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6章 盤上の外で蜘蛛喰い蝶は笑う
改変 10
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清音は少年から意識を逸らす。刺してくる視線を感じなくなると少年は顔を上げられた。
「嘘でしょ」
少年に向けた同じ声色で光弥に言い放つ。すぐに嘘だとバレても光弥は動揺せず、静かな面持ちであった。
あれは赤眼の少年でも気付ける嘘だ。
駒を使うとき、あるいは呼び出しがある時、蝶男は黒蝶を通じて指示を出す。人づてに伝言するはずがないのだ。
すぐにバレてしまうような嘘を口走ったのは嘘を考える余裕がなかったからだろう。
先程までの状況を含めて考えれば行き着く答えは大体同じだ。
「あぁ、なるほどね。庇うんだ。情けなくて惨めで薄汚いから同情しちゃったんだ」
機嫌の悪さは回復され、清音は嘲笑する。
「清音が毎回うるさいから遠回しに言っただけ」
清音の嘲笑もどこ吹く風で光弥は軽く笑いながら肩を竦める。
「はっきり言わなきゃわかんないんだもんなぁ」
馬鹿にしていたつもりが馬鹿にされたと清音のプライドに火をつけた。
清音が顔を歪ませ、怒りまかせの場所をしようと口を開く。
暴力的な感情は一瞬にして萎んだ。光弥の後ろに2体の白鬼がいたからだ。
「どうかした?」
おどけて首を傾げて見せるの確信のある笑みだ。今の清音には鬼もケイもいない。爆発的な感情を抑えたのは自分を守ってくれる存在がおらず、逆に光弥には攻撃の術がある。
不発した感情は行き場がなく、整理もできずに清音は短く歯軋りをした。その場に留まるのも恐れ、踵を返して通路の闇へと消える。
白鬼を連れてくるのか蝶男に泣き寝入りでもしに行くのか。どちらにせよ姿がなくなり、少年はやっと息ができる安堵を得た。
さっきまで息が止まっていたのではないというくらいの深い深い深呼吸。手の震えが抑えられなくなり、自分を守るように更に身を縮ませた。
光弥は隣に座る。話しかけたり励まそうとはしない。黙って隣にいるだけだ。
シャッターに目を向けず、自分の身体を見つめ深呼吸を繰り返しながら落ち着くのを待った。
少年は光弥を見つめる。彼が気にしている手の甲には青痣がある。子供部屋に入る前にはなかったものだ。
「ありがと」
早口で小さく光弥に目も合わせずにを言う。あまりにも小さい声だったので届いているかも怪しかった。小さな声は青痣から少年へと向けさせた。
「あいつ、うるさいんだよ。俺が邪魔だと思ったからどかした」
あくまで自分のためだと言い聞かせる。あぁそうかと少年はがっかりした。
ヒーローのように憧れを一方的に抱いたとしても光弥にとっては道端の石にしか思えていないのだ。
自己羞恥に少年は深く項垂れる。頭が下がると目に入るのは光弥の青アザ。子供部屋から出た後にできたのだから作ったのは渡だ。
「痛い?」
この問いかけにもやはり少年は目を合わせない。青アザを見たままだ。
光弥も少年に目を合わせなかった。「痛い」とだけ答える。
「平気だよ。今までの傷と比べれば小さい。でも誇らしい傷だ」
青痣を擦りながら話す。光弥は僅かに笑っている。少年には理解が難しい言葉選びだった。
「気付いたんだ。絶対に勝てないと思っていた神様は大したものじゃなかったんだって」
理解できない少年の為だろう。光弥は言葉を続ける。
「気付きって何気ないものに見えて実は偉大なんだ。だからこれは誇りのある傷なんだ」
でもやはり、説明をしてもらっても今一理解はできない。
語っている間に光弥の口調には熱が入り、終わったときにはふ、と息を吐き出した。
「やっと帰れる」
吐いた息とともに出た安堵の台詞は光弥の独り言だ。誰も傷つけない言葉なのに少年の心にちくりと棘が刺す。
光弥には帰る場所があり、「おかえり」と言ってくれる人がいる。
それを考えたら「いいな」と純粋に思ったら棘が刺さった。
心に刺さったものがあったとしてもそれを光弥に言うのは場違いであるし、少年も不安不満を口にしたくない。心に棘を刺したまま少年は口を噤んだ。
