9 / 10
最終話
しおりを挟む
最後にちょっとだけ【】表記の会話があります。
英語での会話と思ってください。
********************************************
最終話
突然、薫のスマホ鳴り始める。
それを手に取り、すぐに眉根を寄せる。
それは実弟の結城雅人からの電話だった。
深いため息をついた後、通話ボタンを押した。
「もしもし……。」
『あ、やっと出た!』
「いきなりかけてきて第一声がそれ?」
『あ、いや、その…。』
「悪いけど、こっちは忙しいの。 用がないなら切るから。」
『わっ、ちょ。 待てよ。』
「待たない。 じゃあね。」
薫は問答無用で切った。
だが、しばらくするとまた鳴り始める。
薫は舌打ちとともに再び出る。
「いい加減にして! 今度から拒否るわよ!!」
『わ、分かったよ。』
「で、なに?」
『あ、あのさ。 うちに帰ってきたんだ…。』
「帰ったんじゃないわ。」
『え? だって、お袋と…。』
「報告しただけよ。 入籍したから。」
『ホントにそれだけ?』
「ああ、あとあの人が邪魔でしょうがなかった人の末路を教えたわ。」
『お袋が邪魔でしょうがなかった人?』
「あの人のヴェネチア時代の恋人。」
『姉貴、何で知ってるの?』
「彼女の息子と知り合いだからよ。」
『あ、そっか。 ディーノだっけ?』
「そうよ。」
『そうか…。 ってことは、お袋コテンパンに?』
「勿論。 あの程度で見逃してやったことを褒めてほしいわ。」
『相変わらず、お袋には容赦ないね。』
「それだけのことをしてきたのよ。 当然の報いね。」
『じゃ、これでもうあの家には戻らないってことか…。』
「ええ、そうよ。」
『ま、それはしゃーないか。 お袋の自業自得だからね。』
「用がそれだけならもう切る。」
『チョイ待ち! こっからが本題!!』
「そう。 じゃ、早く言いなさいよ。」
『じゃ、遠慮なく。 姉貴の旦那に会ってみたい。』
薫はそこで固まった。
雅人がそんな風に言いだすとは思わなかったからだ。
逡巡したが結局は合わせる約束をして電話を切った。
――――――――1週間後――――――――
薫は駅前にあるカフェに伊達とともにいた。
暫くすると、ジャージ姿の雅人が現れる。
その姿に薫は頭を痛めた。
何故ならそのジャージは現在雅人が所属しているハンブリガーSVのそれだったから。
「薫?」
「何でもない、です…。」
「そうか?」
伊達が怪訝そうな顔をしているが敢えて気づかないふりをする。
そうしていると、こちらに気付いたらしい雅人が向かいの席に着く。
「ごめん。 サッカースクールの居残り練習につき合わされてた。」
「そう…。」
「あれ? なんでそんなに脱力してるの?」
「なんでって…。 アンタのその恰好が原因よ。」
「これ?」
「何でチームのジャージ着てくるかな?」
「いや、ドルトムントやシャルケじゃないからわかんないかと思って…。」
「ブンデスリーガの試合、スカパーでやってるから日本でも見れのよ。」
「あ、そっか。 じゃ、これがどこのチームかとかすぐバレちゃう?」
「間違いなくそうなると思う。」
雅人は頭を掻きながら苦笑する。
薫は脱力せずにはいられなかった。
昔からこの弟はそういったことに無頓着だった。
学校に所属クラブのジャージ着ていこうとしたときは全力で止めたほどだ。
「で、そちらが姉貴の旦那さん?」
「はじめまして、伊達輝臣です。」
伊達は自身の名刺を差し出した。
それを受け取った雅人は顔を顰める。
顔を上げると先程までとは違う鋭い視線を向けてきた。
「K大史学部 准教授、ですか…。 姉貴もK大の史学部だよな?」
「そうよ。」
「ふ~~~ん。 つまりアンタは教え子に手ぇ出して嫁にしちゃったってわけだ。」
「雅人!!」
「薫、いいんだ。 そう言われても当然なことを俺してる。」
「輝臣さん…。」
「あぁ、はいはい。 ごちそうさん。」
「雅人?」
「アンタが姉貴に本気ならそれでいいんだよ。
どうやらこっちの家庭の事情も知ってるみたいだし。」
「勿論だ。 薫は俺が幸せにする。」
「ならいいよ。 俺は反対しない。」
「随分簡単に認めるんだな?」
「俺は基本姉貴の味方。
姉貴が好きになって、相手も姉貴のこと好きっていうなら邪魔はしないよ。
むしろ盛大に祝福させてもらうね。」
