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泣いちゃいました
しおりを挟むパラパラと落ちてくる土埃が収まった頃、目を開けるとシルクが眉を寄せ怪訝な表情で聞いてきた。
「ルマ、どなたに剣技を習ったのですか?自己流では無いですね?」
正直に答えた方が良いだろう。
「実家で。護衛に無理を言って習いました。」
シルクはますます険しい表情だ。
「普通習わないでしょう?誰かに狙われていたのですか?」
うーん。追及が厳しい。私は嘘が苦手だし話せるだけ話そう。
「そうですね。狙われていたと思います。もしかして今後も狙われるかも、とは考えています。」
「それにしては行動が杜撰ですね。魔法は自己流でしょう?やけに広範囲で魔力の無駄遣いが多いです。護衛がいる実家を出るなんて。実家の方が危険なのですか?冒険者の装備も酷かったですし、誰か協力してくれる人は居なかったのですか?今は守ってくれる人はいるのですか?」シルクが矢継ぎ早に聞いてくる。
私はその質問に現実を突きつけられ、急に不安が押し寄せる。
シュンと俯くと涙が目に溜まる。
シルクは焦って
「怒っているんでは無いですよ。心配してるんです。」
と言うが、何かが壊れたように涙が次から次へと溢れて止まらない。
「いないです。誰もいない。」
婚約破棄から始まって、家出したこと、もしかしてまだ狙われているかも知れないこと、全部が辛かった。
只ひたすら泣き続ける私にシルクは困ったようにオロオロしていたが、やがて私の後頭部に手を添えるとゆっくり自分の胸に引き寄せてくれた。胸の中で泣いても良いって言われたようで、私はその胸に顔を埋めてわんわんと泣いた。
どうして私がこんな目に遇うのだろうと思うと悔しかった。
それでも、私が嫉妬や憎しみで心を黒く染めるとき、私は魔女に変わるのだ。
ヒロインがいくら私に理不尽な仕打ちをしようと、私は憎しみの気持ちを持つことが出来ない。魔女になれば、洞窟の奥深く封印されるのだ。
学園時代にも沢山理不尽な目にあった。殿下は信じてくれないけれど、家族や私の周りに居る人達は私を信じてくれた。それが私を救ってくれていた。その人達とも離れたのだ。不安で怖くてたまらない。異国の地で襲われた時、私は憎しみを抱かずにいれるだろうか?
私は一頻り泣いた後、周囲が暗くなっているのに気が付いた。
「すみません。今まで張り詰めていたのに気が弛んだみたいで。」
異国の地に来て冒険者になった高揚感で暫くは不安も忘れていたが、シルクの問いかけに、急に現実を思い出してしまった。
シルクが「僕の家に行きましょう。何もしませんから。狙われているかも知れないのなら、街の宿屋は心配です。」と言って転移の術を掛けた。
シルクの家は一軒家でキッチンとトイレ、お風呂、リビング、寝室があり、こじんまりとしていた。男性が一人で暮らして居るのに綺麗に整理され、キッチンもちゃんと使っている痕跡があった。
「もし良ければ、暫くここに住みませんか?決して何もしないと誓います。」
シルクの目を見つめる。その目に嘘はないと信じることが出来た。
「お願いします。宿代は払います。」
シルクの申し出に安心した自分がいて、こんなに心細かったのかと驚いた。
誰がソファーで寝るかをめぐり、一悶着あった後私がベッドを使わせて貰い、今日はシルクがソファーで眠ることになった。
「僕が信用出来るようになったら話してください。明日からは魔法の練習を兼ねてBランクぐらいの依頼を受けましょう。」
シルクは優しく声を掛けてくれる。会って間もないのに、私はシルクを信用出来ると感じていた。
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