604 / 644
7章 赤い珠が映す空想未来
命の重さ 5
しおりを挟む
蝶男は彼を通して私を監視している。私が逃げようとしたり、すぐに捕まえるはず。
鬼にはなれない。子にどんな影響があるかわからないし、鬼になって塀を超えたとしても身重で逃避行はできない。
蝶男が出産を待っているのはこの子を何かしらに利用する為だ。
蝶男の企みを知らない。これまで知ろうともしなかった。録なものではないとわかっていたからだ。けど、これだけは許さないし、させない。
出産した直後。逃げられる機会はそこだけだ。
出産した後の母体は疲労が酷いと乳母が話していた。でも、鬼になれば身体も回復するはず。
となれば、塀を出た後の食料などの荷物が必要になる。
白蓮と一緒に夜逃げした時、白蓮は何を準備していたか。
食料と火打石と、円形の金属も必要だと言っていた気がする。
外のことは何も知らない。外で生きるのに必要なものは知らない。
とりあえず、食料は絶対必要になる。
私は彼ばかり家事をやって暇だからと料理ぐらいはさせてほしいと頼み、料理をする傍ら日持ちしそうな食べ物をこっそり持ち出した。
たびに必要になるものを思いつきで持ち出して、昔猫たちがいた軒下の隠れ家に仕舞った。
出産したら鬼になって子を抱える。それから隠した荷物を回収し、無理そうなら諦める。
外は怖いものだと乳母に教えられて育った。実際にそうだった。外に出れば人は私を怖がって攻撃する。
それは私が鬼になったのが原因だった。鬼を見て人は怖がる。
私が鬼にならなければ彼らが襲ってくることもない。外の人よりも怖いのは蝶男だ。奴がこの世の物よりあの世の物よりも怖い。
腹は大きくなって起きるのも立つのも寝るのも歩くのも大変だ。
食事だけは自分で用意するといっても少し歩くと息切れをしてしまう。
子供が腹の中を蹴り回ってその痛みで蹲る。そうすると死んだ男が手を差し伸べて私を立ち上がらせようとするが、邪魔だと言うように払い退ける。
腹を抱えて自分で立ち上がり、歩くとまた子供が元気に動く。
内臓や骨が響いて、これがまた痛かったがそれが堪らなく嬉しかった。
生きてる、元気だと知らせる動きだ。
「元気ね。私がいるから寂しくないよ」
痛みで顔が歪む。
何とか囲炉裏について腰を下ろす。少しは楽になったが、子供は元気なままだ。
「そろそろ眠ってくれないかな」
お腹に手を当ててあやすようにぽんぽん叩く。
それでも子供は元気が良い。
「退屈なら昔話でもしましょうか。あなたの父親の話よ」
子供を揺らすように身体を揺らして白蓮との出会いを語る。話しているうちに子供は静かに眠りについた。
春を告げる小鳥がさえずる。
その時が近づいているのだとわかった。
心待ちにしているのか、恐れているのか、私の感情なのに判断できなかった。
感情の整理は追いついていない。でも、子供に会いたいその気持ちが一番強いのは確かだった。
腹を蹴って落ち着かない。白蓮と私との思い出は語り尽くしたから兄から聞いたおとぎ話や白蓮から聞いた外の話をした。
生まれてくる子には笑って欲しいからなるべく楽しい話をした。
私とこの子で外で生きていけるか不安が強い。私は外の生き方を知らない。
そういう不安はなるべく心の奥底に仕舞い語り続けた。
鬼にはなれない。子にどんな影響があるかわからないし、鬼になって塀を超えたとしても身重で逃避行はできない。
蝶男が出産を待っているのはこの子を何かしらに利用する為だ。
蝶男の企みを知らない。これまで知ろうともしなかった。録なものではないとわかっていたからだ。けど、これだけは許さないし、させない。
出産した直後。逃げられる機会はそこだけだ。
出産した後の母体は疲労が酷いと乳母が話していた。でも、鬼になれば身体も回復するはず。
となれば、塀を出た後の食料などの荷物が必要になる。
白蓮と一緒に夜逃げした時、白蓮は何を準備していたか。
食料と火打石と、円形の金属も必要だと言っていた気がする。
外のことは何も知らない。外で生きるのに必要なものは知らない。
とりあえず、食料は絶対必要になる。
私は彼ばかり家事をやって暇だからと料理ぐらいはさせてほしいと頼み、料理をする傍ら日持ちしそうな食べ物をこっそり持ち出した。
たびに必要になるものを思いつきで持ち出して、昔猫たちがいた軒下の隠れ家に仕舞った。
出産したら鬼になって子を抱える。それから隠した荷物を回収し、無理そうなら諦める。
外は怖いものだと乳母に教えられて育った。実際にそうだった。外に出れば人は私を怖がって攻撃する。
それは私が鬼になったのが原因だった。鬼を見て人は怖がる。
私が鬼にならなければ彼らが襲ってくることもない。外の人よりも怖いのは蝶男だ。奴がこの世の物よりあの世の物よりも怖い。
腹は大きくなって起きるのも立つのも寝るのも歩くのも大変だ。
食事だけは自分で用意するといっても少し歩くと息切れをしてしまう。
子供が腹の中を蹴り回ってその痛みで蹲る。そうすると死んだ男が手を差し伸べて私を立ち上がらせようとするが、邪魔だと言うように払い退ける。
腹を抱えて自分で立ち上がり、歩くとまた子供が元気に動く。
内臓や骨が響いて、これがまた痛かったがそれが堪らなく嬉しかった。
生きてる、元気だと知らせる動きだ。
「元気ね。私がいるから寂しくないよ」
痛みで顔が歪む。
何とか囲炉裏について腰を下ろす。少しは楽になったが、子供は元気なままだ。
「そろそろ眠ってくれないかな」
お腹に手を当ててあやすようにぽんぽん叩く。
それでも子供は元気が良い。
「退屈なら昔話でもしましょうか。あなたの父親の話よ」
子供を揺らすように身体を揺らして白蓮との出会いを語る。話しているうちに子供は静かに眠りについた。
春を告げる小鳥がさえずる。
その時が近づいているのだとわかった。
心待ちにしているのか、恐れているのか、私の感情なのに判断できなかった。
感情の整理は追いついていない。でも、子供に会いたいその気持ちが一番強いのは確かだった。
腹を蹴って落ち着かない。白蓮と私との思い出は語り尽くしたから兄から聞いたおとぎ話や白蓮から聞いた外の話をした。
生まれてくる子には笑って欲しいからなるべく楽しい話をした。
私とこの子で外で生きていけるか不安が強い。私は外の生き方を知らない。
そういう不安はなるべく心の奥底に仕舞い語り続けた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる