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いち
しおりを挟む「もうっ、お姉ちゃんっ!お母さんたちが大変なんだよ?もう少し親身になってよっ」
私の名前はレオナ。
五年前に実家の男爵家を出て、今は亡くなった父方の祖母が用意してくれた小さな家で独り暮らしをしている。
貴族令嬢だとは思えないほど、小さな家。
だけど、一人で身の回りのことを全部こなすには、丁度よい広さだった。
「ごめんね。今は自分のことだけでいっぱいいっぱいなの。何も手伝えることは無いわ」
もう関係ないと思っていた実家から連絡が来たのはつい最近の事。
色々あって家を出てからは、自分で働いたお金で質素な生活を送っていて、実家とは関わらないつもりだった。
父親が新しい事業に失敗して巨額な借金を作ってしまったらしい。その噂は聞いたことがある。
だけど、私にはたいしたお金は無いし、協力なんて出来ないと思って連絡しなかった。
「実家を出たからって……。こういうピンチの時にこそ協力するのが家族でしょ?」
「うーん。私はもう家を出たし……。ごめんね、力になれそうにない」
私はなるべく早く会話を切り上げて業務に戻った。
リリィは不満そうに私を見ているけれど、私はもうあの家族とは関わり合いたくない。
冷たい?
だけど……どうしてもあの家に戻りたくなかった。
☆
リリィ視点
「もう!お姉ちゃんどういうつもりなんだろ?」
私は帰宅した後、弟のジュードに相談していた。
「仕方ないだろ?元々偏屈で気難しいんだから。姉ちゃんのせいで、辞めさせたられた使用人や家庭教師は大勢いるんだろ?」
「うーん。でも、私の前でそんな素振り見せたこと無いけどね」
「そうだな。俺達の前では無口なだけで、そんな偏屈者って言うほど変でも無かったよな?でも、姉ちゃんのせいで辞めさせられた使用人が多いのは事実だし……。俺は一日中部屋に閉じ篭ってて、何考えてるか分からないレオナ姉ちゃんが不気味だったよ」
「そう?私は……お姉ちゃんなら助けてくれるって思ってたんだけどね」
うーん。
お姉ちゃんの態度は、どうしても納得出来ない。
我儘だった自分をここまで育ててくれたお母さんに感謝はないのかなぁ?
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