後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん

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第72話 共鳴

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 浩明は確認の為に、家臣団から黒い泥についての詳しい報告をもう一度聞く事にした。まとめると龍の国の中央部にある山岳地帯にある山が地震により崩壊・中から封印されていた邪龍の死体から黒い泥があふれ出しているという事である。

「やはり、邪龍の死体を何とかするしかないか。炎で焼いてしまえば全て灰と化するであろうが……」

 浩明は油とよく似た成分を持つ黒い泥に注目する。家臣に火打石で火を起こすように命じたのだ。

(油と似た成分なら……燃えてしまう)

 その火を黒い泥の上に落としてみた。すると、火はそのまま黒い泥の上で蒸発していくかのように消えていく。

(なるほど。燃え広がる事は無いか)
「よし、今から船を動かせ。ここから邪龍の死体が封印されている地点まで向かう事にする!」
「ですが陛下、準備などは……!」

 たとえ邪龍の死体まで近づけたとしても、邪龍の死体を再封印する何かしらの方法が無ければ手も足も出ない。浩明は自分の判断が早すぎた事を理解し、そうだったな……。と呟いた。

(こういう時、御仏様が声をかけてくれたらいいんだけど)

 と、美華は心の中で吐き出すが一向に夢の世界へと誘われる気配もない。そんな中2人と同じ船に乗っていた女官が突如、胸を抑え始めた。

「っ……! げほげほっ!」
「! どうかしましたか?!」
「っごほごほっ……喘息の、発作が……!」
「わかりました、すぐに治します!」

 美華が手かざしを行った時。黒い泥が突如波のようにうねりだした。

「なっ!」
「勢いが強まっている……!」

 女官が治ったのを見届けた美華は慌てて手を下ろした。すると黒い泥の波は引き、凪いでいく。
 
「! まさか、これ……! 波動の力と……」

 美華は試しに自らの左腕を右手の爪で引っかき、傷をつけてからそこに手かざしをする。
 そうすると、またも黒い泥の波が起こった。

「美華! もしかしたら、波動の力と黒い泥は同調しているんじゃないか!?」
「はっ!」
(邪龍の鱗に……共鳴している!?)
「よく気が付きましたね」

 ここで美華の真っ暗闇な視界から、いつもの御仏が祀られた祠がある場所に変わる。

「御仏様! ここで私をお呼びですか!?」
「すみませんね、緊急事態という事で手短に話します」

 御仏の声は前回よりも小さくなっていた。

「今回の地震で、邪龍の死体の封印が解けてしまいました。再封印しないと黒い泥は止まらないままです」

 もしかして、波動の力と黒い泥は共鳴しています? と美華が尋ねると、御仏はそうです。と即答する。

「じゃあ、どうやって。この波動の力が使えないと……!」
「今からまずは私の祠まで来てください。話はそれからです」

 力強い御仏の言葉に、美華ははい。とはっきりと返事をした。
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