大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。

文字の大きさ
12 / 38

十二話 パンはいつになったらできるのかな?

しおりを挟む
 あの中年のおばさんに小麦を渡したら、お礼と言われて半分もくれた。

 魔物たちも多分もう村を襲わないと伝えると喜んでいた。

 もしかしたら作物の作り方を学びに来るかもしれないと伝えると驚いてたけど。

 思ったよりも沢山の小麦を得て、僕たちは森に戻った。

「ただいまー」
「おかえりなさい」

 手ぶらで帰って来た僕たちを見てカイトくんは首を傾げてたけど、ユリが変体して小麦を大量に吐き出すと目をまん丸くして驚いた。可愛いな本当に。

「これでしばらく食べ物には困らないね!」
「ノア、小麦はそのままじゃ食べれないよ」
「はっ…そうだった」

 小麦ってどう加工するんだ。
 僕小麦粉しか見たことないよ。
 なんなら小麦粉をどうすれば何ができるのかも分からないよ?パンとかうどんができるんだっけ?

 うースマホがあれば調べられるのに…

「小麦から小麦粉を作る魔法とかないかな…」

 僕が分厚い魔法書をめくり始めると、カイトくんが大きくため息をついた。

「あなた、小麦の扱いも知らないまま今日までよく生きてこれましたね…」
「だってご飯なくても生きてけるんだもん…」
「物置とかないんですか」

 物置…というかゴミ置き場ならあるけど…

 取りあえずカイトくんをガラクタの溜まり場となっている部屋につれて行った。

「きたない…」
「汚くないもん!」
「なんなんですかこのデカイ鍋…」

 カイトくんは文句を言いながらガラクタの山をかき分けていく。

「あ、あった」

 カイトくんが手招きするので見てみるとそこには円柱状の石があった。
 そういやこんなの蕎麦屋で見たことあるな…いやうどん屋だっけ?

「なんだこれ」
「これで小麦をひくんです」
「へぇ」
「僕じゃ重くて運べないので…」

 たしかにカイトくんには無理そうだ。

 僕は石臼みたいなそれを身体強化魔法をかけてから持ち上げた。

 うわ、割とずしっとくるな…

「すごいですね…こんな重たいの持ち上げられるなんて」
「大魔法使いだからね~」

 余裕ぶって僕はそれを厨房に運んだ。

「よいしょ、と……で、これってどう使うの」
「えっと、たしか、この穴から…」

 カイトくんはいろいろとやり方を教えてくれた。

「ふむふむ、つまり、ここから小麦を入れて、これをぐるぐるして、粉だけ取り出せばいいのね」
「はい」

 昔の道具だけあって、構造は単純だった。

 手作業でやったらとんでもない労力がかかりそうだけど…

 鍋をかき回すとき、棒を自動で動かしてくれる魔法の応用で自動化できそう。

「ユリ~」
「なぁに」
「大きい瓶と小麦出して」

 ユリを呼んで、ユリから小麦と瓶を出してもらう。
 日常的に使うものはユリに飲み込ませている。四次元ポケットみたいで便利だ。

 出て来た瓶に小麦を入れて魔法をかける。
 同時に石臼にも自動化魔法をかけた。

 すると…

「わぁ、すごい…」
「やぁあ、やっぱ僕天才かも?」

 一定量の小麦が瓶から石臼に入り、自動で回る石臼が引くようになった。

「これで小麦粉ゲットだね」

 小麦粉があればパンが作れる。
 でも…

 きゅるる、とカイトくんのお腹が控えめに音を立てた。

「…お肉でよければ食べる?」
「…お願いします」

 僕とユリは急いで森にでてカイトくんのために魔獣を一匹仕留めた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

リオネル・デュランの献身

BL
落ち目の男娼リアンの唯一の趣味は、若きディオレア国王の姿絵を集めること。ある日久しぶりについた新規の客は、リアンに奇妙な条件を提示してくる。 執着君主×頑張る美人

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

【完結済み】騎士団長は親友に生き写しの隣国の魔術師を溺愛する

兔世夜美(トヨヤミ)
BL
アイゼンベルク帝国の騎士団長ジュリアスは留学してきた隣国ゼレスティア公国の数十年ぶりのビショップ候補、シタンの後見となる。その理由はシタンが十年前に失った親友であり片恋の相手、ラシードにうり二つだから。だが出会ったシタンのラシードとは違う表情や振る舞いに心が惹かれていき…。過去の恋と現在目の前にいる存在。その両方の間で惑うジュリアスの心の行方は。※最終話まで毎日更新。※大柄な体躯の30代黒髪碧眼の騎士団長×細身の20代長髪魔術師のカップリングです。※完結済みの「テンペストの魔女」と若干繋がっていますがそちらを知らなくても読めます。

【完結】片想いを拗らせすぎたボクは君以外なら誰とでも寝るけど絶対に抱かれない

鈴茅ヨウ
BL
亀山瑠色(かめやま・るい)は、親友に10年、片想いをする22歳。 ≪誰とでも寝る≫を公言して憚らないが、誰にも抱かれる事はない、バリタチ。 ただ一人、親友の双子の弟だけが、瑠色が誰かに抱かれる事を絶対に嫌がる理由を知っていた。 ※性描写があからさまですので、苦手な方は御注意ください。 2018.10.4 第一部完結

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

男だって愛されたい!

朝顔
BL
レオンは雑貨店を営みながら、真面目にひっそりと暮らしていた。 仕事と家のことで忙しく、恋とは無縁の日々を送ってきた。 ある日父に呼び出されて、妹に王立学園への入学の誘いが届いたことを知らされる。 自分には関係のないことだと思ったのに、なぜだか、父に関係あると言われてしまう。 それには、ある事情があった。 そしてその事から、レオンが妹の代わりとなって学園に入学して、しかも貴族の男性を落として、婚約にまで持ちこまないといけないはめに。 父の言うとおりの相手を見つけようとするが、全然対象外の人に振り回されて、困りながらもなぜだか気になってしまい…。 苦労人レオンが、愛と幸せを見つけるために奮闘するお話です。

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

処理中です...