「そうか…。」
「いや、ちょっと心配だったからさ。」
「え?」
「クレアさんから姉貴と連絡取れないって聞いて…。」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたわね。」
「で、俺が知ってた大原さんに連絡とったら片思いしてた准教授のとこに囲われてるだろうって。」
「里佳子…。」
薫から一瞬黒い怒りのオーラが見えたような気がして伊達は怯む。
だが、すぐにそのオーラは霧散していつもの表情に戻りホッとした。
「でさ、会ってみたくなったんだ。
だって、日本人女性で二人目のパルムドール間違いなしって言われた姉貴がサッカー辞めてまで進学するきっかけを作った男っていうんだからさ。」
「え?」
伊達は驚いた。
まさか薫がそこまでの才能があったなど思いもよらなかった。
その才能を自分が潰してしまったのかと思い、冷たい汗が背筋を伝う。
「仕方ないでしょ、出会っちゃったんだから…。」
「ハハハ、それほどの衝撃だったんだ。」
「そうね。 あれはまさに衝撃が全身を突き抜けたって感じかな?」
「運命の出会い?」
「そうね。 半年後にまた出会えたんだからそう言うことなんだって思ったわ。」
「そっか。 で、ようやくその思いを遂げることができたってわけか。」
「そうよ。」
「そういうことなら俺は応援させてもらうよ。」
「雅人?」
「正直、姉貴には10くらい年上の大人の男がいいと思ってたんだよ。」
「は?」
「包容力があって強くて逞しい男。
そうじゃなきゃ、家庭環境ぐちゃぐちゃで曲がりまくった姉貴を幸せになってできねぇと思ってたから。」
「俺はその条件に見合う男だと?」
「うん、そう思った。」
雅人はニコッと笑ってただ一言『姉さんを幸せにしてやってください。』といって頭を下げ、去っていった。
「何だかドッと疲れたよ。」
「輝臣さん…。」
「でも、ちゃんと祝福してもらえたから満足だ。」
「そうですか?」
「あと、俺の知らない一面も見れたしな。」
薫は一気に赤くなった。
そんな薫を可愛いと思う伊達だった。
****************************************************************
――――――――9月初旬――――――――
薫は就職課に来ていた。
以前から心配をかけていた林原に大学院への進学と伊達との結婚を報告するためだ。
「結局『院』へ進むことにしたんですね。」
「はい、色々手を尽くしてくださったのにすみません。」
「いいわよ。 あなたが世に出るのが先になってしまったけど、その分多くの知識を身に着けることができるんですから悪いことではないでしょう。」
「ありがとうございます。」
「それにしても…。」
「?」
「伊達教授がこんなに手の早い方だとは思いませんでしたよ。」
「あはははは…。」
薫は苦笑するしかなかった。
表向き、薫との結婚は酔った勢いでベッドを共にしてしまいその責任を取る形で入籍した。
そういうことになっていたからだ。
林原は眉根を寄せてブツブツと文句を言っていた。
「林原さん。」
「はい?」
「私にとって伊達先生は『運命の人』なんです。
でも、それをずっと言えなくて…。
結局、お酒の力を借りちゃいました。」
「結城さん…。」
「だから、その…。 伊達先生のこと、悪く言わないでください。」
その言葉に林原は深いため息をつく。
その顔は『仕方ないわね』と言っていた。
その後、薫は史学部の研究科に大学院の入試出願を提出した。
卒業までは旧姓の『結城』で通すことにしていたが、卒業後は『伊達』を名乗ることにしていたので院への出願書にもそちらの名前で提出した。
そこで改めて伊達と結婚したことを意識した薫だった。
それからすぐに後期が始まった。
といっても、ほぼ必要単位を取得している薫は卒論と大学院入試の論文だけであった。
なので、主に伊達の研究室に入り浸っている。
「アッ…、ふぅんっ。 だ、ダメよ。」
「なんでだ?」
「だって、誰か来たら…。」
「大丈夫だ。 この時間、他の連中は講義だから。」
「で、でも…。」
「薫のここはもう欲しいって言ってるぞ。」
伊達の手はスカートをたくし上げ、薫の恥丘を這い秘裂をなぞる。
薫は必死で声を抑えようとするが、そうはさせじと伊達の手が這い回る。
