悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

文字の大きさ
11 / 29

薬草を採りました

しおりを挟む
レイラは私の夢の内容を踏まえてルイルイの行動を精査すると、公爵家に戻っていった。シルクの存在が彼女の安心材料になったようだった。お父様と兄サイファにも夢の内容を伝えるように、シルクにアドバイスされた。
私は魔女になるかもれないことを、皆に伝えることに躊躇したが、シルクにそれは違うと諭された。
「魔女になる条件は、ルマが憎しみに心を黒く染めるときですよね?」
私は頷く。
「では、ルイルイになったつもりで考えてください。ロッテルマリア公爵令嬢を憎しみに染めるためにはどうすると一番手っ取り早いと思いますか?」
「家族や大切な人を傷付ける?」
「そうですね。」
「ルマの家族は危険だと思いますよ。それでもルマの夢の内容を伝えずに、家族や大切な人に身を守って欲しいと伝えても深刻さが充分に伝わらないと思いませんか?きっと ルマの方が危険だと思い、自分達の身の回りを守ることは二の次でしょうね。」
「あー。その通りです。それがもどかしくて。」
「夢の内容を知れば、ルマの家族も身の回りに充分に気を付けると思いますよ。」
シルクの指摘は最もな事だった。私ではその考え方にはならなかったと思う。
「そして、一つ疑問があるのですが・・・ルマほどの魔力があってどうして無頼漢などに襲われたのでしょう?」
えっ?ゲームではどうしてだったかしら。懸命に思い出してみる。何かを盗んでロッテルマリアがニヤリと嗤うシーンがあったような・・・
「王宮の魔封じの腕輪?もしかしたら、私が王太子の婚約者としての立場を利用して王宮の宝物庫から盗み出して、それを無頼漢に渡したのかも。」
「それを自分に使用されてしまったと言うことですか?」
「そうですね。確証は無いですけど。」
「王宮の宝物庫は調べてみる価値がありますね。」
あまりはっきりとは思い出せない。ゲームでは主人公として、プレイしたのだ。悪役令嬢が何をしていたかなんて詳しくは分からない。
シルクは暫く考えてから、私をアドさんの店へ連れてきた。
「1~2日ちょっと出掛けます。ここは安全なので、ここにいてもらえますか?」
そう私に言うと隻眼の男性に
「ベン。僕が出掛ける間、ルマを頼む。」と言って出ていこうとするので、慌てて引き留めた。
「えっ?もう行くの?」
シルクは私の方を向くと肩に手を置いて言い聞かせるように話す。
「いいですか?あなたが国を出たのは1ヶ月も前です。状況がどう動いているのか早急に確認する必要があります。ベンは元Sランク冒険者で怪我で引退してますけど腕は確かです。アドだってAランクの冒険者です。お願いですからここにいてください。もうこの国だって安全では無いかもしれないですよ。」
「シルクは?シルクだって状況の確認に行くのは危険じゃないの?」
「僕は大丈夫です。ローズウッドの名を継ぐものはほとんどの王宮には自由に出入り出来ます。」
そんなに凄いんだ。勇者の家系。
私は弟子だ。師匠の言うことに逆らってはいけないと思い「では、おとなしく待っています。」と告げるとシルクは笑顔で去って行った。
アドさんは「シルクはルマが大切なのねぇー、そのサングラスはシルクから?」クスクス笑って嬉しそうだ。
ベンさんは「結構独占欲が強いタイプだったんだなー。」なんて呟いている。
それでも不安そうな私を見てベンさんは「まあ、あいつの事だ。大丈夫だよ。」と励ましてくれた。
アドさんのお家はとても快適だった。アドさんにこの国の料理を色々と教えて貰った。
3日目の朝、アドさんに「ルマは光の魔法が使えないから回復は出来ないんだねー。薬草を覚えておくといいよ。」と言われ、近くの森に連れてきて貰った。
「薬草はねー、大体あの木の根元に生えているよ。」
アドさんは百日紅の幹のようなツルツルした幹でギザギザの葉を持つ木を教えてくれた。ケアと呼ばれる薬草はその根元に生えていた。丸みのあるバジルのような形の葉だが根元が青くなっている。

「特徴があるので覚えやすいです。」
「食べてみて。」
ケアの葉は以外に苦味もなく食べやすかった。
「大きな怪我は治らないけど、止血にはなるわ。」
いざというときこの葉が私や誰かを助けてくれるかもしれない。私はケアの葉を何度も眺めて覚えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

元王太子妃候補、現王宮の番犬(仮)

モンドール
恋愛
伯爵令嬢ルイーザは、幼い頃から王太子妃を目指し血の滲む努力をしてきた。勉学に励み、作法を学び、社交での人脈も作った。しかし、肝心の王太子の心は射止められず。 そんな中、何者かの手によって大型犬に姿を変えられてしまったルイーザは、暫く王宮で飼われる番犬の振りをすることになり──!? 「わん!」(なんでよ!) (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

悪役令嬢に転生しましたがモブが好き放題やっていたので私の仕事はありませんでした

蔵崎とら
恋愛
権力と知識を持ったモブは、たちが悪い。そんなお話。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~

四つ葉菫
恋愛
橘花蓮は、乙女ゲーム『煌めきのレイマリート学園物語』の悪役令嬢カレン・ドロノアに憑依してしまった。カレン・ドロノアは他のライバル令嬢を操って、ヒロインを貶める悪役中の悪役!    「婚約者のイリアスから殺されないように頑張ってるだけなのに、なんでみんな、次々と告白してくるのよ!?」   これはそんな頭を抱えるカレンの学園物語。   おまけに他のライバル令嬢から命を狙われる始末ときた。 ヒロインはどこいった!?  私、無事、学園を卒業できるの?!    恋愛と命の危険にハラハラドキドキするカレンをお楽しみください。   乙女ゲームの世界がもとなので、恋愛が軸になってます。ストーリー性より恋愛重視です! バトル一部あります。ついでに魔法も最後にちょっと出てきます。 裏の副題は「当て馬(♂)にも愛を!!」です。 2023年2月11日バレンタイン特別企画番外編アップしました。   2024年3月21日番外編アップしました。              *************** この小説はハーレム系です。 ゲームの世界に入り込んだように楽しく読んでもらえたら幸いです。 お好きな攻略対象者を見つけてください(^^)        *****************

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

処理中です...