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第3話
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再び輝臣視点
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第3話
研究室でホッと一息をつく伊達。
学会へ向けての打ち合わせは30分ほどで終わった。
出来上がった論文も特に問題はない。
教授たちからもお墨付きをもらい伊達は椅子に深く腰掛ける。
目を瞑り、脳裏に浮かぶのは連日繰り広げられる薫との情事だ。
今までに感じたことのない甘美な行為。
どれほど無理強いをしても薫は拒まなかった。
そのことにどれほど歓喜したことか。
今年に34になる伊達にも深い関係になった女性が何人かいた。
だが、どの女性も暫くすると自分との行為に嫌気がさし離れていった。
それはどうしようもないこと、伊達はそう思っている。
伊達は簡単には満足できない男だった。
それは彼の体格が原因なのかもしれない。
伊達は中学時代からラグビーをしていた。
ポジションの関係上、その体は筋骨隆々とした屈強なものになった。
高校を卒業するまでラグビー一筋だった伊達が変わったのは大学進学後。
そこで女の体を知ったことで一気に箍が外れたのである。
伊達は一度達したくらいでは満たされることはない。
むしろ渇きが酷くなり、更なる行為に及び、それは激しく相手を疲弊させた。
やがて耐えきれなくなり伊達のもとを去る。
その繰り返しだった。
そうして伊達は相手を求めることをやめ、自慰にふけるようになった。
そんな生活に慣れた頃に出会ったのが薫だ。
偶然の出会いに始まり、奇跡の再会を果たし、三度目の正直で教え子となったその存在に伊達は酔った。
気づけば薫との行為を妄想して自慰するようになっていた。
「ふぅ…。」
伊達は大きく息を吐き、目を開ける。
背もたれから少し体を起こすと目に入ったのは四年前の春、ゼミの教え子たちとの親睦会の写真。
そこに映る薫はまだあどけない。
そんな薫を自分は手に入れた。
そう思うだけで伊達の雄は鎌首をもたげ始める。
そのことに苦笑せざるを得なかった。
自分はどれほどこの少女に溺れているのかと…。
一度知ってしまった薫の体は伊達の理性を吹き飛ばすに十分であった。
可愛らしく啼いてみせる薫。
だが、彼女の中は本能に忠実で伊達からその精を搾り取るように蠢く。
それは麻薬のように伊達の思考を焼き切り、欲望のままに貪る。
薫との行為無しでは生きれないだろうと思うほどだった。
元々、薫を手に入れる気はなかった。
ただ側に置き、その姿を眺め、自慰のための妄想の相手でとどめる。
伊達はそう思っていた。
だから、あの夏の日から続く、倒錯的な行為以上のことはしなかった。
薫とその友人の大原里佳子との会話を聞くまでは。
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あれはゴールデンウイークの明けた5月中旬のことだ。
多くの4年生は就職先が決まり、卒論に取り掛かかる者もちらほらと出始める。
そんなある日、伊達はある人物に呼び止められた。
「伊達教授、少しよろしいですか?」
そう声をかけてきたのは就職課の林原だ。
(就職課が俺に何の用だ?)
伊達は訝しみ、眉間に皺を寄せる。
だが、次に発せられた言葉でその表情を一変させる。
「お宅のゼミの結城薫さんのことでお話があります。」
「結城のこと?」
「はい。 お時間宜しいですか?」
「大丈夫です。」
伊達はそのまま就職課の応接室へ連れられた。
来客用のソファに身を沈めながら林原の話を聞く。
「それで、結城がどうかしたのですか?」
「彼女、未だに内定が貰えてないんです。」
「そんなはずは…。」
「本人は好感触を持ってて実際インターンや二次面接までは行くんです。
でも、何故かそのあとに不採用通知が来て…。」
「それは毎回なのですか?」
「ええ、あまりに続くのでうちから不採用の理由を問いただしたんです。
勿論、答えられないと一蹴されるところがほとんどでしたが…。」
「教えてくれた企業があったんですか?」
「企業と言うか、ある博物館の館長が他言無用と念押ししてお話しくださいました。」
「それで?」
「どうやら、結城さんのお母様が妨害工作をしているようなんです。」
「結城の母親が?」
「『娘はすぐに結婚させるので勤めても1~2年です』
そう吹聴してまわっているらしいと。」
「それで、俺にどうしろと?」
「単刀直入に申し上げます。
以前勤められていた博物館に結城さんを推薦していただけませんか?」
「俺がいたのは県外ですよ。」
「構いません。
恐らく、うちから斡旋しては今までと同じでしょう。
伊達教授からの推薦状があれば館長も無碍にはできないはずです。」
「そううまくいきますか?」
「分かりませんが、何もしないよりはましです。
彼女のような人材こそ社会に出るべきなのです。」
林原の力説に伊達は折れた。
なるべく急いでほしいと頼まれたこともあり、伊達はすぐに推薦状を書いた。
この時点では博物館に連絡していない。
まずは薫の意志を確認してからと思ったからだ。
それには薫の居場所を把握しなければならない。
ゼミの教え子たちに彼女が行きそうな場所を聞くことにした。
「青山、お前、結城が行きそうな場所知ってるか?」
「先生、急にどうしたんっすか?」
「急ぎで結城に渡したいものがあるんだ。」
「う~~ん、結城ってバイトもしてないからなぁ。
梶田、お前さぁ、結城とよくつるんでるじゃん。
どっか知らね?」
「それなら、あそこのファミレスじゃない? ほら、駅前の…。」
「ああ、あそこかぁ。」
「ファミレス?」
「うちの連中が入り浸ってるファミレスが駅前にあるんっすよ。
みんな、そこで勉強してるんです。」
「図書館とかじゃなくて?」
