後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん

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第13話 李賢妃の誘惑

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 治療院は連日多くの人達で賑わっている。最近は怪我人だけでなく、宮廷を見る為だけに来た健康な民もちらほら姿を現すようになった。
 この事に浩明は頭を抱えている状態である。宮廷は一般人が立ち入る場所ではない。機密が漏れたりするような事があれば一大事だ。

「一体どうすれば良いのか」

 治療院を閉鎖するという考えも思いついたが、それだと民は辛い思いをする上に、自らに非難が集中するのは容易に想像出来る。それに美華が悲しむ様子もよぎった浩明の胸の内にある良心は痛んだ。

(何か良い考えは無いのか)

 というか元を辿れば美華を皇后に出迎えたからこうなったのではないのだろうか? とも浩明は思うようになってきている。

(婚儀を延期するのではなく、新たな娘を出迎えたら良かった……)

 だが、後悔しても遅い。仮に美華と離縁すればまた五大名家から娘を探して皇后に迎えなければならない。皇后の次に偉い位である劉貴妃を皇后にする訳にもいかないのだ。

(はあ……めんどうだ。お飾りの癖にここまで行動力があるとは思わなかった)

 家臣に何か良い案は無いか? と尋ねてもなかなか皆が納得出来そうな案は出てきていない。
 
(だめだ。頭を冷やしに庭園でも行こう)

 家臣を引き連れて後宮内にある大庭園を訪れるとそこにはすでに先客がいた。李賢妃である。

「陛下……お目にかかれて光栄にございます」 
「お前は……李賢妃か」
「左様でございます」

 季節の花々が色とりどりに咲き誇る広大な庭園の中にはいくつか東屋がある。李賢妃はまたとない好機が来たわ! と心の中だけで喜びながら、小さな微笑みを携えて浩明を東屋へ案内した。

「陛下と語らう事が出来まして嬉しゅうございます」
「そうか。そんなに嬉しいのか」
(そこまで喜ぶ必要はないだろうに……)
「陛下、お疲れのようでございますか? お顔が……」

 李賢妃に疲労を指摘された浩明は正直に疲労がある事を打ち明けた。

「皇后様の事でございますか?」
「ああ……そんな所だな」
(お飾り皇后の癖に……陛下を困らせるなんて)
「陛下。私がおりますから大丈夫でございますよ」

 李賢妃は赤漆塗りの椅子から立ち上がると、浩明を後ろから優しく抱きしめた。彼女の衣服に染み付いた香の香りが浩明の鼻腔を刺激した瞬間、浩明の顔がほんの少し歪む。

(香がくさいな……もっと良い香りのものは無かったのか)

 浩明が香の匂いに難色を示しているのに、李賢妃は気がついていないようだ。

「愛しい陛下……私がついておりますからね」 
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