病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

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5.セレニティが倒れた

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 帰宅すると、両親と兄が少し険しい表情で私を待っていた。

「フィオナ、夜会で他の殿方と何曲も連続で踊ったそうね。駄目よ。貴女の婚約者はキリアン様。侯爵夫人になることが貴女の幸せなのよ。」

「よりによってあんな目立つ場所で踊るなんて……。ライアット侯爵が顔を顰めてたぞ。折角の婚約の話が流れたらどうするんだ。」

 キリアン以外の男性と仲良くダンスしているのをライアット侯爵に見られていたらしい。不貞などを疑われると、婚約破棄される可能性がある。両親はその事を心配していた。

「はい。気を付けます。」

 そう言って謝ったが、今後は異性との交流をなるべく控えるように釘を刺されてしまった。
 
「あんな金の無さそうな男は利用価値なんて無さそうだ。あんまり相手にするなよ。」

 兄からもそう言われてしまった。
 兄はダンスが苦手だから、あんまりダンスを踊ってくれないくせに……。



☆☆☆



 数週間後、セレニティーが高熱を出して、寝込んでいると連絡を受けた。

 最近は体調が良くて、夜会への出席が続いていた。きっと無理してたんだわ。

 数日間は面会も出来なかったが、漸く熱が下がったと連絡を受けて、お見舞いに行くことにした。







「もうっ。びっくりしたわ。無理しないでね。」

「ごめんなさい、心配かけて。でも、今回は良いお医者様が見つかって今までよりずっと体調が良いのよ。もう少しお薬を続ければ、高熱を出すことも無くなるって。」

 セレニティーは病み上がりとは思えないほどすっきりした表情。顔色もいつもより良くて頬もほんのりピンクに色づいていた。
 本人の言う通り名医なのだろう。

「本当っ……。良かったわっ!!」

 久しぶりのセレニティーの明るい笑顔が嬉しい。私はベッドに駆け寄り細い身体を抱きしめた。

「うふふ。ありがとう、心配してくれて。新しい先生のお蔭で長年ずっと取れなかった怠さもスッキリ無くなったの。」

「凄いのね。そのお医者様。」

「ええ、他国の有名なお医者様らしいの。王族に連なる方を診察されることも有るぐらいの名医らしいわ。実はね、王太子殿下がお父様に紹介してくださったの。」

 確かにセレニティーは元気そう。ここ数年、調子は良くてもここまで顔色が良いことなんてなかった。このままセレニティーが回復すればいいのに……。

「ご面会中、失礼します。セレニティーお嬢様、お医者様が往診に来られました。」

「ありがとう。入っていただいて。」

「じゃあ、私は帰るね。」

 診察の邪魔にならないように急いで帰り支度を整えて屋敷を出ようとしたら、玄関ロビーで医師らしき人に話し掛けられた。白い髭をたくわえた、いかにもお医者様らしい風貌。

「君はセレニティー嬢の友人かい?」

「は、はい。」

「君から見て、今日のセレニティー嬢はどうだった?」

「顔色も良くて元気そうでした。先生のお蔭です。ありがとうございましたっ。」

「そうか、良かった。彼女が長年苦しんできた病気は治るかもしれない。原因が分かったんだ。」

「えっ、そうなんですか?先生、お願いします。レニィを助けてください。」

「ああ、必ず。約束しよう。」

 眼鏡を掛けているが、その茶色い瞳は力強く私を見据えていた。何だかその瞳に既視感を覚える。

「私、先生とお会いしたこと無かったですか?」

 思わず、不躾なことを聞いてしまった私に、先生は鷹揚に笑って首を振った。

「はっはっはっ。こんな可愛いお嬢さんの知り合いは居ないな。もう少し若かったら口説いていたんだが……。」

 他国のお医者様になんて知り合いはいないもの。きっと気のせいだろう。

 セレニティーが本当に健康になったら、婚約の話はどうなるんだろう?

 そんなことを考えながら、帰路についた。


 
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