「最近はみんなファミレスやカフェで勉強してるんです。」
「何でまた…。」
「ファミレスならドリンクバーがあるし、つまめる物も頼めるからです。
カフェもモーニングやランチの時間を除けば落ち着いて勉強できます。」
「なるほど…。 結城もそれに漏れずってことか?」
「というか、親友の里佳子が引っぱってちゃうんですよ。」
「里佳子?」
「大原里佳子。 日下部ゼミの…。」
「日下部教授の秘蔵っ子?」
「そうそう、彼女がいたから今の結城があるようなもんすよ。」
「そうだったのか。」
「多分、今の時間なら二人でいる筈じゃないかな?」
「分かった。 ありがとう。」
伊達はすぐに教えられたファミレスに向かう。
店内に入ると奥の禁煙席に二人向き合って座っているのが見えた。
真っ直ぐ彼女たちのもとへ向かおうとした伊達だったが、突然始まった二人の会話に声をかけるタイミングを逸してしまう。
仕方なく、彼女たちから死角になる席に着くとパンケーキとドリンクバーを注文した。
そして、耳をそばだてて会話を盗み聞く。
「ねぇ、薫はこれからどうするの?」
「どうするって?」
「内定、まだもらえないんでしょ?」
「………………。」
「薫?」
「この際、母の言う通りにしようかなぁ。」
「え?」
「疲れちゃった…。」
「薫、あんた…。」
「前に話したことあったでしょ。 私が母のこと嫌いだって。」
「うん、その話は知ってる。」
「どうも、私の内定が取れないのって母が裏で妨害してるみたいなんだ。」
「はぁ? なんでそんなことするのよ!!」
「多分、母が孤立した原因が私だから。」
薫が窓の外ぼんやり見つめながらそうつぶやく。
すると、里佳子がテーブルを叩いて立ち上がる。
「なに、それ。 バカバカしいにもほどがあるわ!!」
「母はね、やりたいこともできずに家庭に押し込められたの。
だから、私が社会に出ることが許せないんだと思う。」
「だからって娘の就職活動を妨害するってどういう神経してんのよ。」
「私もそう思う。 けど…。」
「けど?」
「もう、疲れちゃった。
だから、母の薦める相手とお見合いでもして収まっちゃった方が楽になれる気がするんだ。」
「でも、それって絶対後悔するよ。」
「そうかな…。」
「そうよ、一時良くても数年後には後悔するのが目に見えてる。」
「だからって、このままずるずる就職活動するのも…。」
「それはそうだけど…。」
「どうしたらいいんだろう。」
薫は深いため息をついた。
その姿に里佳子はかなり深刻な問題だと悟った。
目を瞑り何か思案している。
暫くすると何か思いついたように目を見開く。
「この際、自分で永久就職させてくれそうな人見つけるってのはどうよ。」
「永久就職?」
「だ・か・ら! 結婚!」
「け、結婚?!」
「無理矢理っていうのは後悔するけど、自分から飛び込んじゃえば後悔ないじゃん。」
「里佳子、さっきと矛盾してない?」
「お母さんは自分の思った相手と結婚させたい。
けど、薫はお母さんの思う通りになんてなりたくない。
なら、自分で見つけてきた相手と結婚しちゃえば、その思惑に乗らなかったことになるでしょ?」
「でも、そんな人…。」
「一人いるじゃん!! それも超優良物件が!!!」
「え?」
「あんたのとこの准教授様♪」
伊達は先ほど取ってきたアイスコーヒーを吹き出しそうになった。
まさか、こんなところで自分がやり玉に挙げられるとは思っていなかったのだ。
伊達の心拍数は一気に上がる。
話の流れからすると薫が自分をどう思っているか聞けるかのしれないから。
「だ、伊達先生?!」
「そうそう、あの人未だ独身で全然女っ気ないじゃん。」
「そ、それは…。」
薫の顔が少し曇ったように思う。
恐らくは3年前の夏から続くあの行為のことを考えているのだろう。
絶妙なバランスで保たれている今の関係を壊したくないのかもしれない。
「薫、これ、日下部先生から聞いたんだけどさぁ。」
「な、何?」
「准教授に縁談が持ち上がってるんだって。」
「え?!」
その言葉に伊達は驚きのあまりフォークを落としそうになった。
(俺に縁談だとぉ? そんな話、俺は聞いてないぞ!!)
「といっても、まだ准教授に話してないらしいけど。」
「そ、そう、なんだ…。」
「日下部教授の口振りだと近いうちに話すんじゃないかなぁ?」
「…………。」
「だから、今なら間に合うよ!」
「り、里佳子?!」
「告っちゃえば?」
「で、でも…。」
「私が見るに、准教授もアンタの事まんざらじゃないみたい。」
伊達はその言葉にまたしても咽た。
日下部教授から聞いていたが、この大原里佳子は観察眼に優れているようだ。
(なるほど、あの教授が手元に残したがるわけだ。)
そう思いながら、伊達は薫の次の言葉を待った。
「いきなり結婚なんて無理だよ。」
「そっか…。」
「流石にそこまで積極的になれない…。」
「じゃ、逆に准教授から迫られたら?」
「そ、それは…。」
「それは?」
「拒めない…。 と、思う…。」
「ふ~~~ん…。」
里佳子が伊達の方に視線を向けたような気がした。
その視線は伊達に行動を起こすように促しているようだった。
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その数日後、里佳子が話していた通り、伊達は日下部教授から縁談を持ちかけられた。
「先方はいたく乗り気だが、どうする?」
「申し訳ありませんが、次に学会で発表する論文のこともありますので…。」
「そのなんだ、学会の後に一度だけでも…。」
「先生…。 この話はなかったことにしてください。」
「伊達?」
「自分には思う相手があります。 その心を偽りたくないのです。」
「そ、そうか…。」
「お話がそれだけなら俺は失礼します。」
伊達は一礼してその場を後にした。
その後、日下部から縁談を持ちかけられることはなかった。
ホッと一息ついたのもつかの間、今度は就職課の林原から矢のような催促がきた。
「伊達教授! どうなっているのですか?」
