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6章 盤上の外で蜘蛛喰い蝶は笑う
孤独な家の中 11
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身体を丸めてからしばらく時間が経つ。震えがなくなった代わりに強打した頭が痛い。
カンダタは立ち上がり、すべての段差を降りた。次の部屋は浴室だ。
浴室のアンモニア臭は毒性があるので鼻口を袖の布で覆い、毒が身体を犯す前に決着をつける。現実的ではない。確実に鬼になれば両手は必要になり、呼吸も止めてはいられない。
そういえば脱衣所アンモニア臭がしなかった。そこまで届いていないのだろう。そこまで連れて来れないだろうか。
浅い呼吸を繰り返しながら脱衣所に踏み入れ、浴室に入る寸前に呼吸を止めた。紅柘榴が潜む浴槽を覗く。
ここから紅柘榴が上がってくるのが遅い。どろどろとしたヘドロで満たされている浴槽の中にカンダタは手を突っ込ませた。
人の首らしきものを手探りで捕え、持ち上げる。狭い浴槽の中で波を荒くたたせ、紅柘榴が現れた。
目と口がない彼女の顔はカンダタの行動に怒りを表しており、声は鬼が出す金切り声になっていた。
首から手を離し、脱衣所まで走る。
アンモニア臭が薄くなっており、一時的に止めていた呼吸を再開させる。
廊下に出る扉の一歩手前で立ち止まり、暗闇に隠れた浴室の奥を睨む。深淵の入り口から黒い鬼がカンダタに向かって飛び出してきた。
背後のドアノブを回し、後退しながら鬼の突進を避ける。
廊下へと飛び出た鬼は突き出したままの鉤爪を仕舞い忘れており、壁に深く刺さった。その上、激しく頭部をぶつけ目眩を起こしていた。
回る視界を収めようと頭を振るい、視点は一つに定まりはっきりとした金目はカンダタを睨む。
壁から鉤爪を抜こうとするが、深く刺さっているせいか思うようにいかない。
カンダタは身を構え、吠えたてる鬼に向かって前進する。吠えて上下する顎を見極め、素早く大口に手を入れ、内側から顎を抑える。上側の犬歯を掴み、精一杯の筋力を込めれば口角を境目に肉が2つに裂かれる。
白い壁紙と茶色い廊下に血飛沫が飾られる。単調な白や茶色も鮮やかな赤も暗闇に隠れてしまう。
裂け目は胸部まで到達していた。神経が切断されても両腕は痙攣しながら壁から鉤爪を抜き、鋭い刃が向けられるが、途中で力尽きると鬼の前身はカンダタへと寄りかかる。
だらりとした巨大な巨躯を床に倒す。
裂いたに肉から紫色の珠が転がり出た。刻まれていた文字は「香」だ。
鬼の残骸を跨げばその周りに溜まった血を踏んでしまう。それを拭おうとはせず、カンダタは片方だけの足跡を残しながら玄関に一番近い扉を開く。
部屋の中は暗いまま何も見えない。例の人形もないように見える。
明かりのない絶望した日常の絵図のような部屋だ。
あの人形も鬼になるのだろうか。動いていたのは1体だけではなかった。5体以上はいた。流石に3体以上は対処できそうにない。
浴室のように廊下に誘い出してみるか。あの暗闇に包まれているよりは勝機はあるだろう。
暗闇へと3本、4歩、8歩と進む。何も触れない。ぶつからない。9歩目で歩調がゆっくりだと気付く。
恐れを振り切るように腰を低くし、走る。狭い部屋だ。走れば壁にぶつかる。走りきったその先で壁以外のものに触れた。壁から生えたような突起物。これはドアノブだ。暗闇の部屋はもう一部屋続いているのだ。
扉を開けようとドアノブを掴む。その背後から人形の手がカンダタの口を塞がれた。
扉から剥がされるように引き寄せられた。ドアノブへと手を伸ばそうとしたが、その腕を別の人形が掴み、また別の人形が髪を鷲掴んだ。
