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第4話
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おっさん悶えるぞ!!
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第4話
深いまどろみの海から浮上する薫。
だが、まだ意識ははっきりしない。
薫はローテーブルに手を伸ばし、スマホを手に取る。
(今何時?)
薫はスマホの画面を覗き込む。
そこには『16:45』の表示が…。
「う、うそ!!」
薫は一気に覚醒し、飛び起きた。
何故なら伊達の帰宅時間を考えると今から夕飯の支度を始めないといけないからだ。
「どうしよう…。 買い出しいけなかった。」
薫は伊達のリクエストに答えれないことに戦々恐々とした。
だが、今更どうにもならない。
もとはと言えば、伊達がバスルームで三回も事に及んだせいなのだから文句を言われる筋合いはない。
と、開き直って冷蔵庫の中を確認することにした。
「う~~ん、玉葱、人参。ジャガイモ、セロリにニンニク。
えっと、肉は豚小間かぁ。
あ、カレーのルーがある。 って、なんでみんな中途半端に使ってるの?」
ドアポケットにあったのは種類の違うルー。
どれも1~2かけ残して放置してあった。
「全部入れちゃえばちょうどいい量になるかな?
よし、今夜はカレーにしよう。
えっと、付け合わせは…。 サラダでいいか。」
夕飯のメニューが決まれば薫の行動は早い。
まずはご飯を仕掛け、炊飯ジャーにセット。
「あ、そう言えば…。」
薫は香辛料の置いてある棚に手を伸ばす。
そこには様々なハーブ類も置かれている。
「輝臣さん、何でこんなもの置いてるんだろ?
ま、いっか。 折角だから使ってみよ。」
そう言ってハーブの中からサフランを取り出す。
それをお米の入った釜に少量入れ、蓋をし、炊飯のスイッチを押した。
「いい感じに仕上がってくれるといいんだけど。」
あとはカレー作りだが、今日は市販のルーを使うことにしたのでそれほどの手間はかからなかった。
ニンニクが多めなのは今朝の伊達の発言があるせいだと言っておこう。
「うん、カレーはこれでオッケー。 あとは…。」
ピーッ、ピーッ、ピーッ。
炊飯ジャーから炊き上がりの合図がする。
薫は早速蓋を開ける。
すると、サフランで黄色く色付けされたご飯が現れた。
「あ、イイ感じになった。」
そこへ玄関の開く音がした。
「ただいま。」
伊達が帰ってきたのだ。
「あ、輝臣さん、お帰りなさい。」
「薫?」
「ごめんなさい、今ちょっと手が離せなくて…。」
薫は鍋が焦げ付かないように混ぜていたのだ。
「この匂い…。」
「えっと、ごめんなさい。」
「何が?」
「実はあの後寝ちゃってて、夕飯の買い出しに行けなかったんです。」
「そうなのか?」
「はい、目が覚めたら5時前で…。」
「だとしたらそれは俺のせいだな。」
「うぅぅぅ…。」
「気にするな。 薫は料理上手だからなに作っても美味いよ。」
「輝臣さん…。」
伊達は優しくほほ笑み、薫の頭にキスを落とす。
「先に風呂に入ってくる。」
「は、はい…。」
薫は小さく返事をするのが精いっぱいだった。
伊達がバスルームに消えたのを確認して、薫は一つため息をついて食卓の準備を始める。
一通り、並べ終わった頃に伊達が出てきた。
それからすぐに夕食が始まる。
薫にとって伊達との食事は心休まるひと時だった。
実家での家族団欒がないにも等しかっただけに心底嬉しかった。
特に伊達は毎回『美味い』と言って食べてくれる。
そのことにどれほど救われたか。
「相変わらず、薫の料理は美味いな。」
「お粗末様でした。」
「片付けは俺がやるよ。」
「いいんですか?」
「それくらいしないと罰が当たる。」
「そ、そんな…。」
「その間に風呂に入って来い。」
「あ、は、はい…。」
そう言った伊達の瞳の奥に欲情を見て取った薫は俯いてその場を後にするしかなかった。
****************************************************************
薫がバスルームに消えたころにはあらかた片付けが終わった。
伊達は食洗器のスイッチを押す。
「ふぅ、これで良し。」
伊達はそのままリビングのソファに座る。
自分のカバンを手に取り、その中から小さな小箱を取り出す。
「喜んでくれればいいが…。」
中身はシンプルなシルバーリング。
内側にはイニシャルが彫り込まれている。
『TO K FROM T』
『輝臣から薫へ』
そんな思いを込めた婚約指輪だった。
何故、今更こんなことをしているのか。
それは大原里佳子に釘を刺されたからに他ならなかった。
薫と関係を持った翌日、伊達は里佳子に呼び止められた。
「伊達先生、ちょっと顔貸してもらっていいですか?」
「君は…。」
「日下部ゼミの大原里佳子です。」
「日下部教授の秘蔵っ子が何の用だ?」
「しらばっくれてもダメです。 薫と寝たんでしょ?」
「…………。」
「やっぱりかぁ。 ま、いいですけどね。」
「大原?」
「先生に告るように唆したの私だし。
第一、あの時先生聞き耳立ててましたよね?」
「…………。」
「私、知ってるんですよ。 薫と先生が研究室で何してたか…。」
「!!!!!」
「あ、誰にも言ってないからご心配なく。
ていうか、土曜日の昼下がりにあそこに近づく人間なんて居ないですから。」
「大原、お前は何が言いたいんだ?」
「あのね、先生。 薫の家庭ってかなり酷いんだ、特に母親が。
どこまでも薫のことを縛り上げてる。
このままじゃ、あの娘はどこにも行けない。
永遠に籠の中の鳥。 だから、先生の手で開放してやってよ。」
「勿論、そのつもりだ。」
