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6章 盤上の外で蜘蛛喰い蝶は笑う
孤独な家の中 8
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どうせ死ぬなら春の陽だまりに包まれて死にたい。そんな望みも叶えてくれないのが現実だ。
玄関に立つ。そして考える。
開かない扉以外は全て回った。各部屋で死にそして、カンダタ以外の人がいないと確認した。
瑠璃たちがいないのだろうか、次の層に入るのか。
瑠璃はまだ追われているのか、既に捕まったのか。
家の中を回っているうちにそれなりに時間は経過している。その間、誰もカンダタに接触してこなかった。
なら、蝶男の優先はカンダタではなく瑠璃なのだろう。
カンダタがやるべきことは一刻も早く第7層の脱出だ。
塊人は彼らだけしか知らない抜け道を使っている。それを見つければいい。
それはどこにあるのかと脳内で問えばわからないと回答がくる。
どの部屋にもそれらしきものはなかった。
囚人が使えないようにするものだから簡単には見つからない。部屋に入ってすぐ死ぬを繰り返しただけでは探したとは言えない。
改めて部屋を回ってみようか。だとすればどこから回るか。
深く考えず、寝室から行くことにした。
2階に上がり、寝室の扉を開ける前に深呼吸をする。流されるな、と心に刻み、意気込む。
寝室の扉を開けてれば、艶やかな紅柘榴がいる。
紅柘榴が振り返り、微笑む。上目遣いで首を傾げる仕草でさえ、胸をつかまれそうだ。
なるべく、紅柘榴を視界から外し、寝台を避けて奥へ向かう。
「来てくれないの?」
窓際に置かれた箪笥の中を漁り、飾られた額縁の裏を除く。
「寂しいよ。こっち見て」
耳に入ってくるのは雑音だ。あれは紅柘榴ではないのだ。頭の中でその言葉を繰り返す。
箪笥、壁に怪しいものはない。
「ねぇ、お願い」
床に這い、寝台の下を見る。何もない。
簡単に見つかるものではない。目で見てわかるような単純なものではないはずだ。
「ねぇ、て」
痺れを切らした紅柘榴が床に這ういるカンダタに手を伸ばす。指先が項に触れる。
それを軽く払い、立ち上がる。
寝台に居座り、身体をくねらせる紅柘榴はカンダタを誘っている。
その目つきも仕草も紅柘榴のものではない。カンダタの前にいるのは偽物なのだから当然だ。頭でも心でも理解している。
第7層がそうしているのか。それともカンダタが気絶している間に魂のプログラムでもされたのか。
顳顬(こめかみ)に触れる。プラグを刺された跡はない。
突拍子な考えだ。それをする意味がわからない。
見つかりたくないものを、盗まれたくないものを隠すとしたらどこを選ぶだろうか。
目の前の紅柘榴は寝台の上で座ったままカンダタの腰に巻き着く。それを冷めた目でカンダタは見下ろしていた。
見つけにくい場所についていくつか思い浮かべたが、すぐに考え方を変えた。それよりも人が目を背けたい場所に隠すのではないか。性格の悪い塊人ならあり得そうだ。
ひとつの結論が出た。感情を消し、無心になる。
紅柘榴の両肩を掴み、寝台に押し倒す。
無反応だった相手が突然馬乗りになり、触れてくる。紅柘榴は恍惚とし、「嬉しい」と呟く。その厭らしい笑顔も本人のものと違う。
紅柘榴の輪郭をなぞり、首筋から胸元まで白い柔らかな肌をじっくり味わうように滑らせる。熱い吐息が紅柘榴の口から漏れる。腕を肩を衣服の上から肉の弾力を確かめる。
彼女は待ち切れないと指を絡ませ、握ってくる。その手は熱かった。
つられてカンダタも熱い息が漏れそうになるも唾と共に飲み込んだ。
無心無心と頭にこの2文字を繰り返し、心臓を強く打つ欲情を消す。
自由な片手でたわわな胸を軽く触れる。
「直接触って」
もどかしいと焦れた声色で訴えてくる。
握られた手を強く握り返してしまう。カンダタの項がちりちりと疼きを感じた。
その感覚で惹かれてしまう疑惑が解消された。彼女を求めているのはカンダタではなく、カンダタの中にいる黒蝶だ。黒蝶が渇き、欲情に似たものでカンダタを動かしている。
