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第24話 変わり始める思い
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冷宮。それは後宮の妃達にとっては地獄の如き場所……というか地獄そのものである。
基本何かしら罪を犯した妃が入る建物なのだが、内装はほぼ無で家具も必要最低限のものしか設置されていない。更に日が当たらない場所に立地されている為か、冷宮入りした者が病にかかり命を落とすという事もこれまであった。
そんなおそろしい冷宮だが、先々代の皇帝が即位して以後、使われた事が無いという無人区画と化していたのである。
「しかし劉貴妃様、冷宮でございますか?」
「ええ、李賢妃様。その冷宮と治療院を合体すればいいのではないかと思ったのですわ」
「ええ?! た、確かに一から増築するよりかは予算を削る事は出来ますが……」
「そうでございましょう? 最初から建てるよりかはいいのではなくて?」
美華はふむふむ、確かに劉貴妃様のおっしゃる通りでございますね。と彼女の意見に賛成する意志を見せるが、李賢妃は抵抗があるようだ。
「もし、もしですよ? これから誰か妃がやらかして冷宮行きってなったらその時はどうするおつもりなのですか?」
「冷宮以外の刑で処罰すればよろしいのではなくて? 斬首とか」
白飯を頬張りながら斬首と軽やかに言い放った劉貴妃。対する李賢妃はえっ……? とドン引きな表情を浮かべているが、美華の耳には届いていないようだ。
「いやいやおぞましすぎません? 問答無用で斬首だなんて」
「私、そういう刑法や取り締まりには興味ございませんので。周徳妃様ならお詳しいでしょうけど」
「劉貴妃様は……後宮での諍いにはご興味がないので?」
「ええ、そうね。興味ありませんわ」
興味ないんだ……。と口から零れそうになるのを何とか止めた李賢妃は、では話を戻しましょう。と前置きしたうえで、どう治療院と冷宮をつなぎますか? と劉貴妃に問いかける。
「まずは治療に必要な部屋についても考えないといけませんわね。例えば、止血したり添木したりする場所とか……」
「劉貴妃様、それは私が治しているので必要ないですね」
「あっそうでございました……。う――ん、では、今一番場所を取っている道具? などがありましたら教えてくださいますか?」
「それならやはり……薬箱ですかね?」
薬を入れる棚は治療院が開いてからどんどん増えていっている。勿論薬を必要としない患者もいるのだが、それでも撤廃する訳にもいかないのが現状だ。
「では、冷宮を薬棚置き場にすれば良いのではないですか?」
「ほほう……なるほど。李賢妃様はどう思われます?」
(確かに良い案だわ。日当たりが良くないって事は、直射日光を防ぐ事が可能って事だし)
「私も賛成です」
その後も夕食を取りながらの会議が続く。夕食後はそのまま劉貴妃の住まう区画に留まり、大きな紙に試案を書きながら、治療院で働く者達の配置についても話し合いを行う。
「……ですので。やはりまずは患者の分級を行ってから、必要な患者を治すという風にすべきですわ。皇后様」
「うへえっ。やっぱりそうなりますか……」
「正直に言うと、膝擦りむいたとかそう言うのは止血すればどうとでもなりますので」
軽傷・軽症の者には美華の力は使わず、薬師医師の診察と処置で対応すべきという劉貴妃からの意見に美華は難色を示していた。己の力で治してこそ! という信念のある美華にとっては中々踏ん切りがつかないでいるようだ。
「皇后様、その方がより様々な患者様を治す事が出来るのでございますよ?」
「うっ、確かに劉貴妃様のおっしゃる通りではありますけど……でも」
この人は自分で治したいという強い気持ちがあるのか……。と感じた李賢妃はそのこだわりは分かりますけども、効率の方が大事なのではありませんか? と美華に告げる。
「た、確かにそうですよね……」
「優先すべきはこだわりよりも、数でしょう? 劉貴妃様」
「はい、そうですわね」
「うっ……わかりました。ではそのように致しましょう」
分級後、軽症者は医師と薬師により治療、中等者以上は美華による治療が決定した。また処置に当たって替えの衣服などの用意や、傷を洗い流せる浴槽のような場所の設置も決まる。
そして気が付けば夜遅い時刻となっていた。
「あ、よかったら3人で寝ます?」
「はい? 皇后様、さすがに3人では狭いですよ」
「李賢妃様ご安心を。私は床でも寝られますので」
そう言って何も被らず床で寝転がる美華に、李賢妃はいやいや皇后様がそのような事をしないでください! と慌てて止めに入る。
「では、おふたりでそこの架子床を使ってください。私は読みたい本がございますので夜明けまで起きている事に致しますわ」
「えっ?! で、でも」
「お構いなく」
劉貴妃様の背中とまだ床で寝転がっている美華を交互に見ながら、李賢妃は頭を抱えたのであった。
(もうっ! どうしろっていうのよ!)
その頃。浩明は閨にて李賢妃が治療院を改装したいと言ってきた事を振り返っていた。そばには九嬪の位に該当する妃が横になって眠っている。
(何か引っかかるな……こやつも治療院については良く思っているのだろうか?)