「でも、うちの中に閉じ込めちゃったら一緒じゃん。」
「それは…。」
「私が『永久就職』なんて言い方したのはあくまで薫を実家から切り離すための手段を示唆しただけ。
だから、薫を孕ませて既成事実を作って、自分のものにして、閉じ込めるような真似はしてほしくないの。」
「どうしろと?」
「好きだから…、愛してるから『結婚しよう』って言ってあげて。
先生はずっと前から薫のこと好きなんでしょ?」
「ああ、そうだ。 俺は初めて会った時から結城が…、薫が好きだ。」
「だったら、ちゃんとさ、プロポーズしてやってよ。
そしたら、あの娘すごく喜ぶから。
お願い、先生だけなんだ。 あの娘を幸せにできるのは…。」
「大原…。」
「この通り、お願いです。」
里佳子は深々と頭を下げた。
「大原…。 頭を上げてくれ。」
「先生が薫のことちゃんと幸せにするって約束してくれるまでは…。」
「安心しろ。 俺は薫を幸せにする。」
「ホントですか?」
「伊達輝臣に二言はない。」
「言質取りましたからね。」
「任せろ。」
「分かりました。 その言葉信じて任せます。」
そこで漸く里佳子は頭を上げた。
そして渡されたのはジュエリーショップのチラシと薫の指輪のサイズが書かれたメモだった。
「そこ、人気のショップなんです。 雑誌にも載ってて、薫も欲しいって…。」
「ありがとう。 早速行ってみる。」
その日のうちにショップに行って指輪を注文したのだ。
そしてそれが出来上がったのが今日だった。
伊達はその小箱を鞄にしまう。
「輝臣さん?」
「薫、もう上がったのか?」
「はい、今日はずっと部屋にいたし。
今朝、シャワー浴びた、から…。」
語尾が小さくなったのは恐らく朝の情事を思い出したからだろう。
伊達はそんな薫をソファに呼んだ。
「薫、ここに座って。」
「で、でも…。」
伊達が座るように指示したのは自分の膝の上だ。
薫は躊躇したが、伊達に手を取られ無理矢理座らされた。
そしてそのまま後ろから抱きしめられる。
「て、輝臣さん?!」
「薫…。 これ、開けてみろ。」
そう言って鞄から出したのは例の小箱だった。
薫は恐る恐るその箱を受け取り、開ける。
「!!!!」
余りの衝撃に薫は箱を落としかけた。
それでも、落とさずに済んだのは伊達が手を添えてくれたからだ。
そして、伊達は箱に収まっているシルバーリングを手に取り、薫の左手の薬指に嵌める。
「薫、愛してる…。」
「…………。」
「俺と結婚してくれ。」
「て、てる、おみ、さん…。」
「既成事実とか馬鹿なこと言って悪かった。
俺はお前が好きなんだ、始めて会ったあの夏の日から…。」
「輝臣さん…。」
「あんなことせずにちゃんと正面から向き合えばよかったと反省してる。」
「ど、どうしたんですか?」
「大原に…。」
「里佳子?」
「ああ、大原にガツンと言われた。」
「な、何を?」
「既成事実作って囲い込まずに『愛してるから結婚してほしい』って告げろって。」
「…………。」
「薫?」
気づくと、薫の肩が小刻みに震えていた。
必死で嗚咽を堪えている。
伊達は強く抱きしめてやる。
それは自分にとって薫は唯一無二の存在であることを示すかのような抱擁だった。
「わ、わた、わたし、も、あの夏、の日、から…。」
「うん。」
「ずっと、好き、です…。」
「そうか…。」
「だから、あの時私を思ってしてくれてるんだと知って…。
どこかで、うれしかった…。
だから、私も、輝臣さんがしてるのを見ながら…。」
「薫、それ以上言わなくていい。」
「輝臣さん…。」
「なぁ、返事くれないか?」
「わ、私でいいんですか?」
「質問を質問で返すな。」
「ご、ごめんなさい。」
「俺は薫がいい、薫じゃなきゃダメなんだ。
だから、俺と結婚してくれ。」
「は、はい。 喜んで。」
そこで漸く薫は顔を上げてほほ笑む。
伊達も欲しい返事を貰えて頬が緩んだ。
抱きしめた腕を緩めると薫は振り返り、キスをした。
始めは触れるだけ、やがて伊達の方から噛みつくようにその唇を奪い貪る。
「薫、立って。」
伊達は自分の正面に薫を立たせると自分も立ち上がった。
そして、薫が羽織っているバスローブを脱がす。
「て、輝臣さん…。」
「やっぱり、何も着けてなかったんだな。」
「はしたない?」
「いや、全然。 むしろ嬉しい。 このまま抱きたいが、イイか?」
「はい。 あ…。」
「何だ?」
「服、脱がせてもいい?」
「薫が脱がせてくれるのか?」
「ダメ、ですか?」
「いや、構わんよ。」
「上手くできなかったらごめんなさい。」
「気にしないさ。」
薫は震える手で伊達の服を剥いでいく。
上はTシャツだけだったので鍛え上げられた筋肉が顔を出す。
そして今度はスウェットパンツに手を掛ける。
一度、深呼吸をしてから一気に引き下げる。
ボクサーパンツも一緒に引き下げたので伊達の熱杭を見てしまった。
後ろから抱きしめられていた時から薄々感じてはいたが、いざそれを目の当たりにすると心臓がドクッと跳ね上がる。
「やはり見慣れないか?」
「あ、えっと…。 お、おっきいです、よね…。」
「体に比例するからな。」
「そ、そうなんですか。」
「ところで、その体勢でいるってことは今日は口でしてくれるのか?」
「え? あ、そ、その…。 し、してほしい、ですか?」
「無理はするな。 でも、してくれるのならお願いしたい。」
「わ、分かりました。 どうしたらいいか教えてくださいね。」
「じゃ、まずは右手で根元を軽く握って。」
「こ、こう?」
「そう…。 それから、先っぽに軽くキスする感じで含んで。」
薫は言われた通り、根元を軽く握り、軽く先端を口に含む。
「窪みがあるだろ? そこに舌を這わせて…。」
「んっ…。」
「そう、そうだ。 あぁ、イイよ。」
伊達は目を細め、ぎこちなくも自分の言う通りに舌を這わせる薫の頭を優しく撫でる。
