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第72話 桃玉の両親と龍環の母親を殺した真犯人
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龍環が何か良い案は無いのか……。と呟いた時、桃玉がばたりと力なく倒れてしまう。
「桃玉!」
「すみません……体力が……」
「浄化の力を使った事で体力が尽きてしまったようじゃな」
冷静に判断を下す桃婆。すると外から聞こえていますか? と力分の大きな声がこだまする。
「なんだ? 桃婆さん、扉を開けても大丈夫か?」
「ええ、大丈夫でございますよ」
龍環が扉を開けると、空中にふわふわと浮遊している力分の姿があった。力分の服の裾からは青美人が見せていたのと同じ白い蛇の尻尾が見え隠れしている。
「陛下。これから私はあなた方とある話をしたいと思いましてね。青美人のように襲うつもりは全くありませんのでご心配なく」
「なんだ……?」
「あなたは後宮に戻り、桃玉様には市場で暮らしてもらう。その方が平和に暮らせると思うのです」
「断る」
「即答ですか……残念ですね。私は穏やかに宮廷で暮らしたいだけなのですが」
くくくっと笑う力分に、龍環は何が狙いか? と問う。
「狙いも何も、穏やかに暮らす事だけですよ」
「皇帝陛下、騙されてはなりませぬぞ。こやつはあやかし。必ずや裏がある事でしょう」
「仙女はこれだから困る。黙っていてくださいませんか?」
力分は黒いツタを伸ばして桃婆へと攻撃しようとするが、結界に阻まれた。
「邪魔をしたつもりはないのですがな。陛下、お話を続けてくださいまし」
「わかった。力分よ、もう一度聞こう。君の狙いは何だ? それと青美人を従えていたのは君か?」
「前者については何度でも仰る通り穏やかに暮らしたいだけでございます。そして後者は正解です」
「穏やかに暮らしたいと言っているが……仮に殺人事件が何度も起きても、それは穏やかだと言えるのだろうか?」
龍環の独り言のような質問に、力分は思わず唇をぎゅっと噛み締める。
「あれは仕方がない事です。だって人間は生きる為に食事を必要としますよね? それと同じですよ」
「……は?」
力分はやれやれ……と肩をすくめた。そしてふうっと大きく息を吐く。
「あの女官達は私が食べました」
「……君が、殺したのか?」
「殺したんじゃない。食べたんです。食べなきゃ生きていけないのですから」
(……まさか、私の両親を殺したのは……!)
「力分っ……!」
体力の尽きた桃玉が力分に向けて思いっきり声を張り上げた。力分は予期していなかったのか目を丸くさせる。
「桃玉様?」
「あなた、もしかして、私の両親を食べたの……?」
「ああ、仙女ならこれまでも何人か食べてはきましたけど……ああ、思い出しました。人間の夫と共に桃を育てている仙女がいましたね。その方の事でしょうか? その方なら桃と共に美味しく頂きましたよ。仙人に追われてちょうど瀕死の状態でしたからね……」
にっこりと笑う力分に、やっぱりか……という辛さと彼への怒りでぐちゃぐちゃになった表情を見せる桃玉。桃玉を見た龍環は怒りを声に込めながらもっと聞きたい事がある。と告げる。
「俺の母を殺したのも君か」
「ええ。そうですよ。あの時はとても面白かったのでよろしければそのお話聞かせましょうか?」
にたりと笑う力分に、龍環は殺気を放ちながら聞かせろ。と返した。
「ではお話ししましょうかね。私はあの日。初めて後宮という場所に入ったのですよ。それはそれは今と変わらぬ絢爛豪華な場所でした。そしたら目の前に妃と美しいお妃が現れたんですよねえ」
「2人…?」
「片割れの妃が怯えて美しい妃の方を襲うようにと言ったのですよ。ぐうぐうとお腹が空いていたので、私は美しい方の彼女を食べる事にしました。私にとって美しいおなごと仙女の心臓はとても美味な食材でしたから」
「君にとって人間も仙女も等しく食材なんだな……!」
怒りに震える龍環を、力分は冷たい目で見ている。
「あなた方が魚や肉を食べるのと同じですよ」
「ぐっ……」
(悔しい。けど何も言い返せない……)
「そして陛下の母親を食べるように勧めたその方こそが皇太后陛下でした」
「なんだって?」
すなわち皇太后は、龍環の母親の死の真相を知っているという事になる。それを知った龍環の脳内で、皇太后がこれまであやかしについて話したがるのを嫌がっている場面が映し出された。
(そうか……だからか……!)
