後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~

二位関りをん

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第63話 青美人

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「陛下。まだお仕事ですか?」

 青美人がふっと龍環に近寄ると、彼の右手をさする。青美人の手は氷のように冷たい。

「うわっ!」

 あまりにも冷たかったので龍環は思わず驚いて彼女の手を振り払ってしまった。

「陛下?!」
「すまない、手があまりにも冷たかったから……」
「よく言われるのです。私の手は冷たいと……」

 うつむき、目に涙を浮かべながら語る青美人。いかにも女が男を堕とす時に使うような表情にも見える。

「そうか。それなら温かい食べ物を食べる事だな。身体を温めるのは重要だ」
「そ、そうですか。助言して頂きありがとうございます」

 自分の思うようにいかなかったのか、目を伏せぎゅっと口を結ぶ青美人を龍環は冷たい目つきで見つめている。すると宦官の1人が龍環に夕食の準備が整った事を報告しに来た。

「あの、陛下。もしよろしければ私とご一緒に夕食を頂きませんか?」

 ぱっと笑顔を作った青美人。しかし陛下はいや、いい。と断った。

「それに妃は基本、自室で夕食を取るものだからな。力分。彼女を自室まで送ってやれ」
「いや、しかし……」
「陛下! 私は陛下のおそばにいたいのでございます!」

 青美人ががばっと龍環の右腕を抱きしめた。

(冷たい! それに力が強い……! 佳淑妃の倍はあるんじゃないか?)
「痛い……! 放してくれ!」
「あ……」

 あまりにも青美人の力が強かったので龍環は右腕を抑える。龍環に拒否された青美人は茫然とした顔になった。

「すまない。後宮へと戻ってほしい。力分、送ってやれ」
「……」

 力分は困ったように左右に小さく首を振っている。すると竜環からすれば幸運な事に宦官達が3人程近くへやって来た。

「おい! この2人を後宮まで送ってやってくれ!」
「かしこまりました……!」
「仕方ありませんね……。陛下、では私はこれにて失礼いたします。青美人。戻りますよ」
「はい……うう、ひっく……」

 あからさまに泣き真似だと分かるような声と手つきを見せる青美人。力分は彼女を引き連れて、3人の宦官と共に後宮へと戻っていった。

「陛下。夕食をお持ちしました」
「ああ、置いといてくれ」

 豪華な夕食が宦官の手により机に並べられた。しかし龍環は夕食に目線を向けようとしない。

「……陛下、いかがなされました?」
「……あ、いや、なんでもない」
「ご体調がすぐれぬのかと思いまして」
(……あれ、ちょっとだけ頭痛が収まって来たような)
「いや、大丈夫だ。気遣いありがとう」

 宦官達が去り、執務室には龍環1人だけとなる。

(そういや、最近ずっと食事の時間の時には力分がいたな。頭痛に良く効く薬があるとか……でも今日は飲まないでいいか)

 1人でもしゃもしゃと夕食を食べ進めていくと、次第に頭痛が収まっていくのを感じる。すると執務室に龍環に懐いている小さな白い狐のようなあやかしがぎい……。と扉から入って来た。

「おっ! なんか、ぼけてない。はっきり視える……!」

 龍環の視界に映るあやかしの姿は以前のようにくっきりと視えていた。久々の感覚に龍環は嬉しさと同時に力分への疑いの気持ちを抱く。

(もしかしてあいつ、何か俺に飲ませていたのか? だから……頭痛がひどかったのか? でも確証が持てない)

 龍環は夕食を食べながらあやかしを指でつっついたり撫でたりして遊んでいたのだった。

◇ ◇ ◇

 そして桃玉は厨房にて桃婆の後ろ姿をじっと注意ぶかく見ていた。

「同類? あの、桃婆さん一体どういう事でしょうか……?」
 
 
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