「いや、その…。
夏の学会で発表する論文にも取り掛からなくてはならないし。
先方も大きな商談があったりとで進んでないんだ。」
「そう、ですか…。 そういうことなら仕方ありません。
ですが、なるべく早めに彼女に推薦状を書いてくださいね。」
「分かりました。」
林原をやり過ごした伊達だが、薫に推薦状を渡す気はもうなかった。
(始めからそうすればよかったんだ…。)
伊達は気づいてしまったのだ、薫の気持ちにも、自分の気持ちにも…。
だから、伊達は薫を手に入れることにした。
あとはどうきっかけを作るかだ。
そのきっかけは意外なところから転がり込んできた。
「先生、試験終わりに慰労会やろうと思ってるんっすけど、一緒にどうです?」
それは、青山の提案だった。
4年生だけで集まって慰労会をするというのだ。
後期になれば卒論も含めて忙しくなる。
だから、今のメンバーで集まれる最後になるだろう。
そういうことだった。
場所を聞けば駅前の居酒屋だという。
伊達は自分の隣に薫を座らせることを条件に出してみた。
「へぇ、先生って結城狙いだったんっすか?」
「悪いか?」
「へへへ、先生も『オス』ってことっすね。」
「下品な言い方をするな。」
「でも、結城は先生くらいがちょうどいいかも。」
「どういう意味だ?」
「あいつ、『処女』ですよ。」
「なっ!」
「大原から聞いたんで間違いないっす。」
「お前、何を…。」
「真っ白な結城を先生の色に染めるってどうです?」
「俺の色…。」
「先生が望むなら協力は惜しみませんよ。」
「青山…。」
「まぁ、その分会費弾んでくださいね。」
青山はニッと笑って見せた。
伊達はため息をつきたくなったが、薫を手に入れるためと思えば安いものだった。
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7月半ば、前期試験が終了した日に慰労会は行われた。
伊達の希望通りに薫が隣に座る。
「んじゃ、お疲れさんでした。 かんぱーーい!!」
「かんぱーい!!」
幹事の青山の音頭で慰労会は始まった。
余程ため込んでいたのだろう、みな羽目を外したように飲み食いしていた。
「結城、大丈夫か?」
「あ、はい…。」
「それにしてはあまり飲んでないな。」
「ビール、苦手なんで…。」
折角、隣同士になったというのに薫との会話は弾まなかった。
それでも時間は過ぎていき、あっという間にお開きの時間を迎えてしまった。
ほとんどの者が二次会と称してカラオケに行くという中、薫だけは帰宅するという。
「えぇ、薫っち、帰っちゃうのぉ~。」
「ごめんなさい。 今日は体調がすぐれないの…。」
「あ、そうだったの? んじゃ、すぐ帰った方がいいわ。
そういや、先生って帰りの方向一緒ですよね?」
「ああ。」
「なら、結城のこと送ってください。」
「わかった。」
青山が去り際に『健闘を祈ります。』と耳打ちしてきたのには苦笑せざるを得なかった
とはいえ、伊達は薫と二人っきりになった。
勿論、このまま薫を送っていくつもりはない。
伊達は薫の肩を引き寄せる。
「せ、先生?」
「体調が悪いなんて嘘なんだろ?」
その言葉に頬を赤らめながら薫は頷いた。
「自宅の最寄り駅近くに馴染みのバーがあるんだ。
そこで飲み直そう。」
「で、でも…。」
「俺と二人っきりは嫌か?」
「そ、そういう、訳では…。」
「じゃ、行こう。」
伊達は強引に薫を連れ立って歩き始める。
改札へは向かわず、タクシーを拾い、馴染みのバーへと向かった。
そのバーは大通りから少し奥に入ったビルの地下にあった。
「いらっしゃいませ。」
「こんばんは。 いつもの席は空いてる?」
「ええ、空いてますよ。
それにしても珍しいですね、伊達様が女性連れなんて…。」
「教え子だ。 うまい酒を飲みたいというので連れてきた。」
「それはそれは…。 お嬢さん、楽しんでいってくださいね。」
「あ、はい。」
元々酒に詳しくない薫は伊達に勧められるままカクテルを飲む。
薫は気づいていなかった。
その甘く飲みやすいカクテルに度数の高い酒が使われていることを…。
「先生、何だかふわふわします…。」
「だろうな、かなり飲んだから。」
「何で、先生は平気なんですかぁ?」
「俺は飲み慣れてる。」
「それじゃ、私が飲み慣れてないみたいじゃないですかぁ?」
「違うのか?」
「そ、それは…。」
「なぁ、結城。」
「はい、何ですかぁ?」
「もし、『俺のところに永久就職しないか?』って言ったらどうする?」
「え?」
薫はそこで一気に酔いが醒めた。
頭の中で伊達の言った意味を反芻する。
「い、今、なんて…。」
「だから、『俺のところに永久就職しないか?』って言っている。」
「…………。」
薫は酷く動揺していた。
以前、里佳子との会話で伊達に迫られたら拒めないと言った。
その言葉が今現実に起こっている。
薫の心臓は早鐘を打ち始める。
それに拍車をかけるように伊達の手がスカートの上から太腿を撫でる。
どう答えるべきか逡巡している間にその手はスカートの中に忍び込み足の付け根の秘裂をなぞり始める。
「結城…。」
「!!!!」
伊達の声は艶を含んでいた。
顔を上げるとその瞳の奥には獲物を狙う狼のようなギラギラと欲情した色が浮かんでいる。
薫は贖えないと思い、俯いた。
だが、すぐに肩を震わせることになる。
伊達がショーツの横から指を差し込んできたのだ。
無遠慮に動き回る指は花芯を探り当て、嬲り始める。
それに耐え切れなくなった薫は小さく喘ぐ。
「出よう。」
その一言に頷くことしかできない薫。
「マスター、会計を。 あと、タクシーを1台回してくれ。」
「かしこまりました。」
薫は伊達にしなだれかかるように店を出た。
タクシーの中ではただ手を握るだけにとどめた伊達だったが、耳元では卑猥な言葉を囁いていた。
それは穢れを知らない薫の体をほてらせるに十分だった。
着いたのは伊達の自宅マンション。
連れられるままに薫は伊達の部屋に上がった。
「んふっ。」
