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studying abroad and being myself(2)
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バスに乗り込むときも乗り込んだ後も、この物語の主人公は僕ではない誰かだ。みな、地元が同じアメリカ人で昔馴染みで僕には分からない話で盛り上がっている。日本と違って多国籍で肌の色が違う面々が屈託なく喋っている。共通するのはみなボストン訛りの英語を喋るということ。学生同士というものは、どうしていつまでも飽きずに喋れるのだろうと不思議だったが、共通項があるということはこんなにもひとを明るくする。
僕には参加出来ないドラマが目の前で展開されている。
アメリーがプロムに着ていくひとをもう決めた、ドレスも決まっている、アンディが誘われずこじらせている……その程度のことなら留学して一ヶ月程度の僕にも分かる。
K学園の幼稚舎にいる頃から僕は常にひとに囲まれており、いわゆるAグループの少年だった。爪弾きにされたことなんていままで一度たりともないし、どこにいたって自分が主役だった。
それが、いまは……。
砂を噛むように歯がゆい。しかし、自分で決めたことなのだから最後までやり抜きたい。
神宮寺財閥の御曹司たるもの、留学するならK学園の提携校と相場が決まっているというのに、その伝統に逆らってまで成し遂げるべき偉業なのだ。世界に名高い、一流のビジネスパーソンが所属するマンドリルクラブからの交換留学生としてならと、なんとか両親の許可を貰えただけに、下手に、途中で泣いて帰ることなど許されない。
一介のモブとして沈黙を保ち、学校への到着を待つ。
スクールバスが学校の前に到着するとみんな、弾けるように飛び出す。連れ立って和気あいあいと。
彼らの物語のなかに僕はいない。淡々と前に進むほかない。
それでも、あまり極端に離れ過ぎると目立つので、彼らとある程度の距離を保ちつつ学校へと入る。真っ先に行くのはロッカーだ。南京錠より大きな、アメリカの学校に特有の重たい丸い鍵でロッカーに鍵をかける。それを開いて、バックパックから今日使わないテキストを取り出してロッカーに戻し、今日使う分を持ち出す。
アメリカの学校では、生徒は教科書を購入せず、分厚い辞書よりも巨大な、A4サイズよりも大きい、アメリカに特有のサイズの教科書を借りる。一教科ごとに一テキストなので、そんな重たいものを常時持ち歩けるはずがないので、みんな、どかどかとテキストをロッカーに突っ込む。あとは、クラブなんか所属していたらみんな服や靴を入れる。ノートはぺらぺらのわら半紙のような薄っぺらいノートを使用し、こちらもまたアメリカ特有の「レターサイズ」。それをまとめてひとつのファイルに入れる。
アメリカのロッカーにはネズミが出る。一度、貰ったチョコレートをそのまま箱ごとロッカーのなかに入れておいたところ、一晩でかじられていた。だから、食べ物系は一切入れないとこころに決めた。チョコレートは泣く泣く処分した。
日本とは違って、クラスが決まって先生がそのクラスを訪れてくれる方式ではなく、アメリカでは、音楽なら音楽の行われる教室が決まっており、分厚いテキストとノートのセットを手に生徒があせあせと移動しなければならない。木曜日は三階の端から一階の玄関近くまで移動しなければならず、体力を使う。勿論、そんな生徒の事情などお構いなしに、休憩時間十分で生徒は必ず移動しなければならないし、遅刻などして目立ちたくもない。走るように歩くことも多々ある。
ロッカーで荷物を出し入れしながらきゃっきゃしている面々を見ながらぼんやりしているとあっという間に始業の時間となる。授業の一時間目をその教室で各自受ける前に、校内放送を聞く必要がある。僕は、急いで、Musicのテキストやノートを取り出し、教室へと向かう。こんな僕に話しかける者など誰一人としていない。けども、続けなければならない。
*
「Music club, the executives have the meeting at the room 601. Make sure to come on time, 5 o'clock. Next, about match of the American football club with A high school, we are using 2nd playing field, that is coming on Tuesday after school. For our cheerleaders, please come to 2nd playing field 30 minutes before the game starts. This is all about our school today. Have fun. Have a good day today, B school mates. The speaker is Amy tolds. Thanks. 」
僕には半分も聞き取れない早口の生徒のアナウンスが流れ、終わると、授業が開始する。
幼稚舎時代にたいていの楽器は習わされた。アメリカのどこでもそうなのかボストンがたまたまそうなのか。Music classは吹奏楽、つまり、wind instrument musicを指す。K学園のときとは大違いの、チープな楽器をそれぞれが演奏する。花のボストンにいるというのに意外とレベルが低い。公立校だからか……。ボストンは世界に名高い音楽大学もあるから期待していたのに。はっきり言って、下手である。
今日も、超絶低いクオリティの演奏をしなければならないのかと思うと苦痛だ。むかむかするのでトランペットでレスピーギのローマの祭りを演奏してやる。すると、Musicの先生であるその名もミスターミュージックが指揮棒で指揮をし始める。面白そうにみんなが見てくる。僕に注目が集まる。
