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第12話 龍環と皇太后
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「あなたが皇帝陛下に一体何をしたのか、正直に話してください。でなければ棒で百叩きにしますよ」
(ぎゃっ、拷問!)
どこまで正直に語るべきかを必死に思案した桃玉は、あのですね……。と切り出す。
「皇帝陛下が占いをしたそうで」
「占い? ああ……また……」
皇太后は呆れ果てた顔つきを見せながら頭を右手で支えた。
「あの子、本当にそう言うのが好きなんだから……はあ」
「あ、あの……」
「あの子、いや皇帝陛下は昔からおかしい子なんです。あやかしが視えるとか占いに興味があったりとか」
(おかしい……あやかしが視えるのがおかしい? そんな事は無いと思うけど)
「あなたも皇帝陛下に振り回されたって事ですね。疑って申し訳ありませんでした」
「いえ……でも、あやかしが視えるのがおかしい事は無いと存じますが」
「どうしてそう思うわけ?」
皇太后はギロりと桃玉を睨み付ける。彼女の黒い瞳には光は宿っていない。
「あ、いや、その……視えた方が悪しきあやかしからの被害を抑えられると言いますか」
「そんなの、視えただけではどうしようもないでしょ! 子どもが出来る訳でもないですし!」
皇太后の低く鋭い声が桃玉の身体に勢いよくぶつかってきた。驚いた桃玉はびくっと肩を跳ねさせる。
「っ! 申し訳ありません……出過ぎた真似を」
「母上。何をしてらっしゃるのですか? また新人妃いじめです?」
「皇帝陛下!」
(えっ、龍環様?)
かつかつと龍環が部下を引き連れて皇太后の目の前に現れる。釣り上がった眉と目からは怒りが溢れ出ていた。
「位は私が決めた事です。おとなしく従って頂けないでしょうか?」
「いや、それでも農民出身の女に昭容はふさわしくありません……!」
「昭容でないと、災いがもたらされるからですよ。俺の占いは百発百中。そろそろ信じてはいかがですか?」
「ぐっ……あなたがそう言うのなら……!」
「という訳で桃玉。俺についてきな」
龍環に右腕を掴まれた桃玉は引っ張られるようにして朱龍宮を後にした。
朱龍宮の広間には皇太后とその女官達が残される。
「全く……何を考えているのかしら。あやかしの事だなんて考えなくても良いのに」
皇太后の呟きが、広間中にさみしくこだました。
◇ ◇ ◇
龍環が向かった先は照天宮の中にある桃玉の部屋だった。
「はあ、大丈夫?」
「……怖かったです」
己の心境を正直に告白した桃玉。すると龍環は彼女の頭をぽんと撫でた。
「俺がいるから大丈夫」
「龍環様……」
桃玉の胸がドキッと反応した瞬間、彼女は龍環のある言葉を思い出す。
――理由は後宮に到着したら聞かせてあげる。ああ、君に一目惚れとかそう言うのではないんだけどね。
桃玉は勘違いするな。と何度も己に言い聞かせた。龍環はそんな桃玉を不思議そうに見つめている。
「桃玉、どうかした?」
「いえ、なんでもないです」
「隠し事はよくないよ?」
にやりとまるで試すような笑みを浮かべた龍環。しかしながら桃玉は何にもないです。とだけ返したのだった。
「そうか。じゃあ、俺はまた戻るよ。執務から抜け出してきた所だったから」
「えっ、そうだったんですか?! なんだか申し訳ないです」
「母上と桃玉の様子が知りたくてね。そしたら案の定母上は桃玉を……」
(わ、龍環様が怒ってる)
龍環の顔を桃玉はじっと注意深く見つめる。
「あの、龍環様は皇太后様の事がお嫌いで……?」
「……まあ、色々あるよね。正直好きではないかな」
龍環からの返答を聞いた桃玉の脳裏に、皇太后が放った言葉がよぎる。
――あの子、いや皇帝陛下は昔からおかしい子なんです。あやかしが視えるとか占いに興味があったりとか。
桃玉の表情に陰りが現れたのを、龍環は見逃さなかった。
「桃玉は気にしなくて良いよ」
「龍環様……」
「じゃ、また夜に」
龍環は配下を連れて桃玉の部屋をあとにした。次第に遠くなっていく龍環の背中を桃玉は見送る。
「龍環様……」
桃玉の呟きは、隙間風にかき消されていく。
そんなこんなで夕食の時間が訪れた。夕食もまた、豪華な品々が並ぶ。
「どうぞ、お召し上がりくださいませ」
「ありがとうございます」
(あ、餃子がある)
餃子入りスープ以外にも野菜あんかけの乗った大きなえびの唐揚げに、野菜と牛肉の煮物やひと口大に切り刻まれた果物などが並ぶ。
「いただきます」
餃子はもちもちとした食感と溢れ出す肉汁が桃玉の食欲を刺激させる。えびの唐揚げは思いのほか柔らかい。
「美味しい……!」
「お口にあったようで何よりでございます……!」
にこやかに笑う女官達。彼女達の笑みまるで大輪の花が咲き乱れているかのような麗しさを纏っている。
「夕食が終わりましたら、入浴の時間となります」
「お風呂入れるんですか?」
「皇帝陛下の夜伽役に任ぜられた妃は、夜伽前に入浴し身を清めるのがしきたりでございます」
「そうなのですね……」
夕食を完食した桃玉は、少し休憩を挟んでから大浴場のある沐浴堂という名の建物に向かった。
女官達の手を借りて服を脱ぐと、浴場へと入る。
「わあ……!」
広々とした浴場が、桃玉を出迎えてくれた。桃玉は丁寧にかけ湯をしてから浴槽に浸かる。
(お湯の温度もいい感じ。気持ちいい……! よし、作戦会議に備えて体力を回復させないと……!)