ドアが閉まった瞬間、薫はその唇を荒々しく塞がれた。
壁に押し付けられ貪るようなディープキス。
そうしながらも伊達は右手で胸を揉み、左手はスカートをたくし上げ秘裂を撫で上げる。
「せ、先生、待って…。」
「待たない…。」
「お、お願い、です。 シャワーを浴びさせて。
汗をたくさんかいたから…。」
「どうしてもか?」
「お願いします。 どうせならキレイにしたいの。」
「わかった。」
「あ、ありがとうございます。」
「ただし、俺も一緒に浴びる。」
「あ…。」
伊達は有無を言わせずバスルームに連れ込んだ。
あっという間に薫の服を剥ぎ取ると自身も全裸になる。
薫が息を飲むのがわかった。
「結城?」
「え、えっと…。」
薫は視線を彷徨わせる。
伊達はそのままバスルームへと連れ込む。
「キレイに洗ってやるよ。」
「え?」
そう耳元で囁き、後ろから抱き込むようにシャワーのコックを捻る。
二人して頭から熱いシャワーを浴びる。
その間、伊達は薫の胸を弄んだ。
小振りだが張りのある双丘を下から持ち上げ揉みしだく。
やがてその頂にある赤い実が立ち上がると伊達は指で摘まむ。
「せ、先生…。」
「結城、感じてるのか?」
「あ、んっ、分かんない…。 でも…。」
「でも?」
「ふわふわする。」
「嫌じゃないってことか?」
薫は小さく頷く。
「じゃ、先に進んでもいいか?」
「先って?」
「ここをこういうふうに…。」
伊達は右手を秘裂へと這わせる。
すると薫がビクッと肩を震わせた。
「ここを触られるのは嫌か?」
そう囁き、探り当てた花芯を嬲る。
薫は背を仰け反らせ、肩で息をし始める。
「だ、ダメ…。 そこは…。 はうっ!!」
「ダメ? イイの間違いだろ?」
「そ、そんな…。」
「だって、結城のここは正直だ。 こんなに蜜を溢れさせてる。」
伊達はこれ見よがしに秘裂に這わせていた指を薫の目の前にやる。
薫は羞恥に耐え切れず俯く。
「なぁ、薫って名前で呼んでいいか?」
薫は頷く。
それに気を良くした伊達は再び秘裂と花芯を嬲り始めた。
頃合いを見計らって指を中に入れていく。
少しずつ少しずつ解してやり、中に入れる指を増やす。
始めのうち声を押し殺していた薫だったが、与えられる快感に我慢できず甘く啼き始めた。
「薫、一回イっとけ。」
「せ、先生?」
伊達は挿入した指を曲げ、感じるであろう場所を擦り上げた。
「!!!!!」
薫は背筋を電流が這い上がるような感覚に襲われ、声もなく達した。
やがて立っていられなくなり、ずるずるとへたり込む。
「薫、大丈夫か?」
「あんまり大丈夫じゃないかも…。」
「腰、抜けるくらい良かったか?」
薫は頬を赤らめながらも頷く。
その姿に伊達はほくそ笑んだ。
「薫、俺のお願い聞いてくれる?か」
「な、何ですか?」
「ここ、剃らせて。」
へたり込んだ薫を再び後ろから抱きかかえながら、伊達は陰毛を撫でる。
「俺、永久脱毛してるから体重ねると擦れて痛いんだ。
だから、剃らせてくれ。」
「で、でも…。」
「恥ずかしいか?」
薫は頷く。
だが、伊達は引く気はなかった。
「薫、ここを剃るのは決して恥ずかしいことじゃないんだ。」
「で、でも…。」
「欧米では剃るのは当たり前。
イスラムの人たちはそれがエチケットだと教わってるそうだ。」
「そ、そうなんですか?」
「それに陰毛があると雑菌が繁殖しやすいし、臭いの原因にもなる。
だから、キレイにしよう。」
そう言われては薫に反論の余地はなかった。
伊達はすぐに脱衣所からシェーバーを取ってくる。
そして、バスマットを床にしき、そこへ薫を寝かせた。
「じっとしていればすぐに済む。」
薫は羞恥のあまり、手で顔を覆い、その行為が早く終わることを祈った。
脚を大きく開かれ行われた行為は伊達の言う通りすぐに終わった。
そうして、洗い流された後に現れたのは花芯を簡単に剥き出しにする恥丘だった。
「キレイだ…。」
そう言って伊達はその恥丘に顔を埋めた。
簡単に剥き出しになった花芯を口に含み、強く吸い上げる。
すると、薫は甲高い嬌声を上げ、達した。
「薫、そろそろいいか?」
「先生…。」
「一つになりたい…。」
「はい。 私も…。」
「そうか。 最後に確認してもいいか?」
「何ですか?」
「俺のところに永久就職するために既成事実を作りたい。
つまり、薫には俺の子を孕んでほしい。
俺の言いたいことわかるか?」
「つ、つまり、避妊せずにってことですか?」
「それだけじゃない。 薫の中に出したい。」
薫はゴクリと唾を飲み込む。
だが、既に陰毛も剃られ、組み敷かれている。
この状況で逃げるなどありえない。
意を決して、伊達に微笑みかけ、その頬を両手で包む。
「ここまで来たからには逃げません。
だから…。 私を先生の『モノ』にして。」
伊達は一気に薫の中に自身の熱杭を押し込んだ。
その衝撃に薫が仰け反る。
それは破瓜の痛みに耐えてのものだろう。
始めのうち薫を気遣ってゆるゆるとした抽挿を繰り返していたが、無意識に蠢くそれに我慢できず激しく腰を打ち付けた。
やがて薫の嬌声が大きくなり、獣のような叫びとともに達する。
そして、精を絞りつくすように熱杭を締め上げる。
「くぅっ!!」
伊達は耐え切れず、熱い白濁を解き放つ。
何度かの抽挿を繰り返し、やがて力を失った熱杭を引き抜く。
すると、秘裂から収まりきらなかった白濁が破瓜の血と混ざりあいピンク色になってトロリと溢れ出す。
その様に伊達は興奮し、熱杭は再び力を持つ。
「薫、すまない…。」
「せ、先生?」
「ベッドに行こう。」
「きゃっ!」
伊達は薫を横抱きに抱えるとそのまま寝室に向かい、ベッドに薫を下ろす。
起き上がろうとする薫の肩を押し、覆い被さり口づけを落とす。
「薫、悪いが今夜は寝かせられない。
朝まで付き合ってくれ。」
「え? アッ! 先生、そん、な…。」
伊達は有無を言わせず、薫の中に押し入った。
その夜、宣言通り薫は眠ることを許されなかった。
