後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~

二位関りをん

文字の大きさ
51 / 79

第51話 梓晴の遺体とその共通点、広がる動揺

しおりを挟む
 龍環の手を握り、現場へと駆ける桃玉。しばらく闇夜を駆け続ける。
 そして宦官の足が止まり灯篭を地面に向けると、女の遺体が現れた。

「これが……! あ、あれは……!」
「桃玉?」

 服をまとっていない全裸の女の遺体はうなじの下付近からばっさりと髪の毛が切られ、ざんばらの髪型となっていた。そして左胸にはぽっかりと穴が開いている。
 
(……この穴、両親や林夫人達と同じ……!)

 桃玉らが遺体を見ていると、遺体はすぐさま宦官達によって即席の担架に乗せられた。遺体を見ていた桃玉と龍環の顔はどちらも青ざめている。

「……見つかりましたね」
「ああ、そうだな……生きて帰る事は叶わなかったか。今から検死を行う。準備を進めよ!」

 担架に乗せられた遺体は宦官により死亡確認が施され、龍環達は合掌した。

(もしかして、両親をおそったあやかしと同じ……?)
「陛下、仰せのままに!」

 宦官らに指示を出し終えた後、口をぎゅっと悔しそうに結ぶ龍環。彼の様子を手を握りしめながら桃玉は見るほかなかった。

◇ ◇ ◇

 お茶会は急遽お開きとなり、龍環と宦官達に照天宮まで送り届けられた桃玉は彼らに頭を下げる。

「ここまで送り届けてくださりありがとうございました……」
「礼はいらない。何が起こるか分からないからな……君に何かあったら困る」
(あやかしを浄化させるという使命が私にはあるものね)
「龍環様もお気をつけてください」
「ああ、気遣いありがとう。では俺は戻るよ。あの遺体の検死や調査を行わないといけないからね」

 踵を返して早歩きで足を進める龍環の背中を桃玉は不安そうに見ていたのだった。
 
「桃玉様、おかえりなさいませ!」

 照天宮の玄関にて女官達が桃玉を笑顔で出迎えてくれた。遺体が見つかったのを知らない彼女達はお茶会どうでしたか? と興味津々で桃玉に尋ねて来る。
 そんな彼女達に桃玉はお茶会で起こった出来事を話そうか話すまいかと少し迷ったのち、正直に切り出す事に決めた。

「実は、女性の遺体が見つかったんです」
「えっ……」

 一瞬にして動揺が女官達の間に広まっていく。

「もしかして、梓晴の……」
「やっぱり、だめだったのね……」
「皆さん……! これから検死を行うようなので……誰の遺体か分かるのはそれからだと思います」

 動揺が広がる周囲を鎮めるように桃玉が告げた言葉は、女官達の胸にしみわたっていった。

「そ、そうですよね……まだ梓晴のものだと決まったわけではないですよね……」
「すみません、早とちりを……」
(裸の状態で服は何も着ていなかったからなあ……梓晴の友人が顔を見たらすぐわかると思うけれど)

 それから時間は過ぎ深夜。自室にて就寝していた桃玉だったが、廊下から聞こえてくる悲痛な泣き声で目を覚ました。

「桃玉様、お目覚めですか?」
「あの、泣き声は……」
「やはり見つかった遺体は梓晴のものだったようです。彼女の友人達が遺体を確認した、と……」
(やっぱりあの遺体は梓晴の……)
 
 女官の話によれば友人達は検死に召喚され、確認した所梓晴の遺体だと判明したという。友人のうち2人は動けなくなるくらいに泣き崩れた為に宦官達が抱えて照天宮まで送迎したのだった。
 検死の結果、梓晴の身体からは心臓が綺麗にくり抜かれていた事が判明している。これが致命傷である事も判明した。

「そうだったのですか……それで、犯人は……」
「まだ判明しておりません。あやかしの仕業だという声もちらほら起こっています」

 女官からの言葉に、桃玉はごくりとつばを飲み込んだ。

◇ ◇ ◇

 桃玉が目醒めて女官と話していたのと同じ時。朱龍宮にある女官の部屋に、白い長髪の宦官が訪れていた。

「ぐっ……りー、ふ、さ……」

 白い長髪の宦官により、左胸を貫かれた若き女官はそのまま彼に抱かれるようにして絶命した。白い長髪の宦官はそのまま心臓をもぎ取り口にする。

「やはり、若い女の心臓は美味しいですね。食べ残しはちゃんと綺麗にしておきましょう」

 白い長髪の宦官が右手を手刀のようにして上下へと振ると自身の身体や周囲に広がっていた血は全て消えていく。

「ごちそうさまでした。さて、はやく戻らねば」

 白い長髪の宦官は、女官の部屋の扉に鍵を閉めると、暗闇の虚空に吸い込まれるようにして姿を消していった。

◇ ◇ ◇

 翌朝。桃玉はあくびをしながら目覚める。女官が用意してくれていたお白湯を飲みながら椅子に腰掛けた。

「ふわあ……」
「体調はいかがですか?」
「昨日よりかはましだけど、まだ腰が痛いなぁ……ちょっとお手洗いいってきます」
「ご同行いたしましょう」

 お手洗いを済ませ、着替えたら朝食の雑炊をかきこみつつ女官の手によりお化粧と髪結いが施されていく。

「あいたっ!」

 髪結いの途中、女官がかんざしの先端を誤って桃玉の頭皮に思いっきり突き刺してしまった。女官は謝り、桃玉は気にしないでください。と答える。

(皆、動揺してるのかな……もし、両親や林夫人達を殺したあやかしが後宮にいたら、どうしよう……)
「桃玉様!」

 1人の女官が慌てて部屋へと飛び込んできた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

『後宮薬師は名を持たない』

由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。 帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。 救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。 後宮が燃え、名を失ってもなお―― 彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男装官吏と花散る後宮〜禹国謎解き物語〜

春日あざみ
キャラ文芸
<第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。応援ありがとうございました!> 宮廷で史書編纂事業が立ち上がると聞き、居ても立ってもいられなくなった歴史オタクの柳羅刹(りゅうらせつ)。男と偽り官吏登用試験、科挙を受験し、見事第一等の成績で官吏となった彼女だったが。珍妙な仮面の貴人、雲嵐に女であることがバレてしまう。皇帝の食客であるという彼は、羅刹の秘密を守る代わり、後宮の悪霊によるとされる妃嬪の連続不審死事件の調査を命じる。 しかたなく羅刹は、悪霊について調べ始めるが——? 「歴女×仮面の貴人(奇人?)」が紡ぐ、中華風世界を舞台にしたミステリ開幕!

家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。 望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。 「契約でいい。君を妻として迎える」 そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。 けれど、彼は噂とはまるで違っていた。 政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。 「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」 契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。 陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。 これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。 指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。

処理中です...