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王太子の帰還
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いよいよ殿下が王宮に戻る。
私は体調が悪い事になっていて、家でおとなしく過ごしている。
動く気も起きずにボーッと過ごしていると、玄関の方からバタバタ騒がしい声が聞こえた。
やがてノックの音が聞こえ、執事から殿下がお見舞いに来たことが告げられる。
帰還したばかりで忙しいのに態々お見舞いに来たなんて…。
「応接室にお通しして、今着替えてから伺います。」
応接室に入りカーテシーをとる。
「殿下のご帰還、ご無事で何よりですわ。わたくしが出向かなければいけませんのに、申し訳ございません。」
応接室では殿下と共に二人の護衛が来ていた。ライルと…もう一人は確かブルドと言う名前だった。
ライルは専属の護衛になったんだと分かる。
視察が終わっても一緒に居るということは、殿下とライルはもう相思相愛なのだろう。
「体調が悪いと聞いた。わざわざ出て来なくてよかったのに…。」
「いえ。ベッドから起き上がれない程では無いので……。部屋に入っていただくのは申し訳ないですし……。」
「顔色が悪い。食欲は?」
「ええ。屋敷の者が気を使ってくれているので大丈夫です。」
「眠れているのか?」
「少しは……。」
「そうか。無理はしないでゆっくり休んでくれ。」
私は会話の間ずっと殿下の口元を見ていた。
殿下の声は優しげなのに、どうしても目を見ることが出来なかった。
「はい。暫くの間、王妃教育も休むことになります。申し訳ありません。」
私は王宮に行く回数を減らすため、暫く王妃教育を休むことにしていた。父にも同意は得てある。
(家庭教師に向けてのコネ作り計画)も暗礁に乗り上げていた。
何せ独身者しか集まらないのだ。
「ティシアリュルは目標のレベルまでは到達しているのだから無理をしなくても大丈夫だ。これからはゆっくり休めば良い。」
もう私の王妃教育は必要無いのだろう。今後はライルが受ける事になる。
「はい。ありがとうございます。」
私はとうとう殿下の顔を見ること無く面会を終えた。
窓から殿下が帰る姿を見送る。
殿下の後ろにはライルがぴったりと寄り添っていた。
殿下視点
ティシアリュルは王妃教育を暫く休む事になり、王宮にも来なくなった。
会えない事に焦りが募る。
それでも、ティシアリュルは王宮で立ち上げたサークルには参加するようだ。責任感の強い彼女らしい。
ライバルも参加しているそのサークルに私も参加することに決めた。
「スイフ、今ティシアリュル様へケンデリック語を教えているんだろ?俺も参加させてよ。」
「えーと、うん聞いてみるよ。」
何だか不穏な会話が聞こえた。
「何だか楽しそうな話だね?」私は公爵子息であるスイフに話し掛けた。
スイフは明らかに動揺している。やはり下心があって、ケンデリック語をティシアリュルに教えているんだろう。
やはり油断出来ないな。
そう思っていると、ティシアリュルがサロンに姿を現した。
「殿下。」
ティシアリュルは私を見つけるなりすぐに隣にいるライルを見て俯いてしまった。
相変わらず私の顔は見てくれず、交流会の間は元気がない様子で、視察に出る前よりも明らかに私を避けるようになったティシアリュルの態度が不安で仕方がない。
そんな日々を過ごすなか、とうとう母上から呼び出しがあった。
私は体調が悪い事になっていて、家でおとなしく過ごしている。
動く気も起きずにボーッと過ごしていると、玄関の方からバタバタ騒がしい声が聞こえた。
やがてノックの音が聞こえ、執事から殿下がお見舞いに来たことが告げられる。
帰還したばかりで忙しいのに態々お見舞いに来たなんて…。
「応接室にお通しして、今着替えてから伺います。」
応接室に入りカーテシーをとる。
「殿下のご帰還、ご無事で何よりですわ。わたくしが出向かなければいけませんのに、申し訳ございません。」
応接室では殿下と共に二人の護衛が来ていた。ライルと…もう一人は確かブルドと言う名前だった。
ライルは専属の護衛になったんだと分かる。
視察が終わっても一緒に居るということは、殿下とライルはもう相思相愛なのだろう。
「体調が悪いと聞いた。わざわざ出て来なくてよかったのに…。」
「いえ。ベッドから起き上がれない程では無いので……。部屋に入っていただくのは申し訳ないですし……。」
「顔色が悪い。食欲は?」
「ええ。屋敷の者が気を使ってくれているので大丈夫です。」
「眠れているのか?」
「少しは……。」
「そうか。無理はしないでゆっくり休んでくれ。」
私は会話の間ずっと殿下の口元を見ていた。
殿下の声は優しげなのに、どうしても目を見ることが出来なかった。
「はい。暫くの間、王妃教育も休むことになります。申し訳ありません。」
私は王宮に行く回数を減らすため、暫く王妃教育を休むことにしていた。父にも同意は得てある。
(家庭教師に向けてのコネ作り計画)も暗礁に乗り上げていた。
何せ独身者しか集まらないのだ。
「ティシアリュルは目標のレベルまでは到達しているのだから無理をしなくても大丈夫だ。これからはゆっくり休めば良い。」
もう私の王妃教育は必要無いのだろう。今後はライルが受ける事になる。
「はい。ありがとうございます。」
私はとうとう殿下の顔を見ること無く面会を終えた。
窓から殿下が帰る姿を見送る。
殿下の後ろにはライルがぴったりと寄り添っていた。
殿下視点
ティシアリュルは王妃教育を暫く休む事になり、王宮にも来なくなった。
会えない事に焦りが募る。
それでも、ティシアリュルは王宮で立ち上げたサークルには参加するようだ。責任感の強い彼女らしい。
ライバルも参加しているそのサークルに私も参加することに決めた。
「スイフ、今ティシアリュル様へケンデリック語を教えているんだろ?俺も参加させてよ。」
「えーと、うん聞いてみるよ。」
何だか不穏な会話が聞こえた。
「何だか楽しそうな話だね?」私は公爵子息であるスイフに話し掛けた。
スイフは明らかに動揺している。やはり下心があって、ケンデリック語をティシアリュルに教えているんだろう。
やはり油断出来ないな。
そう思っていると、ティシアリュルがサロンに姿を現した。
「殿下。」
ティシアリュルは私を見つけるなりすぐに隣にいるライルを見て俯いてしまった。
相変わらず私の顔は見てくれず、交流会の間は元気がない様子で、視察に出る前よりも明らかに私を避けるようになったティシアリュルの態度が不安で仕方がない。
そんな日々を過ごすなか、とうとう母上から呼び出しがあった。
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