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第4章 低殺傷兵器(ローリーサルウェポン)
残弾消化
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「早くしろ!」
すでにかなり先まで歩いていたカウラの声が重機のうなるハンガーの中で鋭く響いた。仕方が無いと言う表情でかなめは手にした銃を肩に乗っけたまま急ぎ足で歩いた。
「でも……オリジナル・アサルト・モジュールの出る幕なんてあるんですかね?」
誠の問いにかなめは首をひねりながら私に聞くなと言うような顔をして歩き続ける。ハンガーも半分を過ぎるとすでに整備を終えて待機状態の部隊の制式アサルト・モジュール達が静かにたたずんでいる。誠はその威容にいつものパイロットの誇りを思い出しながら黙って歩き続けた。
ハンガーを出ると思い思いに銃を背負って疲れ果てたような顔をしている兵士達が現れた。着ているのは都市迷彩柄の司法局実働部隊の制式戦闘服。さすがに訓練と言うことで防弾ベストやマガジンポーチの類は身につけていないがそれでもやはり司法局実働部隊が軍隊に準ずる組織であることを誠にも思い出させた。
「姐御は絞るねえ」
かなめが兵士達、司法局実働部隊警備部員の姿を見てつぶやく。一応中佐や大尉の階級のラン達を見つけてよろよろと敬礼する警備部員。イヤープロテクターをはずそうとする姿は明らかに疲れ果てて見えた。
「あ、ラン。これからそいつの訓練か?」
中で一人、きっちりと戦闘服をそろえて着込んでいる長身の女性将校が金色の髪をなびかせながら近づいてきた。警備部部長、マリア・シュバーキナ少佐。その姿を見てランはにやりと笑う。
「その様子だと的当てだけじゃなくて相当走らせたな……銃の訓練はそれからか?」
「まあうちは体が資本だからな。それと銃の扱いも多少は慣れるべきだろう」
「慣れるってレベルじゃねーだろ」
ランがそう言うのももっともだった。月に一万発のアサルトライフルでの射撃訓練。そんなことをしている部隊といえば東和には他に一つもなかった。それにいつもなら先ほどの格好に金属防弾プレート入りのベストと弾のぎっちり詰まったマガジンを持てるだけ持った状態でのランニングが訓練に加わると言う。
「ランのところが甘すぎるんだ。多少は鍛えるべきだろ?」
「予算がねーよ。うちはただでさえアサルト・モジュールなんていう馬鹿みたいに予算を食う機材を扱ってるんだ。それに茜お嬢様のお手伝いもしないといけないからな。なかなか難しいもんだよ」
そう言うとランは手を振って自分についてきた誠達をせかした。
「ちゃんと訓練をしておけよ」
マリアが明らかに誠に対してそう言った。誠も射撃に関しては自信がないこともあって申し訳ないという表情で敬礼をしてみせる。
「ついて来い!」
ぎこちない誠の腕をかなめが思い切り引っ張る。よろめきながら誠は射場が見えるハンガー裏手に向けて歩き出した。流れ弾を防ぐ土嚢のめぐらされた通路を越えると空薬莢が転がる射撃レンジが目に入る。先頭を歩いていたアイシャが手にしたバスケットからショットガンの弾薬の箱を取り出すとテーブルの上に次々と弾の箱を並べていった。
「どーれ……サンドバック弾か……こいつは銃には悪そうだよなー。袋が破れりゃ砂がバレルにへばりついて……キムも苦労しそうだよこりゃ」
駆け足でアイシャに追いついたランが仕方がないというようにオレンジ色の毒々しい箱を開け始める。誠やカウラも仕方がないというようにそのまま射場に上がった。
「神前、オメエ的な」
「西園寺。冗談を言う暇があったら弾を込めろ」
カウラはそう言うと新しい弾の箱から取り出した弾薬を一発一発オレンジ色の銃の下に開いたローディングゲートに弾を込めていく。
「これって何が入っているんですか?」
実は普段から同じ構造のショットガンを銃の下にぶら下げて使用している誠の言葉にかなめは大きくため息を着いた。
「あのなあ、基礎も基礎だぞ。弾頭には布製の袋が入っているんだ。その中身は重量のある樹脂。約5メートルで10センチくらいの大きさに開いて目標に到達。打撃力で相手を無能力化すると言うのが売り文句だ」
かなめは呆れながら弾が全弾バレルの下のマガジンに入ったことを確認するようにローディングゲートを手でさすっている。
「実際有効性があるのが25メートルくらいだからな。かなり銃を撃つタイミングが難しい。クバルカ中佐。私からでいいですか?」
言葉を継いだカウラが弾を込め終わると静かにフォアグリップを引いていた。
「おっし。口で言っても分からねーだろうからな。そこの鉄板にぶち込んでやれ」
ランがそう言うとそのままカウラは10メートルくらい先の鉄板に狙いを定めた。すぐに初弾が放たれる。銃声の後、鉄板が鈍器で殴られたように大きく揺れる。
「へえ、面白いわね。じゃあ私も」
そう言うとアイシャはシャムが使っているショットガン、サイガと同型のオレンジ色に塗られたショットガンの重厚を30メートル先のペーパーターゲットに向けた。
三発の銃声。そして着弾点で上がる土煙。
「面白いわね」
ニコニコ笑いながらアイシャはテーブルに置かれていた拡大鏡に手を伸ばした。
「ああ、当たってるわね。私すごいわ」
満足そうにアイシャはうなづく。その同じ方向をかなめが見つめている。サイボーグらしく望遠機能を使用しているようで静かに額に右手を当てている。
「……当たり前だ、こんな距離」
「じゃあお手本を見せてよ」
口を尖らせるアイシャに対してかなめは満面の笑みを浮かべてオレンジ色の銃にのフォアグリップを引く。すぐさま五連射。すべてが15メートル先のこぶしほどの大きさの鉄板に命中する。そして満足げに全弾撃ちつくしたと誇るように誠達を見回す。
「さすがよねえ。これは一応褒めとくわね」
再び拡大鏡を手に取ると頷きながらアイシャは鉄板を眺めた。おそらく当たった際に飛び散った袋の中の樹脂の塊が染め上げたのだろう。誠から見てもかなめの放った弾丸が全弾鉄板に命中してそれをオレンジ色に染め上げた事実を確認することが出来た。
「じゃあ私もやるか……」
カウラがそう言って初弾を装てんしたところでランがカウラの銃に手を置いた。
「オメー等射撃ごっこしているわけじゃねーんだ。全員そこに並べ」
仕方ないと言うようにカウラは銃口を上に向けてかなめ達が使っていた射撃レンジに立った。かなめもアイシャも小さいとはいえ上官のランに逆らうわけには行かずに隣のレンジに移る。
「あのー僕は?」
「神前は撃ち方自体がおかしいから。ここでアタシの撃ち方を見てろ」
そう言うと120cmに満たない小さな体には大きすぎるショットガンの銃口をターゲットに向ける。
「まず反動は普通の殺傷弾よりでかいからな。こうしっかりホールドするわけだ」
「まずアタシは普通の人間よりちっこいからな。こうしてしっかり銃にぶら下がるわけだ」
ランの声まねをするかなめ。思わず噴出しそうになる誠だが上官相手とあって必死になってこらえる。
完全にかなめを無視していたランが初弾をターゲットに命中させる。そして驚いている誠に見せ付けるようにして短い手で起用にポンピングしながら5発の弾丸を発射して見せた。
「こうやるもんだ」
「小さいからな。よくできたなあ」
「西園寺。一度死んでみるか?」
殺気立つラン。その元々にらんでいる様な顔がさらに殺気を帯びる。
「とりあえず見本だ」
カウラはそう言うと等間隔で五発の連射を行なう。ターゲットの金属プレートが煙に覆われる。
「低殺傷能力でもこれは危ないんじゃないですか?」
誠の言葉にかなめが心底呆れたという顔をしている。
「『低』だからな。オメエが三ヶ月前まで使ってた22LR弾だって当たり所が悪ければ人は死ぬぞ。こいつも同じだ。頭とかに当たれば場合によっては十分死ぬからな」
「そんなものよ。まあ警棒を振り回すよりは文化的でしょ」
アイシャはそう言ってほほ笑んだ。それを見ながらかなめは機械のような動きで一発づつ確実にオレンジ色の派手な色のショットシェルを押し込んでいる。
「なんやかんや言いながら嫌いじゃないんだなお前等も」
カウラはそう言うと呆然と突っ立っている誠のひじを小突いた。仕方なく誠も不器用な手つきで弾倉を開いてショットシェルを押し込んでいく。
「遊びじゃねーんだからな。狙う対象は暴動に発展しそうな興奮状態の暴徒。それを一撃で殺さずに行動不能に陥らせる。それを頭の中でシミュレーションしながら撃てよ」