やがて親指の腹で花芯を押しつぶし、くるくると円を描くようにこねる。
その動きに薫は一気に駆け上がった。
「あぁぁぁぁぁ!!」
ついに我慢できなくなり嬌声とともに達した。
それを満足げに見やる伊達はカチャカチャとベルトを外し、ファスナーを下ろす。
「薫、今度は俺を気持ちよくしてくれよ。」
伊達は薫の耳元で囁き、ボクサーパンツから逸物を取り出すと薫の秘裂に宛がい、一気に押し込んだ。
「ひゃんっ!!」
薫はそれだけで軽くイッた。
中は伊達の逸物からその精を搾り取ろうと怪しく蠢く。
腹筋に力を入れることでそれに耐える。
そして、抽挿を始めた。
最初はゆるゆると、徐々にその速さを増していく。
あとはもうただ、薫の奥を穿つだけだった。
そうなると薫の理性は飛んでいた。
我を忘れて喘ぎ嬌声を上げる。
その声はどんどん大きくなっていく。
余りに大きくなっていく嬌声にマズイと思った伊達は己の唇で薫のそれを塞ぐ。
それでも、くぐもった喘ぎは漏れてくる。
それは伊達の興奮を煽った。
やがて限界を迎え、伊達は薫の中にその精を解き放つ。
それと同時に薫も果てた。
暫く重なり合って息を整える。
「薫、可愛かったよ。」
「輝臣さん…。」
薫の額に口付けを落とし、伊達は彼女の中から力を失った逸物を引き抜いた。
いつもながらに伊達の白濁は大量で引き抜いた秘裂から溢れている。
それをティッシュで拭き取ってやる。
「もう、どうして際限なく盛るんですか?」
「薫が可愛いから…。」
「ま、真顔でそういうこと言わないの!」
薫はソファに置いてあったビーズクッションを投げて抗議したが、あまり効果はなかった。
とりあえず、『盛るのはベッドの上だけ』と約束を取り付けてその後は研究室で事に及ばせないようにした。
尤もそのすぐ後にできなくなる。
というのも、それまで正確に来ていた生理が遅れていた薫が妊娠検査薬を使ったところ陽性と出た。
すぐに片倉で診てもらい、妊娠が確定。
その結果、晴海から安定期までいろいろ厳禁と言い渡されたのだった。
「言っとくけど、安定期に入ってからも色々制限あるからね。
特に薫ちゃんは初産だから、不安定になりやすい。
そこをテルが支えてあげないといけないんだから、性欲は自家発電で処理しなさい。」
それを不憫に思ったのか、薫は自ら口ですることを申し出た。
伊達が喜んだのは言うまでもない。
しかし、すぐにそれを後悔することになる。
元来の順応力の高さで伊達は何度もイかされ、結局は悶絶する羽目に。
自業自得なので文句は言えない伊達であった。
****************************************************************
――――――――翌年三月――――――――
卒業式を迎える頃にはお腹がかなり目立つようになった薫。
だが、ゼミの仲間たちは祝福し彼女をサポートしていたので無事卒業となった。
「いやぁ、まさか伊達先生がこんなに手が早いとは思わなかったッスよ。」
「青山…。」
「でも、結果オーライって奴じゃないっすか?」
「お前には感謝はしてる。」
「でも、私たちとしては先生の見たことな顔が見れて面白かったけどね。」
「俺は見世物じゃないぞ!!」
「でも、研究室でイチャイチャしすぎないでくださいよ。
後輩たちが目のやりどころに困りますから。」
「い、言われなくてもわかっている。」
青山や梶田に揶揄われ恥ずかしい思いをした伊達であった。
逆に薫は長い片思いを実らせたことを告白したので概ね羨ましがられたのだった。
そうして、5月の終わりに薫は男女の双子を出産。
長男を葵、長女を菖蒲と名付けた。
不安がないわけではなかったが、シャーリーとスカイプでやり取りすることで育児をこなしていった。
また、掛かりつけになってもらった片倉夫婦のおかげもあって薫と伊達はつつがなく日々を過ごしていく。
そして迎えた23回目の誕生日。
薫はイタリアのアマルフィにいた。
1年遅れの結婚式のためだ。
クレアが企画してくれたそれは日本でも人気のカティーリア教会で行われた。
「薫、よく似合ってる。」
「輝臣さんもね。」
甘い雰囲気が二人を包む。
【ハイ、お楽しみのところ悪いけど、時間よ。】
【クレア…。】
【今日はカオルとテルオミが主役だからね。】
【うん…。】