(ぎゃっ、拷問!)
どこまで正直に語るべきかを必死に思案した桃玉は、あのですね……。と切り出す。
「皇帝陛下が占いをしたそうで」
「占い? ああ……また……」
皇太后は呆れ果てた顔つきを見せながら頭を右手で支えた。
「あの子、本当にそう言うのが好きなんだから……はあ」
「あ、あの……」
「あの子、いや皇帝陛下は昔からおかしい子なんです。あやかしが視えるとか占いに興味があったりとか」
(おかしい……あやかしが視えるのがおかしい? そんな事は無いと思うけど)
「あなたも皇帝陛下に振り回されたって事ですね。疑って申し訳ありませんでした」
「いえ……でも、あやかしが視えるのがおかしい事は無いと存じますが」
「どうしてそう思うわけ?」
皇太后はギロりと桃玉を睨み付ける。彼女の黒い瞳には光は宿っていない。
「あ、いや、その……視えた方が悪しきあやかしからの被害を抑えられると言いますか」
「そんなの、視えただけではどうしようもないでしょ! 子どもが出来る訳でもないですし!」
皇太后の低く鋭い声が桃玉の身体に勢いよくぶつかってきた。驚いた桃玉はびくっと肩を跳ねさせる。
「っ! 申し訳ありません……出過ぎた真似を」
「母上。何をしてらっしゃるのですか? また新人妃いじめです?」
「皇帝陛下!」
(えっ、龍環様?)
かつかつと龍環が部下を引き連れて皇太后の目の前に現れる。釣り上がった眉と目からは怒りが溢れ出ていた。
「位は私が決めた事です。おとなしく従って頂けないでしょうか?」
「いや、それでも農民出身の女に昭容はふさわしくありません……!」
「昭容でないと、災いがもたらされるからですよ。俺の占いは百発百中。そろそろ信じてはいかがですか?」
「ぐっ……あなたがそう言うのなら……!」
「という訳で桃玉。俺についてきな」
龍環に右腕を掴まれた桃玉は引っ張られるようにして朱龍宮を後にした。
朱龍宮の広間には皇太后とその女官達が残される。
「全く……何を考えているのかしら。あやかしの事だなんて考えなくても良いのに」
皇太后の呟きが、広間中にさみしくこだました。
◇ ◇ ◇
龍環が向かった先は照天宮の中にある桃玉の部屋だった。
「はあ、大丈夫?」
「……怖かったです」
己の心境を正直に告白した桃玉。すると龍環は彼女の頭をぽんと撫でた。
「俺がいるから大丈夫」
「龍環様……」
桃玉の胸がドキッと反応した瞬間、彼女は龍環のある言葉を思い出す。
――理由は後宮に到着したら聞かせてあげる。ああ、君に一目惚れとかそう言うのではないんだけどね。
桃玉は勘違いするな。と何度も己に言い聞かせた。龍環はそんな桃玉を不思議そうに見つめている。
「桃玉、どうかした?」
「いえ、なんでもないです」
「隠し事はよくないよ?」
にやりとまるで試すような笑みを浮かべた龍環。しかしながら桃玉は何にもないです。とだけ返したのだった。
「そうか。じゃあ、俺はまた戻るよ。執務から抜け出してきた所だったから」
「えっ、そうだったんですか?! なんだか申し訳ないです」
「母上と桃玉の様子が知りたくてね。そしたら案の定母上は桃玉を……」
(わ、龍環様が怒ってる)
龍環の顔を桃玉はじっと注意深く見つめる。
「あの、龍環様は皇太后様の事がお嫌いで……?」
「……まあ、色々あるよね。正直好きではないかな」
龍環からの返答を聞いた桃玉の脳裏に、皇太后が放った言葉がよぎる。
――あの子、いや皇帝陛下は昔からおかしい子なんです。あやかしが視えるとか占いに興味があったりとか。
桃玉の表情に陰りが現れたのを、龍環は見逃さなかった。
「桃玉は気にしなくて良いよ」
「龍環様……」
「じゃ、また夜に」
龍環は配下を連れて桃玉の部屋をあとにした。次第に遠くなっていく龍環の背中を桃玉は見送る。
「龍環様……」
桃玉の呟きは、隙間風にかき消されていく。
そんなこんなで夕食の時間が訪れた。夕食もまた、豪華な品々が並ぶ。
「どうぞ、お召し上がりくださいませ」
「ありがとうございます」
(あ、餃子がある)
餃子入りスープ以外にも野菜あんかけの乗った大きなえびの唐揚げに、野菜と牛肉の煮物やひと口大に切り刻まれた果物などが並ぶ。
「いただきます」
餃子はもちもちとした食感と溢れ出す肉汁が桃玉の食欲を刺激させる。えびの唐揚げは思いのほか柔らかい。
「美味しい……!」
「お口にあったようで何よりでございます……!」
にこやかに笑う女官達。彼女達の笑みまるで大輪の花が咲き乱れているかのような麗しさを纏っている。
「夕食が終わりましたら、入浴の時間となります」
「お風呂入れるんですか?」
「皇帝陛下の夜伽役に任ぜられた妃は、夜伽前に入浴し身を清めるのがしきたりでございます」
「そうなのですね……」
夕食を完食した桃玉は、少し休憩を挟んでから大浴場のある沐浴堂という名の建物に向かった。
女官達の手を借りて服を脱ぐと、浴場へと入る。
「わあ……!」
広々とした浴場が、桃玉を出迎えてくれた。桃玉は丁寧にかけ湯をしてから浴槽に浸かる。
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