後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん

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第46話 新婚旅行?

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「陛下!」

 再開した治療院に浩明が偵察に訪れたので、美華は喜んで彼らを出迎えた。

「美華。やっているか」
「はい! 私も皆さんも頑張ってます!」

 治療院には、以前より少ないもののそれでも多くの人が列をなしていた。
 一度美華が力を放出したのが、人の数に表れているのだろう。浩明が一通り治療院を見ると美華に治療院が終われば大広間に来て欲しいという事を伝える。

「かしこまりました。忘れず来ます」 
「わかった。待っている」

 そして治療院が閉まり、大広間に現れた美華を玉座に座る浩明が静かに見下ろしながら出迎えた。

「雪美華、ただいま参りました」
「ああ、まずは今日のお勤めご苦労」
「ありがたき幸せにございます」
「本題から参ろう。まずは、3日後俺は海龍村にて龍族が催す秘祭を見に行く事になった」

 御仏から聞いていた話だ! と美華は浩明には分からぬように心を躍らせる。

「それでだ、えぇと……ミハイルだったか。説明を頼む」

 家臣団に付き添われ、金髪碧眼に色白の美青年が美華の目の前に現れた。西洋の国の出で立ちは時折治療院で見かけるものではあるが、やはり龍の国のそれとは全く違うのを感じる。

「ハジメマシテ皇后サマ。ミハイル・ヴィンセドールス、ト申シマス」

 片言で龍の国の言葉を話すミハイルに、美華はいつものように挨拶を交わす。

「美華。ミハイルは、西洋のとある国から来た貴族だそうだ。侯爵と言ったか」
「アナタ、陛下ト結婚シテカナリ経ツト、ウカガイマシタ。新婚旅行ニハマダ行カレテナイノモ聞キマシタ」
「新婚旅行でございますか?」

 ミハイルと浩明の説明曰く、西洋の国では結婚したばかりの夫婦は新婚旅行と呼ばれる旅行に赴くのが流行っているらしい。行き先は様々です有名な寺院や観光地を2人っきりで旅するのだとか。

「新婚旅行シナイノハ勿体ナイデス!」
「……とミハイルは言っているが、我々龍の国の後宮ではそんな事無かったからなあ……」
「なるほど……」

 基本、妃は後宮の外には出ないし、当たり前ながら新婚旅行という概念自体ここには無いのだ。

「あの、すこしよろしいでしょうか?」
「なんだ? 美華」
「お飾りの皇后でも新婚旅行はいけるのですか?」

 この瞬間、浩明はげっ! と変な声を出してしまった。そして浩明からすれば運の悪い事にミハイルは興味ありそうな顔をのぞかせる。

「ホホウ、オ飾リノ妻トイウモノデゴザイマスカ」
「なっ……美華、まだその……覚えていたのか」
「ええ、そうですけど……?」
「オ飾リノ妻トイウノハ、ウチノ国ニモアリマス」

 どうやらミハイルの国ではお飾りの妻というのはよくある事らしい。契約関係による結婚だったり本当のお飾り状態だったりと多岐にわたるが、そんなお飾り妻の全員が全員、不幸であるとも限らないそうだ。
 浩明は説明はその辺にしよう。と火消しした後んんっ! と咳払いする。

「まずはもう俺は君をお飾りとは見ない。そして俺は美華と新婚旅行に……行きたいと思っているのだが、美華はどうする?」
(どっちにしろ行って邪龍の鱗を入手しなくちゃ)
「行きます」
「即答か。驚いたな……」

 という事で、龍の国が始まって以来初の出来事となる新婚旅行が急遽決まったのだった。
 前代未聞の事態ではあるが、浩明やその家臣団は割と好意的に捉えているようで、美華も御仏から言われた言葉を何度も反芻しながら、新婚旅行の日程について詳しい説明を受ける。出立は明日。あさってには現地に到着する予定だ。

(……龍の鱗。必ず探し出せないと)
「美華?」
「あっ、陛下……失礼しました」

 浩明と美華の全て交わりそうで交わらない感情が新婚旅行への期待を膨らませていく。
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