【せいぜい、見せつけてよね。】
こうして、二人の結婚式はつつがなく執り行われた。
最後に伊達が葵を、薫が菖蒲を抱いて記念撮影をしたのだった。
その時の写真はそれからの二人の人生をじっと見つめたのだった。
************************************************
長いことお付き合いいただきありがとうございました。
これにて完結です。
英語での会話と思ってください。
********************************************
最終話
突然、薫のスマホ鳴り始める。
それを手に取り、すぐに眉根を寄せる。
それは実弟の結城雅人からの電話だった。
深いため息をついた後、通話ボタンを押した。
「もしもし……。」
『あ、やっと出た!』
「いきなりかけてきて第一声がそれ?」
『あ、いや、その…。』
「悪いけど、こっちは忙しいの。 用がないなら切るから。」
『わっ、ちょ。 待てよ。』
「待たない。 じゃあね。」
薫は問答無用で切った。
だが、しばらくするとまた鳴り始める。
薫は舌打ちとともに再び出る。
「いい加減にして! 今度から拒否るわよ!!」
『わ、分かったよ。』
「で、なに?」
『あ、あのさ。 うちに帰ってきたんだ…。』
「帰ったんじゃないわ。」
『え? だって、お袋と…。』
「報告しただけよ。 入籍したから。」
『ホントにそれだけ?』
「ああ、あとあの人が邪魔でしょうがなかった人の末路を教えたわ。」
『お袋が邪魔でしょうがなかった人?』
「あの人のヴェネチア時代の恋人。」
『姉貴、何で知ってるの?』
「彼女の息子と知り合いだからよ。」
『あ、そっか。 ディーノだっけ?』
「そうよ。」
『そうか…。 ってことは、お袋コテンパンに?』
「勿論。 あの程度で見逃してやったことを褒めてほしいわ。」
『相変わらず、お袋には容赦ないね。』
「それだけのことをしてきたのよ。 当然の報いね。」
『じゃ、これでもうあの家には戻らないってことか…。』
「ええ、そうよ。」
『ま、それはしゃーないか。 お袋の自業自得だからね。』
「用がそれだけならもう切る。」
『チョイ待ち! こっからが本題!!』
「そう。 じゃ、早く言いなさいよ。」
『じゃ、遠慮なく。 姉貴の旦那に会ってみたい。』
薫はそこで固まった。
雅人がそんな風に言いだすとは思わなかったからだ。
逡巡したが結局は合わせる約束をして電話を切った。
――――――――1週間後――――――――
薫は駅前にあるカフェに伊達とともにいた。
暫くすると、ジャージ姿の雅人が現れる。
その姿に薫は頭を痛めた。
何故ならそのジャージは現在雅人が所属しているハンブリガーSVのそれだったから。
「薫?」
「何でもない、です…。」
「そうか?」
伊達が怪訝そうな顔をしているが敢えて気づかないふりをする。
そうしていると、こちらに気付いたらしい雅人が向かいの席に着く。
「ごめん。 サッカースクールの居残り練習につき合わされてた。」
「そう…。」
「あれ? なんでそんなに脱力してるの?」
「なんでって…。 アンタのその恰好が原因よ。」
「これ?」
「何でチームのジャージ着てくるかな?」
「いや、ドルトムントやシャルケじゃないからわかんないかと思って…。」
「ブンデスリーガの試合、スカパーでやってるから日本でも見れのよ。」
「あ、そっか。 じゃ、これがどこのチームかとかすぐバレちゃう?」
「間違いなくそうなると思う。」
雅人は頭を掻きながら苦笑する。
薫は脱力せずにはいられなかった。
昔からこの弟はそういったことに無頓着だった。
学校に所属クラブのジャージ着ていこうとしたときは全力で止めたほどだ。
「で、そちらが姉貴の旦那さん?」
「はじめまして、伊達輝臣です。」
伊達は自身の名刺を差し出した。
それを受け取った雅人は顔を顰める。
顔を上げると先程までとは違う鋭い視線を向けてきた。
「K大史学部 准教授、ですか…。 姉貴もK大の史学部だよな?」
「そうよ。」
「ふ~~~ん。 つまりアンタは教え子に手ぇ出して嫁にしちゃったってわけだ。」
「雅人!!」
「薫、いいんだ。 そう言われても当然なことを俺してる。」
「輝臣さん…。」
「あぁ、はいはい。 ごちそうさん。」
「雅人?」
「アンタが姉貴に本気ならそれでいいんだよ。