チルチェンセスの獣が唸る最後のけたたましい高音を奏で、Mr. Musicが指揮棒を止めると拍手が沸いた。ふふん。いい気分である。
だが、僕は、この行動を約四時間後に激しく後悔することとなる。
僕には参加出来ないドラマが目の前で展開されている。
アメリーがプロムに着ていくひとをもう決めた、ドレスも決まっている、アンディが誘われずこじらせている……その程度のことなら留学して一ヶ月程度の僕にも分かる。
K学園の幼稚舎にいる頃から僕は常にひとに囲まれており、いわゆるAグループの少年だった。爪弾きにされたことなんていままで一度たりともないし、どこにいたって自分が主役だった。
それが、いまは……。
砂を噛むように歯がゆい。しかし、自分で決めたことなのだから最後までやり抜きたい。
神宮寺財閥の御曹司たるもの、留学するならK学園の提携校と相場が決まっているというのに、その伝統に逆らってまで成し遂げるべき偉業なのだ。世界に名高い、一流のビジネスパーソンが所属するマンドリルクラブからの交換留学生としてならと、なんとか両親の許可を貰えただけに、下手に、途中で泣いて帰ることなど許されない。
一介のモブとして沈黙を保ち、学校への到着を待つ。
スクールバスが学校の前に到着するとみんな、弾けるように飛び出す。連れ立って和気あいあいと。
彼らの物語のなかに僕はいない。淡々と前に進むほかない。
それでも、あまり極端に離れ過ぎると目立つので、彼らとある程度の距離を保ちつつ学校へと入る。真っ先に行くのはロッカーだ。南京錠より大きな、アメリカの学校に特有の重たい丸い鍵でロッカーに鍵をかける。それを開いて、バックパックから今日使わないテキストを取り出してロッカーに戻し、今日使う分を持ち出す。
アメリカの学校では、生徒は教科書を購入せず、分厚い辞書よりも巨大な、A4サイズよりも大きい、アメリカに特有のサイズの教科書を借りる。一教科ごとに一テキストなので、そんな重たいものを常時持ち歩けるはずがないので、みんな、どかどかとテキストをロッカーに突っ込む。あとは、クラブなんか所属していたらみんな服や靴を入れる。ノートはぺらぺらのわら半紙のような薄っぺらいノートを使用し、こちらもまたアメリカ特有の「レターサイズ」。それをまとめてひとつのファイルに入れる。
アメリカのロッカーにはネズミが出る。一度、貰ったチョコレートをそのまま箱ごとロッカーのなかに入れておいたところ、一晩でかじられていた。だから、食べ物系は一切入れないとこころに決めた。チョコレートは泣く泣く処分した。
日本とは違って、クラスが決まって先生がそのクラスを訪れてくれる方式ではなく、アメリカでは、音楽なら音楽の行われる教室が決まっており、分厚いテキストとノートのセットを手に生徒があせあせと移動しなければならない。木曜日は三階の端から一階の玄関近くまで移動しなければならず、体力を使う。勿論、そんな生徒の事情などお構いなしに、休憩時間十分で生徒は必ず移動しなければならないし、遅刻などして目立ちたくもない。走るように歩くことも多々ある。
ロッカーで荷物を出し入れしながらきゃっきゃしている面々を見ながらぼんやりしているとあっという間に始業の時間となる。授業の一時間目をその教室で各自受ける前に、校内放送を聞く必要がある。僕は、急いで、Musicのテキストやノートを取り出し、教室へと向かう。こんな僕に話しかける者など誰一人としていない。けども、続けなければならない。
*
「Music club, the executives have the meeting at the room 601. Make sure to come on time, 5 o'clock. Next, about match of the American football club with A high school, we are using 2nd playing field, that is coming on Tuesday after school. For our cheerleaders, please come to 2nd playing field 30 minutes before the game starts. This is all about our school today. Have fun. Have a good day today, B school mates. The speaker is Amy tolds. Thanks. 」
僕には半分も聞き取れない早口の生徒のアナウンスが流れ、終わると、授業が開始する。
幼稚舎時代にたいていの楽器は習わされた。アメリカのどこでもそうなのかボストンがたまたまそうなのか。Music classは吹奏楽、つまり、wind instrument musicを指す。K学園のときとは大違いの、チープな楽器をそれぞれが演奏する。花のボストンにいるというのに意外とレベルが低い。公立校だからか……。ボストンは世界に名高い音楽大学もあるから期待していたのに。はっきり言って、下手である。
今日も、超絶低いクオリティの演奏をしなければならないのかと思うと苦痛だ。むかむかするのでトランペットでレスピーギのローマの祭りを演奏してやる。すると、Musicの先生であるその名もミスターミュージックが指揮棒で指揮をし始める。面白そうにみんなが見てくる。僕に注目が集まる。
チルチェンセスの獣が唸る最後のけたたましい高音を奏で、Mr. Musicが指揮棒を止めると拍手が沸いた。ふふん。いい気分である。
だが、僕は、この行動を約四時間後に激しく後悔することとなる。
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