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7章 赤い珠が映す空想未来
空想未来に向かって 6
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危機が来る恐怖心から目を覚ました。
そこは見られた宿の部屋であり、瑠璃色の少女も歯車もなかった。
目に見えない耳に聞こえないのに謎の危機感が紅玉に迫っている気配がする。
謎の正体を見破ろうと目を凝らし、耳を澄ます。
部屋に侵入した月明かりがより濃い影を作る。紅玉から伸びた影が動いてもいないのに揺らいで変形した。
群がった芋虫のような影は形を変え、羽を生やす。ついに影は立体を持ち、蝶の群れは紅玉へと向かってきた。
咄嗟に目を瞑り、身構えた。蝶の群れは紅玉を包んだがその感触はなく、紅玉自身も身体に変化はなかった。
しかし、危機の正体はわかった。これはまずい。早く影弥に伝えないと。
「ただいま、こう」
ちょうど、影弥が帰ってきた。
寝汗をかき、恐怖で引き攣る紅玉の顔に影弥も伝わってきたのだろう。
「蝶男が来る」
なんの説明もなしに結論だけをつけた。
それだけでは説明不足だと紅玉は重々承知であったが、影弥には結論だけで充分だった。
紅玉が見たのは宵闇の町に飛ぶいくつもの黒蝶が紅玉と影弥を探す風景だった。
「なんで蝶男が、私たちばれたのかな」
「赤眼の男と接触したのが原因だろうが、まだ確信が持てないな。動きが慎重だからね」
焦る紅玉に影弥は落ち着くよう言い聞かせた。
「この町から離れよ。一時的にね」
「駄目」
見つかりそうになったら逃げる隠れる。それが影弥が持つ正解であったが、紅玉は違うと否定する。
「私たちが離れたら赤眼の男との接点がなくなる」
そしたら妹が救えない。
「でもこのままだと私たちは見つかる」
「だから離れよ」
「駄目だってば!」
つい怒鳴ってしまった。我儘でもないその怒りは影弥が初めて対面するもので言葉が詰まった。何を言えば落ち着くのかわからなくなり、思考が止まる。
対して紅玉はひたすら考えていた。
「どうすればいいどうすればいい」
不安と恐怖と闘いながら頭の中をぐるぐると回転させた。
多分まだ私たちの存在に確信を持てていない。だから黒蝶を使って探して確信を得ようとしている。
なら、どうして怪しんでいるのだろう。
影弥は赤眼の男が原因と言っていた。多分、監視されてる。
でも、それはそれでまずいんじゃない?
だって赤眼の男には妹を助けてもらわないといけない。
私と影弥だと障害が多すぎるもの。
「現状のままでいいんだ」
渦のように回っていた思考をそのまま口にした。
思考が止まっていた影弥は紅玉の言葉を読み取れなかった。
「蝶男は怪しんでるだけなんだよね?」
思考停止した景弥にわかりやすいように紅玉は語りかける。影弥は言葉をゆっくり飲み込んでぎこちなく頷いた。
「そうだね。確信があるなら偵察することはないからね」
しかし蝶男のこの動きは紅玉たちとは関係がない。別にある。
「蝶男はさ、私たちの存在には気づいていない」
「どうして」
「だって私たちは蝶男に見つからないように慎重になっていたんだもの。理由は別にあるのよ。カンダタだよ」
「かんだ?」
「彼が動いたから蝶男が動いたの。あの黒蝶は私たちじゃなくカンダタを監視する為のものよ」
きっとそうだ。紅玉は確信を持っていた。しかし、影弥は怪訝そうにしていた。
「かんだた、とは」
影弥の問いに紅玉はやっと気づいた。無意識に知らない名前を口にしていた。
カンダタ?誰?