「薫、今度は裏筋に舌を這わせるんだ。
ソフトクリームを舐めるみたいに…。」
「ん…。」
薫が上目遣いに伊達を見る。
それは『これでいい?』と聞いてきているようだった。
伊達は優しくほほ笑みむ。
「ああ、上手だよ。 薫は呑み込みが早いな。
腹に力入れてないとすぐに持ってかれそうだよ。」
その言葉に薫は嬉しくなる。
ちょっとした悪戯心が起こり、薫は先端を含むと強く吸った。
すると、伊達は電流のような快感が背筋を駆けあがり、思わず跳ねる。
それが自分の行為で感じているのだと思うと堪らなく嬉しい。
「か、薫…。 はぁ、はぁ…。
あ、空いた、左手、で、ふ、袋を、優、しく揉んで。」
薫は言われるままに左手で睾丸を持ち上げるようにやわやわと揉みあげる。
伊達は目を瞑り、与えらる快感に必死で耐えているようだった。
息は上がり、その肩は上下に揺れている。
時折、呻くような喘ぎを発している。
「か、薫…、薫…。
ああ、そうだ、イイ、イイぞ。
今度は、イケるとこ、までで、いい、から、深く、咥え込んで…。」
薫はギリギリまで深く咥え込む。
だが、伊達のソレは大きいので全部は無理だ。
だから、代わりに手で扱く。 緩急をつけて…。
伊達は余りの気持ちよさに眩暈がしそうで、思わず薫の体を引きはがす。
「くぅっ! ホント、薫は…。 呑み込みが早すぎる…。」
「嫌、ですか?」
「嫌だとは言っていない。 ただ…。」
「ただ?」
「薫が上手すぎてすぐにイキそうになる。」
「輝臣さん…。」
「これ以上はちょっとマズい。」
「どうして?」
「多分、出してしまう、から…。」
「いいですよ。」
「薫?!」
「私、輝臣さんがイクところ、見てみたい…。」
薫は恍惚とした表情で微笑みかけ、再び伊達のソレを咥える。
今度は唾液を絡め、上下に口を動かす。勿論、舌を絡めることも忘れない。
リビングに卑猥な水音と伊達の喘ぎ声が響く。
「あぁ、薫、どこ、で、そん、なこと、教わっ、たんだ?」
伊達はとにかく腹筋に力を入れて、奥歯を噛みしめ、必死で吐精を我慢する。
そうしなければソレはいつ暴発してもおかしくなかった。
「あぁ、か、薫…。 それ、以上、は…。」
だが、薫は容赦しなかった。
根元を緩急をつけて手で扱き、先端は口でと舌で犯す。
ギリギリまで咥え込んだかと思うと喉の奥で先端を締め上げる。
それを繰り返す薫。
伊達の理性は風前の灯となった。
そして、決定的な時が訪れる。
薫が尿道口に舌を這わせ、亀頭を強く吸い上げたかと思うと一気に深く咥え込んだのだ。
「あ、あぁぁあぁぁ!!!
すまん、もう限界だ!!! このまま出す!!」
そう言うと、伊達は薫の頭を両手で固定したままその口の中に己の白濁を吐き出した。
全てを吐き出した伊達はよろよろとソファにへたり込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…。」
自分の体を駆け抜けていった快感があまりにも大きく、焦点が合わない。
頭の中が真っ白になって何も考えられず、ただ呼吸を整えることしかできない。
ふと、薫の方を見やれば彼女の喉が上下するのが見えた。
(の、飲んだ、のか?!)
伊達は驚きのあまり、身動きが取れない。
薫の口の端からは受け止めきれなかったのであろう白濁が涎のように流れ落ちている。
その姿は淫靡で恍惚とした表情は美しかった。
「か、薫? まさか、飲んだのか?」
「だって、輝臣さんのだから…。」
「いや、でも…。」
「好きな、人の…、だから…。」
そう言って、薫は顔を赤らめ俯く。
その様子に伊達は再び心を鷲掴みにされた。
「薫…。 こっちにおいで。」
伊達は薫を引き寄せ抱きしめると、唇を重ねる。
そして、舌を割り入れ口腔内を隅々まで嘗め回した。
中はまだ白濁の残滓が残っており酷く苦い。
それを薫が『好きな人の物だから』と容易く受け入れてくれたと思うと、歓喜に心が沸き上がる。
「こんなに不味いものを飲んでくれたのか…。」
「輝臣さん?」
「ありがとう。」
伊達は強く抱きしめ、己の幸福を確かめる。
それに答えるように薫は頭を伊達の肩ににもたれかけ、抱きしめ返してた。
「薫、一つになりたい…。」
「うん、私も…。」
「俺は薫の『初めての男』になれて嬉しかった…。」
「輝臣さん…。」
「なぁ、薫。」
「なんですか?」
「俺を『最後の男』にしてくれないか?」
「最後の男?」
「ああ、薫の全てを知っているのは俺だけでありたい。」
「じゃあ、私を輝臣さんの『最後の女』にしてくれたらいいですよ。」
「薫?」
「私も輝臣さんの全てを知っているのは自分だけでいたいってことです。」
「勿論だ。 薫は俺の『最後の女』で『最高の女』だ。」
「輝臣さんは私の『最初で最後の男』です。
この先それは永遠に変わりません。
だから…。 私にあなたの子をください。」
「!!!」
伊達が驚き、抱きしめる力を緩めたすきに薫は立ち上がる。
そしてダイニングテーブルに浅く腰掛け、足を広げる。
「いつものように抱いて…。
何も隔てることなく、私の中に来て。」
そう言って、薫は自らの手で秘裂を押し広げる。
そこはすでに蜜が溢れており、太腿までしとどに濡らしていた。
伊達はまるで甘い蜜に吸い寄せられる蝶のように薫に覆い被さる。
「今夜は優しくしてやれないかもしれんぞ。」
「あれで優しく扱ってるつもりだったんですか?」
「俺の中ではかなり抑えてる。」
「抜かずに3回もするのが?」
「何なら5回連続でも出せるぞ。」
「馬鹿…。」
どちらともなく唇を重ねる。
薫はその手を伊達の熱杭へと這わせ、自らの秘裂へと誘う。
伊達は躊躇なく中へ押し入った。
薫は一気に貫かれたことで言いようのない快感を覚え、軽くイッた。
「薫、腕を首に回せ。」
「うん…。」
薫は言われた通りにした。
伊達は薫の臀部を掴むと、一気に体を起こした。