ランもまた装弾を開始していた。バスケットの中の弾は五箱。実銃の射撃訓練に比べると明らかに少ない。
「これも高い弾なんですか?」
弾を全弾装てんしてフォアエンドを引いて薬室に弾を込める誠。
「まーな。結構な値段だがスラグ弾やバックショットとはかなり弾道が違うぞ。急激に初速が落ちるからかなり狙いより下に当たることを考えろよ」
親切なランの言葉を聴くと誠は銃口をターゲットに向けた。
「ボスン」
誠の撃った初弾はあっさりと出たがターゲットの手前で着弾した。
「もっと銃口を上げろ。初速は普通のスラグなんかよりぜんぜん遅いんだからな」
ランの言葉に少しばかり焦りながらポンピングをする。
そして狙う。照準装置の無いショットガンでは感覚で着弾点を覚えるしかないことが誠も知っていた。
「ボスン」
今度はターゲットを飛び越えて白い弾頭らしきものが飛んでいくのが見える。
「ったく……お前本当に東和軍の幹部候補の課程を通過したのか?」
呆れるかなめに首をひねりながら再びショットシェルを込めて銃口をターゲットに向ける。
「ボスン」
ようやくターゲットの中央に弾が当たったのが分かる。人型の鉄板が揺れて着弾を表している。
「ボスン、ボスン」
四発撃ち尽くして誠は大きなため息をついた。
「誠ちゃん。もう少し練習しようね」
アイシャもさすがに呆れたと言うように誠の肩を叩く。仕方が無いとうつむく誠を見ながらカウラは自分の銃に弾を込めていた。
「まあ神前には剣があるだろ?どうせこの距離くらいでの衝突だ。警棒で対応できれば文句は無い」
「その警棒で対応できないからこいつを使うんじゃねえのか?甘いねえ、隊長殿は」
カウラのフォローを台無しにするかなめ。誠はいつものことなので逆に開き直って銃に弾を込め始めた。
「とりあえずこいつを消化しろとのお達しだ。特に神前は構えるところからはじめる必要があるな……西園寺!テメーが仕切れ」
「はい!」
ランの言葉にかなめはニヤニヤ笑いながら誠の銃に手を伸ばす。誠はこのまま何時間かこの樹脂製の割りに重い銃の構え方を繰り返させられるかと想像して大きなため息をつくのだった。
すでにかなり先まで歩いていたカウラの声が重機のうなるハンガーの中で鋭く響いた。仕方が無いと言う表情でかなめは手にした銃を肩に乗っけたまま急ぎ足で歩いた。
「でも……オリジナル・アサルト・モジュールの出る幕なんてあるんですかね?」
誠の問いにかなめは首をひねりながら私に聞くなと言うような顔をして歩き続ける。ハンガーも半分を過ぎるとすでに整備を終えて待機状態の部隊の制式アサルト・モジュール達が静かにたたずんでいる。誠はその威容にいつものパイロットの誇りを思い出しながら黙って歩き続けた。
ハンガーを出ると思い思いに銃を背負って疲れ果てたような顔をしている兵士達が現れた。着ているのは都市迷彩柄の司法局実働部隊の制式戦闘服。さすがに訓練と言うことで防弾ベストやマガジンポーチの類は身につけていないがそれでもやはり司法局実働部隊が軍隊に準ずる組織であることを誠にも思い出させた。
「姐御は絞るねえ」
かなめが兵士達、司法局実働部隊警備部員の姿を見てつぶやく。一応中佐や大尉の階級のラン達を見つけてよろよろと敬礼する警備部員。イヤープロテクターをはずそうとする姿は明らかに疲れ果てて見えた。
「あ、ラン。これからそいつの訓練か?」
中で一人、きっちりと戦闘服をそろえて着込んでいる長身の女性将校が金色の髪をなびかせながら近づいてきた。警備部部長、マリア・シュバーキナ少佐。その姿を見てランはにやりと笑う。
「その様子だと的当てだけじゃなくて相当走らせたな……銃の訓練はそれからか?」
「まあうちは体が資本だからな。それと銃の扱いも多少は慣れるべきだろう」
「慣れるってレベルじゃねーだろ」
ランがそう言うのももっともだった。月に一万発のアサルトライフルでの射撃訓練。そんなことをしている部隊といえば東和には他に一つもなかった。それにいつもなら先ほどの格好に金属防弾プレート入りのベストと弾のぎっちり詰まったマガジンを持てるだけ持った状態でのランニングが訓練に加わると言う。
