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第45話 双貴妃・獨昭媛
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(獨昭媛様は九嬪、双貴妃様は四妃のうちのひとり……どちらも位の高い妃だし、専属の医師団がついていらっしゃる)
特に双貴妃は姜皇后の次に位が高い妃である。姜皇后の口から出た名前に驚きが波紋のように広がっていった。
「もう知っている部分もあるかもしれないけれど、とりあえず説明するわね。まずは獨昭媛から」
獨昭媛は全体的に細身の女性。顔の特徴としては目は大きく吊り上がっていて、まるで猫のようだと姜皇后は語る。黒い髪はしっかりと手入れされており、いつも艶めきを放つほどだとか。獨昭媛の髪は皇帝も気に入っている。
「緑色の衣を身にまとう事が多いから、見たらすぐにわかると思うわよ」
彼女は姜皇后よりも年下でまだ子供はいない。なお妊娠経験は一度あるが、早いうちに流産しているそうだ。
「彼女が嫉妬深いと言われる一因はそこだと私は思うわ。早く子が欲しい。それが焦りとなり嫉妬に繋がっているのだと」
「妊娠すれば確実に元気な子が生まれる。その保証はどこにもないからな」
「朝日の言う通りよ。私はたまたま運が良かっただけ」
(しっかりと刻み込んでおかなければなりませんね……)
次に双貴妃について紹介しなければね。と姜皇后はお茶を含みながら語る。
「彼女が政略結婚で嫁いできたのはご存じかしら?」
「ああ、その話は聞いた事がございます」
「あなたが薬師として後宮入りする前に、貴妃は亡くなって空位になったの。そこへ当てはめられたと言う具合ね。双貴妃は景季国の元王妃だから、貴妃はふさわしい位だと思う」
景季国の名前を聞いた瞬間、美雪ははっと息を呑んだ。
(林才人の、出身国……!)
脳裏に林才人の姿が思い起こされる。もしかして彼女と縁があるのではないか? そんな疑いが身体の内からあふれ出す。
「皇后様、景季国は、林才人の出身国でもありましたね」
「そうね……でも双貴妃は林才人との関係はないとみて良いと思うわ。ここから少し話は長くなるけれどよろしいかしら?」
美雪は大きく首を縦に振る。横にいた朝日もお願いします。と低い声音で返事した。
まず、林才人の姉が死ぬ要因となった、暁月国との戦争は終結した後の事。景季国では民衆や商人らが主となり反乱が生じた。
この反乱は王家に近い者達にも影響をもたらした結果、兵士や大臣達も加勢した。
「兵士や大臣達は反乱軍を先導しつつ、密かに王家を乗っ取る機会を企てていた……陛下はそう仰っていたわ。反乱軍へ火をくべるような真似はせず、静かに機を見て寝首を掻くのを待っていた、と」
そして反乱軍へと寝返った大臣と兵士により景季国の王は暗殺された。この王の娘・第二公主こそが双貴妃だったのである。
「相当怖かったでしょうね……だって寝静まった夜に突然の騒ぎだったそうだもの」
「それで……」
「」
この反乱により双貴妃の母親である王后、双貴妃含めた公主といった王家の女性達は皆助命されたものの、男性達は残らず処刑されている。
そして暗殺を主導した大臣が新たな王となり、景季国の王家は生まれ変わった。
「だけど反乱でなりかわった王を陛下はどのような人物か見定めていた。己の敵になるのか、はたまた味方になってくれるのか……そこで交渉を重ねた結果、景季国から妃をひとりだす。と言う話になったのね」
そこで白羽の矢が当たったのが他でもない双貴妃だった。
このような経緯で嫁いできた双貴妃だが、子供はいない。皇帝との夜伽もほぼない状態がゆえにお飾りの妃となっている。
それゆえ嫉妬深く、妊娠した妃を次々に毒殺していったという噂が広まっているらしい。
「あくまで噂程度に過ぎないから、証拠もないわ。これは獨昭媛にも言えるけれど」
「なるほど……」
「獨昭媛との違いは景季国との兼ね合いもあるから、でしょうね。迂闊に噂が事実かどうか、調べる事は出来ない。陛下としてはなるべく戦いは起こしたくないようだから」
(林才人の出来事が、よほど……)
彼女が起こした事件は、皇帝の心の内で傷となり今も癒えずに残り続けている。そう考えただけで美雪の胸がずきりと痛んだ。
「ちなみに双貴妃様は一体どのようなお姿をしていらっしゃるのですか?」
「それがねえ、妃達の集まりの場にも中々姿を現さないから…」
言われてみれば秋大宴祭の時、貴妃が座る席は無かった。皇后の次は淑妃の妃が座っていたのを思い出す。
「最後に見かけたときには赤みがかった髪は美しく結われていて、二重のぱっちりとした黄色い瞳をもった可愛らしい見た目をしていた記憶はあるの」
(ん……? 黄色い瞳?)
黄色い瞳と言う言葉と共に、脳の奥からある人物の姿が思い起こされる。
「そのお方、もしかしてその時……薄い黄色の衣をお召しになられてはいませんでした……?」
「言われてみればそうだったわね……美雪、どうしたの?」
(そうだ。やはり、あの時あったお妃は……!)