しばらくの間、光弥と少年は会話もなく通路の片隅で小さく座っていた。少年はシャッターを見つめ、光弥は青痣を見つめていた。
「嘘でしょ」
少年に向けた同じ声色で光弥に言い放つ。すぐに嘘だとバレても光弥は動揺せず、静かな面持ちであった。
あれは赤眼の少年でも気付ける嘘だ。
駒を使うとき、あるいは呼び出しがある時、蝶男は黒蝶を通じて指示を出す。人づてに伝言するはずがないのだ。
すぐにバレてしまうような嘘を口走ったのは嘘を考える余裕がなかったからだろう。
先程までの状況を含めて考えれば行き着く答えは大体同じだ。
「あぁ、なるほどね。庇うんだ。情けなくて惨めで薄汚いから同情しちゃったんだ」
機嫌の悪さは回復され、清音は嘲笑する。
「清音が毎回うるさいから遠回しに言っただけ」
清音の嘲笑もどこ吹く風で光弥は軽く笑いながら肩を竦める。
「はっきり言わなきゃわかんないんだもんなぁ」
馬鹿にしていたつもりが馬鹿にされたと清音のプライドに火をつけた。
清音が顔を歪ませ、怒りまかせの場所をしようと口を開く。
暴力的な感情は一瞬にして萎んだ。光弥の後ろに2体の白鬼がいたからだ。
「どうかした?」
おどけて首を傾げて見せるの確信のある笑みだ。今の清音には鬼もケイもいない。爆発的な感情を抑えたのは自分を守ってくれる存在がおらず、逆に光弥には攻撃の術がある。
不発した感情は行き場がなく、整理もできずに清音は短く歯軋りをした。その場に留まるのも恐れ、踵を返して通路の闇へと消える。
白鬼を連れてくるのか蝶男に泣き寝入りでもしに行くのか。どちらにせよ姿がなくなり、少年はやっと息ができる安堵を得た。
さっきまで息が止まっていたのではないというくらいの深い深い深呼吸。手の震えが抑えられなくなり、自分を守るように更に身を縮ませた。
光弥は隣に座る。話しかけたり励まそうとはしない。黙って隣にいるだけだ。
シャッターに目を向けず、自分の身体を見つめ深呼吸を繰り返しながら落ち着くのを待った。
少年は光弥を見つめる。彼が気にしている手の甲には青痣がある。子供部屋に入る前にはなかったものだ。
「ありがと」
早口で小さく光弥に目も合わせずにを言う。あまりにも小さい声だったので届いているかも怪しかった。小さな声は青痣から少年へと向けさせた。
「あいつ、うるさいんだよ。俺が邪魔だと思ったからどかした」
あくまで自分のためだと言い聞かせる。あぁそうかと少年はがっかりした。
ヒーローのように憧れを一方的に抱いたとしても光弥にとっては道端の石にしか思えていないのだ。
自己羞恥に少年は深く項垂れる。頭が下がると目に入るのは光弥の青アザ。子供部屋から出た後にできたのだから作ったのは渡だ。
「痛い?」
この問いかけにもやはり少年は目を合わせない。青アザを見たままだ。
光弥も少年に目を合わせなかった。「痛い」とだけ答える。
「平気だよ。今までの傷と比べれば小さい。でも誇らしい傷だ」
青痣を擦りながら話す。光弥は僅かに笑っている。少年には理解が難しい言葉選びだった。
「気付いたんだ。絶対に勝てないと思っていた神様は大したものじゃなかったんだって」
理解できない少年の為だろう。光弥は言葉を続ける。
「気付きって何気ないものに見えて実は偉大なんだ。だからこれは誇りのある傷なんだ」
でもやはり、説明をしてもらっても今一理解はできない。
語っている間に光弥の口調には熱が入り、終わったときにはふ、と息を吐き出した。
「やっと帰れる」
吐いた息とともに出た安堵の台詞は光弥の独り言だ。誰も傷つけない言葉なのに少年の心にちくりと棘が刺す。
光弥には帰る場所があり、「おかえり」と言ってくれる人がいる。
それを考えたら「いいな」と純粋に思ったら棘が刺さった。
心に刺さったものがあったとしてもそれを光弥に言うのは場違いであるし、少年も不安不満を口にしたくない。心に棘を刺したまま少年は口を噤んだ。
しばらくの間、光弥と少年は会話もなく通路の片隅で小さく座っていた。少年はシャッターを見つめ、光弥は青痣を見つめていた。
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