後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん

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第5話 これが波動の力

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 浩明は迷いを打ち払うかのように玉座から立ち上がった。

「皇后を連れてこい。医師と薬師もだ」
(あいつには薬の事はわからんとみていいだろう。念のために薬師も呼んでおかねば)
「なっ……皇后様も、ですか?」

 なぜこのような一大事に皇后を? と家臣達は疑問に感じていた。どうやら昨日の出来事を知らない者達が多いようだが、知っている者はもしかして? と小首をかしげている。

「いいから早くつれてこい!」
「かしこまりました!」

 という訳で宦官達によって大広間へと連れられてきた美華の顔つきは険しいものになっていた。

(さて、どうなる?)

 お腹を押さえてうずくまる家臣に両手を前へとかざしながら駆け寄る美華。そしてしゃがみこんで両手を腹部の上へとかざし始めると、冷や汗をかいていた家臣の顔は穏やかなものへと変わっていった。

「い、痛くない……全然痛くないぞ」
「それなら良かったです。私の力が効いたようでございますね」

 にっこりと笑いながらすっと立ち上がる美華。一部始終を玉座から見届けた浩明は、ごくりと唾を飲み込んだ。

(まぐれなどではない。本物の波動の力だ)
「陛下。もう御用はございませんか?」
「ああ、大丈夫だ。下がって良い」
「かしこまりました。それでは失礼いたします」

 また両手を前へと掲げて足早に去っていく美華。様子を見ていた家臣達はぽかんと口を開けたまま何も言えないでいる。

「……貴様達、驚いたであろう?」

 うんうんうん。と大きく何度も首を縦に振る家臣達。当の美華の力を受けた家臣もまた、目をまんまるに見開いていた。
 念のためその場に留まっていた薬師と医師がその場で診察を行うが、異常無しと診断される。

「おお……皇后様が不思議なお力で急な腹痛を癒したと……」
「まるで、伝説に出て来る御仏様のようでございますな」

 ここでいう伝説とは、龍の国の建国に関する伝説。あの邪龍を打ち倒したのに貢献した御仏の事だ。

「まさか、皇后様は御仏様の生まれ変わりではないのか?」
「なんと! しかしもしそうだったら……陛下と交わっても良いのだろうか……邪淫と捉えれたら……」
(見事に憶測が広まっていっているな。本当の事を話しても良いのだろうか)

 だが、勝手に話して美華の機嫌を損ねるのはよしたい。と浩明の良心がそれを制する。

「わが皇后は素晴らしい力を持っている。だが、皇后に頼りきりでは良くない。皆、健康に気を付けるように」

 という語る事だけにとどめておいたのだった。
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