これは死ぬ。暗闇に紛れ、襲いかかってくる人形の手がカンダタの身体に強く触れる。軽いゴム製だとしても何体もの人形が上に乗りかかればあっという間に圧死だ。
カンダタは立ち上がり、すべての段差を降りた。次の部屋は浴室だ。
浴室のアンモニア臭は毒性があるので鼻口を袖の布で覆い、毒が身体を犯す前に決着をつける。現実的ではない。確実に鬼になれば両手は必要になり、呼吸も止めてはいられない。
そういえば脱衣所アンモニア臭がしなかった。そこまで届いていないのだろう。そこまで連れて来れないだろうか。
浅い呼吸を繰り返しながら脱衣所に踏み入れ、浴室に入る寸前に呼吸を止めた。紅柘榴が潜む浴槽を覗く。
ここから紅柘榴が上がってくるのが遅い。どろどろとしたヘドロで満たされている浴槽の中にカンダタは手を突っ込ませた。
人の首らしきものを手探りで捕え、持ち上げる。狭い浴槽の中で波を荒くたたせ、紅柘榴が現れた。
目と口がない彼女の顔はカンダタの行動に怒りを表しており、声は鬼が出す金切り声になっていた。
首から手を離し、脱衣所まで走る。
アンモニア臭が薄くなっており、一時的に止めていた呼吸を再開させる。
廊下に出る扉の一歩手前で立ち止まり、暗闇に隠れた浴室の奥を睨む。深淵の入り口から黒い鬼がカンダタに向かって飛び出してきた。
背後のドアノブを回し、後退しながら鬼の突進を避ける。
廊下へと飛び出た鬼は突き出したままの鉤爪を仕舞い忘れており、壁に深く刺さった。その上、激しく頭部をぶつけ目眩を起こしていた。
回る視界を収めようと頭を振るい、視点は一つに定まりはっきりとした金目はカンダタを睨む。
壁から鉤爪を抜こうとするが、深く刺さっているせいか思うようにいかない。
カンダタは身を構え、吠えたてる鬼に向かって前進する。吠えて上下する顎を見極め、素早く大口に手を入れ、内側から顎を抑える。上側の犬歯を掴み、精一杯の筋力を込めれば口角を境目に肉が2つに裂かれる。
白い壁紙と茶色い廊下に血飛沫が飾られる。単調な白や茶色も鮮やかな赤も暗闇に隠れてしまう。
裂け目は胸部まで到達していた。神経が切断されても両腕は痙攣しながら壁から鉤爪を抜き、鋭い刃が向けられるが、途中で力尽きると鬼の前身はカンダタへと寄りかかる。
だらりとした巨大な巨躯を床に倒す。
裂いたに肉から紫色の珠が転がり出た。刻まれていた文字は「香」だ。
鬼の残骸を跨げばその周りに溜まった血を踏んでしまう。それを拭おうとはせず、カンダタは片方だけの足跡を残しながら玄関に一番近い扉を開く。
部屋の中は暗いまま何も見えない。例の人形もないように見える。
明かりのない絶望した日常の絵図のような部屋だ。
あの人形も鬼になるのだろうか。動いていたのは1体だけではなかった。5体以上はいた。流石に3体以上は対処できそうにない。
浴室のように廊下に誘い出してみるか。あの暗闇に包まれているよりは勝機はあるだろう。
暗闇へと3本、4歩、8歩と進む。何も触れない。ぶつからない。9歩目で歩調がゆっくりだと気付く。
恐れを振り切るように腰を低くし、走る。狭い部屋だ。走れば壁にぶつかる。走りきったその先で壁以外のものに触れた。壁から生えたような突起物。これはドアノブだ。暗闇の部屋はもう一部屋続いているのだ。
扉を開けようとドアノブを掴む。その背後から人形の手がカンダタの口を塞がれた。
扉から剥がされるように引き寄せられた。ドアノブへと手を伸ばそうとしたが、その腕を別の人形が掴み、また別の人形が髪を鷲掴んだ。
これは死ぬ。暗闇に紛れ、襲いかかってくる人形の手がカンダタの身体に強く触れる。軽いゴム製だとしても何体もの人形が上に乗りかかればあっという間に圧死だ。
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