飢えた肉食獣と化した伊達が満足して薫を離したのは翌朝日が高く昇ってからだった。
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第3話
研究室でホッと一息をつく伊達。
学会へ向けての打ち合わせは30分ほどで終わった。
出来上がった論文も特に問題はない。
教授たちからもお墨付きをもらい伊達は椅子に深く腰掛ける。
目を瞑り、脳裏に浮かぶのは連日繰り広げられる薫との情事だ。
今までに感じたことのない甘美な行為。
どれほど無理強いをしても薫は拒まなかった。
そのことにどれほど歓喜したことか。
今年に34になる伊達にも深い関係になった女性が何人かいた。
だが、どの女性も暫くすると自分との行為に嫌気がさし離れていった。
それはどうしようもないこと、伊達はそう思っている。
伊達は簡単には満足できない男だった。
それは彼の体格が原因なのかもしれない。
伊達は中学時代からラグビーをしていた。
ポジションの関係上、その体は筋骨隆々とした屈強なものになった。
高校を卒業するまでラグビー一筋だった伊達が変わったのは大学進学後。
そこで女の体を知ったことで一気に箍が外れたのである。
伊達は一度達したくらいでは満たされることはない。
むしろ渇きが酷くなり、更なる行為に及び、それは激しく相手を疲弊させた。
やがて耐えきれなくなり伊達のもとを去る。
その繰り返しだった。
そうして伊達は相手を求めることをやめ、自慰にふけるようになった。
そんな生活に慣れた頃に出会ったのが薫だ。
偶然の出会いに始まり、奇跡の再会を果たし、三度目の正直で教え子となったその存在に伊達は酔った。
気づけば薫との行為を妄想して自慰するようになっていた。
「ふぅ…。」
伊達は大きく息を吐き、目を開ける。
背もたれから少し体を起こすと目に入ったのは四年前の春、ゼミの教え子たちとの親睦会の写真。
そこに映る薫はまだあどけない。
そんな薫を自分は手に入れた。
そう思うだけで伊達の雄は鎌首をもたげ始める。
そのことに苦笑せざるを得なかった。
自分はどれほどこの少女に溺れているのかと…。
一度知ってしまった薫の体は伊達の理性を吹き飛ばすに十分であった。
可愛らしく啼いてみせる薫。
だが、彼女の中は本能に忠実で伊達からその精を搾り取るように蠢く。
それは麻薬のように伊達の思考を焼き切り、欲望のままに貪る。
薫との行為無しでは生きれないだろうと思うほどだった。
元々、薫を手に入れる気はなかった。
ただ側に置き、その姿を眺め、自慰のための妄想の相手でとどめる。
伊達はそう思っていた。
だから、あの夏の日から続く、倒錯的な行為以上のことはしなかった。
薫とその友人の大原里佳子との会話を聞くまでは。
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あれはゴールデンウイークの明けた5月中旬のことだ。
多くの4年生は就職先が決まり、卒論に取り掛かかる者もちらほらと出始める。
そんなある日、伊達はある人物に呼び止められた。
「伊達教授、少しよろしいですか?」
そう声をかけてきたのは就職課の林原だ。
(就職課が俺に何の用だ?)
伊達は訝しみ、眉間に皺を寄せる。
だが、次に発せられた言葉でその表情を一変させる。
「お宅のゼミの結城薫さんのことでお話があります。」
「結城のこと?」
「はい。 お時間宜しいですか?」
「大丈夫です。」
伊達はそのまま就職課の応接室へ連れられた。
来客用のソファに身を沈めながら林原の話を聞く。
「それで、結城がどうかしたのですか?」
「彼女、未だに内定が貰えてないんです。」
「そんなはずは…。」
「本人は好感触を持ってて実際インターンや二次面接までは行くんです。
でも、何故かそのあとに不採用通知が来て…。」
「それは毎回なのですか?」
「ええ、あまりに続くのでうちから不採用の理由を問いただしたんです。
勿論、答えられないと一蹴されるところがほとんどでしたが…。」
「教えてくれた企業があったんですか?」
「企業と言うか、ある博物館の館長が他言無用と念押ししてお話しくださいました。」
「それで?」
「どうやら、結城さんのお母様が妨害工作をしているようなんです。」
「結城の母親が?」
「『娘はすぐに結婚させるので勤めても1~2年です』
そう吹聴してまわっているらしいと。」
「それで、俺にどうしろと?」
「単刀直入に申し上げます。
以前勤められていた博物館に結城さんを推薦していただけませんか?」
「俺がいたのは県外ですよ。」
「構いません。
恐らく、うちから斡旋しては今までと同じでしょう。
伊達教授からの推薦状があれば館長も無碍にはできないはずです。」
「そううまくいきますか?」
「分かりませんが、何もしないよりはましです。
彼女のような人材こそ社会に出るべきなのです。」
林原の力説に伊達は折れた。
なるべく急いでほしいと頼まれたこともあり、伊達はすぐに推薦状を書いた。
この時点では博物館に連絡していない。
まずは薫の意志を確認してからと思ったからだ。
それには薫の居場所を把握しなければならない。
ゼミの教え子たちに彼女が行きそうな場所を聞くことにした。
「青山、お前、結城が行きそうな場所知ってるか?」
「先生、急にどうしたんっすか?」
「急ぎで結城に渡したいものがあるんだ。」
「う~~ん、結城ってバイトもしてないからなぁ。
梶田、お前さぁ、結城とよくつるんでるじゃん。
どっか知らね?」
「それなら、あそこのファミレスじゃない? ほら、駅前の…。」
「ああ、あそこかぁ。」
「ファミレス?」
「うちの連中が入り浸ってるファミレスが駅前にあるんっすよ。
みんな、そこで勉強してるんです。」
「図書館とかじゃなくて?」
「最近はみんなファミレスやカフェで勉強してるんです。」
「何でまた…。」
「ファミレスならドリンクバーがあるし、つまめる物も頼めるからです。
カフェもモーニングやランチの時間を除けば落ち着いて勉強できます。」
