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5章 恋焦がれ巡る地獄旅行
永久凍土都市 11
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女性受けする可愛らしい顔は般若に変貌し、カンダタよりも細い腕で奪い取ろうとしする。カンダタも奪われまいと抵抗していた。
簡単に盗られるわけにはいかないと青年の手を抑え、退かせられないかと足で抵抗を示す。カンダタよりも細い体格だというのに青年は退こうとしなかった。寧ろ、抵抗すればするほど青年の力は増した。
青年の血走った目は妥協を許さず、自身の身を保障する三角コーンを手に入れるまで火事場の馬鹿力を緩めようとしない執念が燃えていた。
「っんで、だよっ!」
童顔には似合わない低く太い、絞り出したような声を吐いた。どす黒い色しかない声。呪詛ばかりの声。
それにほんの一滴の涙色が混ざる。その雫はカンダタの頬に落ちた。
「死にたくないっ!何度もっ!死にたくない!」
黒いだけの声色は命乞いになり、震える声で訴える。それはカンダタがよく知っているものだ。第4層で何度も味わった「死」だ。
死にたくないと思うのは当然だ。生体を失い、魂だけになっても、魂はそれを覚えている。その本能が変わるのは何百年も先だ。
第5層の囚人も第6層の囚人も共通点がある。それが「同じ死を繰り返す」ことだ。死にたくないから必死になる。
それが理解できれば襲ってきた童顔の青年にも同情を超えた仲間意識が芽生えそうになる。
その意識がカンダタの手を緩めた。三角コーンがすり抜け、青年に渡る。
その最中、青年の後ろに瑠璃が立っていた。彼女が持っていたのは回転椅子で、それを大きく振り被っていた。
先端のキャスターが青年の耳と項を打つ。
童顔の青年は衝撃に従い、床に転がる。しかし、三角コーンはしっかり持ったままだ。
瑠璃はカンダタを一瞥もせずに横を走り去る。
身体にのしかかった重りがなくなり、軽くなる。三角コーンは諦め、急ぎ立ち上がった。
前には瑠璃の背中があり、視界の隅では清音とケイが走っている。
狂騒から逃れようと室内から廊下へと移る。しかし、そこでも競争が続いていた。
脱出口に向けてにひたすら走る。
どこもかしこも狂騒で色が染まり、安息の場所などないように思えた。
囚人たちの合間を走る瑠璃は必死に安全地帯となる場所を探す。
階段を下っても囚人が転がり、廊下を走っても血と拳が交わる。
そんな中、瑠璃が向かったのは非常階段だった。彼女の声を追うのに必死だったカンダタはそれに異論も賛同も示せない。
入り口に辿り着き、ドアノブを回して狂騒から逃げるようにカンダタたちは中に駆け込んだ。ドアが閉まれば音が遮断され、静寂が蘇る。
狂騒から区切られたこの空間で緊張は解かないまま、カンダタは大きく息を吐き出すと視界の邪魔になっていた仮面を外す。
「悪い、少し欠けた」
あの状況下だった為、仕方ないとはいえ借り物に傷をつけた。
「問題ない」
それだけ言うと仮面を受け取り、黒い空洞を隠すように仮面をつけた。
瑠璃が軽くドアの耳を当て、室内で起きている狂騒を聞く。
「収まりそうにないわね」
「このまま下に行ってみようか。とどまっているよりも動いたほうが良い」
カンダタの案に異論はなく、皆黙って凍結した途端の階段を下る。
簡単に盗られるわけにはいかないと青年の手を抑え、退かせられないかと足で抵抗を示す。カンダタよりも細い体格だというのに青年は退こうとしなかった。寧ろ、抵抗すればするほど青年の力は増した。
青年の血走った目は妥協を許さず、自身の身を保障する三角コーンを手に入れるまで火事場の馬鹿力を緩めようとしない執念が燃えていた。
「っんで、だよっ!」
童顔には似合わない低く太い、絞り出したような声を吐いた。どす黒い色しかない声。呪詛ばかりの声。
それにほんの一滴の涙色が混ざる。その雫はカンダタの頬に落ちた。
「死にたくないっ!何度もっ!死にたくない!」
黒いだけの声色は命乞いになり、震える声で訴える。それはカンダタがよく知っているものだ。第4層で何度も味わった「死」だ。
死にたくないと思うのは当然だ。生体を失い、魂だけになっても、魂はそれを覚えている。その本能が変わるのは何百年も先だ。
第5層の囚人も第6層の囚人も共通点がある。それが「同じ死を繰り返す」ことだ。死にたくないから必死になる。
それが理解できれば襲ってきた童顔の青年にも同情を超えた仲間意識が芽生えそうになる。
その意識がカンダタの手を緩めた。三角コーンがすり抜け、青年に渡る。
その最中、青年の後ろに瑠璃が立っていた。彼女が持っていたのは回転椅子で、それを大きく振り被っていた。
先端のキャスターが青年の耳と項を打つ。
童顔の青年は衝撃に従い、床に転がる。しかし、三角コーンはしっかり持ったままだ。
瑠璃はカンダタを一瞥もせずに横を走り去る。
身体にのしかかった重りがなくなり、軽くなる。三角コーンは諦め、急ぎ立ち上がった。
前には瑠璃の背中があり、視界の隅では清音とケイが走っている。
狂騒から逃れようと室内から廊下へと移る。しかし、そこでも競争が続いていた。
脱出口に向けてにひたすら走る。
どこもかしこも狂騒で色が染まり、安息の場所などないように思えた。
囚人たちの合間を走る瑠璃は必死に安全地帯となる場所を探す。
階段を下っても囚人が転がり、廊下を走っても血と拳が交わる。
そんな中、瑠璃が向かったのは非常階段だった。彼女の声を追うのに必死だったカンダタはそれに異論も賛同も示せない。
入り口に辿り着き、ドアノブを回して狂騒から逃げるようにカンダタたちは中に駆け込んだ。ドアが閉まれば音が遮断され、静寂が蘇る。
狂騒から区切られたこの空間で緊張は解かないまま、カンダタは大きく息を吐き出すと視界の邪魔になっていた仮面を外す。
「悪い、少し欠けた」
あの状況下だった為、仕方ないとはいえ借り物に傷をつけた。
「問題ない」
それだけ言うと仮面を受け取り、黒い空洞を隠すように仮面をつけた。
瑠璃が軽くドアの耳を当て、室内で起きている狂騒を聞く。
「収まりそうにないわね」
「このまま下に行ってみようか。とどまっているよりも動いたほうが良い」
カンダタの案に異論はなく、皆黙って凍結した途端の階段を下る。
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