どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月

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5.策を練る

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 それから3日間、今までのシャーリーと違いすぎないように気をつけて大人しくすごした。
 そしてわたしを取り巻く環境について知り、いろいろと理解した。
 やっぱり目標を達成するためにはまず調査しないとね!

 まずうちは地方統治に従事する子爵家で、ちょっと広めで豊かな領地なので農作物の収穫量が多いみたい。つまり少し裕福なのよね。一人娘のわたしは入り婿を迎えて、その人にこの子爵家を継いでもらうということになるようだ。わたしの婚約者のライモンドは伯爵家の三男で、王都の学校を出た秀才だという触れ込みだけれど、あのものすごく失礼な人が?秀才かどうかは知らないけれど性格は最悪よ。お父様の見る目はよくないんじゃないかしら。
「まあ、シャーリーにも悪いところがあったのかもしれないけれど」
 おどおどして太ってて根暗なシャーリー。婚約者にも上手に対面できなかったのかしら。
 でもやっぱりあんな風に扱われるのはダメよ。
 シャーリー、もっとしっかりしないと!
 
 今までシャーリーが受けてきたであろう屈辱を思うとなんだか悲しくなってきた。
 これからはわたしがちゃんとしてあげるからね。
 
 次の日の朝、わたしは執事をつかまえて、我が家の使用人について尋ねた。
「メイドですか?」
「そう。既婚で子供のいるメイドはいるかしら?」
 子爵家にはメイドが4人いて、うち3人は20代以上の女性だ。10代のメイドはモニカだけ。
「通いのメイドですが、アンナが35歳で子供が2人いると聞いています。でも寡婦ですよ」
「まあ、ご主人は亡くなったの?お気の毒ね」
「詳しくは知りませんが、実家に身を寄せてここに働きにきているそうですよ」
 シングルマザーね、それはいいわ。

「どうしてそんな質問を?」
 執事が聞いてくる。
 この執事、お父様との関係は良いみたいだけど私とはあまりかかわりが無いのよね。親身になってほしいのだけど、どうかなあ。

「実は、今ついてくれているメイドが合わなくて、変えてもらえないかと思っているの」
「モニカですか?何かありましたか?」
 あったなんてもんじゃないけど。モニカは他の使用人とはうまくやってるのかしら。
「ええ…仕事も雑だし言葉遣いも乱暴で、わたしなんだか怖くて……」
 シャーリーはぱっとしない陰気な子だから、俯いてこう言えば執事も分かってくれるだろうか。
 
「……。モニカはお嬢様の婚約者のライモンド様の遠縁ということで紹介された者でして。年齢もお嬢様と近いのでよいかと受け入れたのですが」
 縁故ってわけね。だから態度がでかいのかしら。これは簡単には辞めさせられないかも。

「そう……。とりあえず、今日のお茶の支度はアンナにしてもらえるかしら。お願いね」
 これ以上ぐずぐず言っていると『まあ注意しておきますから、様子を見てください。また何かありましたらご相談を』なんて言われちゃうから、はっきりしっかりお願いする。執事も忙しいからね、ここはスパッと決めないと。
 執事はいつもと違う様子のわたしに『おや?』という顔をしたけど、わたしはさっさとその場を後にした。

 そしてお茶の時間。
「あの、お嬢様…お茶をお持ちいたしました」
 アンナが少し緊張した面持ちで部屋に入ってくる。痩せ気味で地味なかんじだけどきれいな人だと思う。
「ありがとう。そこにお願い」

 アンナに初めて淹れてもらった紅茶はなかなか美味しかった。
 だいたいモニカが入れるお茶ってぬるいし薄いしで、不味くて飲めたもんじゃなかったのよね!
 はあ、熱くて濃いお茶は香りもよくて美味しいわ。
 テーブルの上には紅茶のセットとお菓子の載せられたお皿。
 わたしに提供されるお茶菓子はだいたいが焼き菓子だ。ショートブレッドやクッキー、マドレーヌ、たまにシフォンケーキなんかもある。そしていつも3つ。今日のお菓子はスコーンだ。大きな焼きたてのスコーンがみっつ。3つも!ジャムとクロテッドクリームをたっぷり添えて。
 多いよね。お腹がいっぱいよ。こんなの毎日食べてたら胃袋が広がり続けるわ。
 わたしはダイエットもしたいのよ。

「ねえアンナ」
「は、はい。紅茶は熱すぎましたか?」
「いいえ、とっても美味しいわ。ありがとう。このお茶、毎日飲みたいと思うくらいよ」
「ありがとうございます……」
 アンナは戸惑っているがわたしはどんどん話を続ける。

「ねえ、アンナってお子さんがいるんですって?2人と聞いたわ」
「え、ええ。そうです」
「女手ひとつでお仕事もして子育てもなんて大変よね。なにか困っていることはない?」
「え?あ、ありがとうございます……?
 今は母と共に暮らしておりますので大丈夫ですわ。父も亡くなっておりますので、母に子供を見てもらって私が働いております」
「そうなの、よかったわね。お子さんも安心ね」
 わたしが突然大人っぽいことを話し始めたからか、アンナは怪訝な顔をしてそれでも答えてくれる。ごめんなさいね、今わたしの中身は43歳なのよ。
 アンナが働いて母親と子供2人を養っているのね。うちで働いているくらいだから身元はしっかりしているだろうけど、お金に余裕はないだろうな。なんてことを考えることもできるのよ。
 
「ところでアンナ、このお菓子を見てどう思う?」
「えっ」
「多すぎると思わない?わたし毎日こんなに食べるのは大変で、実は困っているの。でも料理人はわたしが喜ぶと思って毎日用意してくれるのよね。だから減らしてくれってなかなか言い出せなくて」
「はい……」
「もしよかったら、このうち2つ、お子さんに持って帰ってくれないかしら」
「ええ?」
「お願いよ」
 そう言ってわたしは用意しておいたナプキンにスコーンを包み、袋に入れてアンナに渡した。

「誰にも見つからないように、持って帰ってね」
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