後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~

二位関りをん

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第67話 桃玉の発見

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(どうする? あ、よし。この方法で行こう……!)
「すまない。ちょっと……誰か宦官を呼んできてくれないか? 少しめまいがするんだ……」
「え?」

 龍環が思いついたのは仮病を使い、青美人から逃れる事だった。

「宦官と医者を呼んできてほしい……」
「え……え」

 しかし青美人は困惑したうえに固まってしまった。しびれを切らした龍環は大声を出して宦官と医者を呼ぶ。

「陛下!」

 幸運にも力分ではない宦官が来てくれたので龍環は内心ほっとしつつ、青美人に自室へと戻るように伝える。

「いやです! だってだって……」

 しかし青美人は泣いて拒否する姿勢を見せる。だが龍環は彼女を見る事無く、宦官へ後宮まで送り返すように伝える。

「皇帝陛下は体調を崩されたのです。おとなしくおかえりくださいませ……」
「あ……」

 結局青美人は駆けつけた宦官達に抱きかかえられるようにして強制的に自室へと送還させられた。時折尻尾をハエたたきのように使って宦官達に抵抗を見せていたが、やっぱり力は男である宦官達の方が上だったようである。
 龍環は医者に案内され自室の架子床に寝転がった。医者にはもう治まったとして退出するよう命じた龍環は、近くにいた宦官に声を掛ける。

「すまないが、これより母上と妃達はここには来ずに後宮内で待機しておくように伝えてくれ。このままでは疲労が増すばかりだ」
「かしこまりました。陛下」
「もしかしたら青美人が来るかもしれないが、絶対に中へ入れないように」

 自室に籠もる龍環は青美人が来ないかと不安になりながらも、架子床から起き上がり、持ち込んでいた書類に目を通して印を押す作業を再開した。

(とりあえずしばらくは部屋に籠もろう……青美人はあやかしだから何か起こったら対処出来ない)

 深夜。ようやく仕事を片付けた龍環は目をこすりながらまた架子床の上に寝転がる。すると部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。

「陛下、お入りしてもよろしゅうございますか?」

 扉の先から聞こえてくるのが、龍環の祖父である先々代の時代から宮廷で働いている宦官の声である事を確認した龍環は、入るようにと告げた。

「失礼いたします。どうやら李昭容様らしきおなごが市場にいたという情報が入りましてございます」

 小声で語る宦官に、龍環はまことか? と返す。

「左様でございます。どうやら市場の店で果物を売っていたと」
「そうか。それなら明日また市場に出てくる可能性はあるかもしれないな……」
(桃玉に会いたい。そう考えるだけで胸が張り裂けそうになるくらい苦しくなる)
「陛下、明日の朝また伺ってみましょうか?」
「いや、俺が出る。皆に悟られないように……」
「うわあああああ!」

 いきなり宦官が叫ぶ声が聞こえてきた。

「なんだ?」
「見てまいります」

 宦官が扉を開けて外の様子を伺う。同時に龍環は部屋にあった槍を持ち、警戒態勢に入る。

「どうやら騒ぎがあったようでございます。陛下はここから移動した方が良いかと」
「わかった……」

 恐る恐る龍環が部屋の外に出た時だった。

「陛下!」

 左の奥から青美人が龍環を呼ぶ声が聞こえる。龍環が声をした方を見ると、そこには青美人と同じ衣服を身に纏う首が3つある白い大蛇がいた。尻尾はさっき青美人が見せていたものと全く同じ。大きさは大体人が5人くらいの巨大さで、青い瞳が満月のように瞬いている。
 誰かが呼んだのか既に屈強な兵士達が駆けつけて応戦しているが、どうやら苦戦しているらしい。

「陛下! お逃げください! 危のうございます!」
「これは……」
(やはり青美人はあやかしだったか)
「陛下! お逃げください! こやつは陛下を狙っておりまする! 一旦安全な場所に逃げてから、指揮をお願いいたします!」
「邪魔しないで!」

 首の1つが兵士の身体に噛みつこうとするが、寸での所で回避する。
 龍環は増援に来た兵士に抱きかかえられるようにして、半ば強制的にその場をあとにした。

「皆、あれはあやかしだ。兵士だけではいけない。道士も連れてきた方が良い……!」
「なんと、まさか……陛下……!」

 青美人があやかしだと未だ信じきれない様子を見せる宦官と兵士達に龍環は思わず苛立ちの感情を露わにした。

「首が3つあって人語を話す大蛇なんてどう考えてもただの獣では無いだろう! 早くあやかしに詳しい道士も連れてくるんだ!」
「はっ! 仰せのままに……!」
「そして、桃玉がいたという市場はどこにある?」
「ご案内いたします!」
(道士を呼ぶといったがここは桃玉の出番だ。彼女の力に頼るしかない)

 龍環は宦官らと必死に走る。宮廷の出入り口まであと少しの時、後方から物凄い勢いで青美人が迫りくる。

「待って! 陛下お願い待って! じゃないと私殺されちゃうの!」
「誰が待つか! 俺だって死にたくない!」
(殺されちゃう? 誰にだ?)

 ここで龍環は走りながら青美人に質問を投げかけてみる事にした。

「君は……もし、しくじったら誰に殺されちゃうんだ?」
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