どうやらこっちの家庭の事情も知ってるみたいだし。」
「勿論だ。 薫は俺が幸せにする。」
「ならいいよ。 俺は反対しない。」
「随分簡単に認めるんだな?」
「俺は基本姉貴の味方。
姉貴が好きになって、相手も姉貴のこと好きっていうなら邪魔はしないよ。
むしろ盛大に祝福させてもらうね。」
「そうか…。」
「いや、ちょっと心配だったからさ。」
「え?」
「クレアさんから姉貴と連絡取れないって聞いて…。」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたわね。」
「で、俺が知ってた大原さんに連絡とったら片思いしてた准教授のとこに囲われてるだろうって。」
「里佳子…。」
薫から一瞬黒い怒りのオーラが見えたような気がして伊達は怯む。
だが、すぐにそのオーラは霧散していつもの表情に戻りホッとした。
「でさ、会ってみたくなったんだ。
だって、日本人女性で二人目のパルムドール間違いなしって言われた姉貴がサッカー辞めてまで進学するきっかけを作った男っていうんだからさ。」
「え?」
伊達は驚いた。
まさか薫がそこまでの才能があったなど思いもよらなかった。
その才能を自分が潰してしまったのかと思い、冷たい汗が背筋を伝う。
「仕方ないでしょ、出会っちゃったんだから…。」
「ハハハ、それほどの衝撃だったんだ。」
「そうね。 あれはまさに衝撃が全身を突き抜けたって感じかな?」
「運命の出会い?」
「そうね。 半年後にまた出会えたんだからそう言うことなんだって思ったわ。」
「そっか。 で、ようやくその思いを遂げることができたってわけか。」
「そうよ。」
「そういうことなら俺は応援させてもらうよ。」
「雅人?」
「正直、姉貴には10くらい年上の大人の男がいいと思ってたんだよ。」
「は?」
「包容力があって強くて逞しい男。
そうじゃなきゃ、家庭環境ぐちゃぐちゃで曲がりまくった姉貴を幸せになってできねぇと思ってたから。」
「俺はその条件に見合う男だと?」
「うん、そう思った。」
雅人はニコッと笑ってただ一言『姉さんを幸せにしてやってください。』といって頭を下げ、去っていった。
「何だかドッと疲れたよ。」
「輝臣さん…。」
「でも、ちゃんと祝福してもらえたから満足だ。」
「そうですか?」
「あと、俺の知らない一面も見れたしな。」
薫は一気に赤くなった。
そんな薫を可愛いと思う伊達だった。
****************************************************************
――――――――9月初旬――――――――
薫は就職課に来ていた。
以前から心配をかけていた林原に大学院への進学と伊達との結婚を報告するためだ。
「結局『院』へ進むことにしたんですね。」
「はい、色々手を尽くしてくださったのにすみません。」
「いいわよ。 あなたが世に出るのが先になってしまったけど、その分多くの知識を身に着けることができるんですから悪いことではないでしょう。」
「ありがとうございます。」
「それにしても…。」
「?」
「伊達教授がこんなに手の早い方だとは思いませんでしたよ。」
「あはははは…。」
薫は苦笑するしかなかった。
表向き、薫との結婚は酔った勢いでベッドを共にしてしまいその責任を取る形で入籍した。
そういうことになっていたからだ。
林原は眉根を寄せてブツブツと文句を言っていた。
「林原さん。」
「はい?」
「私にとって伊達先生は『運命の人』なんです。
でも、それをずっと言えなくて…。
結局、お酒の力を借りちゃいました。」
「結城さん…。」
「だから、その…。 伊達先生のこと、悪く言わないでください。」
その言葉に林原は深いため息をつく。
その顔は『仕方ないわね』と言っていた。
その後、薫は史学部の研究科に大学院の入試出願を提出した。
卒業までは旧姓の『結城』で通すことにしていたが、卒業後は『伊達』を名乗ることにしていたので院への出願書にもそちらの名前で提出した。
そこで改めて伊達と結婚したことを意識した薫だった。
それからすぐに後期が始まった。
といっても、ほぼ必要単位を取得している薫は卒論と大学院入試の論文だけであった。
なので、主に伊達の研究室に入り浸っている。
「アッ…、ふぅんっ。 だ、ダメよ。」
