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第4話 美華の理念
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浩明は美華の言った事が理解できなかった。普通、皇帝に嫁いだ女子なら、皇帝の子を産みたいがために夜伽に励むのが道理ではないのか?
という疑問をぶつけてみた浩明。しかし美華は笑ったままだ。
「私は皇后として多くの民に寄り添い、救いたいという理念がございます。子はいなくても良いのです」
「そう考えているのか?」
「はい。御仏様からくださったこの力で人々に寄り添い病を癒し……徳を積みたいのでございます」
「待て。ここは尼寺ではないのだぞ」
浩明の言う通り、ここは修行の場ではなく皇帝の寵愛を得て世継ぎを生みはぐくむ場所である。
だが美華の脳内には、そのような考えはひとつも無かった。
「世継ぎは側室が産めば良い事ではございませんか。たとえお飾りのものであったとしても、私は皇后として……」
「わかった、もういい」
もう話しても無駄だ。価値観が違う。そう考えた浩明は美華の話を遮った。美華は言い過ぎたかもしれない。と少しだけ反省した後、浩明に背を向けて目を閉じる。
(陛下の事怒らせちゃったかな……でも、私に出来る事はこれくらい。皇后として頑張らないと)
静かなまま、夜が過ぎ朝を迎える。朝になり分かれた両者は互いの居住区画で朝食を取る。美華の女官達は、昨日彼女が波動の力で女官の発作を無くした話を美華には聞こえないようにして口々に振り返っていた。
「まさか皇后様にあのようなお力があったなんて……」
「まるで神様みたいだわ」
「すごかったわよねえ……」
「でも、皇后としては見た目は地味ですんごい美人って訳でもないのは事実じゃない?」
まだまだ美華に対して否定的な態度をとる者もいるが、それでも美華へ対して尊敬の念と驚きの感情を持つ女官達は数を増やしていっているようだ。
「ん……よいしょ」
当の美華は昨日よりかは物を零したり落としたりはしていなかった。全くなかった訳ではないが十分進歩していると言っていいだろう。
(力のコツ、だいぶつかめた。やっぱりこういうのって時間がかかるのね)
昼過ぎ。浩明が玉座に座り、家臣達の会議を聞いていた時の事だった。
「む、大丈夫ですか?」
家臣のひとりが、お腹を押さえてうずくまり始めた。
「ぐ……腹が痛い……なぜだ……」
「おいおい! 全部出しちまえば楽になるんじゃないのか? 早く厠へ行けって!」
「いや、動けぬ……まるで殴られているようだ……いかん、このままでは……」
苦しむ家臣を見た浩明の脳裏に、美華の目隠しで覆われた顔がよぎった。
「仕方ない。美華を呼ぼう」
という疑問をぶつけてみた浩明。しかし美華は笑ったままだ。
「私は皇后として多くの民に寄り添い、救いたいという理念がございます。子はいなくても良いのです」
「そう考えているのか?」
「はい。御仏様からくださったこの力で人々に寄り添い病を癒し……徳を積みたいのでございます」
「待て。ここは尼寺ではないのだぞ」
浩明の言う通り、ここは修行の場ではなく皇帝の寵愛を得て世継ぎを生みはぐくむ場所である。
だが美華の脳内には、そのような考えはひとつも無かった。
「世継ぎは側室が産めば良い事ではございませんか。たとえお飾りのものであったとしても、私は皇后として……」
「わかった、もういい」
もう話しても無駄だ。価値観が違う。そう考えた浩明は美華の話を遮った。美華は言い過ぎたかもしれない。と少しだけ反省した後、浩明に背を向けて目を閉じる。
(陛下の事怒らせちゃったかな……でも、私に出来る事はこれくらい。皇后として頑張らないと)
静かなまま、夜が過ぎ朝を迎える。朝になり分かれた両者は互いの居住区画で朝食を取る。美華の女官達は、昨日彼女が波動の力で女官の発作を無くした話を美華には聞こえないようにして口々に振り返っていた。
「まさか皇后様にあのようなお力があったなんて……」
「まるで神様みたいだわ」
「すごかったわよねえ……」
「でも、皇后としては見た目は地味ですんごい美人って訳でもないのは事実じゃない?」
まだまだ美華に対して否定的な態度をとる者もいるが、それでも美華へ対して尊敬の念と驚きの感情を持つ女官達は数を増やしていっているようだ。
「ん……よいしょ」
当の美華は昨日よりかは物を零したり落としたりはしていなかった。全くなかった訳ではないが十分進歩していると言っていいだろう。
(力のコツ、だいぶつかめた。やっぱりこういうのって時間がかかるのね)
昼過ぎ。浩明が玉座に座り、家臣達の会議を聞いていた時の事だった。
「む、大丈夫ですか?」
家臣のひとりが、お腹を押さえてうずくまり始めた。
「ぐ……腹が痛い……なぜだ……」
「おいおい! 全部出しちまえば楽になるんじゃないのか? 早く厠へ行けって!」
「いや、動けぬ……まるで殴られているようだ……いかん、このままでは……」
苦しむ家臣を見た浩明の脳裏に、美華の目隠しで覆われた顔がよぎった。
「仕方ない。美華を呼ぼう」
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