「あぁぁぁん!!」
いきなり深くなった結合に薫は堪らず嬌声を上げる。
だが、伊達は構わず通挿を始めた。
薫の中はいつにも増して蠢いている。
それは伊達の余裕をなくすほどの締め付けだった。
そのせいか、伊達は一心不乱に腰を打ち付ける。
すぐにその速度が増し、それに比例して薫の嬌声も大きくなる。
二人が達するまでにそう時間はかからなかった。
薫は嬌声とともに伊達のソレを締め上げる。
伊達はそれに贖うことなく、白濁を解き放つ。
だが、その余韻日浸ることなく伊達は繋がったまま寝室へと向かう。
そして、抱きしめあったままベッドへ倒れ込む。
「輝臣さん?」
「もう一回、イケるか?」
「え?」
「というか、付き合え。」
そういうと、伊達は抽挿を再開し始める。
もはや薫の事情などお構いなしだ。
伊達は理性の箍が外れ、己の欲望のままに薫を穿った。
伊達はすぐに果てたが、それでも欲望は止まることを知らず、再び鎌首をもたげる。
薫は続けざまに三度も伊達の精を受け入れる羽目になったのだった。
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「すまない…。」
「謝るなら、最初からしないでください。」
「それは無理。」
「即答?」
「薫が可愛すぎて止められなかった。」
「は、恥ずかしいこと言わないでください。」
薫は真っ赤になったその顔を伊達の胸に埋めた。
伊達はその髪を愛おしげに撫でてやる。
ふと、あることを思い出し、伊達は起き上がるとベッドを抜け出した。
「輝臣さん?」
薫は体を起こし、伊達が消えていった方に視線を向ける。
暫くすると伊達は鞄を持って戻ってくる。
ベッドに再び上がると鞄の中から角型の茶封筒を取り出し、薫に差し出す。
「俺なりに色々考えたんだ。」
「え?」
「薫をこの部屋に閉じ込めなくてもいい方法…。
開けてみてくれ。」
薫は言われるままに封筒の中身を確認する。
それは大学院への募集要項の資料と出願書だった。
「て、輝臣さん、これって…。」
「えっと、その、だなぁ…。
薫が良ければ、俺の研究室に残って修士課程に進むのはどうかと思ったんだ。
実は林原さんから以前勤めてた博物館への推薦状を書いて欲しいと頼まれて…。」
「それとこれがどう…。」
「俺の勤めてた博物館は県外だから…。。
そこに薫を推薦したら一緒にいられなくなる。
だから、推薦状は書きたくない。
かといって、林原さんからは矢のような催促くる。
俺と一緒にいられて、且つ、林原さんにも納得してもらう方法…。」
「それが大学院への進学?」
「ああ、できたら俺の元に残ってほしい。
そうしたら公私ともに一緒にいられる。
薫自身が就職から大学院への進学に切り替えたのなら、林原さんも納得してくれるだろ?」
「輝臣さん。」
「ダメ、かな?」
「だ、ダメ、じゃない、です。 ありがとう。」
「ただ、ちょっと採点厳しくなるかもしれないが…。」
「それくらい平気です。」
「そうか…。」
「私も、輝臣さんの側に、ずっといたいです。」
伊達は薫の返事に満足したようでその額に口付けを落とす。
薫もそれに答えるかのように伊達の胸に顔を埋めた。
「もう一つ大事なことがあった。」
「?」
「薫は来月誕生日だったよな?」
「はい、8月11日です。」
「なら、その日にこれを出そう。」
そう言って伊達が出してきたのは婚姻届だった。
「プロポーズの返事も貰えたら、先に籍だけでも入れたいと思ってもらってきた。」
「で、でも、保証人とか…。」
「あー、それ、心配しなくていい。
なってくれそうな人呼んであるから。」
「輝臣さん、早すぎ。」
「しょうがないだろ、一回りも下の教え子に惚れたんだから。
薫たちから見たら俺なんて『オッサン』って言われてもおかしくない部類だ。
だから、法的にも俺の物になってほしい。」
「不安なんですか?」
「そうだな、すごく不安…。
一緒に暮らしてみてやっぱりダメだって思われたらどうしよう。
やっぱり同世代の男の方がよかったって思われたらどうしようって…。
そんなことばかり考えてる。」
伊達の弱気な発言に薫は唖然となる。
そして、どこかその様子が耳も尻尾も垂れた叱られた子犬のようで可笑しくなった。
「薫?」
「輝臣さん、考えすぎ。」
「でもなぁ。」
「輝臣さんは私の『最初で最後の男』なんです。
だから、『ダメ』だとか思ったりしません。」
「ホントに?」
「もう、さっきまであんなに自信満々だったのに。
強気な輝臣さんはどこに行ったんですか?」
「でも…。」
「わかりました。 それにサインすればいいんですね。」
「し、してくれるのか?」
「そこまで言われたんじゃ、しないわけにはいかないでしょ?」
「薫!!」
「きゃっ!」
伊達は嬉しさのあまり薫をギュッと抱きしめた。
薫は苦笑せざるを得ない。
この一回りも年上の男はそれほどまでに自分にのめり込んでる。
それなら、とことん付き合うしかないと腹を括る。
「なら、今度の金曜に横浜に行きませんか?」
「横浜?」
「私の本籍地、横浜なんでそれ出すなら戸籍謄本が必要でしょ?」
「ああ、そうか…。 そうだな。」
「予定、大丈夫ですか?」
「特に今週はないから大丈夫だ。
どうせならデートしないか?」
「デート、ですか?」
「今まで、その…、ベッドの上、ばっかり…、だっただろ?」
「そ、そう、ですね。」
「だから、とびきり楽しいデートにしよう!」
「楽しみにしてます。」
二人は唇を重ね、抱き合うように横になった。
薫は伊達の温もりに包まれながら、まどろみの海へと漕ぎ出したのだ。
伊達も愛しい人の寝息を子守唄に眠りについた。
この時、伊達は重要なことを忘れていた。
薫にプロポーズを受け入れられて有頂天になっていたからだろう。
伊達が忘れていた、重要なこと。
それが何なのか?
