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7章 赤い珠が映す空想未来
止まった時間 1
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中庭に立派な松がある邸は紅玉と紅柘榴の生家になるはずだった。それが今ではひと晩で住人が皆殺しにされた怪事件の舞台となり、成仏できなかった魂が彷徨う恐ろしい噂話が絶えない不気味な邸になってしまった。
邸の主人の遠縁にあたる者が持て余し、土地の扱いに困っていたところ影弥が良い値で買い取った。
蝶男の発想にはない紅柘榴が匿える場所はないかと探していたら紅玉が提案してくれた。
紅柘榴には現状を一から十までを教えた。二人は双子であったこと紅玉はその片割れで死産したこと。中庭の邸や影弥や蝶男の関係も説明した。
影弥が説明している間、紅柘榴は僅かに頷くだけであり、理解できたのか聞いているのかすら怪しかった。
目を合わせず、中庭の松を見つめていた。
喋りもせず、目も合わせない彼女は魂が抜けたような心持ちで、紅玉はその様子が心配になった。
それとは裏腹に身体は順調に回復し、固形物も噛んで食べれるようになった。
自力で立てるようになると布団から抜け出して裸足で中庭に出た。草や小石が足を傷つけようとも紅柘榴は痛覚を失った素振りで松の根元まで来ると力尽きたよりもたれかかる。
いくら紅玉や影弥が注意しても紅柘榴は中庭に出ることを止めず、影弥は仕方なしに雑草と小石を取り除き、草履を用意した。
これで足に傷がつくことは少なくなったが、それで紅柘榴の心は戻らない。
妹との再会は紅玉の長年の望みであったが、それを両手で叩いて喜べるほどおめでたい頭をしていなかった。
紅柘榴が紅玉を覚えていないのは当然である。
これからはたくさんの時間がある。たくさん話をすれば失った姉妹の絆も蘇るのだと浅はかにも考えていた。
紅柘榴の失った傷は時間が解決するものだと思っていた。
これは死に分かれた双子が再会して、互いに喜びを分かち合うものではない。
あれから紅柘榴は一言も喋らず、布団と松の間しか移動していない。しかも布団より松のほうがその場に留まる時間が長い。
暑い夏も枯葉が多くなった秋も松から離れようとしなかった。季節が巡って雪が降っても松の木に身を任せている。
紅柘榴の黒髪に雪の結晶が飾られるのを紅玉は三角座りして見つめていた。
「傍に行かないのかい」
背後から影弥が問いかけてきて、腕の中に頭を隠して俯く。立ち上がらないのが紅玉の答えだ。
紅柘榴は悲しみの中にいて、失ってしまったものが大きすぎて悲しいとする感じられなくなってしまって、だから紅玉は会えた喜びをひた隠している。
喜んでいる人が悲しんでいる人を支えられるはずがない。紅玉には紅柘榴と共有できる悲しみを持っていない。
「どうしたらいいと思う?どうしたら支えられると思う?」
「ごめんね。俺にはわからないんだ」
そうだろうなと紅玉は思った。相手の感情を読み取るのが難しい影弥が紅玉の悩みを解決できるとは思えない。
「こうが提案したこの屋敷は住むのに最適だが、そろそろ次の住まいを探さないと」
「いらないよ」
影弥は蝶男を恐れていたが、紅玉にはもうそんな恐怖はなかった。
邸の主人の遠縁にあたる者が持て余し、土地の扱いに困っていたところ影弥が良い値で買い取った。
蝶男の発想にはない紅柘榴が匿える場所はないかと探していたら紅玉が提案してくれた。
紅柘榴には現状を一から十までを教えた。二人は双子であったこと紅玉はその片割れで死産したこと。中庭の邸や影弥や蝶男の関係も説明した。
影弥が説明している間、紅柘榴は僅かに頷くだけであり、理解できたのか聞いているのかすら怪しかった。
目を合わせず、中庭の松を見つめていた。
喋りもせず、目も合わせない彼女は魂が抜けたような心持ちで、紅玉はその様子が心配になった。
それとは裏腹に身体は順調に回復し、固形物も噛んで食べれるようになった。
自力で立てるようになると布団から抜け出して裸足で中庭に出た。草や小石が足を傷つけようとも紅柘榴は痛覚を失った素振りで松の根元まで来ると力尽きたよりもたれかかる。
いくら紅玉や影弥が注意しても紅柘榴は中庭に出ることを止めず、影弥は仕方なしに雑草と小石を取り除き、草履を用意した。
これで足に傷がつくことは少なくなったが、それで紅柘榴の心は戻らない。
妹との再会は紅玉の長年の望みであったが、それを両手で叩いて喜べるほどおめでたい頭をしていなかった。
紅柘榴が紅玉を覚えていないのは当然である。
これからはたくさんの時間がある。たくさん話をすれば失った姉妹の絆も蘇るのだと浅はかにも考えていた。
紅柘榴の失った傷は時間が解決するものだと思っていた。
これは死に分かれた双子が再会して、互いに喜びを分かち合うものではない。
あれから紅柘榴は一言も喋らず、布団と松の間しか移動していない。しかも布団より松のほうがその場に留まる時間が長い。
暑い夏も枯葉が多くなった秋も松から離れようとしなかった。季節が巡って雪が降っても松の木に身を任せている。
紅柘榴の黒髪に雪の結晶が飾られるのを紅玉は三角座りして見つめていた。
「傍に行かないのかい」
背後から影弥が問いかけてきて、腕の中に頭を隠して俯く。立ち上がらないのが紅玉の答えだ。
紅柘榴は悲しみの中にいて、失ってしまったものが大きすぎて悲しいとする感じられなくなってしまって、だから紅玉は会えた喜びをひた隠している。
喜んでいる人が悲しんでいる人を支えられるはずがない。紅玉には紅柘榴と共有できる悲しみを持っていない。
「どうしたらいいと思う?どうしたら支えられると思う?」
「ごめんね。俺にはわからないんだ」
そうだろうなと紅玉は思った。相手の感情を読み取るのが難しい影弥が紅玉の悩みを解決できるとは思えない。
「こうが提案したこの屋敷は住むのに最適だが、そろそろ次の住まいを探さないと」
「いらないよ」
影弥は蝶男を恐れていたが、紅玉にはもうそんな恐怖はなかった。
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