基本何かしら罪を犯した妃が入る建物なのだが、内装はほぼ無で家具も必要最低限のものしか設置されていない。更に日が当たらない場所に立地されている為か、冷宮入りした者が病にかかり命を落とすという事もこれまであった。
そんなおそろしい冷宮だが、先々代の皇帝が即位して以後、使われた事が無いという無人区画と化していたのである。
「しかし劉貴妃様、冷宮でございますか?」
「ええ、李賢妃様。その冷宮と治療院を合体すればいいのではないかと思ったのですわ」
「ええ?! た、確かに一から増築するよりかは予算を削る事は出来ますが……」
「そうでございましょう? 最初から建てるよりかはいいのではなくて?」
美華はふむふむ、確かに劉貴妃様のおっしゃる通りでございますね。と彼女の意見に賛成する意志を見せるが、李賢妃は抵抗があるようだ。
「もし、もしですよ? これから誰か妃がやらかして冷宮行きってなったらその時はどうするおつもりなのですか?」
「冷宮以外の刑で処罰すればよろしいのではなくて? 斬首とか」
白飯を頬張りながら斬首と軽やかに言い放った劉貴妃。対する李賢妃はえっ……? とドン引きな表情を浮かべているが、美華の耳には届いていないようだ。
「いやいやおぞましすぎません? 問答無用で斬首だなんて」
「私、そういう刑法や取り締まりには興味ございませんので。周徳妃様ならお詳しいでしょうけど」
「劉貴妃様は……後宮での諍いにはご興味がないので?」
「ええ、そうね。興味ありませんわ」
興味ないんだ……。と口から零れそうになるのを何とか止めた李賢妃は、では話を戻しましょう。と前置きしたうえで、どう治療院と冷宮をつなぎますか? と劉貴妃に問いかける。
「まずは治療に必要な部屋についても考えないといけませんわね。例えば、止血したり添木したりする場所とか……」
「劉貴妃様、それは私が治しているので必要ないですね」
「あっそうでございました……。う――ん、では、今一番場所を取っている道具? などがありましたら教えてくださいますか?」
「それならやはり……薬箱ですかね?」
薬を入れる棚は治療院が開いてからどんどん増えていっている。勿論薬を必要としない患者もいるのだが、それでも撤廃する訳にもいかないのが現状だ。
「では、冷宮を薬棚置き場にすれば良いのではないですか?」
「ほほう……なるほど。李賢妃様はどう思われます?」
(確かに良い案だわ。日当たりが良くないって事は、直射日光を防ぐ事が可能って事だし)
「私も賛成です」
その後も夕食を取りながらの会議が続く。夕食後はそのまま劉貴妃の住まう区画に留まり、大きな紙に試案を書きながら、治療院で働く者達の配置についても話し合いを行う。
「……ですので。やはりまずは患者の分級を行ってから、必要な患者を治すという風にすべきですわ。皇后様」
「うへえっ。やっぱりそうなりますか……」
「正直に言うと、膝擦りむいたとかそう言うのは止血すればどうとでもなりますので」
軽傷・軽症の者には美華の力は使わず、薬師医師の診察と処置で対応すべきという劉貴妃からの意見に美華は難色を示していた。己の力で治してこそ! という信念のある美華にとっては中々踏ん切りがつかないでいるようだ。
「皇后様、その方がより様々な患者様を治す事が出来るのでございますよ?」
「うっ、確かに劉貴妃様のおっしゃる通りではありますけど……でも」
この人は自分で治したいという強い気持ちがあるのか……。と感じた李賢妃はそのこだわりは分かりますけども、効率の方が大事なのではありませんか? と美華に告げる。
「た、確かにそうですよね……」
「優先すべきはこだわりよりも、数でしょう? 劉貴妃様」
「はい、そうですわね」
「うっ……わかりました。ではそのように致しましょう」
分級後、軽症者は医師と薬師により治療、中等者以上は美華による治療が決定した。また処置に当たって替えの衣服などの用意や、傷を洗い流せる浴槽のような場所の設置も決まる。
そして気が付けば夜遅い時刻となっていた。
「あ、よかったら3人で寝ます?」
「はい? 皇后様、さすがに3人では狭いですよ」
「李賢妃様ご安心を。私は床でも寝られますので」
そう言って何も被らず床で寝転がる美華に、李賢妃はいやいや皇后様がそのような事をしないでください! と慌てて止めに入る。
「では、おふたりでそこの架子床を使ってください。私は読みたい本がございますので夜明けまで起きている事に致しますわ」
「えっ?! で、でも」
「お構いなく」
劉貴妃様の背中とまだ床で寝転がっている美華を交互に見ながら、李賢妃は頭を抱えたのであった。
(もうっ! どうしろっていうのよ!)
その頃。浩明は閨にて李賢妃が治療院を改装したいと言ってきた事を振り返っていた。そばには九嬪の位に該当する妃が横になって眠っている。
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