明らかになるのは翌日のことだった。
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第4話
深いまどろみの海から浮上する薫。
だが、まだ意識ははっきりしない。
薫はローテーブルに手を伸ばし、スマホを手に取る。
(今何時?)
薫はスマホの画面を覗き込む。
そこには『16:45』の表示が…。
「う、うそ!!」
薫は一気に覚醒し、飛び起きた。
何故なら伊達の帰宅時間を考えると今から夕飯の支度を始めないといけないからだ。
「どうしよう…。 買い出しいけなかった。」
薫は伊達のリクエストに答えれないことに戦々恐々とした。
だが、今更どうにもならない。
もとはと言えば、伊達がバスルームで三回も事に及んだせいなのだから文句を言われる筋合いはない。
と、開き直って冷蔵庫の中を確認することにした。
「う~~ん、玉葱、人参。ジャガイモ、セロリにニンニク。
えっと、肉は豚小間かぁ。
あ、カレーのルーがある。 って、なんでみんな中途半端に使ってるの?」
ドアポケットにあったのは種類の違うルー。
どれも1~2かけ残して放置してあった。
「全部入れちゃえばちょうどいい量になるかな?
よし、今夜はカレーにしよう。
えっと、付け合わせは…。 サラダでいいか。」
夕飯のメニューが決まれば薫の行動は早い。
まずはご飯を仕掛け、炊飯ジャーにセット。
「あ、そう言えば…。」
薫は香辛料の置いてある棚に手を伸ばす。
そこには様々なハーブ類も置かれている。
「輝臣さん、何でこんなもの置いてるんだろ?
ま、いっか。 折角だから使ってみよ。」
そう言ってハーブの中からサフランを取り出す。
それをお米の入った釜に少量入れ、蓋をし、炊飯のスイッチを押した。
「いい感じに仕上がってくれるといいんだけど。」
あとはカレー作りだが、今日は市販のルーを使うことにしたのでそれほどの手間はかからなかった。
ニンニクが多めなのは今朝の伊達の発言があるせいだと言っておこう。
「うん、カレーはこれでオッケー。 あとは…。」
ピーッ、ピーッ、ピーッ。
炊飯ジャーから炊き上がりの合図がする。
薫は早速蓋を開ける。
すると、サフランで黄色く色付けされたご飯が現れた。
「あ、イイ感じになった。」
そこへ玄関の開く音がした。
「ただいま。」
伊達が帰ってきたのだ。
「あ、輝臣さん、お帰りなさい。」
「薫?」
「ごめんなさい、今ちょっと手が離せなくて…。」
薫は鍋が焦げ付かないように混ぜていたのだ。
「この匂い…。」
「えっと、ごめんなさい。」
「何が?」
「実はあの後寝ちゃってて、夕飯の買い出しに行けなかったんです。」
「そうなのか?」
「はい、目が覚めたら5時前で…。」
「だとしたらそれは俺のせいだな。」
「うぅぅぅ…。」
「気にするな。 薫は料理上手だからなに作っても美味いよ。」
「輝臣さん…。」
伊達は優しくほほ笑み、薫の頭にキスを落とす。
「先に風呂に入ってくる。」
「は、はい…。」
薫は小さく返事をするのが精いっぱいだった。
伊達がバスルームに消えたのを確認して、薫は一つため息をついて食卓の準備を始める。
一通り、並べ終わった頃に伊達が出てきた。
それからすぐに夕食が始まる。
薫にとって伊達との食事は心休まるひと時だった。
実家での家族団欒がないにも等しかっただけに心底嬉しかった。
特に伊達は毎回『美味い』と言って食べてくれる。
そのことにどれほど救われたか。
「相変わらず、薫の料理は美味いな。」
「お粗末様でした。」
「片付けは俺がやるよ。」
「いいんですか?」
「それくらいしないと罰が当たる。」
「そ、そんな…。」
「その間に風呂に入って来い。」
「あ、は、はい…。」
そう言った伊達の瞳の奥に欲情を見て取った薫は俯いてその場を後にするしかなかった。
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薫がバスルームに消えたころにはあらかた片付けが終わった。
伊達は食洗器のスイッチを押す。
「ふぅ、これで良し。」
伊達はそのままリビングのソファに座る。
自分のカバンを手に取り、その中から小さな小箱を取り出す。
「喜んでくれればいいが…。」
中身はシンプルなシルバーリング。
内側にはイニシャルが彫り込まれている。
『TO K FROM T』
『輝臣から薫へ』
そんな思いを込めた婚約指輪だった。
何故、今更こんなことをしているのか。
それは大原里佳子に釘を刺されたからに他ならなかった。
薫と関係を持った翌日、伊達は里佳子に呼び止められた。
「伊達先生、ちょっと顔貸してもらっていいですか?」
「君は…。」
「日下部ゼミの大原里佳子です。」
「日下部教授の秘蔵っ子が何の用だ?」
「しらばっくれてもダメです。 薫と寝たんでしょ?」
「…………。」
「やっぱりかぁ。 ま、いいですけどね。」
「大原?」
「先生に告るように唆したの私だし。
第一、あの時先生聞き耳立ててましたよね?」
「…………。」
「私、知ってるんですよ。 薫と先生が研究室で何してたか…。」
「!!!!!」
「あ、誰にも言ってないからご心配なく。
ていうか、土曜日の昼下がりにあそこに近づく人間なんて居ないですから。」
「大原、お前は何が言いたいんだ?」
「あのね、先生。 薫の家庭ってかなり酷いんだ、特に母親が。
どこまでも薫のことを縛り上げてる。
このままじゃ、あの娘はどこにも行けない。
永遠に籠の中の鳥。 だから、先生の手で開放してやってよ。」
「勿論、そのつもりだ。」
「でも、うちの中に閉じ込めちゃったら一緒じゃん。」
「それは…。」
「私が『永久就職』なんて言い方したのはあくまで薫を実家から切り離すための手段を示唆しただけ。
だから、薫を孕ませて既成事実を作って、自分のものにして、閉じ込めるような真似はしてほしくないの。」