「なるほど…。 結城もそれに漏れずってことか?」
「というか、親友の里佳子が引っぱってちゃうんですよ。」
「里佳子?」
「大原里佳子。 日下部ゼミの…。」
「日下部教授の秘蔵っ子?」
「そうそう、彼女がいたから今の結城があるようなもんすよ。」
「そうだったのか。」
「多分、今の時間なら二人でいる筈じゃないかな?」
「分かった。 ありがとう。」
伊達はすぐに教えられたファミレスに向かう。
店内に入ると奥の禁煙席に二人向き合って座っているのが見えた。
真っ直ぐ彼女たちのもとへ向かおうとした伊達だったが、突然始まった二人の会話に声をかけるタイミングを逸してしまう。
仕方なく、彼女たちから死角になる席に着くとパンケーキとドリンクバーを注文した。
そして、耳をそばだてて会話を盗み聞く。
「ねぇ、薫はこれからどうするの?」
「どうするって?」
「内定、まだもらえないんでしょ?」
「………………。」
「薫?」
「この際、母の言う通りにしようかなぁ。」
「え?」
「疲れちゃった…。」
「薫、あんた…。」
「前に話したことあったでしょ。 私が母のこと嫌いだって。」
「うん、その話は知ってる。」
「どうも、私の内定が取れないのって母が裏で妨害してるみたいなんだ。」
「はぁ? なんでそんなことするのよ!!」
「多分、母が孤立した原因が私だから。」
薫が窓の外ぼんやり見つめながらそうつぶやく。
すると、里佳子がテーブルを叩いて立ち上がる。
「なに、それ。 バカバカしいにもほどがあるわ!!」
「母はね、やりたいこともできずに家庭に押し込められたの。
だから、私が社会に出ることが許せないんだと思う。」
「だからって娘の就職活動を妨害するってどういう神経してんのよ。」
「私もそう思う。 けど…。」
「けど?」
「もう、疲れちゃった。
だから、母の薦める相手とお見合いでもして収まっちゃった方が楽になれる気がするんだ。」
「でも、それって絶対後悔するよ。」
「そうかな…。」
「そうよ、一時良くても数年後には後悔するのが目に見えてる。」
「だからって、このままずるずる就職活動するのも…。」
「それはそうだけど…。」
「どうしたらいいんだろう。」
薫は深いため息をついた。
その姿に里佳子はかなり深刻な問題だと悟った。
目を瞑り何か思案している。
暫くすると何か思いついたように目を見開く。
「この際、自分で永久就職させてくれそうな人見つけるってのはどうよ。」
「永久就職?」
「だ・か・ら! 結婚!」
「け、結婚?!」
「無理矢理っていうのは後悔するけど、自分から飛び込んじゃえば後悔ないじゃん。」
「里佳子、さっきと矛盾してない?」
「お母さんは自分の思った相手と結婚させたい。
けど、薫はお母さんの思う通りになんてなりたくない。
なら、自分で見つけてきた相手と結婚しちゃえば、その思惑に乗らなかったことになるでしょ?」
「でも、そんな人…。」
「一人いるじゃん!! それも超優良物件が!!!」
「え?」
「あんたのとこの准教授様♪」
伊達は先ほど取ってきたアイスコーヒーを吹き出しそうになった。
まさか、こんなところで自分がやり玉に挙げられるとは思っていなかったのだ。
伊達の心拍数は一気に上がる。
話の流れからすると薫が自分をどう思っているか聞けるかのしれないから。
「だ、伊達先生?!」
「そうそう、あの人未だ独身で全然女っ気ないじゃん。」
「そ、それは…。」
薫の顔が少し曇ったように思う。
恐らくは3年前の夏から続くあの行為のことを考えているのだろう。
絶妙なバランスで保たれている今の関係を壊したくないのかもしれない。
「薫、これ、日下部先生から聞いたんだけどさぁ。」
「な、何?」
「准教授に縁談が持ち上がってるんだって。」
「え?!」
その言葉に伊達は驚きのあまりフォークを落としそうになった。
(俺に縁談だとぉ? そんな話、俺は聞いてないぞ!!)
「といっても、まだ准教授に話してないらしいけど。」
「そ、そう、なんだ…。」
「日下部教授の口振りだと近いうちに話すんじゃないかなぁ?」
「…………。」
「だから、今なら間に合うよ!」
「り、里佳子?!」
「告っちゃえば?」
「で、でも…。」
「私が見るに、准教授もアンタの事まんざらじゃないみたい。」
伊達はその言葉にまたしても咽た。
日下部教授から聞いていたが、この大原里佳子は観察眼に優れているようだ。
(なるほど、あの教授が手元に残したがるわけだ。)
そう思いながら、伊達は薫の次の言葉を待った。
「いきなり結婚なんて無理だよ。」
「そっか…。」
「流石にそこまで積極的になれない…。」
「じゃ、逆に准教授から迫られたら?」
「そ、それは…。」
「それは?」
「拒めない…。 と、思う…。」
「ふ~~~ん…。」
里佳子が伊達の方に視線を向けたような気がした。
その視線は伊達に行動を起こすように促しているようだった。
****************************************************************
その数日後、里佳子が話していた通り、伊達は日下部教授から縁談を持ちかけられた。
「先方はいたく乗り気だが、どうする?」
「申し訳ありませんが、次に学会で発表する論文のこともありますので…。」
「そのなんだ、学会の後に一度だけでも…。」
「先生…。 この話はなかったことにしてください。」
「伊達?」
「自分には思う相手があります。 その心を偽りたくないのです。」
「そ、そうか…。」
「お話がそれだけなら俺は失礼します。」
伊達は一礼してその場を後にした。
その後、日下部から縁談を持ちかけられることはなかった。
ホッと一息ついたのもつかの間、今度は就職課の林原から矢のような催促がきた。
「伊達教授! どうなっているのですか?」
「いや、その…。
夏の学会で発表する論文にも取り掛からなくてはならないし。
先方も大きな商談があったりとで進んでないんだ。」
「そう、ですか…。 そういうことなら仕方ありません。