それがわかったとしても対策のしようがない。黒蝶の本能に忠実になってしまう。蝶男には逆らえないようにする為だろう。
玄関に立つ。そして考える。
開かない扉以外は全て回った。各部屋で死にそして、カンダタ以外の人がいないと確認した。
瑠璃たちがいないのだろうか、次の層に入るのか。
瑠璃はまだ追われているのか、既に捕まったのか。
家の中を回っているうちにそれなりに時間は経過している。その間、誰もカンダタに接触してこなかった。
なら、蝶男の優先はカンダタではなく瑠璃なのだろう。
カンダタがやるべきことは一刻も早く第7層の脱出だ。
塊人は彼らだけしか知らない抜け道を使っている。それを見つければいい。
それはどこにあるのかと脳内で問えばわからないと回答がくる。
どの部屋にもそれらしきものはなかった。
囚人が使えないようにするものだから簡単には見つからない。部屋に入ってすぐ死ぬを繰り返しただけでは探したとは言えない。
改めて部屋を回ってみようか。だとすればどこから回るか。
深く考えず、寝室から行くことにした。
2階に上がり、寝室の扉を開ける前に深呼吸をする。流されるな、と心に刻み、意気込む。
寝室の扉を開けてれば、艶やかな紅柘榴がいる。
紅柘榴が振り返り、微笑む。上目遣いで首を傾げる仕草でさえ、胸をつかまれそうだ。
なるべく、紅柘榴を視界から外し、寝台を避けて奥へ向かう。
「来てくれないの?」
窓際に置かれた箪笥の中を漁り、飾られた額縁の裏を除く。
「寂しいよ。こっち見て」
耳に入ってくるのは雑音だ。あれは紅柘榴ではないのだ。頭の中でその言葉を繰り返す。
箪笥、壁に怪しいものはない。
「ねぇ、お願い」
床に這い、寝台の下を見る。何もない。
簡単に見つかるものではない。目で見てわかるような単純なものではないはずだ。
「ねぇ、て」
痺れを切らした紅柘榴が床に這ういるカンダタに手を伸ばす。指先が項に触れる。
それを軽く払い、立ち上がる。
寝台に居座り、身体をくねらせる紅柘榴はカンダタを誘っている。
その目つきも仕草も紅柘榴のものではない。カンダタの前にいるのは偽物なのだから当然だ。頭でも心でも理解している。
第7層がそうしているのか。それともカンダタが気絶している間に魂のプログラムでもされたのか。
顳顬(こめかみ)に触れる。プラグを刺された跡はない。
突拍子な考えだ。それをする意味がわからない。
見つかりたくないものを、盗まれたくないものを隠すとしたらどこを選ぶだろうか。
目の前の紅柘榴は寝台の上で座ったままカンダタの腰に巻き着く。それを冷めた目でカンダタは見下ろしていた。
見つけにくい場所についていくつか思い浮かべたが、すぐに考え方を変えた。それよりも人が目を背けたい場所に隠すのではないか。性格の悪い塊人ならあり得そうだ。
ひとつの結論が出た。感情を消し、無心になる。
紅柘榴の両肩を掴み、寝台に押し倒す。
無反応だった相手が突然馬乗りになり、触れてくる。紅柘榴は恍惚とし、「嬉しい」と呟く。その厭らしい笑顔も本人のものと違う。
紅柘榴の輪郭をなぞり、首筋から胸元まで白い柔らかな肌をじっくり味わうように滑らせる。熱い吐息が紅柘榴の口から漏れる。腕を肩を衣服の上から肉の弾力を確かめる。
彼女は待ち切れないと指を絡ませ、握ってくる。その手は熱かった。
つられてカンダタも熱い息が漏れそうになるも唾と共に飲み込んだ。
無心無心と頭にこの2文字を繰り返し、心臓を強く打つ欲情を消す。
自由な片手でたわわな胸を軽く触れる。
「直接触って」
もどかしいと焦れた声色で訴えてくる。
握られた手を強く握り返してしまう。カンダタの項がちりちりと疼きを感じた。
その感覚で惹かれてしまう疑惑が解消された。彼女を求めているのはカンダタではなく、カンダタの中にいる黒蝶だ。黒蝶が渇き、欲情に似たものでカンダタを動かしている。
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