「どうしろと?」
「好きだから…、愛してるから『結婚しよう』って言ってあげて。
先生はずっと前から薫のこと好きなんでしょ?」
「ああ、そうだ。 俺は初めて会った時から結城が…、薫が好きだ。」
「だったら、ちゃんとさ、プロポーズしてやってよ。
そしたら、あの娘すごく喜ぶから。
お願い、先生だけなんだ。 あの娘を幸せにできるのは…。」
「大原…。」
「この通り、お願いです。」
里佳子は深々と頭を下げた。
「大原…。 頭を上げてくれ。」
「先生が薫のことちゃんと幸せにするって約束してくれるまでは…。」
「安心しろ。 俺は薫を幸せにする。」
「ホントですか?」
「伊達輝臣に二言はない。」
「言質取りましたからね。」
「任せろ。」
「分かりました。 その言葉信じて任せます。」
そこで漸く里佳子は頭を上げた。
そして渡されたのはジュエリーショップのチラシと薫の指輪のサイズが書かれたメモだった。
「そこ、人気のショップなんです。 雑誌にも載ってて、薫も欲しいって…。」
「ありがとう。 早速行ってみる。」
その日のうちにショップに行って指輪を注文したのだ。
そしてそれが出来上がったのが今日だった。
伊達はその小箱を鞄にしまう。
「輝臣さん?」
「薫、もう上がったのか?」
「はい、今日はずっと部屋にいたし。
今朝、シャワー浴びた、から…。」
語尾が小さくなったのは恐らく朝の情事を思い出したからだろう。
伊達はそんな薫をソファに呼んだ。
「薫、ここに座って。」
「で、でも…。」
伊達が座るように指示したのは自分の膝の上だ。
薫は躊躇したが、伊達に手を取られ無理矢理座らされた。
そしてそのまま後ろから抱きしめられる。
「て、輝臣さん?!」
「薫…。 これ、開けてみろ。」
そう言って鞄から出したのは例の小箱だった。
薫は恐る恐るその箱を受け取り、開ける。
「!!!!」
余りの衝撃に薫は箱を落としかけた。
それでも、落とさずに済んだのは伊達が手を添えてくれたからだ。
そして、伊達は箱に収まっているシルバーリングを手に取り、薫の左手の薬指に嵌める。
「薫、愛してる…。」
「…………。」
「俺と結婚してくれ。」
「て、てる、おみ、さん…。」
「既成事実とか馬鹿なこと言って悪かった。
俺はお前が好きなんだ、始めて会ったあの夏の日から…。」
「輝臣さん…。」
「あんなことせずにちゃんと正面から向き合えばよかったと反省してる。」
「ど、どうしたんですか?」
「大原に…。」
「里佳子?」
「ああ、大原にガツンと言われた。」
「な、何を?」
「既成事実作って囲い込まずに『愛してるから結婚してほしい』って告げろって。」
「…………。」
「薫?」
気づくと、薫の肩が小刻みに震えていた。
必死で嗚咽を堪えている。
伊達は強く抱きしめてやる。
それは自分にとって薫は唯一無二の存在であることを示すかのような抱擁だった。
「わ、わた、わたし、も、あの夏、の日、から…。」
「うん。」
「ずっと、好き、です…。」
「そうか…。」
「だから、あの時私を思ってしてくれてるんだと知って…。
どこかで、うれしかった…。
だから、私も、輝臣さんがしてるのを見ながら…。」
「薫、それ以上言わなくていい。」
「輝臣さん…。」
「なぁ、返事くれないか?」
「わ、私でいいんですか?」
「質問を質問で返すな。」
「ご、ごめんなさい。」
「俺は薫がいい、薫じゃなきゃダメなんだ。
だから、俺と結婚してくれ。」
「は、はい。 喜んで。」
そこで漸く薫は顔を上げてほほ笑む。
伊達も欲しい返事を貰えて頬が緩んだ。
抱きしめた腕を緩めると薫は振り返り、キスをした。
始めは触れるだけ、やがて伊達の方から噛みつくようにその唇を奪い貪る。
「薫、立って。」
伊達は自分の正面に薫を立たせると自分も立ち上がった。
そして、薫が羽織っているバスローブを脱がす。
「て、輝臣さん…。」
「やっぱり、何も着けてなかったんだな。」
「はしたない?」
「いや、全然。 むしろ嬉しい。 このまま抱きたいが、イイか?」
「はい。 あ…。」
「何だ?」
「服、脱がせてもいい?」
「薫が脱がせてくれるのか?」
「ダメ、ですか?」
「いや、構わんよ。」
「上手くできなかったらごめんなさい。」
「気にしないさ。」
薫は震える手で伊達の服を剥いでいく。
上はTシャツだけだったので鍛え上げられた筋肉が顔を出す。
そして今度はスウェットパンツに手を掛ける。
一度、深呼吸をしてから一気に引き下げる。
ボクサーパンツも一緒に引き下げたので伊達の熱杭を見てしまった。
後ろから抱きしめられていた時から薄々感じてはいたが、いざそれを目の当たりにすると心臓がドクッと跳ね上がる。
「やはり見慣れないか?」
「あ、えっと…。 お、おっきいです、よね…。」
「体に比例するからな。」
「そ、そうなんですか。」
「ところで、その体勢でいるってことは今日は口でしてくれるのか?」
「え? あ、そ、その…。 し、してほしい、ですか?」
「無理はするな。 でも、してくれるのならお願いしたい。」
「わ、分かりました。 どうしたらいいか教えてくださいね。」
「じゃ、まずは右手で根元を軽く握って。」
「こ、こう?」
「そう…。 それから、先っぽに軽くキスする感じで含んで。」
薫は言われた通り、根元を軽く握り、軽く先端を口に含む。
「窪みがあるだろ? そこに舌を這わせて…。」
「んっ…。」
「そう、そうだ。 あぁ、イイよ。」
伊達は目を細め、ぎこちなくも自分の言う通りに舌を這わせる薫の頭を優しく撫でる。
「薫、今度は裏筋に舌を這わせるんだ。
ソフトクリームを舐めるみたいに…。」
「ん…。」
薫が上目遣いに伊達を見る。
それは『これでいい?』と聞いてきているようだった。
伊達は優しくほほ笑みむ。