「なんでだ?」
「だって、誰か来たら…。」
「大丈夫だ。 この時間、他の連中は講義だから。」
「で、でも…。」
「薫のここはもう欲しいって言ってるぞ。」
伊達の手はスカートをたくし上げ、薫の恥丘を這い秘裂をなぞる。
薫は必死で声を抑えようとするが、そうはさせじと伊達の手が這い回る。
やがて親指の腹で花芯を押しつぶし、くるくると円を描くようにこねる。
その動きに薫は一気に駆け上がった。
「あぁぁぁぁぁ!!」
ついに我慢できなくなり嬌声とともに達した。
それを満足げに見やる伊達はカチャカチャとベルトを外し、ファスナーを下ろす。
「薫、今度は俺を気持ちよくしてくれよ。」
伊達は薫の耳元で囁き、ボクサーパンツから逸物を取り出すと薫の秘裂に宛がい、一気に押し込んだ。
「ひゃんっ!!」
薫はそれだけで軽くイッた。
中は伊達の逸物からその精を搾り取ろうと怪しく蠢く。
腹筋に力を入れることでそれに耐える。
そして、抽挿を始めた。
最初はゆるゆると、徐々にその速さを増していく。
あとはもうただ、薫の奥を穿つだけだった。
そうなると薫の理性は飛んでいた。
我を忘れて喘ぎ嬌声を上げる。
その声はどんどん大きくなっていく。
余りに大きくなっていく嬌声にマズイと思った伊達は己の唇で薫のそれを塞ぐ。
それでも、くぐもった喘ぎは漏れてくる。
それは伊達の興奮を煽った。
やがて限界を迎え、伊達は薫の中にその精を解き放つ。
それと同時に薫も果てた。
暫く重なり合って息を整える。
「薫、可愛かったよ。」
「輝臣さん…。」
薫の額に口付けを落とし、伊達は彼女の中から力を失った逸物を引き抜いた。
いつもながらに伊達の白濁は大量で引き抜いた秘裂から溢れている。
それをティッシュで拭き取ってやる。
「もう、どうして際限なく盛るんですか?」
「薫が可愛いから…。」
「ま、真顔でそういうこと言わないの!」
薫はソファに置いてあったビーズクッションを投げて抗議したが、あまり効果はなかった。
とりあえず、『盛るのはベッドの上だけ』と約束を取り付けてその後は研究室で事に及ばせないようにした。
尤もそのすぐ後にできなくなる。
というのも、それまで正確に来ていた生理が遅れていた薫が妊娠検査薬を使ったところ陽性と出た。
すぐに片倉で診てもらい、妊娠が確定。
その結果、晴海から安定期までいろいろ厳禁と言い渡されたのだった。
「言っとくけど、安定期に入ってからも色々制限あるからね。
特に薫ちゃんは初産だから、不安定になりやすい。
そこをテルが支えてあげないといけないんだから、性欲は自家発電で処理しなさい。」
それを不憫に思ったのか、薫は自ら口ですることを申し出た。
伊達が喜んだのは言うまでもない。
しかし、すぐにそれを後悔することになる。
元来の順応力の高さで伊達は何度もイかされ、結局は悶絶する羽目に。
自業自得なので文句は言えない伊達であった。
****************************************************************
――――――――翌年三月――――――――
卒業式を迎える頃にはお腹がかなり目立つようになった薫。
だが、ゼミの仲間たちは祝福し彼女をサポートしていたので無事卒業となった。
「いやぁ、まさか伊達先生がこんなに手が早いとは思わなかったッスよ。」
「青山…。」
「でも、結果オーライって奴じゃないっすか?」
「お前には感謝はしてる。」
「でも、私たちとしては先生の見たことな顔が見れて面白かったけどね。」
「俺は見世物じゃないぞ!!」
「でも、研究室でイチャイチャしすぎないでくださいよ。
後輩たちが目のやりどころに困りますから。」
「い、言われなくてもわかっている。」
青山や梶田に揶揄われ恥ずかしい思いをした伊達であった。
逆に薫は長い片思いを実らせたことを告白したので概ね羨ましがられたのだった。
そうして、5月の終わりに薫は男女の双子を出産。
長男を葵、長女を菖蒲と名付けた。
不安がないわけではなかったが、シャーリーとスカイプでやり取りすることで育児をこなしていった。
また、掛かりつけになってもらった片倉夫婦のおかげもあって薫と伊達はつつがなく日々を過ごしていく。
そして迎えた23回目の誕生日。
薫はイタリアのアマルフィにいた。
