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4.婚約者がいるらしい
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「お嬢様。来月はライモンド様のお誕生日でございます。そろそろプレゼントをご用意ください」
広い食堂でひとり昼食をとっていると、例のメイドが近づいてきてそう言った。
この館は広いけど、住んでいるのはわたしとお父様。あとは使用人だ。
何人いるのか後で調べないとね。この女のことも知りたいわ。
朝食を持ってこなかったくせに、よくもまあ何でもない顔をしてわたしの前に顔を出せるわね。
「ライモンド?誰かしら」
あ、しまった。気をつけて話さなきゃって思ったばかりなのに。
ほら、女が驚いた顔をしている。誰よライモンドって。
「ええ?何言ってるんですかお嬢様。食べ過ぎて頭まで弱くなっちゃったんですか?サヴォア伯爵のライモンド様ですよ!もったいないことにお嬢様の婚約者ですよ」
なんだこいつムカつく。
この女はどうしてわたしをこんなに貶めるようなことが言えるのかしら。主従関係って知ってる?知らないの?バカなの?
シャーリーが気弱で文句も言えないような子だとみくびってるのよね。あいにく今のわたしは鋼のような強い心を持っているのよ。絶対にやり返してやるわ!覚悟してらっしゃい!
ってそれよりも。
「婚約者」
いるんだ……誰だろう。わたしの知ってる人よね。どんなお付き合いをしてるのかしら。
「……来月お誕生日と言ったわね。なにか……パーティなんかは開かれるのかしら?」
わたしは招待されるのかしら。準備は必要?今のわたしでうまく対応できるのかな。え、ちょっと怖いわ。
するとメイドはクスクスと笑いだし、またしてもバカにした口調で答えた。
「お嬢様がライモンド様のお誕生日パーティーに?いいえ、今年もお誘いはありませんよ!今までだってそうでしょう?お嬢様のようなご容姿でライモンド様のお隣に立つなんてみっともなくて、お許しになりませんよ!ライモンド様は例年のように、プレゼントだけ送ればよいと言ってくださってますよ。お優しいですわね」
はあ?
ふざけんなライモンド!誰だか知らないけどこっちだってお前になんて会いたくねえよ!
「なんですか?お嬢様、今年は参加したいとでも?ご冗談を。少しは痩せて努力なさらないとね。
ああ、それでプレゼントなんですが、今年は純銀製の万年筆がよいそうですよ。お店の指定がありましたから、送られてきたカードを後ほどお部屋にお持ちしますね!変なお店で安物を買わないようにとのことでしたわ!」
はああああああああ?
パーティに来なくていいけど高価そうなプレゼントは送ってこい?
なにそれ、なにそれ。
もしかしなくても、めっちゃ馬鹿にされてるし、わたし財布にされてるし、なめられてる!
ライモンド許さん……いや、わたしって婚約者にもこんな扱いされてんの?
え?
嫌なんですけど?
なんでこんな扱い受けてるの?なんか私に悪いところがあったの?確かに太ってて陰気そうだけど、いじめが趣味とか性格悪くて意地悪とかそんな子じゃないわよね、わたし。
こんなの悲しすぎる。
どうしてシャーリーはこんな目にあってるの?
っていうかわたしじゃん!
わたし、これから死ぬまでこんな扱いを受けて生きていくの?
そんなの嫌。ぜったいに!
「……許さないわ」
「え?なんですかお嬢様」
「いえ、あなた……名前は何だったかしら」
あなたの名前なんて覚えていませんよと言わんばかりの質問、失礼かもしれないけれどいいわよね、こいつの方がもっと失礼なんだし。
案の定少しムッとした表情でメイドは答えた。
「モニカでございます」
「そう、モニカね。モニカはいつからうちで働いているのかしら」
「2年前からでございます」
「へえ。わたしの専属というわけではないのよね」
「主にお嬢様のお世話と、空いた時間は他の仕事もしております」
「そうなのね。ライモンド様からのお手紙はいつもあなたが読んでからわたしのもとに来るの?
それともお知り合いなのかしら?」
モニカはハッとした顔をしたが、その後ニヤリとしてわたしに言った。
「ライモンド様とは同郷なのです。幼馴染のようなものですわ」
へー。
何故か勝ち誇ったような物言いで、モニカは満足げにわたしを見る。
わー鬱陶しい。
質問にも答えてないわ。ミスリードを誘ってる?なにか含んでいるのよね。よくわからないけれど。
何がマウントなのかしら。
でも、使用人がしていい態度じゃないわよね。
昼食を終え、部屋に戻ったわたしはノートを開いて書き足した。
目標
1.メイド女を首にする。
2.婚約を破棄する。
3.痩せる。
「まずはこの悲惨な状況を改善しなきゃね。前のシャーリーはどうにもできなかったみたいだけど、わたしはできるわ」
そう、わたしはできる。結婚も妊娠も出産も子育ても経験済み43歳の図太いわたしなら。あんな小娘にやられっぱなしにはならない。あのメイドに負けるはずがない。
ふふ……この世界のことは未だよくわからないけれど、この現状を受け入れることはできないわ絶対に!
