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4章 闇底で交わす小指
決断 8
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狭い通路に身を潜めていると叫び声はますます大きくなり、子取りが空洞から落ちてきた。
秘密箱の山を崩し、その中で子取りが埋もれる。
そこから脱出しようとする子取りの上に追い討ちをかけるようにのしかかってきたのは蠍の鬼だった。
後足2本で子取りの脚を刺し、前足3本で背中を抑える。先端が輪の鋏で腕を切断しようとする。
「まずは子取りと蠍の鬼を引き離さないとな」
カンダタの発言はあたしの我儘に賛同するものだった。
「反対してるのかと思った」
「俺も馬鹿なんだ。その十手は使えるんだな?」
確認をされて、あたしは自信ありげに答える。
「さあ?思いついたことがあるからそれを試してみる」
その応えにカンダタは絶句した後、もう一度質問する。
「失敗したら?」
「なんとかする」
投げやりに言い放つ。カンダタは呆れてそれ以上は言及しなかった。
「カンダタこそ離すとか言ってたけれど、策はあるわけ?」
「瑠璃よりはマシなものはある。白糸を分けてくれ。長めにな」
要求されたから言われた通りにかなり長く白糸を分け与える。
「壺の下には大蛇の湖があったな。あそこまで逃げきれ」
子取りはあたしを追って、蠍の鬼は子取りを追う。そして、大蛇は子取りを守ろうと動く。あたしが大蛇の湖まで逃げれば、鬼の脅威は一先ず、なくなる。
「それでうまく行くの?」
「なんとかする、だろ。清音を頼む」
あたしは清音に巻き付けた白糸を解き、カンダタからあたしの背中に移された。
重いわね。
悪態をつきながら清音を背負い、彼女の尻の下に手を置くとその手で傘を持つ。
「俺が鬼を足止めする。瑠璃が子取りを引き付けてくれ」
口では簡単に言えても実行は不可能に近い。
そうだとしても、やれるだけのことはしたい。これは非力なあたしの我儘で、意地だ。この我儘を貫きたい。
あたしとカンダタは同時に行動した。カンダタは蠍の鬼に向かい、あたしは脱出口へと走る。
蠍の鬼は子取りを虐めるのに夢中で横を通り過ぎるあたしにも、鬼の足元に着いたカンダタにも気付かなかった。
カンダタは左半分の脚を白糸で結ぶとその脚をよじ登る。胴体を横断して、蠍の腕、関節部分を白糸で括ってからまた胴体を渡る。
1番後ろの左脚付け根まで来ると腕に括った白糸がピンと張り、それを強く引く。
腕1本だとしてもカンダタでは身に余る。それ、でも踏ん張り、歯を食いしばりながら白糸を引き、鬼の腕を制止させる。
思うように動けなくなり、蠍の鬼はやっとカンダタの存在に気付く。2、3歩ほど子取りから
退き、カンダタを落とそうと身体を振るう。
カンダタは揺れる身体に抗い、さらに後ろへ引き、白糸を左脚の関節に巻きつける。
鬼の片脚腕は天に向けて上がり、2本の脚は自由にできず、不格好に地団駄を踏む。白糸はギチギチと音を鳴らして、いつ切れてもおかしくない。
一方であたしは子取りの前に立つ。
蠍の鬼によって子取りの片腕は切断されかけて、皮一枚だけで繋がっていた。
「こっちよ!来なさい!」
声を張り上げて子取りを誘導しようと試みる。
泣きじゃくっていた子取りがあたしを見つけると片腕を引き摺りながら追ってくる。
紫の泥は周囲の秘密箱や裸体の女性を呑み、子取りへと運ぶ。そうして子取りの肥大化は進んでいく。
紫の泥に触れないよう気をつけながら、子取りの泥に合わせて誘導する。
その後ろでは蠍の鬼が悔しそうに地団駄を踏み鳴らす。するとチューブの尾が半円を描くように上がった。
そのチューブが吸引の音をたて、風を起こし、離れていく子取りを引き戻そうとする。
皮一枚で繋がっていた片腕は一気に引き千切られて、飛ばされる。そして、その腕を鬼の鋏が八つ裂きにする。