「ああ、上手だよ。 薫は呑み込みが早いな。
腹に力入れてないとすぐに持ってかれそうだよ。」
その言葉に薫は嬉しくなる。
ちょっとした悪戯心が起こり、薫は先端を含むと強く吸った。
すると、伊達は電流のような快感が背筋を駆けあがり、思わず跳ねる。
それが自分の行為で感じているのだと思うと堪らなく嬉しい。
「か、薫…。 はぁ、はぁ…。
あ、空いた、左手、で、ふ、袋を、優、しく揉んで。」
薫は言われるままに左手で睾丸を持ち上げるようにやわやわと揉みあげる。
伊達は目を瞑り、与えらる快感に必死で耐えているようだった。
息は上がり、その肩は上下に揺れている。
時折、呻くような喘ぎを発している。
「か、薫…、薫…。
ああ、そうだ、イイ、イイぞ。
今度は、イケるとこ、までで、いい、から、深く、咥え込んで…。」
薫はギリギリまで深く咥え込む。
だが、伊達のソレは大きいので全部は無理だ。
だから、代わりに手で扱く。 緩急をつけて…。
伊達は余りの気持ちよさに眩暈がしそうで、思わず薫の体を引きはがす。
「くぅっ! ホント、薫は…。 呑み込みが早すぎる…。」
「嫌、ですか?」
「嫌だとは言っていない。 ただ…。」
「ただ?」
「薫が上手すぎてすぐにイキそうになる。」
「輝臣さん…。」
「これ以上はちょっとマズい。」
「どうして?」
「多分、出してしまう、から…。」
「いいですよ。」
「薫?!」
「私、輝臣さんがイクところ、見てみたい…。」
薫は恍惚とした表情で微笑みかけ、再び伊達のソレを咥える。
今度は唾液を絡め、上下に口を動かす。勿論、舌を絡めることも忘れない。
リビングに卑猥な水音と伊達の喘ぎ声が響く。
「あぁ、薫、どこ、で、そん、なこと、教わっ、たんだ?」
伊達はとにかく腹筋に力を入れて、奥歯を噛みしめ、必死で吐精を我慢する。
そうしなければソレはいつ暴発してもおかしくなかった。
「あぁ、か、薫…。 それ、以上、は…。」
だが、薫は容赦しなかった。
根元を緩急をつけて手で扱き、先端は口でと舌で犯す。
ギリギリまで咥え込んだかと思うと喉の奥で先端を締め上げる。
それを繰り返す薫。
伊達の理性は風前の灯となった。
そして、決定的な時が訪れる。
薫が尿道口に舌を這わせ、亀頭を強く吸い上げたかと思うと一気に深く咥え込んだのだ。
「あ、あぁぁあぁぁ!!!
すまん、もう限界だ!!! このまま出す!!」
そう言うと、伊達は薫の頭を両手で固定したままその口の中に己の白濁を吐き出した。
全てを吐き出した伊達はよろよろとソファにへたり込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…。」
自分の体を駆け抜けていった快感があまりにも大きく、焦点が合わない。
頭の中が真っ白になって何も考えられず、ただ呼吸を整えることしかできない。
ふと、薫の方を見やれば彼女の喉が上下するのが見えた。
(の、飲んだ、のか?!)
伊達は驚きのあまり、身動きが取れない。
薫の口の端からは受け止めきれなかったのであろう白濁が涎のように流れ落ちている。
その姿は淫靡で恍惚とした表情は美しかった。
「か、薫? まさか、飲んだのか?」
「だって、輝臣さんのだから…。」
「いや、でも…。」
「好きな、人の…、だから…。」
そう言って、薫は顔を赤らめ俯く。
その様子に伊達は再び心を鷲掴みにされた。
「薫…。 こっちにおいで。」
伊達は薫を引き寄せ抱きしめると、唇を重ねる。
そして、舌を割り入れ口腔内を隅々まで嘗め回した。
中はまだ白濁の残滓が残っており酷く苦い。
それを薫が『好きな人の物だから』と容易く受け入れてくれたと思うと、歓喜に心が沸き上がる。
「こんなに不味いものを飲んでくれたのか…。」
「輝臣さん?」
「ありがとう。」
伊達は強く抱きしめ、己の幸福を確かめる。
それに答えるように薫は頭を伊達の肩ににもたれかけ、抱きしめ返してた。
「薫、一つになりたい…。」
「うん、私も…。」
「俺は薫の『初めての男』になれて嬉しかった…。」
「輝臣さん…。」
「なぁ、薫。」
「なんですか?」
「俺を『最後の男』にしてくれないか?」
「最後の男?」
「ああ、薫の全てを知っているのは俺だけでありたい。」
「じゃあ、私を輝臣さんの『最後の女』にしてくれたらいいですよ。」
「薫?」
「私も輝臣さんの全てを知っているのは自分だけでいたいってことです。」
「勿論だ。 薫は俺の『最後の女』で『最高の女』だ。」
「輝臣さんは私の『最初で最後の男』です。
この先それは永遠に変わりません。
だから…。 私にあなたの子をください。」
「!!!」
伊達が驚き、抱きしめる力を緩めたすきに薫は立ち上がる。
そしてダイニングテーブルに浅く腰掛け、足を広げる。
「いつものように抱いて…。
何も隔てることなく、私の中に来て。」
そう言って、薫は自らの手で秘裂を押し広げる。
そこはすでに蜜が溢れており、太腿までしとどに濡らしていた。
伊達はまるで甘い蜜に吸い寄せられる蝶のように薫に覆い被さる。
「今夜は優しくしてやれないかもしれんぞ。」
「あれで優しく扱ってるつもりだったんですか?」
「俺の中ではかなり抑えてる。」
「抜かずに3回もするのが?」
「何なら5回連続でも出せるぞ。」
「馬鹿…。」
どちらともなく唇を重ねる。
薫はその手を伊達の熱杭へと這わせ、自らの秘裂へと誘う。
伊達は躊躇なく中へ押し入った。
薫は一気に貫かれたことで言いようのない快感を覚え、軽くイッた。
「薫、腕を首に回せ。」
「うん…。」
薫は言われた通りにした。
伊達は薫の臀部を掴むと、一気に体を起こした。
「あぁぁぁん!!」
いきなり深くなった結合に薫は堪らず嬌声を上げる。
だが、伊達は構わず通挿を始めた。
薫の中はいつにも増して蠢いている。
それは伊達の余裕をなくすほどの締め付けだった。
