後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~

二位関りをん

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第65話 続・仙女の話 

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 桃婆の家に迷い込んできた兵士は20歳くらいの年齢で、切れ長の黒い瞳にやや華奢だが鍛え抜かれた肉体を持った麗しい青年だった。
 彼は身体のあちこちに傷を負っていた為、桃婆は彼を家に入れて必死に看病したのだとか。

「最初は息も絶え絶えじゃった。しかしワシが傷を塞ぎ精の付く食べ物を与えたら元気になってくれた」

 しかし、戦は2人に平穏を与える事は無かった。ある日、敵軍の兵士達が桃婆の家に襲いかかってきたのだ。

「ワシはもてる力をすべて振り絞った。だが多勢に無勢。彼を守る事は出来なんだ……」

 青年は亡くなり、桃婆は力を出し尽くした事で一気に老化が進んでしまった。桃婆は青年が生前に語ってくれた家族の元へ遺体を引き渡しに行ったのだが、その地こそ、この屋敷の近くにあるのだという。
 
「ワシは家を捨て、この地で生きる事を選んだのじゃ。最初はひとりじゃったが美琳や玉琳と仲間にも恵まれた。これでワシの身の上話は終わりじゃな」
「桃婆さん……」
「そしてここからは仙女がどのような存在かを語るとするかのぅ。仙女はお主も知っているように神通力が使える不死のおなごを指す。生まれながらにして仙女の者もいれば長い修行の果てに仙女になる者もいるのじゃが、基本的には前者じゃの」

 桃婆の混じり気の無い瞳は桃玉を映している。

「そして、仙女が人間との間に子をなした時。その子に神通力の一部が受け継がれる事がある。桃玉よ、おぬしにもそれが当てはまると見えたがいかがかな?」
「……もしかして、あやかしを浄化させる力がそうでしょうか?」
「御名答。やはりワシの目はまだまだ衰えてはおらんようじゃな」
(すべてお見通しだったのね)
「しかしながら仙女は無敵の存在ではない。無論桃玉もよく知っておろう」

 桃婆の声が少し低くなる

「桃玉、あやかしを浄化させられるのかい?」
「ほんと?」

 美琳と玉琳から興味津々に尋ねられた桃玉は、後頭部をポリポリ掻きながらそうです……。とやや控えめに答えた。

「そうか、もっと早くそのような人物に出会いたかったね」
「美琳さん?」
「ああ、ごめんね。私の両親はあやかしに殺されたんだ」
「……! 私と同じですね……」

 思わぬ共通点を見つけた美琳と桃玉は互いに不思議そうに見つめ合う。

「あやかしの中には仙女をも喰らう強者つわものもいる。桃玉の母はそやつに殺されたのであろうな」
「……っ」
「あやかしの中にも選り好みをする者はいる。よく聞くのは若いおなごは味が良い、とな。選り好みをする者も勿論強者側である事は言うまでもない」
(ま、まさか……後宮のあの事件は……!)

 桃玉は服の裾を握りしめながら、口を開く。

「あ、あの……!」
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