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第74話 白仙桃
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厨房に入った桃婆は、厨房の奥にある漆塗りの棚の扉を開く。その中には黒い漆塗りの箱がいくつも収納されていた。
「これじゃな……」
桃婆から見て右側に置かれた黒い漆塗りの箱を取り出すと黄色い紐を解いて蓋を開ける。
「これは……!」
箱の中には白い桃がぎゅうぎゅうに詰まっていた。みずみずしさがあり、ずしりと重量のある桃である。
「こちらは仙桃……それも仙桃の中でも特に希少な白仙桃でござりまする。仙女及び仙女の力を引くものがこれを食べればどのような状態からも回復する事が出来る代物でございます」
「白仙桃?」
「そうでございます。仙桃というのは仙女しか栽培できない桃……そしてこの豊かな神通力にあふれる白仙桃を食べれば、桃玉は回復するはず……」
「そうなのか……?」
「桃玉は母親が仙女でございます。彼女があやかしを浄化させる事が出来るのは、母親の力が遺伝したからにほかなりませぬ。そして何を隠そう、この白仙桃はワシ自ら栽培し収穫したものでございます。必ずや桃玉を回復させる事が出来ると信じておりまする……」
桃玉の出生にまつわる話を聞いた龍環は驚きながらも、桃と桃婆さんを交互に真剣に見つめていた。
「わかった。ではその白仙桃を食べさせよう」
龍環の指示に桃婆は真剣な目つきで大きく首を振ると、厨房にあった包丁で白仙桃の皮を剥き、食べやすい大きさに切っていく。そして切り終えると白いお皿へぱっぱっと放射線状に盛り付けた。
白地にほんのり薄桃色をした白仙桃は白いお皿に良く映える。
「これで、よし……と」
「桃婆さん。俺が持っていくよ」
「ありがとうございます。では、お願いいたします……」
龍環が白仙桃の乗ったお皿を持ち、階段を駆け上がる。
「桃玉!」
ぐったりと動けなくなっている桃玉の口元に、龍環は白仙桃を一切れ差し出した。
(桃?)
ぱくりと食べる桃玉。すると、身体のうちから体力が湧き水のように湧いて出てくる。
(体力が回復してきてる。それに身体が動かせそうだ)
「あ……」
「桃玉! 気がついたか?」
「桃玉さん!」
「桃玉! 桃玉の目が開いていってるよ!」
桃玉の目が開かれて行くのに気がついた龍環達は何度も桃玉に声を掛け続けた。
桃玉の意識は次第に鮮明になっていく。
(しゃきしゃきしていて甘い。美味しい……お母さんとお父さんが育てていた桃と、なんか、似ているような)
「皆さん……!」
「桃玉、この白仙桃を食べるんだ。さあ!」
「……白仙桃ですか?」
「そうだ。神通力にあふれるこの桃を食べれば、君は回復する……!」
龍環に勧められ、桃玉はもしゃもしゃと白仙桃を食べ続けた。4つ目を食べ終わると桃玉の体力が完全に回復し、すっきりとした感覚を覚える。
「元気に……なりました! 頭もなんだかすっきりはっきりしてます!」
「良かった! 桃婆さんありがとう!」
「なんのなんの、あら、半分余りましたねぇ……ワシらも食べるといたしますか」
余った白仙桃は、桃婆と龍環、美琳と玉琳が1つずつ食べたのだった。
「新鮮で甘みもあってとても美味しいな。今まで食べてきた桃の中でもひときわ美味しさが目立つ」
「桃婆の仙桃は美味しいんだよ。陛下」
龍環相手にも構わず呑気に語る玉琳に、美琳が慌てた様子を見せる。
「玉琳、陛下にはちゃんと敬語で話さなきゃだめだよ!」
「まあ、美琳さん気にしないで。これくらいで俺は怒らないから」
「陛下は器が大きいんだねぇ」
「はあ、玉琳らしいといえば玉琳らしいか」
ははは……。と暖かい空気の中笑い声が部屋中に響き渡ったのだった。