そう自分に問いかけた。
赤眼の男の呼び名よ。
紅玉の背後から少女の声がして振り返ったが、やはり誰もいない。
「紅玉、どうしたんだい」
しばらく黙った後、紅玉は「なんでもない」と答えた。
あの少女は瑠璃色をしているのだろうとぼんやりと考えた。
足元がふわふわ浮いている感覚がする。床を見ても紅玉の足はしっかりと床に足をつけて立っている。
そこは見られた宿の部屋であり、瑠璃色の少女も歯車もなかった。
目に見えない耳に聞こえないのに謎の危機感が紅玉に迫っている気配がする。
謎の正体を見破ろうと目を凝らし、耳を澄ます。
部屋に侵入した月明かりがより濃い影を作る。紅玉から伸びた影が動いてもいないのに揺らいで変形した。
群がった芋虫のような影は形を変え、羽を生やす。ついに影は立体を持ち、蝶の群れは紅玉へと向かってきた。
咄嗟に目を瞑り、身構えた。蝶の群れは紅玉を包んだがその感触はなく、紅玉自身も身体に変化はなかった。
しかし、危機の正体はわかった。これはまずい。早く影弥に伝えないと。
「ただいま、こう」
ちょうど、影弥が帰ってきた。
寝汗をかき、恐怖で引き攣る紅玉の顔に影弥も伝わってきたのだろう。
「蝶男が来る」
なんの説明もなしに結論だけをつけた。
それだけでは説明不足だと紅玉は重々承知であったが、影弥には結論だけで充分だった。
紅玉が見たのは宵闇の町に飛ぶいくつもの黒蝶が紅玉と影弥を探す風景だった。
「なんで蝶男が、私たちばれたのかな」
「赤眼の男と接触したのが原因だろうが、まだ確信が持てないな。動きが慎重だからね」
焦る紅玉に影弥は落ち着くよう言い聞かせた。
「この町から離れよ。一時的にね」
「駄目」
見つかりそうになったら逃げる隠れる。それが影弥が持つ正解であったが、紅玉は違うと否定する。
「私たちが離れたら赤眼の男との接点がなくなる」
そしたら妹が救えない。
「でもこのままだと私たちは見つかる」
「だから離れよ」
「駄目だってば!」
つい怒鳴ってしまった。我儘でもないその怒りは影弥が初めて対面するもので言葉が詰まった。何を言えば落ち着くのかわからなくなり、思考が止まる。
対して紅玉はひたすら考えていた。
「どうすればいいどうすればいい」
不安と恐怖と闘いながら頭の中をぐるぐると回転させた。
多分まだ私たちの存在に確信を持てていない。だから黒蝶を使って探して確信を得ようとしている。
なら、どうして怪しんでいるのだろう。
影弥は赤眼の男が原因と言っていた。多分、監視されてる。
でも、それはそれでまずいんじゃない?
だって赤眼の男には妹を助けてもらわないといけない。
私と影弥だと障害が多すぎるもの。
「現状のままでいいんだ」
渦のように回っていた思考をそのまま口にした。
思考が止まっていた影弥は紅玉の言葉を読み取れなかった。
「蝶男は怪しんでるだけなんだよね?」
思考停止した景弥にわかりやすいように紅玉は語りかける。影弥は言葉をゆっくり飲み込んでぎこちなく頷いた。
「そうだね。確信があるなら偵察することはないからね」
しかし蝶男のこの動きは紅玉たちとは関係がない。別にある。
「蝶男はさ、私たちの存在には気づいていない」
「どうして」
「だって私たちは蝶男に見つからないように慎重になっていたんだもの。理由は別にあるのよ。カンダタだよ」
「かんだ?」
「彼が動いたから蝶男が動いたの。あの黒蝶は私たちじゃなくカンダタを監視する為のものよ」
きっとそうだ。紅玉は確信を持っていた。しかし、影弥は怪訝そうにしていた。
「かんだた、とは」
影弥の問いに紅玉はやっと気づいた。無意識に知らない名前を口にしていた。
カンダタ?誰?
そう自分に問いかけた。
赤眼の男の呼び名よ。
紅玉の背後から少女の声がして振り返ったが、やはり誰もいない。
「紅玉、どうしたんだい」
しばらく黙った後、紅玉は「なんでもない」と答えた。
あの少女は瑠璃色をしているのだろうとぼんやりと考えた。
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