「ランのところが甘すぎるんだ。多少は鍛えるべきだろ?」
「予算がねーよ。うちはただでさえアサルト・モジュールなんていう馬鹿みたいに予算を食う機材を扱ってるんだ。それに茜お嬢様のお手伝いもしないといけないからな。なかなか難しいもんだよ」
そう言うとランは手を振って自分についてきた誠達をせかした。
「ちゃんと訓練をしておけよ」
マリアが明らかに誠に対してそう言った。誠も射撃に関しては自信がないこともあって申し訳ないという表情で敬礼をしてみせる。
「ついて来い!」
ぎこちない誠の腕をかなめが思い切り引っ張る。よろめきながら誠は射場が見えるハンガー裏手に向けて歩き出した。流れ弾を防ぐ土嚢のめぐらされた通路を越えると空薬莢が転がる射撃レンジが目に入る。先頭を歩いていたアイシャが手にしたバスケットからショットガンの弾薬の箱を取り出すとテーブルの上に次々と弾の箱を並べていった。
「どーれ……サンドバック弾か……こいつは銃には悪そうだよなー。袋が破れりゃ砂がバレルにへばりついて……キムも苦労しそうだよこりゃ」
駆け足でアイシャに追いついたランが仕方がないというようにオレンジ色の毒々しい箱を開け始める。誠やカウラも仕方がないというようにそのまま射場に上がった。
「神前、オメエ的な」
「西園寺。冗談を言う暇があったら弾を込めろ」
カウラはそう言うと新しい弾の箱から取り出した弾薬を一発一発オレンジ色の銃の下に開いたローディングゲートに弾を込めていく。
「これって何が入っているんですか?」
実は普段から同じ構造のショットガンを銃の下にぶら下げて使用している誠の言葉にかなめは大きくため息を着いた。
「あのなあ、基礎も基礎だぞ。弾頭には布製の袋が入っているんだ。その中身は重量のある樹脂。約5メートルで10センチくらいの大きさに開いて目標に到達。打撃力で相手を無能力化すると言うのが売り文句だ」
かなめは呆れながら弾が全弾バレルの下のマガジンに入ったことを確認するようにローディングゲートを手でさすっている。
「実際有効性があるのが25メートルくらいだからな。かなり銃を撃つタイミングが難しい。クバルカ中佐。私からでいいですか?」
言葉を継いだカウラが弾を込め終わると静かにフォアグリップを引いていた。
「おっし。口で言っても分からねーだろうからな。そこの鉄板にぶち込んでやれ」
ランがそう言うとそのままカウラは10メートルくらい先の鉄板に狙いを定めた。すぐに初弾が放たれる。銃声の後、鉄板が鈍器で殴られたように大きく揺れる。
「へえ、面白いわね。じゃあ私も」
そう言うとアイシャはシャムが使っているショットガン、サイガと同型のオレンジ色に塗られたショットガンの重厚を30メートル先のペーパーターゲットに向けた。
三発の銃声。そして着弾点で上がる土煙。
「面白いわね」
ニコニコ笑いながらアイシャはテーブルに置かれていた拡大鏡に手を伸ばした。
「ああ、当たってるわね。私すごいわ」
満足そうにアイシャはうなづく。その同じ方向をかなめが見つめている。サイボーグらしく望遠機能を使用しているようで静かに額に右手を当てている。
「……当たり前だ、こんな距離」
「じゃあお手本を見せてよ」
口を尖らせるアイシャに対してかなめは満面の笑みを浮かべてオレンジ色の銃にのフォアグリップを引く。すぐさま五連射。すべてが15メートル先のこぶしほどの大きさの鉄板に命中する。そして満足げに全弾撃ちつくしたと誇るように誠達を見回す。
「さすがよねえ。これは一応褒めとくわね」
再び拡大鏡を手に取ると頷きながらアイシャは鉄板を眺めた。おそらく当たった際に飛び散った袋の中の樹脂の塊が染め上げたのだろう。誠から見てもかなめの放った弾丸が全弾鉄板に命中してそれをオレンジ色に染め上げた事実を確認することが出来た。
「じゃあ私もやるか……」
カウラがそう言って初弾を装てんしたところでランがカウラの銃に手を置いた。
「オメー等射撃ごっこしているわけじゃねーんだ。全員そこに並べ」
仕方ないと言うようにカウラは銃口を上に向けてかなめ達が使っていた射撃レンジに立った。かなめもアイシャも小さいとはいえ上官のランに逆らうわけには行かずに隣のレンジに移る。
「あのー僕は?」