「よし、皆食べ終わった所で作戦会議を練らなければなりませんのぅ。力分が来るのは明日。それまでにはどうにかしなければなりませぬ」
桃婆の低い声が、暖かい空気を切り裂いていく。
「これじゃな……」
桃婆から見て右側に置かれた黒い漆塗りの箱を取り出すと黄色い紐を解いて蓋を開ける。
「これは……!」
箱の中には白い桃がぎゅうぎゅうに詰まっていた。みずみずしさがあり、ずしりと重量のある桃である。
「こちらは仙桃……それも仙桃の中でも特に希少な白仙桃でござりまする。仙女及び仙女の力を引くものがこれを食べればどのような状態からも回復する事が出来る代物でございます」
「白仙桃?」
「そうでございます。仙桃というのは仙女しか栽培できない桃……そしてこの豊かな神通力にあふれる白仙桃を食べれば、桃玉は回復するはず……」
「そうなのか……?」
「桃玉は母親が仙女でございます。彼女があやかしを浄化させる事が出来るのは、母親の力が遺伝したからにほかなりませぬ。そして何を隠そう、この白仙桃はワシ自ら栽培し収穫したものでございます。必ずや桃玉を回復させる事が出来ると信じておりまする……」
桃玉の出生にまつわる話を聞いた龍環は驚きながらも、桃と桃婆さんを交互に真剣に見つめていた。
「わかった。ではその白仙桃を食べさせよう」
龍環の指示に桃婆は真剣な目つきで大きく首を振ると、厨房にあった包丁で白仙桃の皮を剥き、食べやすい大きさに切っていく。そして切り終えると白いお皿へぱっぱっと放射線状に盛り付けた。
白地にほんのり薄桃色をした白仙桃は白いお皿に良く映える。
「これで、よし……と」
「桃婆さん。俺が持っていくよ」
「ありがとうございます。では、お願いいたします……」
龍環が白仙桃の乗ったお皿を持ち、階段を駆け上がる。
「桃玉!」
ぐったりと動けなくなっている桃玉の口元に、龍環は白仙桃を一切れ差し出した。
(桃?)
ぱくりと食べる桃玉。すると、身体のうちから体力が湧き水のように湧いて出てくる。
(体力が回復してきてる。それに身体が動かせそうだ)
「あ……」
「桃玉! 気がついたか?」
「桃玉さん!」
「桃玉! 桃玉の目が開いていってるよ!」
桃玉の目が開かれて行くのに気がついた龍環達は何度も桃玉に声を掛け続けた。
桃玉の意識は次第に鮮明になっていく。
(しゃきしゃきしていて甘い。美味しい……お母さんとお父さんが育てていた桃と、なんか、似ているような)
「皆さん……!」
「桃玉、この白仙桃を食べるんだ。さあ!」
「……白仙桃ですか?」
「そうだ。神通力にあふれるこの桃を食べれば、君は回復する……!」
龍環に勧められ、桃玉はもしゃもしゃと白仙桃を食べ続けた。4つ目を食べ終わると桃玉の体力が完全に回復し、すっきりとした感覚を覚える。
「元気に……なりました! 頭もなんだかすっきりはっきりしてます!」
「良かった! 桃婆さんありがとう!」
「なんのなんの、あら、半分余りましたねぇ……ワシらも食べるといたしますか」
余った白仙桃は、桃婆と龍環、美琳と玉琳が1つずつ食べたのだった。
「新鮮で甘みもあってとても美味しいな。今まで食べてきた桃の中でもひときわ美味しさが目立つ」
「桃婆の仙桃は美味しいんだよ。陛下」
龍環相手にも構わず呑気に語る玉琳に、美琳が慌てた様子を見せる。
「玉琳、陛下にはちゃんと敬語で話さなきゃだめだよ!」
「まあ、美琳さん気にしないで。これくらいで俺は怒らないから」
「陛下は器が大きいんだねぇ」
「はあ、玉琳らしいといえば玉琳らしいか」
ははは……。と暖かい空気の中笑い声が部屋中に響き渡ったのだった。
「よし、皆食べ終わった所で作戦会議を練らなければなりませんのぅ。力分が来るのは明日。それまでにはどうにかしなければなりませぬ」
桃婆の低い声が、暖かい空気を切り裂いていく。
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