バラバラになった腕が鬼の周囲に広がり、チューブがそれを綺麗に掃除をする。
その間、子取りの動きを封じていた風が止み、あたしを捕まえようと前に進む。
秘密箱の山を崩し、その中で子取りが埋もれる。
そこから脱出しようとする子取りの上に追い討ちをかけるようにのしかかってきたのは蠍の鬼だった。
後足2本で子取りの脚を刺し、前足3本で背中を抑える。先端が輪の鋏で腕を切断しようとする。
「まずは子取りと蠍の鬼を引き離さないとな」
カンダタの発言はあたしの我儘に賛同するものだった。
「反対してるのかと思った」
「俺も馬鹿なんだ。その十手は使えるんだな?」
確認をされて、あたしは自信ありげに答える。
「さあ?思いついたことがあるからそれを試してみる」
その応えにカンダタは絶句した後、もう一度質問する。
「失敗したら?」
「なんとかする」
投げやりに言い放つ。カンダタは呆れてそれ以上は言及しなかった。
「カンダタこそ離すとか言ってたけれど、策はあるわけ?」
「瑠璃よりはマシなものはある。白糸を分けてくれ。長めにな」
要求されたから言われた通りにかなり長く白糸を分け与える。
「壺の下には大蛇の湖があったな。あそこまで逃げきれ」
子取りはあたしを追って、蠍の鬼は子取りを追う。そして、大蛇は子取りを守ろうと動く。あたしが大蛇の湖まで逃げれば、鬼の脅威は一先ず、なくなる。
「それでうまく行くの?」
「なんとかする、だろ。清音を頼む」
あたしは清音に巻き付けた白糸を解き、カンダタからあたしの背中に移された。
重いわね。
悪態をつきながら清音を背負い、彼女の尻の下に手を置くとその手で傘を持つ。
「俺が鬼を足止めする。瑠璃が子取りを引き付けてくれ」
口では簡単に言えても実行は不可能に近い。
そうだとしても、やれるだけのことはしたい。これは非力なあたしの我儘で、意地だ。この我儘を貫きたい。
あたしとカンダタは同時に行動した。カンダタは蠍の鬼に向かい、あたしは脱出口へと走る。
蠍の鬼は子取りを虐めるのに夢中で横を通り過ぎるあたしにも、鬼の足元に着いたカンダタにも気付かなかった。
カンダタは左半分の脚を白糸で結ぶとその脚をよじ登る。胴体を横断して、蠍の腕、関節部分を白糸で括ってからまた胴体を渡る。
1番後ろの左脚付け根まで来ると腕に括った白糸がピンと張り、それを強く引く。
腕1本だとしてもカンダタでは身に余る。それ、でも踏ん張り、歯を食いしばりながら白糸を引き、鬼の腕を制止させる。
思うように動けなくなり、蠍の鬼はやっとカンダタの存在に気付く。2、3歩ほど子取りから
退き、カンダタを落とそうと身体を振るう。
カンダタは揺れる身体に抗い、さらに後ろへ引き、白糸を左脚の関節に巻きつける。
鬼の片脚腕は天に向けて上がり、2本の脚は自由にできず、不格好に地団駄を踏む。白糸はギチギチと音を鳴らして、いつ切れてもおかしくない。
一方であたしは子取りの前に立つ。
蠍の鬼によって子取りの片腕は切断されかけて、皮一枚だけで繋がっていた。
「こっちよ!来なさい!」
声を張り上げて子取りを誘導しようと試みる。
泣きじゃくっていた子取りがあたしを見つけると片腕を引き摺りながら追ってくる。
紫の泥は周囲の秘密箱や裸体の女性を呑み、子取りへと運ぶ。そうして子取りの肥大化は進んでいく。
紫の泥に触れないよう気をつけながら、子取りの泥に合わせて誘導する。
その後ろでは蠍の鬼が悔しそうに地団駄を踏み鳴らす。するとチューブの尾が半円を描くように上がった。
そのチューブが吸引の音をたて、風を起こし、離れていく子取りを引き戻そうとする。
皮一枚で繋がっていた片腕は一気に引き千切られて、飛ばされる。そして、その腕を鬼の鋏が八つ裂きにする。
バラバラになった腕が鬼の周囲に広がり、チューブがそれを綺麗に掃除をする。
その間、子取りの動きを封じていた風が止み、あたしを捕まえようと前に進む。
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