「神前は撃ち方自体がおかしいから。ここでアタシの撃ち方を見てろ」
そう言うと120cmに満たない小さな体には大きすぎるショットガンの銃口をターゲットに向ける。
「まず反動は普通の殺傷弾よりでかいからな。こうしっかりホールドするわけだ」
「まずアタシは普通の人間よりちっこいからな。こうしてしっかり銃にぶら下がるわけだ」
ランの声まねをするかなめ。思わず噴出しそうになる誠だが上官相手とあって必死になってこらえる。
完全にかなめを無視していたランが初弾をターゲットに命中させる。そして驚いている誠に見せ付けるようにして短い手で起用にポンピングしながら5発の弾丸を発射して見せた。
「こうやるもんだ」
「小さいからな。よくできたなあ」
「西園寺。一度死んでみるか?」
殺気立つラン。その元々にらんでいる様な顔がさらに殺気を帯びる。
「とりあえず見本だ」
カウラはそう言うと等間隔で五発の連射を行なう。ターゲットの金属プレートが煙に覆われる。
「低殺傷能力でもこれは危ないんじゃないですか?」
誠の言葉にかなめが心底呆れたという顔をしている。
「『低』だからな。オメエが三ヶ月前まで使ってた22LR弾だって当たり所が悪ければ人は死ぬぞ。こいつも同じだ。頭とかに当たれば場合によっては十分死ぬからな」
「そんなものよ。まあ警棒を振り回すよりは文化的でしょ」
アイシャはそう言ってほほ笑んだ。それを見ながらかなめは機械のような動きで一発づつ確実にオレンジ色の派手な色のショットシェルを押し込んでいる。
「なんやかんや言いながら嫌いじゃないんだなお前等も」
カウラはそう言うと呆然と突っ立っている誠のひじを小突いた。仕方なく誠も不器用な手つきで弾倉を開いてショットシェルを押し込んでいく。
「遊びじゃねーんだからな。狙う対象は暴動に発展しそうな興奮状態の暴徒。それを一撃で殺さずに行動不能に陥らせる。それを頭の中でシミュレーションしながら撃てよ」
ランもまた装弾を開始していた。バスケットの中の弾は五箱。実銃の射撃訓練に比べると明らかに少ない。
「これも高い弾なんですか?」
弾を全弾装てんしてフォアエンドを引いて薬室に弾を込める誠。
「まーな。結構な値段だがスラグ弾やバックショットとはかなり弾道が違うぞ。急激に初速が落ちるからかなり狙いより下に当たることを考えろよ」
親切なランの言葉を聴くと誠は銃口をターゲットに向けた。
「ボスン」
誠の撃った初弾はあっさりと出たがターゲットの手前で着弾した。
「もっと銃口を上げろ。初速は普通のスラグなんかよりぜんぜん遅いんだからな」
ランの言葉に少しばかり焦りながらポンピングをする。
そして狙う。照準装置の無いショットガンでは感覚で着弾点を覚えるしかないことが誠も知っていた。
「ボスン」
今度はターゲットを飛び越えて白い弾頭らしきものが飛んでいくのが見える。
「ったく……お前本当に東和軍の幹部候補の課程を通過したのか?」
呆れるかなめに首をひねりながら再びショットシェルを込めて銃口をターゲットに向ける。
「ボスン」
ようやくターゲットの中央に弾が当たったのが分かる。人型の鉄板が揺れて着弾を表している。
「ボスン、ボスン」
四発撃ち尽くして誠は大きなため息をついた。
「誠ちゃん。もう少し練習しようね」
アイシャもさすがに呆れたと言うように誠の肩を叩く。仕方が無いとうつむく誠を見ながらカウラは自分の銃に弾を込めていた。
「まあ神前には剣があるだろ?どうせこの距離くらいでの衝突だ。警棒で対応できれば文句は無い」
「その警棒で対応できないからこいつを使うんじゃねえのか?甘いねえ、隊長殿は」
カウラのフォローを台無しにするかなめ。誠はいつものことなので逆に開き直って銃に弾を込め始めた。
「とりあえずこいつを消化しろとのお達しだ。特に神前は構えるところからはじめる必要があるな……西園寺!テメーが仕切れ」
「はい!」
ランの言葉にかなめはニヤニヤ笑いながら誠の銃に手を伸ばす。誠はこのまま何時間かこの樹脂製の割りに重い銃の構え方を繰り返させられるかと想像して大きなため息をつくのだった。
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