広い食堂でひとり昼食をとっていると、例のメイドが近づいてきてそう言った。
この館は広いけど、住んでいるのはわたしとお父様。あとは使用人だ。
何人いるのか後で調べないとね。この女のことも知りたいわ。
朝食を持ってこなかったくせに、よくもまあ何でもない顔をしてわたしの前に顔を出せるわね。
「ライモンド?誰かしら」
あ、しまった。気をつけて話さなきゃって思ったばかりなのに。
ほら、女が驚いた顔をしている。誰よライモンドって。
「ええ?何言ってるんですかお嬢様。食べ過ぎて頭まで弱くなっちゃったんですか?サヴォア伯爵のライモンド様ですよ!もったいないことにお嬢様の婚約者ですよ」
なんだこいつムカつく。
この女はどうしてわたしをこんなに貶めるようなことが言えるのかしら。主従関係って知ってる?知らないの?バカなの?
シャーリーが気弱で文句も言えないような子だとみくびってるのよね。あいにく今のわたしは鋼のような強い心を持っているのよ。絶対にやり返してやるわ!覚悟してらっしゃい!
ってそれよりも。
「婚約者」
いるんだ……誰だろう。わたしの知ってる人よね。どんなお付き合いをしてるのかしら。
「……来月お誕生日と言ったわね。なにか……パーティなんかは開かれるのかしら?」
わたしは招待されるのかしら。準備は必要?今のわたしでうまく対応できるのかな。え、ちょっと怖いわ。
するとメイドはクスクスと笑いだし、またしてもバカにした口調で答えた。
「お嬢様がライモンド様のお誕生日パーティーに?いいえ、今年もお誘いはありませんよ!今までだってそうでしょう?お嬢様のようなご容姿でライモンド様のお隣に立つなんてみっともなくて、お許しになりませんよ!ライモンド様は例年のように、プレゼントだけ送ればよいと言ってくださってますよ。お優しいですわね」
はあ?
ふざけんなライモンド!誰だか知らないけどこっちだってお前になんて会いたくねえよ!
「なんですか?お嬢様、今年は参加したいとでも?ご冗談を。少しは痩せて努力なさらないとね。
ああ、それでプレゼントなんですが、今年は純銀製の万年筆がよいそうですよ。お店の指定がありましたから、送られてきたカードを後ほどお部屋にお持ちしますね!変なお店で安物を買わないようにとのことでしたわ!」
はああああああああ?
パーティに来なくていいけど高価そうなプレゼントは送ってこい?
なにそれ、なにそれ。
もしかしなくても、めっちゃ馬鹿にされてるし、わたし財布にされてるし、なめられてる!
ライモンド許さん……いや、わたしって婚約者にもこんな扱いされてんの?
え?
嫌なんですけど?
なんでこんな扱い受けてるの?なんか私に悪いところがあったの?確かに太ってて陰気そうだけど、いじめが趣味とか性格悪くて意地悪とかそんな子じゃないわよね、わたし。
こんなの悲しすぎる。
どうしてシャーリーはこんな目にあってるの?
っていうかわたしじゃん!
わたし、これから死ぬまでこんな扱いを受けて生きていくの?
そんなの嫌。ぜったいに!
「……許さないわ」
「え?なんですかお嬢様」
「いえ、あなた……名前は何だったかしら」
あなたの名前なんて覚えていませんよと言わんばかりの質問、失礼かもしれないけれどいいわよね、こいつの方がもっと失礼なんだし。
案の定少しムッとした表情でメイドは答えた。
「モニカでございます」
「そう、モニカね。モニカはいつからうちで働いているのかしら」
「2年前からでございます」
「へえ。わたしの専属というわけではないのよね」
「主にお嬢様のお世話と、空いた時間は他の仕事もしております」
「そうなのね。ライモンド様からのお手紙はいつもあなたが読んでからわたしのもとに来るの?
それともお知り合いなのかしら?」
モニカはハッとした顔をしたが、その後ニヤリとしてわたしに言った。
「ライモンド様とは同郷なのです。幼馴染のようなものですわ」
へー。
何故か勝ち誇ったような物言いで、モニカは満足げにわたしを見る。
わー鬱陶しい。
質問にも答えてないわ。ミスリードを誘ってる?なにか含んでいるのよね。よくわからないけれど。
何がマウントなのかしら。
でも、使用人がしていい態度じゃないわよね。
昼食を終え、部屋に戻ったわたしはノートを開いて書き足した。
目標
1.メイド女を首にする。
2.婚約を破棄する。
3.痩せる。
「まずはこの悲惨な状況を改善しなきゃね。前のシャーリーはどうにもできなかったみたいだけど、わたしはできるわ」
そう、わたしはできる。結婚も妊娠も出産も子育ても経験済み43歳の図太いわたしなら。あんな小娘にやられっぱなしにはならない。あのメイドに負けるはずがない。
ふふ……この世界のことは未だよくわからないけれど、この現状を受け入れることはできないわ絶対に!
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