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第65話 大地震
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※今話には地震の描写がございます。
苦手な方はご注意を。
「もしも、もしもでございますよ? あなた方が留守にしている間、悪徳商人が家にやって来たとします。あなた方の奥様方が文字の読み書きができなければどうなると思いますか?!」
声を荒げるヴィンセドールス侯爵夫人へ、反対派の家臣団は虫の息のような声で、騙されてしまいます……と返す。
「聞こえませんね?!」
「だ、騙されてしまうと……思います……!」
「そうでしょうそうでしょう。それで、あなた方は妻のせいにするのですか?」
「うっ……!」
痛い所を突かれた反対派の家臣団は何も言い返せない。ぐぬぬ……と唇をかむ者もいれば、そうだ。確かに夫人の言う通りだ……。とがっくりと肩を落とす者もいる。
「陛下。という訳でこの計画は進めるべきでございます」
「わかった。ヴィンセドールス侯爵夫人の説教、素晴らしかったぞ」
「お褒めに預かり、恐悦至極にございます」
服の両裾を手で掴んで広げ、ぺこりと西洋式のお辞儀をする彼女の顔には、笑みが浮かんでいた。
「では、そのように計画を進めていく! 万事良いな!」
「はっ仰せのままに!」
その後も教育や医療について浩明と美華はミハイル夫妻と意見交換しつつ、家臣団からの意見も聞いているとあっという間に時間が経つ。
「……食事をするのを忘れていたな」
浩明の周囲に並ぶ品々は全て冷めきっていた。ミハイル夫妻を見送った後、浩明は机に並ぶ料理の数々に目を配る。
「すまないが温め直してくれ。また夕食時に頂く」
「かしこまりました、陛下」
(すべてを破棄するなんてもったいないしな……)
すると美華が浩明の元にとことこと近寄って来た。
「余ったものは私がいただきましょうか?」
「美華……だが結構余っているぞ?」
それなら女官と分けましょうか。と美華が答えると浩明はそれでいいのか? と気にする質問をする。
「だって……手は付けていないとはいえ、残り物ではあるし」
「あ、そうでした……そこを考えていませんでした。では、陛下と私のふたりでいただきますか」
「そうだな。せっかくだ。ふたりっきりで食べながら話さないか?」
という事で夕食は個室にて昼食会にて余った食材を温め直して食べる事になった。狭めの個室で食事をする美華の口元は子供のようにほころんでいる。
「やはり宮廷での食事はおいしゅうございますね」
牛肉と野菜の煮込み料理を頬張りながら笑顔を見せる美華に浩明の胸が高鳴った。
「そうだな。宮廷の料理は好きだ」
「私もです。……食べ過ぎには注意しないとですね」
2人があっという間に食べ終わり、お茶をすすっている時だった。
「……ん?」
足元が小さく左右に揺れ動いたのを浩明が知覚した瞬間、轟音とともに大地が大きく揺れ動き始めた。
「わあああああああああ!」
「っ陛下!」
茶器が飛んで中のお茶が全てぶちまかれ、椅子から投げ出されるように崩れ落ちた2人は急いで机の下に身を隠す。
「美華! しっかり捕まってろ!」
「は、はい! 陛下!」
「揺れが落ち着くまで手を離すな!」
必死に地震をやり過ごすが、地震の力は兎にも角にもすさまじい。
あちこちから轟音や悲鳴が沸き起こる。
「美華、美華! 手を離すな!」
「はい!」
必死に地震に耐える2人だが、机の柱がバキッと折れた。
「っ!」
「美華!」
美華は無意識のうちに、浩明の背中の上へと覆い被さる。その華奢な背中に折れた机や倒れてきた家具などが倒れてきた。
揺れが引き、浩明が目を覚ます。
「美華……?」
自身の背中の上に、庇うようにして美華が倒れ込んでいた。
「……美華! 美華!」
苦手な方はご注意を。
「もしも、もしもでございますよ? あなた方が留守にしている間、悪徳商人が家にやって来たとします。あなた方の奥様方が文字の読み書きができなければどうなると思いますか?!」
声を荒げるヴィンセドールス侯爵夫人へ、反対派の家臣団は虫の息のような声で、騙されてしまいます……と返す。
「聞こえませんね?!」
「だ、騙されてしまうと……思います……!」
「そうでしょうそうでしょう。それで、あなた方は妻のせいにするのですか?」
「うっ……!」
痛い所を突かれた反対派の家臣団は何も言い返せない。ぐぬぬ……と唇をかむ者もいれば、そうだ。確かに夫人の言う通りだ……。とがっくりと肩を落とす者もいる。
「陛下。という訳でこの計画は進めるべきでございます」
「わかった。ヴィンセドールス侯爵夫人の説教、素晴らしかったぞ」
「お褒めに預かり、恐悦至極にございます」
服の両裾を手で掴んで広げ、ぺこりと西洋式のお辞儀をする彼女の顔には、笑みが浮かんでいた。
「では、そのように計画を進めていく! 万事良いな!」
「はっ仰せのままに!」
その後も教育や医療について浩明と美華はミハイル夫妻と意見交換しつつ、家臣団からの意見も聞いているとあっという間に時間が経つ。
「……食事をするのを忘れていたな」
浩明の周囲に並ぶ品々は全て冷めきっていた。ミハイル夫妻を見送った後、浩明は机に並ぶ料理の数々に目を配る。
「すまないが温め直してくれ。また夕食時に頂く」
「かしこまりました、陛下」
(すべてを破棄するなんてもったいないしな……)
すると美華が浩明の元にとことこと近寄って来た。
「余ったものは私がいただきましょうか?」
「美華……だが結構余っているぞ?」
それなら女官と分けましょうか。と美華が答えると浩明はそれでいいのか? と気にする質問をする。
「だって……手は付けていないとはいえ、残り物ではあるし」
「あ、そうでした……そこを考えていませんでした。では、陛下と私のふたりでいただきますか」
「そうだな。せっかくだ。ふたりっきりで食べながら話さないか?」
という事で夕食は個室にて昼食会にて余った食材を温め直して食べる事になった。狭めの個室で食事をする美華の口元は子供のようにほころんでいる。
「やはり宮廷での食事はおいしゅうございますね」
牛肉と野菜の煮込み料理を頬張りながら笑顔を見せる美華に浩明の胸が高鳴った。
「そうだな。宮廷の料理は好きだ」
「私もです。……食べ過ぎには注意しないとですね」
2人があっという間に食べ終わり、お茶をすすっている時だった。
「……ん?」
足元が小さく左右に揺れ動いたのを浩明が知覚した瞬間、轟音とともに大地が大きく揺れ動き始めた。
「わあああああああああ!」
「っ陛下!」
茶器が飛んで中のお茶が全てぶちまかれ、椅子から投げ出されるように崩れ落ちた2人は急いで机の下に身を隠す。
「美華! しっかり捕まってろ!」
「は、はい! 陛下!」
「揺れが落ち着くまで手を離すな!」
必死に地震をやり過ごすが、地震の力は兎にも角にもすさまじい。
あちこちから轟音や悲鳴が沸き起こる。
「美華、美華! 手を離すな!」
「はい!」
必死に地震に耐える2人だが、机の柱がバキッと折れた。
「っ!」
「美華!」
美華は無意識のうちに、浩明の背中の上へと覆い被さる。その華奢な背中に折れた机や倒れてきた家具などが倒れてきた。
揺れが引き、浩明が目を覚ます。
「美華……?」
自身の背中の上に、庇うようにして美華が倒れ込んでいた。
「……美華! 美華!」
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