1年遅れの結婚式のためだ。
クレアが企画してくれたそれは日本でも人気のカティーリア教会で行われた。
「薫、よく似合ってる。」
「輝臣さんもね。」
甘い雰囲気が二人を包む。
【ハイ、お楽しみのところ悪いけど、時間よ。】
【クレア…。】
【今日はカオルとテルオミが主役だからね。】
【うん…。】
【せいぜい、見せつけてよね。】
こうして、二人の結婚式はつつがなく執り行われた。
最後に伊達が葵を、薫が菖蒲を抱いて記念撮影をしたのだった。
その時の写真はそれからの二人の人生をじっと見つめたのだった。
************************************************
長いことお付き合いいただきありがとうございました。
これにて完結です。
0
あなたにおすすめの小説
普通のOLは猛獣使いにはなれない
ピロ子
恋愛
恋人と親友に裏切られ自棄酒中のOL有季子は、バーで偶然出会った猛獣(みたいな男)と意気投合して酔った勢いで彼と一夜を共にしてしまう。
あの日の事は“一夜の過ち”だと思えるようになった頃、自宅へ不法侵入してきた猛獣と再会し、過ちで終われない関係となっていく。
普通のOLとマフィアな男の、体から始まる関係。
暁はコーヒーの香り
氷室龍
恋愛
一之瀬明日香 28歳 営業二課主任
大口契約が決まり、打ち上げと称して皆で美味しくお酒を飲んでいたのだが…。
色々ハイスペックなのを隠してるOLとそんな彼女をどうにかしてモノにしたくてたまらなかったおっさん上司の体の関係から始まるお話
『眼鏡の日』『ネクタイの日』『コーヒーの日』ってワードから思い付きで書きました。
辺境の侯爵家に嫁いだ引きこもり令嬢は愛される
狭山雪菜
恋愛
ソフィア・ヒルは、病弱だったために社交界デビューもすませておらず、引きこもり生活を送っていた。
ある時ソフィアに舞い降りたのは、キース・ムール侯爵との縁談の話。
ソフィアの状況を見て、嫁に来いと言う話に興味をそそられ、馬車で5日間かけて彼の元へと向かうとーー
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。また、短編集〜リクエストと30日記念〜でも、続編を収録してます。
兄の親友が彼氏になって、ただいちゃいちゃするだけの話
狭山雪菜
恋愛
篠田青葉はひょんなきっかけで、1コ上の兄の親友と付き合う事となった。
そんな2人のただただいちゃいちゃしているだけのお話です。
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。
エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた
ピロ子
恋愛
飲み会に参加した後、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。
普段は冷静沈着な課長の脳内は、私には斜め上過ぎて理解不能です。
※課長の脳内は変態です。
なとみさん主催、「#足フェチ祭り」参加作品です。完結しました。
ソロキャンプと男と女と
狭山雪菜
恋愛
篠原匠は、ソロキャンプのTV特集を見てキャンプをしたくなり、初心者歓迎の有名なキャンプ場での平日限定のツアーに応募した。
しかし、当時相部屋となったのは男の人で、よく見たら自分の性別が男としてツアーに応募している事に気がついた。
とりあえず黙っていようと、思っていたのだが…?
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。
週1くるパン屋の常連さんは伝説の騎士様だった〜最近ではほぼ毎日ご来店、ありがとうございます〜
狭山雪菜
恋愛
パン屋に勤めるマチルダは平民だった。ある日、国民的人気の騎士団員に、夜遅いからと送られたのだが…
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。
巨×巨LOVE STORY
狭山雪菜
恋愛
白川藍子は、他の女の子よりも大きな胸をしていた。ある時、好きだと思っていた男友達から、実は小さい胸が好きと言われ……
こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる