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道中記・最後の町プドット

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殿下から手紙が届いた。

とうとう最後の町プドットに着いたようだ。

此処で殿下はライルにプロポーズする。

殿下は宿で自分の部屋にライルを呼び出す。そして部屋に訪れたライルに跪いて、プロポーズし、ティシアリュルとの婚約は解消してみせると宣言するのだ。

「はぁー。」
部屋に飾られた花の枯れた部分をブチブチ千切りながら溜め息を吐いてばかりいる。ヨシュンが心配してくれるが止めようがない。
「殿下がもうすぐ帰っていらっしゃるのに、お嬢様の表情は冴えませんわね。」
だって、婚約解消間近なのよ?
「殿下が帰って来て、お嬢様の人気ぶりをみたら嫉妬しますでしょうね。」
この侍女は何を的外れな事を……。
「嫉妬なんて…なさらないわよ。」
「そうでしょうか?王宮内でも殿下の筆まめな様子は噂になっておりました。陛下や王妃様への報告より、お嬢様へのお手紙の方が多かったそうですわ。」
「そうなの?」
後ろ暗い事があるからだと思う。
「はぁー。」また大きな溜め息を吐いてしまった。

殿下の帰還の日が決まって連絡が届いた。視察も公のものなら盛大に迎えるが、今回は一応お忍びであるため王宮内で内輪だけの慰労会を行う。それでも私は婚約者として迎えに出なければならない。だが、 
「ヨシュン、私殿下の迎えに出たくない。」
「珍しいですね。お嬢様の我が儘なんて。旦那様に伝えておきますわ。」
殿下はライルを専属の護衛に指名して、帰還後は毎日共に過ごすのだ。
二人が並んでいる姿なんて見たくない。

殿下視点

この町で最後の視察になる。この町に来た目的は国境警備の為の国の補助金が正しく使われているかを見ることにある。
兵士の装備品や人数などを見てまわるが、特に不自然なところはみられなかった。

これで帰還出来る。会えなかった間にティシアリュルに対しての恋心が募ってしまった。
どこを見ても彼女を思い出す私はかなりの重症だろう。
彼女が王宮で立ち上げたサークルも気になる。
ティシアリュルは意識していないようだが、彼女の人気はかなりのものだ。
氷の美姫なんて言われているが、本人非公認のファンクラブがあるくらいだ。
私が王都にいる間は目を光らせていたが、今はどうなっているか……。
見張って居ないと奴らはティシアリュルの使用済みティーカップを集めたりし出す。
一度彼女の私物をファンクラブに横流ししている侍女を、侯爵に言って専属から外して貰った事があった。
今の侍女は問題ない。彼女を魔の手から守ってくれている筈だ。

私はティシアリュルの事を考えながらもなんとか視察を終えた。

ライルがチラチラと私を見ているのが不快だ。
ライルはこの町に来てからずっとソワソワ落ち着きがない。

ライルが男装までしてこの視察に同行した理由が分からない。帰還後の処遇をどうするかブルドとズッブュルと話し合った。
剣の腕も気配を消す能力も高くない為、目的及び依頼人が判明するまで、私の護衛として側に置く事にした。

「はい。光栄です。これからも宜しくお願いします。」
「ああ。」
ライルは専属の護衛になることを伝えると嬉しそうに破顔した。



その夜、ライルは私の部屋に訪れた。
「どうした?」
「あ、あの、殿下から呼び出されたかと思って。」
「いや。呼び出していないな。」
ドアを閉めようとするとライルが慌てる。
「あ、護衛の事で聞きたい事があって……。」
「こんな夜更けにか?」
非常識な時間の来訪に私の雰囲気も剣呑となる。
「い、いえ。また明日聞きます。」
ライルは肩を落として、部屋に戻って行った。


    
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