そのせいか、伊達は一心不乱に腰を打ち付ける。
すぐにその速度が増し、それに比例して薫の嬌声も大きくなる。
二人が達するまでにそう時間はかからなかった。
薫は嬌声とともに伊達のソレを締め上げる。
伊達はそれに贖うことなく、白濁を解き放つ。
だが、その余韻日浸ることなく伊達は繋がったまま寝室へと向かう。
そして、抱きしめあったままベッドへ倒れ込む。
「輝臣さん?」
「もう一回、イケるか?」
「え?」
「というか、付き合え。」
そういうと、伊達は抽挿を再開し始める。
もはや薫の事情などお構いなしだ。
伊達は理性の箍が外れ、己の欲望のままに薫を穿った。
伊達はすぐに果てたが、それでも欲望は止まることを知らず、再び鎌首をもたげる。
薫は続けざまに三度も伊達の精を受け入れる羽目になったのだった。
****************************************************************
「すまない…。」
「謝るなら、最初からしないでください。」
「それは無理。」
「即答?」
「薫が可愛すぎて止められなかった。」
「は、恥ずかしいこと言わないでください。」
薫は真っ赤になったその顔を伊達の胸に埋めた。
伊達はその髪を愛おしげに撫でてやる。
ふと、あることを思い出し、伊達は起き上がるとベッドを抜け出した。
「輝臣さん?」
薫は体を起こし、伊達が消えていった方に視線を向ける。
暫くすると伊達は鞄を持って戻ってくる。
ベッドに再び上がると鞄の中から角型の茶封筒を取り出し、薫に差し出す。
「俺なりに色々考えたんだ。」
「え?」
「薫をこの部屋に閉じ込めなくてもいい方法…。
開けてみてくれ。」
薫は言われるままに封筒の中身を確認する。
それは大学院への募集要項の資料と出願書だった。
「て、輝臣さん、これって…。」
「えっと、その、だなぁ…。
薫が良ければ、俺の研究室に残って修士課程に進むのはどうかと思ったんだ。
実は林原さんから以前勤めてた博物館への推薦状を書いて欲しいと頼まれて…。」
「それとこれがどう…。」
「俺の勤めてた博物館は県外だから…。。
そこに薫を推薦したら一緒にいられなくなる。
だから、推薦状は書きたくない。
かといって、林原さんからは矢のような催促くる。
俺と一緒にいられて、且つ、林原さんにも納得してもらう方法…。」
「それが大学院への進学?」
「ああ、できたら俺の元に残ってほしい。
そうしたら公私ともに一緒にいられる。
薫自身が就職から大学院への進学に切り替えたのなら、林原さんも納得してくれるだろ?」
「輝臣さん。」
「ダメ、かな?」
「だ、ダメ、じゃない、です。 ありがとう。」
「ただ、ちょっと採点厳しくなるかもしれないが…。」
「それくらい平気です。」
「そうか…。」
「私も、輝臣さんの側に、ずっといたいです。」
伊達は薫の返事に満足したようでその額に口付けを落とす。
薫もそれに答えるかのように伊達の胸に顔を埋めた。
「もう一つ大事なことがあった。」
「?」
「薫は来月誕生日だったよな?」
「はい、8月11日です。」
「なら、その日にこれを出そう。」
そう言って伊達が出してきたのは婚姻届だった。
「プロポーズの返事も貰えたら、先に籍だけでも入れたいと思ってもらってきた。」
「で、でも、保証人とか…。」
「あー、それ、心配しなくていい。
なってくれそうな人呼んであるから。」
「輝臣さん、早すぎ。」
「しょうがないだろ、一回りも下の教え子に惚れたんだから。
薫たちから見たら俺なんて『オッサン』って言われてもおかしくない部類だ。
だから、法的にも俺の物になってほしい。」
「不安なんですか?」
「そうだな、すごく不安…。
一緒に暮らしてみてやっぱりダメだって思われたらどうしよう。
やっぱり同世代の男の方がよかったって思われたらどうしようって…。
そんなことばかり考えてる。」
伊達の弱気な発言に薫は唖然となる。
そして、どこかその様子が耳も尻尾も垂れた叱られた子犬のようで可笑しくなった。
「薫?」
「輝臣さん、考えすぎ。」
「でもなぁ。」
「輝臣さんは私の『最初で最後の男』なんです。
だから、『ダメ』だとか思ったりしません。」
「ホントに?」
「もう、さっきまであんなに自信満々だったのに。
強気な輝臣さんはどこに行ったんですか?」
「でも…。」
「わかりました。 それにサインすればいいんですね。」
「し、してくれるのか?」
「そこまで言われたんじゃ、しないわけにはいかないでしょ?」
「薫!!」
「きゃっ!」
伊達は嬉しさのあまり薫をギュッと抱きしめた。
薫は苦笑せざるを得ない。
この一回りも年上の男はそれほどまでに自分にのめり込んでる。
それなら、とことん付き合うしかないと腹を括る。
「なら、今度の金曜に横浜に行きませんか?」
「横浜?」
「私の本籍地、横浜なんでそれ出すなら戸籍謄本が必要でしょ?」
「ああ、そうか…。 そうだな。」
「予定、大丈夫ですか?」
「特に今週はないから大丈夫だ。
どうせならデートしないか?」
「デート、ですか?」
「今まで、その…、ベッドの上、ばっかり…、だっただろ?」
「そ、そう、ですね。」
「だから、とびきり楽しいデートにしよう!」
「楽しみにしてます。」
二人は唇を重ね、抱き合うように横になった。
薫は伊達の温もりに包まれながら、まどろみの海へと漕ぎ出したのだ。
伊達も愛しい人の寝息を子守唄に眠りについた。
この時、伊達は重要なことを忘れていた。
薫にプロポーズを受け入れられて有頂天になっていたからだろう。
伊達が忘れていた、重要なこと。
それが何なのか?
明らかになるのは翌日のことだった。
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