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第67話 押し寄せる人達
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「よし、何とか無事は確認出来た」
宮廷内を駆け回った結果、死者は鶴龍殿の2人と宮廷の宦官2人の合わせて4名となった。死者が出たのは残念だったが、これは美華の責任ではない。
「まずは検死を。そして余震に気を付けながら、丁重に弔ってくれ」
浩明からの指示を受けた検死担当の医者達はかしこまりました。と言って遺体を専用の箇所へと搬送していった。
そんな中、宦官から驚きの報告が上がる。
「街の人々達が、一斉に治療所へとなだれ込んで来ています!」
「なんだと?!」
(! 行かなきゃ!)
報告を聞いた美華は両手を前へかざし波動の力を使いながら治療院へと走った。
「扉が……! いいや、ここで!」
目の前には既にけが人が列をなしている。美華がここへ来たのを見つけた瞬間、皇后様! だとか早く治療院を開けてください! と必死の形相で声を挙げ始めた。
「……ここは、まとめて力を使うしかない」
これまでの中で一番力を放出しなければならないだろう。と予感した美華は、どうなってもいいやという気持ちと、ここで死ねば陛下達を悲しませてしまう……。というふたつの気持ちで板挟みとなってしまう。
(多くの人達を、見捨てるわけにはいかない……でも陛下を悲しませたくはない)
「その力を使えるのは誰ですか?」
ここでぴん! と糸を張り詰めたかのような御仏の声が、美華の脳内に響いた。
「あなたは何の為にその力を使っているのですか? さっきの悲しみは何でですか?」
(そうだ……皆を助ける為に……!)
「……よし!」
御仏の言葉に背中を押された美華は、両手にありったけの波動の力を込めた。
「はあああああっ!」
余すことなく一気に力を解放する。放たれた波動の力が空気の渦となり、それが何重にも美華を中心として波紋の如く龍の国全てに広がっていった。
「おおおっ!」
渦は一瞬とはいえ、人々にはちゃんと見えている。勿論美華から放たれたものである事も理解していた。
「皇后様が……凄まじい力を放出なさったぞ」
「あ、おい! 家が綺麗になっている! それに痛かった足もきれいになってる!」
「本当だ! 足があんなに痛かったのに……!」
「腕の骨が折れていたのに、綺麗に戻っている!」
歓喜に湧く民を、美華はほっと安堵した表情で見守っていた。彼らの喜び合う姿こそ見えてはないが、声が雰囲気が彼女に伝わって来る。
「ふう、邪龍の鱗のおかげか体力の消耗が以前よりも少ない……これなら安心して力を使えそうです」
美華は両手を何度も閉じては広げるのを繰り返す。彼女は己の力に更に自信をつけたのだった。
◇ ◇ ◇
ここは龍の国の中央部に位置する山岳地帯。大地震によりあちこち山が崩れていたが、美華の力を受けて元通りになっていた。
が、ひとつだけ彼女の力をもってしても、元通りにはならなかった箇所がある。
「お、おい。なんか……東の方の山の真ん中から洞穴からでっかい何かが出てないか?」
「それに黒い泥みたいなのも出てるな」
「! 逃げろ! あの泥、滝のように出てきているぞ!」
そう。この巨大な山の中にはあの邪龍の死体が封印されていたのである。大地震により山が大きく崩れた結果、邪龍の死体の封印が解けてしまったのだった。
そんな邪龍の死体からは長年封じ込められていた瘴気が黒い泥となって滝のようにあふれ出してきている。
「わああああ!」
黒い泥に飲み込まれた者は全身が黒い石となり、固まってしまう。そんな泥から逃げる手立てはない。
「た、助けてくれ!」
近くの農民達は必死になってあちこちへ逃げるも、黒い泥は容赦なく彼らを飲み込んでいった。
宮廷内を駆け回った結果、死者は鶴龍殿の2人と宮廷の宦官2人の合わせて4名となった。死者が出たのは残念だったが、これは美華の責任ではない。
「まずは検死を。そして余震に気を付けながら、丁重に弔ってくれ」
浩明からの指示を受けた検死担当の医者達はかしこまりました。と言って遺体を専用の箇所へと搬送していった。
そんな中、宦官から驚きの報告が上がる。
「街の人々達が、一斉に治療所へとなだれ込んで来ています!」
「なんだと?!」
(! 行かなきゃ!)
報告を聞いた美華は両手を前へかざし波動の力を使いながら治療院へと走った。
「扉が……! いいや、ここで!」
目の前には既にけが人が列をなしている。美華がここへ来たのを見つけた瞬間、皇后様! だとか早く治療院を開けてください! と必死の形相で声を挙げ始めた。
「……ここは、まとめて力を使うしかない」
これまでの中で一番力を放出しなければならないだろう。と予感した美華は、どうなってもいいやという気持ちと、ここで死ねば陛下達を悲しませてしまう……。というふたつの気持ちで板挟みとなってしまう。
(多くの人達を、見捨てるわけにはいかない……でも陛下を悲しませたくはない)
「その力を使えるのは誰ですか?」
ここでぴん! と糸を張り詰めたかのような御仏の声が、美華の脳内に響いた。
「あなたは何の為にその力を使っているのですか? さっきの悲しみは何でですか?」
(そうだ……皆を助ける為に……!)
「……よし!」
御仏の言葉に背中を押された美華は、両手にありったけの波動の力を込めた。
「はあああああっ!」
余すことなく一気に力を解放する。放たれた波動の力が空気の渦となり、それが何重にも美華を中心として波紋の如く龍の国全てに広がっていった。
「おおおっ!」
渦は一瞬とはいえ、人々にはちゃんと見えている。勿論美華から放たれたものである事も理解していた。
「皇后様が……凄まじい力を放出なさったぞ」
「あ、おい! 家が綺麗になっている! それに痛かった足もきれいになってる!」
「本当だ! 足があんなに痛かったのに……!」
「腕の骨が折れていたのに、綺麗に戻っている!」
歓喜に湧く民を、美華はほっと安堵した表情で見守っていた。彼らの喜び合う姿こそ見えてはないが、声が雰囲気が彼女に伝わって来る。
「ふう、邪龍の鱗のおかげか体力の消耗が以前よりも少ない……これなら安心して力を使えそうです」
美華は両手を何度も閉じては広げるのを繰り返す。彼女は己の力に更に自信をつけたのだった。
◇ ◇ ◇
ここは龍の国の中央部に位置する山岳地帯。大地震によりあちこち山が崩れていたが、美華の力を受けて元通りになっていた。
が、ひとつだけ彼女の力をもってしても、元通りにはならなかった箇所がある。
「お、おい。なんか……東の方の山の真ん中から洞穴からでっかい何かが出てないか?」
「それに黒い泥みたいなのも出てるな」
「! 逃げろ! あの泥、滝のように出てきているぞ!」
そう。この巨大な山の中にはあの邪龍の死体が封印されていたのである。大地震により山が大きく崩れた結果、邪龍の死体の封印が解けてしまったのだった。
そんな邪龍の死体からは長年封じ込められていた瘴気が黒い泥となって滝のようにあふれ出してきている。
「わああああ!」
黒い泥に飲み込まれた者は全身が黒い石となり、固まってしまう。そんな泥から逃げる手立てはない。
「た、助けてくれ!」
近くの農民達は必死になってあちこちへ逃げるも、黒い泥は容赦なく彼らを飲み込んでいった。
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