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ビビアン視点②
しおりを挟む「お嬢様、今日の夜会はいかがでした?」
「……あまり楽しく無かったわ」
「まあ、アンドレア様とご一緒なら注目されたでしょうに」
「アンドレア様って、誰にでも愛想が良いから、ちょっと呼ばれるとすぐにそっちに行っちゃって、全然私と一緒に居てくれないの」
『微笑みの貴公子様』って異名は伊達じゃない。
彼は私意外の女性とお喋りしていても始終ニコニコ。
恋人になっても、特別感がないのよねー
そして、恋人になって分かったことは、アンドレア様って自分が大好きだってこと。
私より高額のクリームを使ってお肌を手入れしていて、髪型がキマらないと、デートにだって遅刻しちゃう。一緒に服を買いに行くと日が暮れるまで試着室から出てこない。
初めてのデートで、それ?
(あれ?もしかして、アンドレア様って私よりも自分優先の人?)
時々そう思う。
お母様に相談したら、『微笑みの貴公子様』だからしょうがないんだって。
「だって、考えてもみなさい!あれほどいつも注目されているのだから、いつも同じ衣装なんて着れないし、お肌の手入れも大切よ」
そう言われてみればそうかもしれない。
でもーー
「男性って恋人が出来たら自分よりも恋人を大切にするものじゃ無いの?」
「あら?貴女にはそんな風に見えた?私は夜会での彼を見ていたら、自分を大好きな人なんだって思ったわよ?だって思い出してご覧なさい。婚約者の事を大切にしてた?」
「だって前の婚約者とは家同士の関係で……。私とは本当の恋だから……」
「そうかしら?政略結婚でも相手を尊重する男性は妻を大切にするし、恋愛結婚でも妻を蔑ろにする男性も多いわ」
「え……そうなの……」
「でも、別に貴族の結婚だからね。気にする事は無いわ。子供さえ産めば、あとは若いツバメを見つけなさいな。その方が気が楽になるわよ?」
「若いツバメって……不倫じゃないの?」
「お互いさまよ。アンドレア様も直ぐに別の女を作るわよ。彼、モテるしね。夜会だけは夫婦で参加しなさいね。体裁が悪いから。あーあ、私も新しい恋をしたいわー」
お母様は私の恋になんて興味は無いみたい。
~・~・~・~・
今は社交界シーズン真っ只中。たくさんの夜会の招待を受けアンドレア様と一緒に参加した。
今日はレビール侯爵家での夜会。レビール侯爵家には適齢期になる息子たちもいるから、招待客には若い令嬢が多かった。
アンドレア様はいつも通り柔らかい笑顔を浮かべて私を迎えに来てくれた。
私をエスコートして会場に入ると、彼は令嬢たちの視線を独り占めする。
「微笑みの貴公子様よ。はぁー、いつ見ても格好良くて素敵ね」
(服を選ぶのに二時間かかっているからね)
「見て!あのお肌!どうして男性なのにあんなにつるつるなのかしら?」
(高いクリーム使ってるからでしょ)
令嬢たちがアンドレア様を褒めそやす声に心の中で突っ込む、やさぐれ気分。
アンドレア様はレビール侯爵令嬢に話しかけられてそのまま向こうに行ってしまった。
「……退屈だわ」
その時、ホールの中の黄色い歓声が耳に届いた。何かと思ってそちらの方を見てみると、フラヴィア様が踊っているのが見えた。
「フラヴィア様……?」
アンドレア様と婚約解消したばかりなのに、誰と踊っているのだろう?
「まあ!氷の貴公子様があんなに優しい表情で……」
「本当ね。わたくし、彼が笑うのを初めて見ましたわ」
「フラヴィア様に告白して恋人になったんですって」
「えー、フラヴィア様が羨ましいですわ。あの笑顔を独り占めなんて」
「氷の貴公子様って笑うと優しい印象ですのね」
『氷の貴公子様』って確かグラディウス公爵家の……。最近帰国したと聞いたことがある。
無愛想でほとんど笑わないって聞いていたのに……。
氷の貴公子様はダンスを踊りながらフラヴィア様を優しく見つめていた。
(羨ましいなー、あんな人に優しくされたいな)
アンドレア様って誰にでも優しくてずっと笑ってるけど、氷の貴公子様の笑顔は恋人に向けてだけなんだ……。
ダンスが終わって他の令嬢に話しかけられても、氷の貴公子様は素気無く断っていた。他の令嬢を見るときのひどく冷たい視線。氷の貴公子様なんて異名も納得できる。
フラヴィア様に向ける優しい笑顔とは雲泥の差。
「ごめん、待たせて。さあ、踊ろうか?」
アンドレア様が私の所に戻ってきて、笑顔でダンスに誘ってくれた。
「はい」
背の高いアンドレア様を見上げながら、彼がもう輝いて見えないことに気がついた。そんな私の心の変化にも気付かず、彼は相変わらずニコニコ。
恋をして輝いてみえた世界はもう色褪せてしまった。
あーあ、失敗しちゃったかも!
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