「実は……私、双貴妃様とお話した事がございます」
身体の震えが止まらない。
なぜなら美雪が知っている双貴妃は、嫉妬深いなんて印象はひとつもなかったのだから。
特に双貴妃は姜皇后の次に位が高い妃である。姜皇后の口から出た名前に驚きが波紋のように広がっていった。
「もう知っている部分もあるかもしれないけれど、とりあえず説明するわね。まずは獨昭媛から」
獨昭媛は全体的に細身の女性。顔の特徴としては目は大きく吊り上がっていて、まるで猫のようだと姜皇后は語る。黒い髪はしっかりと手入れされており、いつも艶めきを放つほどだとか。獨昭媛の髪は皇帝も気に入っている。
「緑色の衣を身にまとう事が多いから、見たらすぐにわかると思うわよ」
彼女は姜皇后よりも年下でまだ子供はいない。なお妊娠経験は一度あるが、早いうちに流産しているそうだ。
「彼女が嫉妬深いと言われる一因はそこだと私は思うわ。早く子が欲しい。それが焦りとなり嫉妬に繋がっているのだと」
「妊娠すれば確実に元気な子が生まれる。その保証はどこにもないからな」
「朝日の言う通りよ。私はたまたま運が良かっただけ」
(しっかりと刻み込んでおかなければなりませんね……)
次に双貴妃について紹介しなければね。と姜皇后はお茶を含みながら語る。
「彼女が政略結婚で嫁いできたのはご存じかしら?」
「ああ、その話は聞いた事がございます」
「あなたが薬師として後宮入りする前に、貴妃は亡くなって空位になったの。そこへ当てはめられたと言う具合ね。双貴妃は景季国の元王妃だから、貴妃はふさわしい位だと思う」
景季国の名前を聞いた瞬間、美雪ははっと息を呑んだ。
(林才人の、出身国……!)
脳裏に林才人の姿が思い起こされる。もしかして彼女と縁があるのではないか? そんな疑いが身体の内からあふれ出す。
「皇后様、景季国は、林才人の出身国でもありましたね」
「そうね……でも双貴妃は林才人との関係はないとみて良いと思うわ。ここから少し話は長くなるけれどよろしいかしら?」
美雪は大きく首を縦に振る。横にいた朝日もお願いします。と低い声音で返事した。
まず、林才人の姉が死ぬ要因となった、暁月国との戦争は終結した後の事。景季国では民衆や商人らが主となり反乱が生じた。
この反乱は王家に近い者達にも影響をもたらした結果、兵士や大臣達も加勢した。
「兵士や大臣達は反乱軍を先導しつつ、密かに王家を乗っ取る機会を企てていた……陛下はそう仰っていたわ。反乱軍へ火をくべるような真似はせず、静かに機を見て寝首を掻くのを待っていた、と」
そして反乱軍へと寝返った大臣と兵士により景季国の王は暗殺された。この王の娘・第二公主こそが双貴妃だったのである。
「相当怖かったでしょうね……だって寝静まった夜に突然の騒ぎだったそうだもの」
「それで……」
「」
この反乱により双貴妃の母親である王后、双貴妃含めた公主といった王家の女性達は皆助命されたものの、男性達は残らず処刑されている。
そして暗殺を主導した大臣が新たな王となり、景季国の王家は生まれ変わった。
「だけど反乱でなりかわった王を陛下はどのような人物か見定めていた。己の敵になるのか、はたまた味方になってくれるのか……そこで交渉を重ねた結果、景季国から妃をひとりだす。と言う話になったのね」
そこで白羽の矢が当たったのが他でもない双貴妃だった。
このような経緯で嫁いできた双貴妃だが、子供はいない。皇帝との夜伽もほぼない状態がゆえにお飾りの妃となっている。
それゆえ嫉妬深く、妊娠した妃を次々に毒殺していったという噂が広まっているらしい。
「あくまで噂程度に過ぎないから、証拠もないわ。これは獨昭媛にも言えるけれど」
「なるほど……」
「獨昭媛との違いは景季国との兼ね合いもあるから、でしょうね。迂闊に噂が事実かどうか、調べる事は出来ない。陛下としてはなるべく戦いは起こしたくないようだから」
(林才人の出来事が、よほど……)
彼女が起こした事件は、皇帝の心の内で傷となり今も癒えずに残り続けている。そう考えただけで美雪の胸がずきりと痛んだ。
「ちなみに双貴妃様は一体どのようなお姿をしていらっしゃるのですか?」
「それがねえ、妃達の集まりの場にも中々姿を現さないから…」
言われてみれば秋大宴祭の時、貴妃が座る席は無かった。皇后の次は淑妃の妃が座っていたのを思い出す。
「最後に見かけたときには赤みがかった髪は美しく結われていて、二重のぱっちりとした黄色い瞳をもった可愛らしい見た目をしていた記憶はあるの」
(ん……? 黄色い瞳?)
黄色い瞳と言う言葉と共に、脳の奥からある人物の姿が思い起こされる。
「そのお方、もしかしてその時……薄い黄色の衣をお召しになられてはいませんでした……?」
「言われてみればそうだったわね……美雪、どうしたの?」
(そうだ。やはり、あの時あったお妃は……!)
「実は……私、双貴妃様とお話した事がございます」
身体の震えが止まらない。
なぜなら美雪が知っている双貴妃は、嫉妬深いなんて印象はひとつもなかったのだから。
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