花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~

美凪ましろ

文字の大きさ
24 / 45

studying abroad and being myself(1)

しおりを挟む
 朝、目が覚めると、ああ自分は日本にいないんだなと実感する。

 いくらマンドリルクラブの会員が裕福だからといって、僕の実家である邸宅には及ばない。

 起こしてくれるひとが必ずいるし、ふかふかのベッド。この十倍以上ある広い部屋で寝ていた。

 恵まれているんだなとこんなときに感じる。七時。アメリカのビジネスパーソンは朝が早く、dadは既に家を出ている時間だ。下手をするとホストマザーでさえも。

 一階に降りるとやっぱりひとの気配がなく。実家と違って朝食は用意されない。黙ってキッチン近くの戸棚を開き、シリアルの巨大な箱を取り出し、それから、食器棚からシリアルボウルを取り出し、一旦キッチンカウンターに置き、無造作にシリアルの中身をシリアルボウルに注いでから、refrigerator(冷蔵庫)から容器に入った牛乳を取り出し、牛乳を注ぐ。引き出しからスプーンを取り出しその場でばくばく食べる。

 神宮寺の宅にいた頃は許されなかったこんな行動もいまは自由だ。朝からシリアルの立ち食いなんて。母が見たら卒倒してしまうだろう。

 二分程度でシリアルを食べ終えて続いて僕がすること。うすーくカットされたパンの袋があるので、そこから四枚取り出し、おもむろに取ったまな板の上に置き、冷蔵庫からジャムと、ターキーとスライスチーズ、戸棚からピーナッツバターを用意する。こっちのピーナツバターは日本のと違って味が全然しなくて、単なるピーナツバター。あまみがちっとも感じられないから、ピーナツバターのサンドイッチを作るときは、パンにピーナツバターを塗ってからベリー系のジャムを塗るのが通例だ。Peanut butter and jellyと呼ぶ。甘いほうを用意してから、もうひとつのペアにターキーとスライスチーズを挟んで重ねて半分にカットする。キッチンの手前に引く引き出しからラップを取り出し包む。それらを、そこら辺にある茶色い袋に突っ込み、最後に、冷蔵庫からスモールアップルを取り出して入れて袋の口を丸めてぐちゃぐちゃにする、ここまでがルーティンである。

 アメリカではBentoなんて概念は一切存在せず、中学くらいになると朝は自分でシリアルを用意して食べて、昼は、カフェテリアで二ドルで売られているピザを食べるか、節約のために大半の学生が自作サンドイッチとりんごを持ってきて食べるかのいずれかだ。日本みたいに、高校と提携しているパン屋さんがあって購買部担当がまとめて注文してお昼には焼き立ての美味しいパンが食べられる、……なんてことも一切ない。このシステムに、留学して一ヶ月経ったいまでも毎日驚きを覚えるし、日本の育児の負荷がいかに、お母さん方に偏っているのかをまざまざと知らされる。うちは使用人が全部やってくれてはいるが、それでも、母は乳母を雇わず、まぁ、シッターさん程度は。五人の子ども全員に授乳していたし、酒も我慢してかなり大変な産後を送っていたはずだ。

 改めて分かる。母の偉大さを。

 牛乳も、日本で売っている紙パックタイプのではなく、脱脂粉乳? のような味の極端にうっすーい、水みたいな牛乳が透明の袋入りで売られていて、こっちでは、それを入れる専用の容器があって、それにぶっこむ。牛乳がなくなればまた袋の口を開いてぶっこむ。このルーティンにも慣れた。牛乳の味があまりにも違うので、本気で水なのではないかといまも疑っている。

 ランチのセットを持って部屋に戻り、分厚い教科書がひとまず全部リュックサックに入っていることを確認し、急いで身支度を整え(顔なんてぱぱっと洗う程度だ)、飼い犬のアンディを軽く撫でてから急ぎホストファミリー宅を出て鍵をかける。

 通学は、決まった場所からスクールバスが出ているから、絶対に遅れるわけにはいかないのだ。

 ボストンは、地下鉄はあるが、通学手段は基本車かスクールバスのみ。自分で中古車を運転して通学する強者もいる。アメリカでは十六歳で免許が取れるので、親の車か、中古で買った手ごろな車でみんな運転する。水を飲むように簡単に運転するものだから驚いた。

 ただ、基本留学生はスクールバスを利用する。ホストファミリーは多忙なひとが多く、ホストマザーもファザーもそれぞれ車を持っており、それぞれ別の場所に行って働くものだから、余っている車などないし、留学生に運転は禁止されている。リスクが高いからだ。

 スクールバスはドラマでよく見る黄色いアレだ。アレに乗ると自分がアメドラの主人公になれた気分になれる――現実は大きく違えども。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

譲れない秘密の溺愛

恋文春奈
恋愛
憧れの的、国宝級にイケメンな一条社長と秘密で付き合っている 社内一人気の氷室先輩が急接近!? 憧れの二人に愛される美波だけど… 「美波…今日充電させて」 「俺だけに愛されて」 一条 朝陽 完全無欠なイケメン×鈴木 美波 無自覚隠れ美女

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜

yuzu
恋愛
 人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて…… 「オレを好きになるまで離してやんない。」

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

処理中です...