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第71話 船に乗り
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池の船に乗り込み終えた美華と浩明。船首部分に龍の彫刻があるなどかなり豪華な見た目なのが今の非常事態を忘れさせてくれるくらいのちぐはぐさを感じさせてくれる。
「黒い泥、どうなるのでしょう……」
「そうよね、怖いわ……」
「陛下、もうすぐそこまで迫ってきているのでしょうか」
「美華……もう迫ってきていてもおかしくはないかもしれないな……」
皆、その時が来るのを覚悟しながら待つ。もちろん恐怖こそあるが、ひとりではないのが精神的に救いになっているようだ。
「大丈夫。私がいるから」
「お願い、私の手を握っていて」
「ええ、勿論よ」
などというやり取りをする女官達九ひんの姿も見られる。
「船の上だと地震あんまりわからないね。いつも揺れてるから」
そう独り言を漏らす玉成淑妃は、子供のように三角座りをしていた。
「……まだ、ですかね」
「ああ、美華……こちらからはまだ何にも見えぬな」
浩明が美華の目の代わりとなって、周りの状況を逐一教えてくれている。
それから体感で10分後の事だった。
「あれか? あっちに黒い線が見える」
その黒い線は、徐々にこちらへと向かいながら線を太くさせていく。
「やはりそうか。まるで波のようだな……皆! しっかり捕まれ! 黒い泥が来るぞ!」
黒い泥がついに池の手前まで押し寄せてきた。必死につかまる者、目をつむる者、祈りをささげる者や互いに抱き合ったり手を繋ぐ者……。と様々な反応を見せている。
「ん?」
黒い泥は、池の上を覆うようにしてこちらへとやってきて、船は黒い泥の上を浮かびながら漂う。
「黒い泥の上に……船が乗っている」
「へ、陛下……? 確かにさっきとは感覚は変わりませんが」
「それに、黒い泥は池の水を覆っているようだ」
浩明は試しに近くにあった棒を掴むと、それで黒い泥とその下にある池の水をぐるぐるとかき混ぜる。
しかし黒い泥と池の水は交わろうとしなかった。
「まるで油だな……」
「油……」
「美華、池の水が水なら、黒い泥は油のようだ。性質が似ている気がする」
美華は浩明の考えを側で聞きながら頭の中で想像を膨らます。
「これに、何かきっかけがあれば良いのだが……」
「陛下、黒い泥の上に水を撒いたらどうなるのでしょうか?」
「なるほど……やってみるか」
棒で黒い泥を器用に押しのけて、空いた箇所から桶で池の水を汲み、黒い泥の上にかけてみる。
「……交わらないな」
浩明の手により撒かれた池の水は、黒い泥の上にかかったまま。
「……!」
「なるほどな……この黒い泥をどうにか出来る方法がここにあるのかもしれない」
「ですが陛下、根源を止めないとどうにもならないのでは?」
美華からの問いに、浩明は腕を組んで更に考え始める。
「黒い泥、どうなるのでしょう……」
「そうよね、怖いわ……」
「陛下、もうすぐそこまで迫ってきているのでしょうか」
「美華……もう迫ってきていてもおかしくはないかもしれないな……」
皆、その時が来るのを覚悟しながら待つ。もちろん恐怖こそあるが、ひとりではないのが精神的に救いになっているようだ。
「大丈夫。私がいるから」
「お願い、私の手を握っていて」
「ええ、勿論よ」
などというやり取りをする女官達九ひんの姿も見られる。
「船の上だと地震あんまりわからないね。いつも揺れてるから」
そう独り言を漏らす玉成淑妃は、子供のように三角座りをしていた。
「……まだ、ですかね」
「ああ、美華……こちらからはまだ何にも見えぬな」
浩明が美華の目の代わりとなって、周りの状況を逐一教えてくれている。
それから体感で10分後の事だった。
「あれか? あっちに黒い線が見える」
その黒い線は、徐々にこちらへと向かいながら線を太くさせていく。
「やはりそうか。まるで波のようだな……皆! しっかり捕まれ! 黒い泥が来るぞ!」
黒い泥がついに池の手前まで押し寄せてきた。必死につかまる者、目をつむる者、祈りをささげる者や互いに抱き合ったり手を繋ぐ者……。と様々な反応を見せている。
「ん?」
黒い泥は、池の上を覆うようにしてこちらへとやってきて、船は黒い泥の上を浮かびながら漂う。
「黒い泥の上に……船が乗っている」
「へ、陛下……? 確かにさっきとは感覚は変わりませんが」
「それに、黒い泥は池の水を覆っているようだ」
浩明は試しに近くにあった棒を掴むと、それで黒い泥とその下にある池の水をぐるぐるとかき混ぜる。
しかし黒い泥と池の水は交わろうとしなかった。
「まるで油だな……」
「油……」
「美華、池の水が水なら、黒い泥は油のようだ。性質が似ている気がする」
美華は浩明の考えを側で聞きながら頭の中で想像を膨らます。
「これに、何かきっかけがあれば良いのだが……」
「陛下、黒い泥の上に水を撒いたらどうなるのでしょうか?」
「なるほど……やってみるか」
棒で黒い泥を器用に押しのけて、空いた箇所から桶で池の水を汲み、黒い泥の上にかけてみる。
「……交わらないな」
浩明の手により撒かれた池の水は、黒い泥の上にかかったまま。
「……!」
「なるほどな……この黒い泥をどうにか出来る方法がここにあるのかもしれない」
「ですが陛下、根源を止めないとどうにもならないのでは?」
美華からの問いに、浩明は腕を組んで更に考え始める。
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