ですが、なるべく早めに彼女に推薦状を書いてくださいね。」
「分かりました。」
林原をやり過ごした伊達だが、薫に推薦状を渡す気はもうなかった。
(始めからそうすればよかったんだ…。)
伊達は気づいてしまったのだ、薫の気持ちにも、自分の気持ちにも…。
だから、伊達は薫を手に入れることにした。
あとはどうきっかけを作るかだ。
そのきっかけは意外なところから転がり込んできた。
「先生、試験終わりに慰労会やろうと思ってるんっすけど、一緒にどうです?」
それは、青山の提案だった。
4年生だけで集まって慰労会をするというのだ。
後期になれば卒論も含めて忙しくなる。
だから、今のメンバーで集まれる最後になるだろう。
そういうことだった。
場所を聞けば駅前の居酒屋だという。
伊達は自分の隣に薫を座らせることを条件に出してみた。
「へぇ、先生って結城狙いだったんっすか?」
「悪いか?」
「へへへ、先生も『オス』ってことっすね。」
「下品な言い方をするな。」
「でも、結城は先生くらいがちょうどいいかも。」
「どういう意味だ?」
「あいつ、『処女』ですよ。」
「なっ!」
「大原から聞いたんで間違いないっす。」
「お前、何を…。」
「真っ白な結城を先生の色に染めるってどうです?」
「俺の色…。」
「先生が望むなら協力は惜しみませんよ。」
「青山…。」
「まぁ、その分会費弾んでくださいね。」
青山はニッと笑って見せた。
伊達はため息をつきたくなったが、薫を手に入れるためと思えば安いものだった。
****************************************************************
7月半ば、前期試験が終了した日に慰労会は行われた。
伊達の希望通りに薫が隣に座る。
「んじゃ、お疲れさんでした。 かんぱーーい!!」
「かんぱーい!!」
幹事の青山の音頭で慰労会は始まった。
余程ため込んでいたのだろう、みな羽目を外したように飲み食いしていた。
「結城、大丈夫か?」
「あ、はい…。」
「それにしてはあまり飲んでないな。」
「ビール、苦手なんで…。」
折角、隣同士になったというのに薫との会話は弾まなかった。
それでも時間は過ぎていき、あっという間にお開きの時間を迎えてしまった。
ほとんどの者が二次会と称してカラオケに行くという中、薫だけは帰宅するという。
「えぇ、薫っち、帰っちゃうのぉ~。」
「ごめんなさい。 今日は体調がすぐれないの…。」
「あ、そうだったの? んじゃ、すぐ帰った方がいいわ。
そういや、先生って帰りの方向一緒ですよね?」
「ああ。」
「なら、結城のこと送ってください。」
「わかった。」
青山が去り際に『健闘を祈ります。』と耳打ちしてきたのには苦笑せざるを得なかった
とはいえ、伊達は薫と二人っきりになった。
勿論、このまま薫を送っていくつもりはない。
伊達は薫の肩を引き寄せる。
「せ、先生?」
「体調が悪いなんて嘘なんだろ?」
その言葉に頬を赤らめながら薫は頷いた。
「自宅の最寄り駅近くに馴染みのバーがあるんだ。
そこで飲み直そう。」
「で、でも…。」
「俺と二人っきりは嫌か?」
「そ、そういう、訳では…。」
「じゃ、行こう。」
伊達は強引に薫を連れ立って歩き始める。
改札へは向かわず、タクシーを拾い、馴染みのバーへと向かった。
そのバーは大通りから少し奥に入ったビルの地下にあった。
「いらっしゃいませ。」
「こんばんは。 いつもの席は空いてる?」
「ええ、空いてますよ。
それにしても珍しいですね、伊達様が女性連れなんて…。」
「教え子だ。 うまい酒を飲みたいというので連れてきた。」
「それはそれは…。 お嬢さん、楽しんでいってくださいね。」
「あ、はい。」
元々酒に詳しくない薫は伊達に勧められるままカクテルを飲む。
薫は気づいていなかった。
その甘く飲みやすいカクテルに度数の高い酒が使われていることを…。
「先生、何だかふわふわします…。」
「だろうな、かなり飲んだから。」
「何で、先生は平気なんですかぁ?」
「俺は飲み慣れてる。」
「それじゃ、私が飲み慣れてないみたいじゃないですかぁ?」
「違うのか?」
「そ、それは…。」
「なぁ、結城。」
「はい、何ですかぁ?」
「もし、『俺のところに永久就職しないか?』って言ったらどうする?」
「え?」
薫はそこで一気に酔いが醒めた。
頭の中で伊達の言った意味を反芻する。
「い、今、なんて…。」
「だから、『俺のところに永久就職しないか?』って言っている。」
「…………。」
薫は酷く動揺していた。
以前、里佳子との会話で伊達に迫られたら拒めないと言った。
その言葉が今現実に起こっている。
薫の心臓は早鐘を打ち始める。
それに拍車をかけるように伊達の手がスカートの上から太腿を撫でる。
どう答えるべきか逡巡している間にその手はスカートの中に忍び込み足の付け根の秘裂をなぞり始める。
「結城…。」
「!!!!」
伊達の声は艶を含んでいた。
顔を上げるとその瞳の奥には獲物を狙う狼のようなギラギラと欲情した色が浮かんでいる。
薫は贖えないと思い、俯いた。
だが、すぐに肩を震わせることになる。
伊達がショーツの横から指を差し込んできたのだ。
無遠慮に動き回る指は花芯を探り当て、嬲り始める。
それに耐え切れなくなった薫は小さく喘ぐ。
「出よう。」
その一言に頷くことしかできない薫。
「マスター、会計を。 あと、タクシーを1台回してくれ。」
「かしこまりました。」
薫は伊達にしなだれかかるように店を出た。
タクシーの中ではただ手を握るだけにとどめた伊達だったが、耳元では卑猥な言葉を囁いていた。
それは穢れを知らない薫の体をほてらせるに十分だった。
着いたのは伊達の自宅マンション。
連れられるままに薫は伊達の部屋に上がった。
「んふっ。」
ドアが閉まった瞬間、薫はその唇を荒々しく塞がれた。
壁に押し付けられ貪るようなディープキス。
そうしながらも伊達は右手で胸を揉み、左手はスカートをたくし上げ秘裂を撫で上げる。