「皇太后陛下は幸運な事にあなたの母上が私に食べられるのを誰にも報告しませんでしたし、助けを呼ぶ事もしませんでした」
「……み、見殺しにしたって事か?」
「そうでございます。ああ、勿論私から口封じをしたという事でもございませんよ?」
皇太后をあざ笑うかの如くくっくっく! と笑う力分を桃婆はじっと見つめていた。美琳に抱きかかえられている玉琳の目も、力分を捉えている。
「は、母上が……そのような、事を……!」
「龍環様……!」
「俺の母を助けなかった、助けようとはしなかったうえに身代わりに差し出した……!」
龍環の拳は怒りで大きく震えていた。
「桃玉!」
「すみません……体力が……」
「浄化の力を使った事で体力が尽きてしまったようじゃな」
冷静に判断を下す桃婆。すると外から聞こえていますか? と力分の大きな声がこだまする。
「なんだ? 桃婆さん、扉を開けても大丈夫か?」
「ええ、大丈夫でございますよ」
龍環が扉を開けると、空中にふわふわと浮遊している力分の姿があった。力分の服の裾からは青美人が見せていたのと同じ白い蛇の尻尾が見え隠れしている。
「陛下。これから私はあなた方とある話をしたいと思いましてね。青美人のように襲うつもりは全くありませんのでご心配なく」
「なんだ……?」
「あなたは後宮に戻り、桃玉様には市場で暮らしてもらう。その方が平和に暮らせると思うのです」
「断る」
「即答ですか……残念ですね。私は穏やかに宮廷で暮らしたいだけなのですが」
くくくっと笑う力分に、龍環は何が狙いか? と問う。
「狙いも何も、穏やかに暮らす事だけですよ」
「皇帝陛下、騙されてはなりませぬぞ。こやつはあやかし。必ずや裏がある事でしょう」
「仙女はこれだから困る。黙っていてくださいませんか?」
力分は黒いツタを伸ばして桃婆へと攻撃しようとするが、結界に阻まれた。
「邪魔をしたつもりはないのですがな。陛下、お話を続けてくださいまし」
「わかった。力分よ、もう一度聞こう。君の狙いは何だ? それと青美人を従えていたのは君か?」
「前者については何度でも仰る通り穏やかに暮らしたいだけでございます。そして後者は正解です」
「穏やかに暮らしたいと言っているが……仮に殺人事件が何度も起きても、それは穏やかだと言えるのだろうか?」
龍環の独り言のような質問に、力分は思わず唇をぎゅっと噛み締める。
「あれは仕方がない事です。だって人間は生きる為に食事を必要としますよね? それと同じですよ」
「……は?」
力分はやれやれ……と肩をすくめた。そしてふうっと大きく息を吐く。
「あの女官達は私が食べました」
「……君が、殺したのか?」
「殺したんじゃない。食べたんです。食べなきゃ生きていけないのですから」
(……まさか、私の両親を殺したのは……!)
「力分っ……!」
体力の尽きた桃玉が力分に向けて思いっきり声を張り上げた。力分は予期していなかったのか目を丸くさせる。
「桃玉様?」
「あなた、もしかして、私の両親を食べたの……?」
「ああ、仙女ならこれまでも何人か食べてはきましたけど……ああ、思い出しました。人間の夫と共に桃を育てている仙女がいましたね。その方の事でしょうか? その方なら桃と共に美味しく頂きましたよ。仙人に追われてちょうど瀕死の状態でしたからね……」
にっこりと笑う力分に、やっぱりか……という辛さと彼への怒りでぐちゃぐちゃになった表情を見せる桃玉。桃玉を見た龍環は怒りを声に込めながらもっと聞きたい事がある。と告げる。
「俺の母を殺したのも君か」
「ええ。そうですよ。あの時はとても面白かったのでよろしければそのお話聞かせましょうか?」
にたりと笑う力分に、龍環は殺気を放ちながら聞かせろ。と返した。
「ではお話ししましょうかね。私はあの日。初めて後宮という場所に入ったのですよ。それはそれは今と変わらぬ絢爛豪華な場所でした。そしたら目の前に妃と美しいお妃が現れたんですよねえ」
「2人…?」
「片割れの妃が怯えて美しい妃の方を襲うようにと言ったのですよ。ぐうぐうとお腹が空いていたので、私は美しい方の彼女を食べる事にしました。私にとって美しいおなごと仙女の心臓はとても美味な食材でしたから」
「君にとって人間も仙女も等しく食材なんだな……!」
怒りに震える龍環を、力分は冷たい目で見ている。
「あなた方が魚や肉を食べるのと同じですよ」
「ぐっ……」
(悔しい。けど何も言い返せない……)
「そして陛下の母親を食べるように勧めたその方こそが皇太后陛下でした」
「なんだって?」
すなわち皇太后は、龍環の母親の死の真相を知っているという事になる。それを知った龍環の脳内で、皇太后がこれまであやかしについて話したがるのを嫌がっている場面が映し出された。
(そうか……だからか……!)
「皇太后陛下は幸運な事にあなたの母上が私に食べられるのを誰にも報告しませんでしたし、助けを呼ぶ事もしませんでした」
「……み、見殺しにしたって事か?」
「そうでございます。ああ、勿論私から口封じをしたという事でもございませんよ?」
皇太后をあざ笑うかの如くくっくっく! と笑う力分を桃婆はじっと見つめていた。美琳に抱きかかえられている玉琳の目も、力分を捉えている。
「は、母上が……そのような、事を……!」
「龍環様……!」
「俺の母を助けなかった、助けようとはしなかったうえに身代わりに差し出した……!」
龍環の拳は怒りで大きく震えていた。
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