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5章 恋焦がれ巡る地獄旅行
欲しいもの 2
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身体を投げるように行ったから赤い水面の上に倒れた。服の顔も髪も赤い液体で汚され、妙に粘り気のある感触が気持ち悪い。
そんなものに気を取られる暇はないと自分に一喝して立ち上がろうとした。その前にハクがあたしの腕を取り、引き摺る。
スライドしていく視界の端でケイの姿が鏡に映っていた。
肩に清音を乗せていない。だから両手で柄を握り、構えることができる。
そのポーズのままケイはあたしへと飛び降りようとして、ハクはそれを避けようとあたしを引っ張った。
ケイが鏡を抜けて刀を振り下ろす。
刀の切っ先があたしの頬に赤い線を引いて、熱くほとばしった衝撃が全身を襲った。
ハクは壁際まで寄せて、あたしに向かって吠える。
何をそんなに吠えているのかよくわかっていなかった。全身が熱く、近くにいるハクの声さえ遠い。
わけのわからない熱であたしは立ち上がれずにいた。
静かに佇むケイの脚が見える。あれだけの雄叫びをあげておきながら、彼の怒りは一振りで済んだの?
違和感を覚えつつもなんとか立とうとする。2本の足を立たせないと逃げられない。
胴体を起き上がらせようと両手を床につく。
べしゃりとあたしの身体は赤い水面に落ちた。
おかしい。あたしは起き上がろうとしたのにまた床に落ちた。
何がおかしい?そうか、腕がおかしいのね。左側の動きがおかしいのね。
視線を変えて身体に向ける。
違和感のある左腕は繋がっていなかった。
上腕から指先までが欠損している。鈍い思考は更に混乱して、失くしたスマホを探す感覚で自身の腕を探す。
左腕はケイの足元にあった。取り戻そうと右腕を伸ばす。
その行動をハクが阻止して、包むように抱き寄せる。
腕を取り戻さないと。片腕だけじゃ不便だわ。
鈍色の刀には血痕が残っていて、切断されたばかりの腕からは生暖かい湯気が立っている。
ケイは刀を振って刃に残った血痕を落とす。
腕一本で怒りは収まらない。
刀を構える。背後にある鏡から手が伸びて、柄を握るケイの手に添える。鏡から清音が現れた。
折れている腕は力ずくで向きを直したらしく、右腕はだらりとぶら下がっていた。
清音はケイの怒りを片手だけでコントロールして、彼を一歩退かせる。そして、折れてるはずの腕であたしの右腕を拾った。
恐らく、清音の中を犯す黒蝶が折れた腕を無理に動かしているのだろう。魂を侵食する黒蝶は五感さえも通わせてるみたい。
清音はあたしの左腕を胸に抱えると私の指と自分の指を絡ませてほくそ笑む。
「ずっとこれが欲しかった。あとひとつ」
恋人繋ぎで握る清音は冷たい手の甲に頬を擦り寄せる。
「もういいよ、ケイ」
それを待っていたケイは刀を構え、あたしに近づく。
そんなものに気を取られる暇はないと自分に一喝して立ち上がろうとした。その前にハクがあたしの腕を取り、引き摺る。
スライドしていく視界の端でケイの姿が鏡に映っていた。
肩に清音を乗せていない。だから両手で柄を握り、構えることができる。
そのポーズのままケイはあたしへと飛び降りようとして、ハクはそれを避けようとあたしを引っ張った。
ケイが鏡を抜けて刀を振り下ろす。
刀の切っ先があたしの頬に赤い線を引いて、熱くほとばしった衝撃が全身を襲った。
ハクは壁際まで寄せて、あたしに向かって吠える。
何をそんなに吠えているのかよくわかっていなかった。全身が熱く、近くにいるハクの声さえ遠い。
わけのわからない熱であたしは立ち上がれずにいた。
静かに佇むケイの脚が見える。あれだけの雄叫びをあげておきながら、彼の怒りは一振りで済んだの?
違和感を覚えつつもなんとか立とうとする。2本の足を立たせないと逃げられない。
胴体を起き上がらせようと両手を床につく。
べしゃりとあたしの身体は赤い水面に落ちた。
おかしい。あたしは起き上がろうとしたのにまた床に落ちた。
何がおかしい?そうか、腕がおかしいのね。左側の動きがおかしいのね。
視線を変えて身体に向ける。
違和感のある左腕は繋がっていなかった。
上腕から指先までが欠損している。鈍い思考は更に混乱して、失くしたスマホを探す感覚で自身の腕を探す。
左腕はケイの足元にあった。取り戻そうと右腕を伸ばす。
その行動をハクが阻止して、包むように抱き寄せる。
腕を取り戻さないと。片腕だけじゃ不便だわ。
鈍色の刀には血痕が残っていて、切断されたばかりの腕からは生暖かい湯気が立っている。
ケイは刀を振って刃に残った血痕を落とす。
腕一本で怒りは収まらない。
刀を構える。背後にある鏡から手が伸びて、柄を握るケイの手に添える。鏡から清音が現れた。
折れている腕は力ずくで向きを直したらしく、右腕はだらりとぶら下がっていた。
清音はケイの怒りを片手だけでコントロールして、彼を一歩退かせる。そして、折れてるはずの腕であたしの右腕を拾った。
恐らく、清音の中を犯す黒蝶が折れた腕を無理に動かしているのだろう。魂を侵食する黒蝶は五感さえも通わせてるみたい。
清音はあたしの左腕を胸に抱えると私の指と自分の指を絡ませてほくそ笑む。
「ずっとこれが欲しかった。あとひとつ」
恋人繋ぎで握る清音は冷たい手の甲に頬を擦り寄せる。
「もういいよ、ケイ」
それを待っていたケイは刀を構え、あたしに近づく。
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