「せ、先生、待って…。」
「待たない…。」
「お、お願い、です。 シャワーを浴びさせて。
汗をたくさんかいたから…。」
「どうしてもか?」
「お願いします。 どうせならキレイにしたいの。」
「わかった。」
「あ、ありがとうございます。」
「ただし、俺も一緒に浴びる。」
「あ…。」
伊達は有無を言わせずバスルームに連れ込んだ。
あっという間に薫の服を剥ぎ取ると自身も全裸になる。
薫が息を飲むのがわかった。
「結城?」
「え、えっと…。」
薫は視線を彷徨わせる。
伊達はそのままバスルームへと連れ込む。
「キレイに洗ってやるよ。」
「え?」
そう耳元で囁き、後ろから抱き込むようにシャワーのコックを捻る。
二人して頭から熱いシャワーを浴びる。
その間、伊達は薫の胸を弄んだ。
小振りだが張りのある双丘を下から持ち上げ揉みしだく。
やがてその頂にある赤い実が立ち上がると伊達は指で摘まむ。
「せ、先生…。」
「結城、感じてるのか?」
「あ、んっ、分かんない…。 でも…。」
「でも?」
「ふわふわする。」
「嫌じゃないってことか?」
薫は小さく頷く。
「じゃ、先に進んでもいいか?」
「先って?」
「ここをこういうふうに…。」
伊達は右手を秘裂へと這わせる。
すると薫がビクッと肩を震わせた。
「ここを触られるのは嫌か?」
そう囁き、探り当てた花芯を嬲る。
薫は背を仰け反らせ、肩で息をし始める。
「だ、ダメ…。 そこは…。 はうっ!!」
「ダメ? イイの間違いだろ?」
「そ、そんな…。」
「だって、結城のここは正直だ。 こんなに蜜を溢れさせてる。」
伊達はこれ見よがしに秘裂に這わせていた指を薫の目の前にやる。
薫は羞恥に耐え切れず俯く。
「なぁ、薫って名前で呼んでいいか?」
薫は頷く。
それに気を良くした伊達は再び秘裂と花芯を嬲り始めた。
頃合いを見計らって指を中に入れていく。
少しずつ少しずつ解してやり、中に入れる指を増やす。
始めのうち声を押し殺していた薫だったが、与えられる快感に我慢できず甘く啼き始めた。
「薫、一回イっとけ。」
「せ、先生?」
伊達は挿入した指を曲げ、感じるであろう場所を擦り上げた。
「!!!!!」
薫は背筋を電流が這い上がるような感覚に襲われ、声もなく達した。
やがて立っていられなくなり、ずるずるとへたり込む。
「薫、大丈夫か?」
「あんまり大丈夫じゃないかも…。」
「腰、抜けるくらい良かったか?」
薫は頬を赤らめながらも頷く。
その姿に伊達はほくそ笑んだ。
「薫、俺のお願い聞いてくれる?か」
「な、何ですか?」
「ここ、剃らせて。」
へたり込んだ薫を再び後ろから抱きかかえながら、伊達は陰毛を撫でる。
「俺、永久脱毛してるから体重ねると擦れて痛いんだ。
だから、剃らせてくれ。」
「で、でも…。」
「恥ずかしいか?」
薫は頷く。
だが、伊達は引く気はなかった。
「薫、ここを剃るのは決して恥ずかしいことじゃないんだ。」
「で、でも…。」
「欧米では剃るのは当たり前。
イスラムの人たちはそれがエチケットだと教わってるそうだ。」
「そ、そうなんですか?」
「それに陰毛があると雑菌が繁殖しやすいし、臭いの原因にもなる。
だから、キレイにしよう。」
そう言われては薫に反論の余地はなかった。
伊達はすぐに脱衣所からシェーバーを取ってくる。
そして、バスマットを床にしき、そこへ薫を寝かせた。
「じっとしていればすぐに済む。」
薫は羞恥のあまり、手で顔を覆い、その行為が早く終わることを祈った。
脚を大きく開かれ行われた行為は伊達の言う通りすぐに終わった。
そうして、洗い流された後に現れたのは花芯を簡単に剥き出しにする恥丘だった。
「キレイだ…。」
そう言って伊達はその恥丘に顔を埋めた。
簡単に剥き出しになった花芯を口に含み、強く吸い上げる。
すると、薫は甲高い嬌声を上げ、達した。
「薫、そろそろいいか?」
「先生…。」
「一つになりたい…。」
「はい。 私も…。」
「そうか。 最後に確認してもいいか?」
「何ですか?」
「俺のところに永久就職するために既成事実を作りたい。
つまり、薫には俺の子を孕んでほしい。
俺の言いたいことわかるか?」
「つ、つまり、避妊せずにってことですか?」
「それだけじゃない。 薫の中に出したい。」
薫はゴクリと唾を飲み込む。
だが、既に陰毛も剃られ、組み敷かれている。
この状況で逃げるなどありえない。
意を決して、伊達に微笑みかけ、その頬を両手で包む。
「ここまで来たからには逃げません。
だから…。 私を先生の『モノ』にして。」
伊達は一気に薫の中に自身の熱杭を押し込んだ。
その衝撃に薫が仰け反る。
それは破瓜の痛みに耐えてのものだろう。
始めのうち薫を気遣ってゆるゆるとした抽挿を繰り返していたが、無意識に蠢くそれに我慢できず激しく腰を打ち付けた。
やがて薫の嬌声が大きくなり、獣のような叫びとともに達する。
そして、精を絞りつくすように熱杭を締め上げる。
「くぅっ!!」
伊達は耐え切れず、熱い白濁を解き放つ。
何度かの抽挿を繰り返し、やがて力を失った熱杭を引き抜く。
すると、秘裂から収まりきらなかった白濁が破瓜の血と混ざりあいピンク色になってトロリと溢れ出す。
その様に伊達は興奮し、熱杭は再び力を持つ。
「薫、すまない…。」
「せ、先生?」
「ベッドに行こう。」
「きゃっ!」
伊達は薫を横抱きに抱えるとそのまま寝室に向かい、ベッドに薫を下ろす。
起き上がろうとする薫の肩を押し、覆い被さり口づけを落とす。
「薫、悪いが今夜は寝かせられない。
朝まで付き合ってくれ。」
「え? アッ! 先生、そん、な…。」
伊達は有無を言わせず、薫の中に押し入った。
その夜、宣言通り薫は眠ることを許されなかった。
飢えた肉食獣と化した伊達が満足して薫を離したのは翌朝日が高く昇ってからだった。
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