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第66話 未曽有の危機・折れた心
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「う……」
美華の全身に仄かな黄金の光が溢れ出てきた。波動の力による自己再生である。
「ふう、痛かったぁ……」
美華は浩明の手を握り、部屋の外の廊下へと引っ張った。浩明は足を動かして、這いずるように移動する。
「おい美華! 動いても大丈夫なのか!?」
「波動の力で自己再生しましたので、もう元気もりもりです。陛下こそお怪我はございませんか?」
彼女の元気が有り余る姿を見た浩明は、息を吐きながらへなへなと冷たい廊下に座り込んだ。
「はあ……心配した……ああ、俺はなんとも無い」
「申し訳ありません、陛下。でも私は健在です。さあ、行きましょう!」
「おい、どこに行く!」
「勿論救助でございます!」
こんな事態初めてのはずなのに、美華の顔は使命感でキラキラと輝いているように見える。
(絶対、助ける!)
あちこち崩れた廊下をひた走る美華は屋外へと出ると両手を天に掲げた。
「まずは、宮廷を元に!」
ひび割れの目立つ石畳の地面へ向って両手をたたきつけるようにして波動の力を目一杯放出させると、宮廷の建物は時間を超高速で巻き戻していくようにして元に戻る。
「よし、次に怪我人がいないかどうか……! 全員助かりますように……御仏様、お願いします……!」
(波動の力を出したから、いないとは思うけど……!)
御仏に祈りをささげた美華は、皆さん大丈夫ですか? 怪我人はいませんか? と大きな声を張り上げる。
「きゃあああ!」
突如耳をつんざく程の悲鳴が、余震らしき小さな振動と共に響き渡る。
悲鳴がした方へ向かうとそこは鶴龍殿だった。
「こ、皇后様……! に、女官が……」
「屋敷を直してくださりありがとうございます! 怪我人はいませんが、2人の女官が……!」
鶴龍殿の中に入ると、女官が2人土ぼこりまみれになったまま仰向けに倒れていた。
「!」
美華は彼女達の首元に手を当てるが、脈は感じられない。
「失礼します……」
胸に手を当てても、鼓動は感じられなかった。
(……死んでいる。助けられなかった……)
「この2人は、家具に押しつぶされていたみたいで……!」
駆けつけた医者が改めて2人を確認し死亡宣告を下すと女官達はがっくりと肩を落としたり、座り込んだりしてしまう。
美華の心の柱も、バキッと折れた音がした。
「助けられなかった……」
美華の胸に訪れる去来感と罪悪感が、彼女の身体を縛り付けて動かなくさせる。
(……助けたかった。お世話になった女官だし、更に)
その時、浩明が美華を追いかけてきた。
「美華! どうした」
「……女官が……」
「助からなかったか」
「……はい……助けられませんでした」
美華の閉じられた目から涙が溢れ出し、目隠しの布が水分で滲み、染みを形成していく。
浩明はそんな彼女の目隠しの布を取ってあげた。
(今は……敢えて美華に声をかけるべきだ)
「美華、今は思いっきり泣け。それが彼女達の救いになるだろう。泣いてくれるだけ情をかけてくれていたとな」
「へ、陛下っ……」
「それと、自分を責めるな」
浩明の言葉に、美華と周りにいた女官達がはっと息を呑んだ。
「いいか。彼女達が助からなかったのは君達のせいじゃない。だから自分を責めるな!」
「……!」
「俺達はやれる事をやる。それだけだ。さぁ、美華行けるか?」
「陛下……!」
浩明は突っ立ったままの美華に優しく手を差し伸べる。
美華はその手を固く握りしめると、心の中で折れた柱がゆっくりと再生していくのを理解した。
「さあ、さっきみたいに己の使命を燃やせ、美華」
「っはい!」
2人は手を堅く握り合い、駆け出していく。
「皆、無事か!?」
あちこちから無事です! という声が湧き上がる。
(宮廷の皆さんの無事を確かめられたら、今度は街の皆を助けなきゃ!)
