪を起こしているように見えても、あたしたちがそういう風に捉えているだけ。
飽きるという感情も存在しない。プログラムされた行動をとっているだけに過ぎない。
子供たちを鋏で捕らえるまではいつまでも続く。
抱きついている子供から嗚咽に混じって誰かを呼んでいる。それが「お母さん、お父さん」だととわかるとより一層強く抱きしめた。
精神が削られていくのを実感する。
心が疲弊して鬱になりそう。
再び川が大きく波打つ。
まさか、もう1体蠍の鬼が襲来するの?
地蔵に守られているとは言え、増えたら堪らない。
川から這い出たのは蠍の鬼ではなく、大蛇だった。
蠍の鬼と負けず劣らずの大きさを誇る大蛇が2体。毒牙を剥き出して、鬼に対抗する。
怯えて震えていた子供たちから安堵の溜め息が聞こえる。あれは危険なものではないらしい。
「あれはなんだ?」
胸を撫で下ろしたあたしに代わってカンダタが問う。
「ヘビだよ」
見ればわかる。
「鬼から助けてくれるの?」
子供にもわかりやすく質問してみるとその子は首を横に振る。
「いっぱいいるの。たすけてくれるヘビもいるし、せきにんほうきするヘビもいるのよ。中にはわたしたちをいじめるヘビもいるの」
砂利を削る豪快な音がして、河原に視線を戻せば大蛇が蠍に組み敷かれていた。
すると、数十体の大小様々な大蛇が川から這い上がり、苦戦する大蛇に加勢する。
蠍の鬼も数には敵わないみたいで関節は縛られ足は引き千切られる。火花を散らした蠍の硬皮が残骸となって大きな山を作る。
それに満足した大蛇たちが川へと戻っていく。
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