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七話 やめてください
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ルイはセシリオを人が来ない屋上まで連れていった。
しっかりとドアを閉めたことを確認してからルイはセシリオに向き合った。
「迷惑です」
「へ?」
ドン、とルイは掴んでいたセシリオの手を壁に押し付けた。
「もう僕に構わないでください。困るんですよ。僕はあんまり目立ちたくないんです」
「あ…ご、ごめんなさい」
うるうるとした目でセシリオはルイを見つめる。
しかしその目に浮かんでいるのは反省ではなく、折檻してもらえるのではないかという期待だ。
「あなたが何をしようと僕は貴方が望むようなことはしませんよ」
「本当に…?」
セシリオは徐にルイに口付けようと顔を近づけた。
ルイは咄嗟に拒否反応が出てしまいセシリオの口を手で覆い押し返した。
しかし、セシリオはそうすることを知っていたかのように、今度はルイの手のひらを誘うようにぺろりと舐めた。
「ちょっと!」
思わず手を離すと、セシリオは妖艶な笑みでルイを見つめた。
「残念です」
「あなた、なんなんですか。ジューン家の息子が…はしたない…」
「誰にでもこんなことするわけじゃないです。ルイ様だけ…」
セシリオが動くたびふんわりとあの匂いが漂ってくる。
ルイの理性を一瞬で奪ったあの匂い。
「っ…その匂い、なんなんですか?」
「え?」
「あなたからする匂いです。発情期なんですか?」
「いえ、違いますよ?前もそんなこと言ってましたよね」
セシリオは不思議そうに自分の匂いを嗅いでいる。
「とりあえず、もう僕には近づかないでください」
「いいんですか?」
「はぁ?」
「そんな冷たいこと言うなら、バラしちゃいますよ」
僕があなたに抱かれたって、
耳元で囁かれた言葉にルイはぞくっとした。
「僕の両親が僕に甘いのはご存知ですよね。あなたに手ひどく抱かれたって言ったら…」
「やめてくだい!」
ただでさえ危うい身の上なのにこれ以上トラブルは起こしたくない。
「僕、そんな難しいこと言ってませんよね?貴方はなんにも痛くもないし辛くもない。ただ、僕を少しだけいじめてくれるだけでいいんです」
ルイは恐る恐るセシリオを見た。
彼の目は狂気というよりも懇願の色が強いようだった。
「お願いします…ルイ様」
ルイは逡巡した。
このままだとセシリオに付き纏われる。
それは大分ルイにとっては困ることだった。
「……わかりました」
そう言ってしまってから重たい後悔がずっしり胸に落ちた。
でも仕方ない。こうするしかなかったとルイは自分に言い聞かせる。
「じゃあ、今夜ルイ様のお部屋にお伺いします。絶対、絶対…待っててください」
するりとルイの手の甲を一撫ですると、セシリオは去っていった。
ルイの手の甲からはあの甘い匂いが香っていた。
「はぁ…昼ごはん、食べ損ねた…」
呆然としているうちに鳴り響いた予鈴に、ルイはため息をついた。
しっかりとドアを閉めたことを確認してからルイはセシリオに向き合った。
「迷惑です」
「へ?」
ドン、とルイは掴んでいたセシリオの手を壁に押し付けた。
「もう僕に構わないでください。困るんですよ。僕はあんまり目立ちたくないんです」
「あ…ご、ごめんなさい」
うるうるとした目でセシリオはルイを見つめる。
しかしその目に浮かんでいるのは反省ではなく、折檻してもらえるのではないかという期待だ。
「あなたが何をしようと僕は貴方が望むようなことはしませんよ」
「本当に…?」
セシリオは徐にルイに口付けようと顔を近づけた。
ルイは咄嗟に拒否反応が出てしまいセシリオの口を手で覆い押し返した。
しかし、セシリオはそうすることを知っていたかのように、今度はルイの手のひらを誘うようにぺろりと舐めた。
「ちょっと!」
思わず手を離すと、セシリオは妖艶な笑みでルイを見つめた。
「残念です」
「あなた、なんなんですか。ジューン家の息子が…はしたない…」
「誰にでもこんなことするわけじゃないです。ルイ様だけ…」
セシリオが動くたびふんわりとあの匂いが漂ってくる。
ルイの理性を一瞬で奪ったあの匂い。
「っ…その匂い、なんなんですか?」
「え?」
「あなたからする匂いです。発情期なんですか?」
「いえ、違いますよ?前もそんなこと言ってましたよね」
セシリオは不思議そうに自分の匂いを嗅いでいる。
「とりあえず、もう僕には近づかないでください」
「いいんですか?」
「はぁ?」
「そんな冷たいこと言うなら、バラしちゃいますよ」
僕があなたに抱かれたって、
耳元で囁かれた言葉にルイはぞくっとした。
「僕の両親が僕に甘いのはご存知ですよね。あなたに手ひどく抱かれたって言ったら…」
「やめてくだい!」
ただでさえ危うい身の上なのにこれ以上トラブルは起こしたくない。
「僕、そんな難しいこと言ってませんよね?貴方はなんにも痛くもないし辛くもない。ただ、僕を少しだけいじめてくれるだけでいいんです」
ルイは恐る恐るセシリオを見た。
彼の目は狂気というよりも懇願の色が強いようだった。
「お願いします…ルイ様」
ルイは逡巡した。
このままだとセシリオに付き纏われる。
それは大分ルイにとっては困ることだった。
「……わかりました」
そう言ってしまってから重たい後悔がずっしり胸に落ちた。
でも仕方ない。こうするしかなかったとルイは自分に言い聞かせる。
「じゃあ、今夜ルイ様のお部屋にお伺いします。絶対、絶対…待っててください」
するりとルイの手の甲を一撫ですると、セシリオは去っていった。
ルイの手の甲からはあの甘い匂いが香っていた。
「はぁ…昼ごはん、食べ損ねた…」
呆然としているうちに鳴り響いた予鈴に、ルイはため息をついた。
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