後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~

二位関りをん

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第73話 交渉

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「君が……母上が……俺の母親を……!」
「どうやら皇太后陛下からは何も知らされてはいなかったようでございますねぇ」

 悪辣ににたりと笑う力分と怒りに震える龍環。どちらに余裕があるかは見ての通りだ。
 しかし、この時桃玉は意識を手放しそうになっていた。

「……桃玉?」
(さっきから頭がくらくらする……体力が尽きてしまって身体も動かない……)
「……桃玉!」
「こりゃあかん! 陛下、ここは時間稼ぎがほしゅうございます……! 桃玉を回復させんとどうにもなりませぬ!」

 桃婆の顔に焦りの色が現れる。しかし今は力分がすぐ近くにいる。撤退は出来ない。

「皇帝陛下。申し訳ありませんがどうにかしてあやつをここから去ってもらわねばなりません……!」
「そうだな、どうすべきか……」
(力分には後宮に戻ってもらわなければ。しかし今、青美人を倒した以上……力分が俺と桃玉を狙っているのは言うまでもない……!)
「……! 力分! 君は穏便に暮らしたいのだろう? ならはやく後宮に戻らねば母上が困るぞ!」

 龍環の叫びに力分は顔を歪ませる。

「……! 痛い所を突いてきましたね……しかしあなたも早く宮廷に帰還せねば皆から心配されるのではないか?」
「俺なら大丈夫だ。ここに寵愛している妃がいるからな」

 力分に向けてにやりと笑う龍環。意識を失いかけている桃玉の額を優しく撫でると、にっこりと優しく笑った。

「っ! なるほど、寵愛している妃を皇帝陛下自ら探している。そう陛下は押し通したいのですね」
「そうだ。大事な妃を愛している事に何か問題でも?」
「……そう言われるとこちらとしても強く出られませんね」
「それに俺は兵士から逃げるように言われたからな」
「……青美人が暴れてくれたおかげですね。仕方ない。私が穏便に暮らすには桃玉様を倒さなければならないようですが、陛下に甘んじて見逃して差し上げます」

 力分の言葉を龍環達は注意深く聞いていた。

「ではまた明日参ります」
「明日だな?」
「ええ、陛下。また明日にお会いしましょう……」
(1日分の猶予か……いや、猶予があるだけマシだ)

 力分は不気味に笑い後ろ手を組みながら、虚空に溶けるようにして消えていった。
 龍環はすぐさま窓を閉めると、桃玉の意識をはっきりさせるべく声を掛ける。

「桃玉!」
「う……」
(視界がぼやけてく……もしかして、私、このまま死ぬのかな……?)
「陛下、あれなら何とかなるやもしれませぬ」

 桃婆の言葉に龍環はなんだ? と問う。

「桃婆、もしかしてあの桃?」
「玉琳の言う通り。今お持ちしますぞ!」

 慌てて階段を降りていく桃婆を、龍環は付いていく。

「桃婆さん! 気をつけて!」
「階段の上り下りには慣れておりまする!」

 1階に降りた桃婆は、そのまま厨房へと小走りで移動する。
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