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4章 闇底で交わす小指
決断 7
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「胎児たちは母を求めている」
あたしの中で生じた迷いを紐解くように話す。
「それって、結局は生きたかったから。泣くのも縋るのも親なしじゃ生きれないから。死んで胚羊水に落ちても、胎児たちは生きたいと叫んでいる。けれど、ここにいても未来はない。永遠に」
廃病院の子は誰も来ない人を待ち続け、河原の子は繰り返される罰を強いられる。キケイは優しさに飢えて、子取りは寂しさに耐える。
終わりがなく、変化もしない。永遠に続く。
「どうしたい?」
「胚羊水の子供たちを輪廻に流したい」
輪廻では記憶や価値観、人格を洗い落として、真っ白な魂に戻してしまう。自分を形作るものがなくなってしまう。
けれど、生きれる可能性はできる。闇底で蠍の鬼や孤独に怯えることはない。
これはあたしの自己満足で、我儘。胎児たちからそうしたいと願ったわけじゃない。
あたしの結論にカンダタは否定するわけもなく、馬鹿にもしなかった。やるせなく溜め息を吐く。
「俺たちは脅されてきてるの忘れてないよな?」
もちろん。人質としてケイと光弥が捕えられていて、十手を持ってくるように命じられている。
大人しく従うつもりはないけれど、胚羊水から胎児たちを解放すれば立場はますます不利になる。
あたしは頷いて、目線を落とす。
今も絶えずに子取りが叫ぶ。苦しく、生きたいと叫ぶ悲鳴。
初めて自分が無力だと知った。口先が生意気でもあたしはどこにでもいる女子高校生で、自分の身を守るのが限界。
白糸やら十手やらとなんだかすごいらしいアイテムを持っているけれど、それが使いこなされていない。
これじゃあ、ガラクタと一緒ね。
手放してはいけないと必死になっていたのが馬鹿らしくなってきた。
十手はいつの間にか形を変えていて、傘になっている。
折り畳みなら走りやすかったのに、こんな大きいものだと逃げるのにも邪魔になる。
確か、「持ち主が必要とするものに変形する」だったかしら。
十如十廻之白御霊はそういうものだと光弥が言っていた。あと、ハザマや夢の世界を容易に壊せるとも。
だとしたら、胚羊水そのものも壊せる?
あたしは胎児たちを胚羊水から解放したいと願った。だから、傘に変形した?
「もし、胚羊水がなくなればハザマはどうなるかしら?」
自身の足先を見ていたあたしは目線を上げた。
「胚羊水にいるのは胎児だけじゃない。蠍の鬼や大蛇もいる。そいつらも解放されたらハザマは混乱するわよね?」
「その混乱に生じて胎児たちを輪廻まで連れて行く気か?俺たちも危険だぞ。河原の子たちはともかく、子取りや廃病院の子たちは大人しく従うか?」
「あたしが囮になれば勝手についてくる。蠍の鬼や大蛇はハザマが対応するんじゃない?」
後半の台詞は適当で、カンダタは頭を抱える。
これが無茶な発案だとわかってる。そもそも、胚羊水を失くす方法がない。十手が形を変えても使い物にならないのは確か。
反響していた叫びの声色が変わった。それまでは怒声に近いものだったのに今は痛みに耐える悲鳴になっている。
子取りに何かあったのかと考えてみれば蠍の鬼だとすぐに結論が出た。それを裏付ける金属音が叫び声に混じって聞こえてきた。
そして、叫び声が近くなっている。
あたしとカンダタは急いで近くにあるドアへと走る。カンダタがドアノブを回して、あたしたちは中に隠れる。
あたしの中で生じた迷いを紐解くように話す。
「それって、結局は生きたかったから。泣くのも縋るのも親なしじゃ生きれないから。死んで胚羊水に落ちても、胎児たちは生きたいと叫んでいる。けれど、ここにいても未来はない。永遠に」
廃病院の子は誰も来ない人を待ち続け、河原の子は繰り返される罰を強いられる。キケイは優しさに飢えて、子取りは寂しさに耐える。
終わりがなく、変化もしない。永遠に続く。
「どうしたい?」
「胚羊水の子供たちを輪廻に流したい」
輪廻では記憶や価値観、人格を洗い落として、真っ白な魂に戻してしまう。自分を形作るものがなくなってしまう。
けれど、生きれる可能性はできる。闇底で蠍の鬼や孤独に怯えることはない。
これはあたしの自己満足で、我儘。胎児たちからそうしたいと願ったわけじゃない。
あたしの結論にカンダタは否定するわけもなく、馬鹿にもしなかった。やるせなく溜め息を吐く。
「俺たちは脅されてきてるの忘れてないよな?」
もちろん。人質としてケイと光弥が捕えられていて、十手を持ってくるように命じられている。
大人しく従うつもりはないけれど、胚羊水から胎児たちを解放すれば立場はますます不利になる。
あたしは頷いて、目線を落とす。
今も絶えずに子取りが叫ぶ。苦しく、生きたいと叫ぶ悲鳴。
初めて自分が無力だと知った。口先が生意気でもあたしはどこにでもいる女子高校生で、自分の身を守るのが限界。
白糸やら十手やらとなんだかすごいらしいアイテムを持っているけれど、それが使いこなされていない。
これじゃあ、ガラクタと一緒ね。
手放してはいけないと必死になっていたのが馬鹿らしくなってきた。
十手はいつの間にか形を変えていて、傘になっている。
折り畳みなら走りやすかったのに、こんな大きいものだと逃げるのにも邪魔になる。
確か、「持ち主が必要とするものに変形する」だったかしら。
十如十廻之白御霊はそういうものだと光弥が言っていた。あと、ハザマや夢の世界を容易に壊せるとも。
だとしたら、胚羊水そのものも壊せる?
あたしは胎児たちを胚羊水から解放したいと願った。だから、傘に変形した?
「もし、胚羊水がなくなればハザマはどうなるかしら?」
自身の足先を見ていたあたしは目線を上げた。
「胚羊水にいるのは胎児だけじゃない。蠍の鬼や大蛇もいる。そいつらも解放されたらハザマは混乱するわよね?」
「その混乱に生じて胎児たちを輪廻まで連れて行く気か?俺たちも危険だぞ。河原の子たちはともかく、子取りや廃病院の子たちは大人しく従うか?」
「あたしが囮になれば勝手についてくる。蠍の鬼や大蛇はハザマが対応するんじゃない?」
後半の台詞は適当で、カンダタは頭を抱える。
これが無茶な発案だとわかってる。そもそも、胚羊水を失くす方法がない。十手が形を変えても使い物にならないのは確か。
反響していた叫びの声色が変わった。それまでは怒声に近いものだったのに今は痛みに耐える悲鳴になっている。
子取りに何かあったのかと考えてみれば蠍の鬼だとすぐに結論が出た。それを裏付ける金属音が叫び声に混じって聞こえてきた。
そして、叫び声が近くなっている。
あたしとカンダタは急いで近くにあるドアへと走る。カンダタがドアノブを回して、あたしたちは中に隠れる。
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