涙はいつの間にか枯れ果て、決意が閉ざされたままの瞼の裏に隠れた瞳に宿る。
この未曾有の危機でも諦めない。彼女の思いは炎のように輝いていた。
美華の全身に仄かな黄金の光が溢れ出てきた。波動の力による自己再生である。
「ふう、痛かったぁ……」
美華は浩明の手を握り、部屋の外の廊下へと引っ張った。浩明は足を動かして、這いずるように移動する。
「おい美華! 動いても大丈夫なのか!?」
「波動の力で自己再生しましたので、もう元気もりもりです。陛下こそお怪我はございませんか?」
彼女の元気が有り余る姿を見た浩明は、息を吐きながらへなへなと冷たい廊下に座り込んだ。
「はあ……心配した……ああ、俺はなんとも無い」
「申し訳ありません、陛下。でも私は健在です。さあ、行きましょう!」
「おい、どこに行く!」
「勿論救助でございます!」
こんな事態初めてのはずなのに、美華の顔は使命感でキラキラと輝いているように見える。
(絶対、助ける!)
あちこち崩れた廊下をひた走る美華は屋外へと出ると両手を天に掲げた。
「まずは、宮廷を元に!」
ひび割れの目立つ石畳の地面へ向って両手をたたきつけるようにして波動の力を目一杯放出させると、宮廷の建物は時間を超高速で巻き戻していくようにして元に戻る。
「よし、次に怪我人がいないかどうか……! 全員助かりますように……御仏様、お願いします……!」
(波動の力を出したから、いないとは思うけど……!)
御仏に祈りをささげた美華は、皆さん大丈夫ですか? 怪我人はいませんか? と大きな声を張り上げる。
「きゃあああ!」
突如耳をつんざく程の悲鳴が、余震らしき小さな振動と共に響き渡る。
悲鳴がした方へ向かうとそこは鶴龍殿だった。
「こ、皇后様……! に、女官が……」
「屋敷を直してくださりありがとうございます! 怪我人はいませんが、2人の女官が……!」
鶴龍殿の中に入ると、女官が2人土ぼこりまみれになったまま仰向けに倒れていた。
「!」
美華は彼女達の首元に手を当てるが、脈は感じられない。
「失礼します……」
胸に手を当てても、鼓動は感じられなかった。
(……死んでいる。助けられなかった……)
「この2人は、家具に押しつぶされていたみたいで……!」
駆けつけた医者が改めて2人を確認し死亡宣告を下すと女官達はがっくりと肩を落としたり、座り込んだりしてしまう。
美華の心の柱も、バキッと折れた音がした。
「助けられなかった……」
美華の胸に訪れる去来感と罪悪感が、彼女の身体を縛り付けて動かなくさせる。
(……助けたかった。お世話になった女官だし、更に)
その時、浩明が美華を追いかけてきた。
「美華! どうした」
「……女官が……」
「助からなかったか」
「……はい……助けられませんでした」
美華の閉じられた目から涙が溢れ出し、目隠しの布が水分で滲み、染みを形成していく。
浩明はそんな彼女の目隠しの布を取ってあげた。
(今は……敢えて美華に声をかけるべきだ)
「美華、今は思いっきり泣け。それが彼女達の救いになるだろう。泣いてくれるだけ情をかけてくれていたとな」
「へ、陛下っ……」
「それと、自分を責めるな」
浩明の言葉に、美華と周りにいた女官達がはっと息を呑んだ。
「いいか。彼女達が助からなかったのは君達のせいじゃない。だから自分を責めるな!」
「……!」
「俺達はやれる事をやる。それだけだ。さぁ、美華行けるか?」
「陛下……!」
浩明は突っ立ったままの美華に優しく手を差し伸べる。
美華はその手を固く握りしめると、心の中で折れた柱がゆっくりと再生していくのを理解した。
「さあ、さっきみたいに己の使命を燃やせ、美華」
「っはい!」
2人は手を堅く握り合い、駆け出していく。
「皆、無事か!?」
あちこちから無事です! という声が湧き上がる。
(宮廷の皆さんの無事を確かめられたら、今度は街の皆を助けなきゃ!)
涙はいつの間にか枯れ果て、決意が閉ざされたままの瞼の裏に隠れた瞳に宿る。
この未曾有の危機でも諦めない。彼女の思いは炎のように輝いていた。
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